女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん【完結】   作:笹の船

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M14と指揮官が街で遊ぶお話。


私にどうかご褒美を

 病み上がりの書類地獄をみんなで片づけた日から数日後、私は基地の最寄り街に遊びに来ていた。

 

「~♪」

 

 今日、私の隣にいるのはUMP45ではなく、ご機嫌そうに鼻歌を歌っているM14だ。

 一番頑張った子に何でもご褒美をあげる。

 その一言で気合の入った人形達が、我こそはと書類仕事に勤しんでいるのをハンコを押しながら眺めていた結果、MVPには第一部隊隊長を務めるM14を選ぶことを決めた。

 

「いやあ、まさか本当に私が選ばれるとは思わなかったなー♪」

「45を選ぶと思ってた?」

「まあ、仕事の量とかも一番多かったし……」

 

 でも、選ばれてよかった! とM14はヒマワリみたいな笑顔を浮かべた。

 そんな笑顔を見て、思わずこちらの頬も緩む。

 M14とは私が指揮官になってからの付き合いだ。

 諸事情あって着任直後から私の補佐をしていた45と打ち解けられるようになるまでは、何度もM14に助けられてきた。

 この明るいヒマワリのような笑顔と良く響く明るい声が、当時のささくれ立っていた私の心を少しずつ癒していったのは間違いない。

 

「なんだか本当に久しぶりですね。こうして二人で街に出てくるのって」

「……うん」

 

 私が45に対して変な対抗心というか、執着をし始めてからは余りM14とプライベートを共にすることはなくなった。

 聡いM14は、私の変化を感じ取ってくれたのか以前ほど絡んでくることもなく、私のサポートや部隊の統制なんかを積極的に行ってくれていた記憶がある。

 45と誓約をしてからは、もっと彼女と絡む時間は減ってしまっていた。

 そう考えると、この子には本当に苦労をかけっぱなしだったなあ……。

 私が手前勝手なことで悩んでいる時も、M14はいつも笑って『大丈夫』って言ってくれてたっけ。

 

「ねえ、M14」

「なんですか、指揮官?」

「いつもありがとね」

「どうしたんですか、突然。……あ、もしかしてご褒美のボーナスですか!?」

 

 再び私の前でヒマワリが咲く。

 湿っぽいことを考えるのは今は止めよう。せっかく咲いたんだし、彼女にはそのままいてもらわないと。

 

「そう。今日は大盤振る舞いよ」

「やったー! じゃあじゃあ、今日は私が行きたいところ行っていいですか!?」

「勿論。どこへでもお供しますわよ」

 

 ちょっと気取ってM14の手を取れば、彼女は一瞬驚いたような表情になった。けれど次の瞬間には満面の笑みを浮かべて、今度は私の手を引いて歩き出す。……意外と力強いな!?

 

「ちょ、ちょっとお嬢さん!? もう少しゆっくり歩いてくれると私嬉しいな?」

「またまたー。このくらいならついて来れるでしょ、指揮官!」

「いや、ついていけるけど折角だからもっとゆっくり……」

「時間は有限ですよー! ほらほら、早く動いていろんなところ回りましょうよー!」

 

 訂正。気取ってM14を『お嬢さん』なんて読んでみたけど、これじゃ『おてんば娘』だ。

 まあ、このくらい元気がある方がM14らしくていいのかも。

 

「んふふー♪」

 

 まあM14が楽しそうだからいっか。

 

 それからはもうノンストップの弾丸スケジュールだ。

「指揮官! 射的の屋台出てますよ! 一回遊んでいいですか!?」

「お、いいわね。勝負する?」

「おー? 私に勝負を仕掛けます? 私を相手に挑んじゃいます?」

「煽るじゃない。その挑発乗ったわよ!」

「じゃ負けた方は勝った方のお代をおごるってことで!」

 屋台の射的で成績を競ったり。

 

「わぁ~! 私、一度この特盛パフェ食べてみたかったんです!」

「嘘でしょ……私達の顔より大きいんだけど……」

「あ、指揮官の分はありませんよ? 私一人で食べますから」

「え、あ、うん……食べきれるの……?」

「余裕ですよ!」

 街で評判のスイーツスポットで甘いモノを楽しんだり。

 

「この映画見ましょ! コレ!」

「えぇ……アナタこれ怖い奴だけど」

「だからいいんじゃないですか~♪ ほらほら、いきましょう!」

 

「きゃぁあ!?」

「うぐっ……! M14、腕が折れる……! 腕に抱き着く力緩めて……!」

 

「しぎがん~……!」

「だから言ったじゃないの。ほら、ハンカチ」

 映画館で一緒に怖い映画を見て、怖がるM14に抱き着かれて腕が折れるかと思ったり。

 

 けれど楽しい時間はあっという間に終わってしまうものだ。

 気が付いた時には太陽は西に傾いており、辺りは西日でオレンジ色に染まっていた。

 

「あ、もうこんな時間……指揮官、基地に帰りましょうか」

「そうね。そろそろ帰らないと夕飯に間に合わなくなりそう」

「あ~あ。もっと遊びたかったな」

 

 遊び尽くしている時のものとはうって変わって、M14は寂しそうな笑顔を浮かべた。

 その横顔が夕日に照らされて、余計に彼女の寂しさを際立たせているように見えた。

 

「また来ようよ。二人きり、は難しいかもしれないけどさ」

 

 そんな私の言葉に、けれどM14は答えない。

 

「……ねえ、指揮官」

「ん? どうしたの」

 

 私を呼んで、M14は歩みを止めた。

 どうしたのかと思って振り返る。

 そこには、今にも泣きそうなのを必死で堪えるみたいに唇を噛むM14の姿があった。

 

「M14、だいじょう……わっ!?」

 

 一体どうしたのかと聞く前に、唐突にM14が私に抱き着いてきた。ぎゅっと私を抱きしめる彼女の腕の力は、ほんの少し痛みを感じるほどに強い。まるで、別れを惜しんで駄々をこねる子供が、力一杯相手を抱きしめている……そんな印象を受けた。

 

「ちょ……どうしたの」

 

 辛うじて動かせる腕を、M14の頭へ持って行って優しく彼女の頭を撫でる。

 M14は答えることなく、しばらくの間私を抱きしめたままだった。私も問いかけに答えない彼女から無理に何かを聞き出すようなことはせず、ただただ優しく彼女の頭を撫でる。

 それから少し経った頃、ようやくM14の腕の力が緩んで、私は解放された。

 

「ごめんなさい指揮官。ちょっと……帰りたくなくて」

 

 そう言って笑った彼女の顔は、けれどもどこか泣きそうなもので。

 

「M14……」

「また、来ればいいんですもんね! さあ、帰りましょう! 明日もお仕事ですからね!」

 

 いつものように元気な声でそう言って、帰り道を歩き出した彼女の後姿は、元気な声と裏腹に弱々しく見えた。

 とっさのことだった。歩き出したM14の手をつかむ。

 

「指揮官……?」

 

 驚いたように目を丸くするM14を、真っすぐと見つめる。

 

「M14。ちゃんと、言って。この間私に抱え込むなって、アナタも言っていたでしょう」

 

 私の言葉に、けれどM14は目をそらすだけで何も答えない。

 だからと言って、放っておくわけにはいかないと感じていた。いつも明るく笑っているM14が、あんなに寂しそうにしていたのを、私は初めて見たのだから。

 

「……ごめんなさい、指揮官。話したく……ないです」

 

 だけど、帰って来たのは拒絶の言葉だった。

 無理にでも聞き出そうか、と思った。それくらい、M14の顔は今にも泣きそうなものになっていたのだから。

 

「ねぇ、M14……」

「指揮官。最後にもう一つ、ご褒美ください」

 

 私の言葉を遮るように、M14が言葉を紡ぐ。最後のご褒美……何が欲しいんだろう。

 

「……言ってみて」

 

 ご褒美が欲しいという彼女の言葉に頷いて、私はそのご褒美が何なのか先を促した。

 本当に言っていいのかな。そんなM14の心の声が聞こえてきそうなほど、彼女は視線を泳がせたり、両手を握り合わせたりする。

 そんな彼女のことを真っすぐと見つめて、いつでも言っていいよ、と示すように私は自然体を心がけて、ただ待つ。

 やがて決心がついたのか、M14は小さく息を吐いてから私の方を見た。

 

「約束してくれませんか? 月に一回……いえ、一年に一回でいいんです。……今日みたいに、私と二人きりで、こうして遊んでください」

「M14……アナタ……」

「今日みたいに、私と遊んで……その間は、私のことだけ考えていてくれませんか? ワガママだってことは分かってます。贅沢言っているってことだって分かってます。……でも、どうか一年に一回でいいんです。そんな日を、私にくれませんか?」

 

 今にも泣きそうな顔で、けれど気丈にも笑顔を浮かべるM14の姿は余りにも弱々しくて。

 そんなお願いを言われて、それがどういうことなのかを察せないほど私もバカじゃない。

 そうか。そうだったのか。ずっとその想いを抱えて、それでも彼女は私の背中を押してくれていたってことなのか。

 でも、その想いには答えられない。それを分かっているからこそ、M14は『年に一回でいい』なんていったんだろう。

 であれば、私が返すべき答えはきっと一つだ。

 

「約束するよ」

 

 直接ではないにしろ、彼女は私に抱えたものを教えてくれた。であれば、それに応える以外の選択肢はない。

 もしかしたら、私の対応は間違いなのかもしれない。残酷な偽善なのかもしれない。

 それでも。そうすることで彼女が笑顔でいられるのなら。私は応えたいと思う。

 

「指揮官……ありがとうございます」

 

 夕日に照らされたM14の横顔に、一筋の光るものが見えた。

 そっと彼女の隣に並び立って、彼女の手を取る。

 

「さあ、帰るまでがお出かけだもんね。残りの時間も、めいっぱい楽しもう?」

「……はい!」

 

 日が沈む。空が闇色に染まっていく。

 けれど、そんな空に一番星が輝いていた。

 どうかあの星が、彼女にとっての道しるべになってくれますように。そんな身勝手な願いを、胸の内に抱きながら、私達は基地への道をゆっくりと並んで歩いた。

 




サブヒロインが出来たかもしれない。
M14ちゃん、実はドルフロを初めて一番最初に好きになった子でした。
今は45姉推しなんですが、それでも次点に食いつくくらいには好きです。
健気可愛い子だと思います。


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