女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん【完結】   作:笹の船

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G36が指揮官に苦言を呈す話。


公私混同も程々に

「ご主人様、最近お部屋が片付いていないようですね?」

「え? そう?」

 

 G36の苦言に対し、図星であることを誤魔化そうとデスクの上にあるマグカップに手を伸ばす。

 けれど、その手はマグカップには届かなかった。

 

「ココアの飲みすぎですよ。虫歯にでもなったらどうするおつもりですか」

「えぇ~……G36、人間は糖分をとらないと頭が働かないのよ? 仕事中のココアくらい見逃してよ」

 

 抗議の意も込めて唇を尖らせてみるけれど、G36は毅然とした態度を崩さない。

 

「そうはおっしゃいますが、ご主人様。アナタは夜になれば副官のUMP45とカフェに行くではありませんか。そちらでもココアや甘味をお召し上がりになっているのでしょう?」

「ぐ……それを言われると……」

 

 確かに、仕事終わりのホットココアやスプリングが作ってくれる美味しいパンケーキなんかは格別で、ついつい食べに行ってしまう。

 45もなんだかんだと甘いものは好きみたいだから、二人で別々の甘いものをオーダーして食べさせあいっこなんかも時々やってしまう。

 そんなこんなで、この一か月くらいはカフェ通いが日課になりつつあったりしていた。

 G36はそんな私の生活をしっかりと把握していたらしい。マズいぞ、私の仕事終わりの楽しみが制限されてしまう。

 いや、元々部屋が片付いていないという話だったはず。ならば。

 

「分かった。お部屋はちゃんと綺麗にする。掃除もちゃんとしておくよ」

「その言葉が聞けて何よりです。では、その調子で食生活の方も改善しましょう」

「うげ……」

 

 ダメだった。むしろ余計に自分の首を絞めてしまった。

 クスクスという笑い声が聞こえたけど、見なくても分かる。副官業務をこなしてくれている45だ。この子ホント人の不幸は蜜の味を地で行く性格してるよなあ!

 

「人に気が緩んでる、なんてお説教をしておいて自分が出来てなかったなんて、いい御身分ね」

「いい御身分だからね。私」

「おっと、そうだった。でも、あんまりふんぞり返ってるとすぐに引きずり落されるわよ」

 

 そう言って笑みを浮かべる45は、けれどその目だけが私を撃ち抜くぞと言わんばかりの鋭いソレに変わっていた。

 だらけ過ぎたら愛想つかすぞ、という脅しだろうか。それはちょっとやだな。

 

「ご主人様への注意としてはこれ以上ない言葉だと思いますが、UMP45? アナタも最近緩みがちなのではありませんか? SPASに訓練途中で抜け出されたと聞きましたが」

「それはもう終わったことよ。もう二度とあんなことをしない様に、アイツにはきっちり教育をしてるもの」

「厳しく指導するのは賛成ですが、あまりやりすぎないようにお願いいたします」

「アンタ……誰に向かって言ってるのよ」

「ご主人様のこととなると冷静さを失いがちな副官ですが?」

 

 あ、45が一瞬悔しそうな顔をした。ていうか45を言い負かしたのか。G36、流石に基地に来てそれなりの期間が経ってるからか45の扱いが分かってるな。

 しかしこれから毎日カフェには行けないのかなあ。ちょっとそれを考えると辛いかもしれない。

 

「ご主人様。いい機会ですので、私が考案した野菜ジュースをお召し上がりになりませんか?」

「G36、アナタそんなモノ作ってたの?」

 

 いつの間にそんなことをしていたのだろう。趣味の範疇っぽそうだし、特に資材を無断で使ったような形跡も報告もないから、咎める理由もないけれど。

 それより、大丈夫なんだろうか。増幅カプセルが入っていたりとか、しないよね……?

 

「ご安心ください。既にペルシカリア様にご協力いただいて、人が摂取しても問題ないことを確認済みです。体調が良くなったと、ペルシカリア様からも好評をいただいております」

「ごめん、逆に不安になった」

 

 ペルシカリアが協力って一言で全部が台無しだよ! ホントに大丈夫なんでしょうね!?

 ていうかアイツは年中不摂生な生活してんだから何飲んだって健康的でしょうよ!

 

「ということでこちらに用意してありますので、ココアの代わりにこちらをどうぞ」

「え……今飲まなきゃダメ……?」

「自分で言うのもどうかと思いますが、食前や食後に得体のしれない飲み物を飲むよりは、気持ち的にも楽かと存じます」

 

 反論できない。つまり逃げ道がない。よんごー助けて。

 あ、ダメだ。ニコニコしながら小さくこっちに向かって手を振ってる。助ける気ゼロだ。

 ずい、と濃緑色のとろみがついたような液体の入ったコップが差しだされる。コレを飲むの……? 

 

「味はそんなに悪くないはずですよ。ご主人様用に少し甘めにも調整してあります」

 

 じゃあ、大丈夫かな……? まあ、ここまでされてやっぱ嫌ですとは上官としても格好がつかない。腹をくくって飲みますか。

 目の前の謎のドリンクXが入ったコップを手に取る。その毒々しいような見た目に、思わずゴクリと唾を飲み込んだ。

 45がニヤニヤしながら今か今かと私がドリンクXを飲むのを待っている。G36も、ちょっと期待したような目で私のことを見つめていた。

 ええい、ままよ!

 コップに口をつけ、ドリンクXを口に含んで飲み下す。

 

「……あ、意外と美味しいかも」

「えー、つまんなーい。まあでも、シーラが美味しいっていうなら……ねえシーラ、一口頂戴よ」

 

 そう言って45が私の隣に椅子を持ってやってきた。……そうだ、ちょっと意地悪してやろう。

 

「んー? じゃあちょっと待ってて。もう一口飲むから」

「ん。分かった」

 

 ドリンクXを飲む私の横に椅子を置いて、45がそこに座る。うんうん。いいぞ、そのままね。

 ある程度飲んだところで、ドリンクXを口の中に含んだままホールドする。

 そして、隣の45の肩を指先で軽くつついた。

 

「ん? シーラ、どうした……んっ!?」

「副官、なぜ気づかないのですか……」

 

 G36の呆れた声とため息を聞きながら、私は45にキスをして口の中のドリンクXを彼女の口の中に送り込む。ほんのちょっぴりこぼれたドリンクXが、45のブラウスに垂れて濃緑色のシミを作った。

 

「んんっ……! んんん!」

 

 45が口移しされたドリンクXを飲み込むまで、くっつけた唇はそのままだ。驚きと羞恥でやや抵抗してくるけれど、弱々しすぎる。私でも抑え込むのは簡単だ。

 

「んん……ぷはっ! シーラァ!?」

「一口、あげたでしょ?」

 

 んー、無地のキャンパスみたいに真っ白な45の頬が真っ赤になってる。可愛い。

 そんなことを考えていると、隣から咳払いが聞こえてきた。

 

「ご主人様。職務中にやるには不適切な行為かと思われます。今更な話ではありますが、過度なスキンシップは風紀の乱れにもつながりますので……」

 

 やっば、G36の目が笑ってない。これもしかしてお説教モード?

 

「そもそも、お二人とも仲が良いのは結構ですが、度を越した振る舞いが散見されます。いいですか、お二人はこの基地の指揮官と副官なのですよ。気を抜くなとか、いちゃつくなとは言いませんが、時と場所をわきまえていただきたいのです。余りお戯れが過ぎますと、内容的にも良くない影響を受ける子達だっているんですよ。この基地でも重要なポジションについていらっしゃるアナタ達がそんなではいずれ――」

 

 ごめん。ごめんてG36。謝るし気を付けるからお説教は短く……!

 

「いいえ。今日という今日はハッキリと言わせていただきますよ」

 

 結局、私達が解放されたのは2時間後だった。

 終業時間間近だけど、仕事が終わってない……。カフェはお預けだなあ、これ。

 G36も手伝ってくれるから、まあ頑張りますか。

 




G36は基本的に指揮官を立ててくれそうですが、言うべきところはきっちり行ってきそう。
一番ダメにされそうなタイプの女性では……G36にケツを蹴飛ばされながら仕事をしたい。

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