女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん【完結】   作:笹の船

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結構長くなりそうな予感……


私達だっているんだから ③

 バイクを運転する9の後ろにまたがって、私達は舗装された道路を走る。

 私達の前には二台のトラック。今回の護衛対象だ。その二台を挟む様にハンヴィーが二台。それらを挟む様に先頭を416が運転するバイクが、最後尾を私達のバイクが挟んでいる。416の後ろにはG11も乗っていた。ちなみにハンヴィーには私達のダミーが乗っている。

 楽な仕事、だとは思う。たかだかトラック二台の為にハンヴィーと404のダミーを総動員なんて、並の鉄血兵じゃ相手にもならない。

 思わず、大きなため息が口から洩れた。視線が下へと落ちて、前を向けない。

 シーラと喧嘩した。

 それ自体は別にそこまでショックじゃない。

 

 ――私の為を思うんだったら、私のお世話よりも任務を成功させてきてよ!

 

 昨日、司令室でシーラに言われた言葉がメモリーから削除できない。

 シーラの言うことはもっともだ。私は戦術人形であって、彼女のお手伝いをするための自律人形なんかじゃない。

 私が彼女にしてあげられることで、一番良いのはきっと任務を成功させて無事に帰ってくることだ。

 けれど、そんなのってあんまりだ。私は、シーラと誓約までしたのに。

 ずっと一緒だよって、言ってもらったのに。そんな突き放すようなこと、言わなくたって……。

 

『……姉、45姉!』

 

 ふと、名前を呼ばれていることに気が付いた。9だ。

 

「え、あ……ごめん。9、どうしたの?」

『どうしたの、じゃないよ45姉。そろそろ車両が鉄血の支配地域の近くを通るよ』

 

 ほんの少し、9が咎めるような声を無線越しに響かせた。

 しまった、もうそんなところまで来ていたんだ。

 意識を切り替えて、やるべきことを確認する。

 今回はI.O.Pへ人形を製造するための物資を護衛する任務だ。急ぎの輸送とのことで、時間短縮のために鉄血の支配地域スレスレをかすめるルートを通っている。

 危険度が高いため普段は使われないけれど、こういう時はこのルートを使っているのだ。

 そして、このルートを使う場合はかなりの確率で鉄血兵に襲撃される。だからこそ、404小隊のダミーを総動員しているのだ。とはいえ、余程のことがない限りダミーを使って戦闘はしない。弾薬ももったいないし。

 

『ッ! 45、1時の方向に敵影確認!』

 

 観測手を務めていたG11の鋭い声が無線から響いた。

 

「全員戦闘態勢! G11、敵の種別は!?」

『スカウター7、ヴェスピド5、ジャガー1!』

 

 クソ、物資輸送の護衛をしている時に迫撃砲装備の鉄血兵に遭遇するなんてツイてない。

 とはいえ、泣き言を言ってばかりもいられない。雑兵ばっかりなのが救いだけど、もたもたしていると輸送車両ごと私達もドカン、だ。

 

「G11と416はジャガーの排除を優先! その位置から狙える?」

『余裕だよ』

『私達を誰だと思ってるの。この程度、完璧にこなして見せるわ』

 

 頼もしい言葉だ。まあ、あの二人なら心配することはないだろう。

 

「頼むわよ。私と9で奴らの注意を引く。その間にぶちのめして。9、準備はいい?」

『任せてよ45姉!』

「じゃあ始めるわよ! ……行動開始!」

 

 9がバイクのアクセルを吹かし、加速体勢に入る。輸送車両と416達を追い抜いて、一気に彼我の距離が詰められていく。その音に気づいて、鉄血兵がその銃口をこちらに向けた。

 が、その時には既に私の人差し指が引き金を引いていた。

 バイクのエンジン音をかき消すような銃声が響く。

 タタタン、タタタン!

 規則正しい三連続の銃声を繰り返す。流石にフルオートでは人形の私であっても当てられない。それに、今回の仕事は護衛だ。無理に撃滅をする必要はない。

 それでも、引き金を引くたびにスカウターが一体ずつ機能を停止させていく。斥候の役割を果たすスカウターは優先して叩く必要がある。

 こちらの情報を送られては、後々厄介だからだ。ヴェスピドはただの歩兵だし、移動速度も車両に追いつけるほどじゃない。数も多くないし、全体的に見れば脅威度は低い。

 私達を狙った銃口から、マズルフラッシュがほとばしるのが見えた。

 すぐそばを銃弾がかすめる音が聞こえる。バイクのすぐ近くの地面が爆ぜた。

 けれど、それもすぐに途絶える。私達の後ろを走っていたG11に撃ち抜かれたのだ。

 私のUMP45よりも重い銃声が響き渡る。G11の射撃だ。

 私達のバイクに気を取られた鉄血兵が、次々と倒れていく。視界の端で、ジャガーがこちらに狙いを定めているのが見えた。

 けれど私は焦らない。何故なら、その直後に発射態勢を整えたその姿勢で、ジャガーが地面に崩れ落ちたのだから。

 

『こちらG11。ジャガーを撃破。迫撃砲は発射されてないよ』

「了解。こちらでも発射されていないことを確認したわ。敵影もなさそうね」

『……うん、見える範囲にはいない』

「全員、警戒態勢はそのまま。私達はいったん最後尾に戻るわ」

 

 私の言葉を聞いて、9がバイクを減速させる。

 輸送車両に追い抜かれていきながら、私はマガジンを交換する。まだ残りの弾には余裕があるけれど、無駄遣いできるほどでもない。これ以上の戦闘行動はないのが望ましいところだ。

 そうして落ち着きを取り戻した私の電脳を、再びシーラとのやり取りの記憶が支配する。

 私は、何か間違ったことを言ってしまったんだろうか。明らかに体調が悪そうなシーラを見て、心配になった。

 焦点が合っているかも怪しい目つきに、紅潮した頬、乱れそうになるのを必死で抑えているかのような息。

 あれで大丈夫だと言われて信じる者が、いったいどれほどいるというのか。

 それに、あんなになるまで彼女が無理をする必要はないはずだ。そこまで今の状況は切羽詰まったものではない。万が一があったとしても、その万が一を書類から見つけるくらいは私達にだって出来るはずだ。

 だから、怒った。なんで無茶をしたんだって。シーラに何かがあったら、私は一体どうしたらいいか分からない。彼女のいない未来が、もう考えられない。

 けれど、そんな私の想いは伝わらなかったみたいで。帰ってきた答えは自分の心配よりも仕事をこなすことを優先しろっていう感じの言葉で。

 私なんて、別にいなくたって大丈夫なんだと言われたみたいだった。

 シーラはそんなことは言わない。分かっている。それに、彼女は体調を崩していて正常な判断を下せていなかっただろう。

 ……待って。正常な判断を下せないってことは、本音ってこと……?

 気づいちゃいけないことだったかもしれない。

 左手の薬指が締め付けられるように痛んだ気がした。喉も何かに締め付けられるように苦しくて、呼吸が上手くできない。

 

『ちょ、45姉? 大丈夫?』

 

 9の声がやけに遠く聞こえる。胸が苦しい。気持ちが悪い。

 でもダメだ、ここでこんな状態を続けるわけにはいかない。切り替えろ。まだ護衛は終わっていないんだから。

 そう念じると、ちょっとだけ呼吸が楽になった。

 

「……大丈夫よ、9。敵影はある?」

『ないけど……ねえ、ホントに……』

「大丈夫だってば。ほら、任務に集中」

 

 鉄血の支配地域のそばを抜けるまではまだ距離がある。こんなところで気を抜いて任務に失敗しました、だなんて笑い話にもなりゃしない。

 気を引き締めろ、と自分に言い聞かせて思考を戦闘中のソレに近づけていく。

 余計なことは一旦電脳の中心から消えて、任務のことだけを考えられるようになってくる。

 よし、これで――

 

『ヤバッ……! 45、10時の方向にスナイ』

 

 G11が言い切るより早く、バイクに銃弾が当たる音がした。

 バイクが揺れる。9の慌てた声とG11のものらしき銃声が聞こえた。

 そして、バイクの前輪がおかしくなったのかつんのめった

 直後、私の体が宙に放り出される。上下逆さまになった景色がスローモーションに見える。緊急事態を察知して、一時的に電脳のリミッターが外れたためだろう。

 そんなのんきなことを考えながら、私は撃たれた方向へ銃口を向ける。

 イェーガーが五人ほど。さらにプラウラーが六体ほどそのうち三体は、既にG11に撃ち抜かれた後だった。

 

『45姉ッ!』

 

 私が放り出されたことに気づいた9が悲鳴のような声で私を呼ぶ。

 それを無視して、こちらに銃口を向けるプラウラーに向かって引き金を引く。今度は狙う余裕なんてない。弾倉が空っぽになるまで引き金は引きっぱなしだ。

 銃口から飛び出した弾丸が、奴らを撃ち抜いたかどうかを確認する前に、私は背中から地面に叩きつけられる。

 

「がはっ!?」

 

 強烈な衝撃が背中から胸へと伝わり、体内の空気を強制的に吐き出させた。

 けれど、それだけでは終わらない。バイクに乗っていたのだから慣性が働いている私の体は、そのまま地面の上を無様に転がった。

 受け身も何もとれてない。電脳がシェイクされ、体に伝わる衝撃のせいかエラーがあちこちから吐き出される。

 そして、私の意識はブラックアウトした。

 




戦闘描写難しい……

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