女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん【完結】 作:笹の船
すまんな、例によってもう少し続きそうや。
結論から言うとD08地区の部隊の作戦遂行は見事な手際という言葉がぴったりだった。若干スプラッタなシーンもあったけれど、まあそこは良くも悪くも人形らしく処理をしてくれたものだ。
約一名、鉄血ハイエンドモデルが胃の中のものを戻していたようだけど……。
ちなみにフュンフが貰いゲロをしていた。大丈夫かな……。
まあ、第四部隊はスプリングフィールド以外対人撃滅作戦への参加は初めてだし、仕方がないかもなあ。
そんなこんなで今、私は基地の入口近くで彼女達の到着を待っている。勿論隣には愛しい私のお姫様ことUMP45も一緒だ。
待っている間、自然と話題に上がったのはD08地区の部隊の戦闘の様子だ。
「しかしイロモノ基地かと思ったら案外手慣れていたわね。そう思わない、45」
「そうね。D08地区もそれなりに対人戦の場数は踏んでると見たわ」
「グレネードランチャーによる入口の発破で、侵入路の確保と罠の破壊を同時に行い、直後にスモークを焚いて視界を塞ぐ。その後一気に突入し制圧射撃」
「相手も多少は手慣れていたから即席のバリケードを作っていたみたいだけど、再装填の終わったグレネードでバリケードもろとも吹っ飛ばす。行動不能にした後は追撃として脳天に鉛玉のプレゼント、だったわね」
「さらに地下室の後続も、飛び出したところを狙って焼夷手榴弾でこんがり上手にBBQしてたわね。見事な手際だったわ。良い意味で人形らしい正確で無慈悲な作成遂行っぷりだった」
ただ、私はそう思っても対人戦の経験がない第四部隊の大半のメンバーには少々刺激が強すぎたらしい。
ウェルロッドとSPAS(この子はちょっと意外だった)は今回の任務がこういうものであるとキッチリ割り切っていたみたいで特にリアクションは無かった。
けれど、スコーピオンはドン引きしたような声を出していたし、フュンフに至っては悲鳴と榴弾によって肉がはじけ飛ぶ音、そして外から廃屋の様子を観察していたからこそ見えてしまったであろう凄惨な光景を前に、メンタルモデルに大きな負担がかかってしまったようだ。
まさかD08の部隊員の中にも同じような子がいるとは思わなかったけど……。
ていうか、まさか鉄血のハイエンドモデルを鹵獲しているとは、中々隅に置けないじゃない、D08地区。
作戦遂行の様子からしても、あそこの指揮官は打算で動かないお人好し、というだけで実務能力はかなり高いのかもしれない。
閑話休題。
「まあ派手な片道切符の押し売りセールスをしてきたから、あちらさん相当血みどろみたいよ。大浴場は貸し切りにしてあげないとね」
「安心してシーラ。もう手配済み」
「流石45。頼りになるわね」
相変わらずの仕事の早さににっこりしながら、隣を見やれば当然だと言わんばかりに小さく肩をすくめる45の姿が。
なんだかちょっとイタズラをしたい気分になって、45の唇に自分の唇を重ねる。
「んむぅ!? ん、んんっ!」
「ん……んれろ……」
45の口の中に舌を入れる、いわゆるディープキスだ。45は驚いて抵抗してくるけれど、その力なんて子供の全力のパンチよりも弱々しいものだ。抵抗のうちにも入らない。
私の舌と45の舌が絡み合う。お互いの口の中の温かさと、熱を持った吐息が二人の間に充満して頭の奥がドロドロに溶けていくような錯覚を覚える。
と、ちょうどそこで軍用車両のエンジン音が遠くから響いてきた。
熱に浮かされた頭が、急速冷却されて今の自分達の姿がどういうものかを思い出させた。
思わず反射的に45から離れて、意味もなく服にゴミがついてないかとか、襟が裏返ってないかとか、髪が乱れていないかを確認する。
「シーラ、後で覚えてなさい……」
「う……」
45の恨めしそうな声に声を詰まらせる。正直やりすぎた。ていうかちょっとブレーキが利かなくなってた。……最近、なんだか我慢が利かない気がするな。大丈夫かな、私。
そうこうしているうちに、D08地区の人形達を乗せた車両が基地の入口の前に停車した。
……うーん。明るいところで見ると端正な顔立ちをした美少女たちが血まみれの格好で降りてくるっていうのは、中々にサイコホラー感があるなあ。
とにかく挨拶はしっかりしないとね。礼儀は大事っておばあちゃんに叩きこまれたしさ。
「ようこそR06地区へ。指揮官のシーラ=コリンズよ」
「この度は受け入れありがとうございます。D08地区のアルファ部隊とデルタ部隊からUMP姉妹の計7名です」
血みどろの416が私に敬礼するのに合わせて、他のD08地区の人形達も敬礼する。
それに返礼するため、私も敬礼をする。勿論副官の45も一緒……あれ?
「ッ?! ッッッ!?」
隣で45が声にならない悲鳴のようなものを上げている。一体どうしたのかと、降りてきた人形達を改めて見てみた。
えーっと、先頭に416、その隣に416をちょっとちっちゃくした……ツーサイドアップのデカメロンちゃん。これがタカマチ指揮官から送られてきた情報に乗っていた例のイレギュラー、HK417か。
で、G36CにUzi、それと鉄血ハイエンドモデルのデストロイヤーを鹵獲、I.O.P仕様にチューンしたヴィオラ……だったかな。胸元にG&Kのエンブレムもある。
その後ろに控えているのがUMP9とUMP45。……ん? んん?
「あはは……まあ、そうなりますよね」
苦笑いをする417が向こうのUMP45を見やった。
見られたUMP45は得意げにふふん、と胸を張る。
そこには確かに、二つの大きな膨らみがあった。そう。たわわな果実がそこには実っていた!
思わず隣にいるよんごーの胸に視線が行った。
拳が飛んできたので、上半身をそらしつつ受け止める。……うん、慎ましい。
「立ったまま死ぬ? 立ったまま死にたいシーラ?」
「ほらほら~♪ 女の嫉妬は醜いわよ、R06の私♪」
「ッ! いい度胸してるじゃない! アンタマジで脳天に風穴……きゃぁっ!?」
「お客さん相手に銃を抜かない」
怒りと恥辱のあまりに顔を真っ赤にしたよんごーがサイドアームのMk23を引き抜こうとしたので、足払いをかけて転ばせる。
その際に引き抜かれたMk23もよんごーの手からかすめ取っておいた。
「ごめんなさいね。UMP45って皆その……まあ、そういうものだと思ってたから、ちょっとびっくりしちゃって」
「気にしなくていいわ。今でこそコイツこんなだけど、ちょっと前まではそっちと似たようなもんだったから」
「ちょっと、それどういうこと!?」
よんごーが上半身を起こしながら鬼気迫る勢いで向こうの416の言葉に食いついた。
私も気になるところではあるけれど、まず先に彼女達にはやってもらわなければならないことがある。
「立ち話もあれだし、アナタ達も早くお風呂に入りたいでしょう? 準備は出来てるから、案内するわね」
『ヤッター!』
お風呂と聞いた瞬間に、全員の表情がキラキラ輝きだした。まあ、ゴミ溜めの連中の返り血なんて化粧としては最悪の部類だ。そんなもの早く落としたいだろう。
で、D08のメンバーを風呂に案内して私達は先に退室しようかと思った時、唐突によんごーが私の袖を引っ張った。
「ねぇ、シーラ。やっぱり私達も一緒に入るべきだと思うの」
「は?」
よんごーの血迷った発言に私は思わず素っ頓狂な声を上げる。辺りを見回せば、D08のメンバーはどこか生暖かいような視線をよんごーに送っていた。
当のよんごーの視線はUMP45の胸に完全に釘付けになっている。……そりゃあ皆が生暖かい目をするわけだよ。
「よんごー。別に彼女達が変なことをするわけじゃ……」
「いいえ。そうじゃない。ここのお風呂は初めてなんだから、使い方とか教える人がいた方がいいでしょう。それに……」
よんごーが私の耳元に口を寄せ、小さな声でささやいた。
「HK417にI.O.P仕様にチューンされているとはいえ鉄血ハイエンドモデルを運用する基地よ。大きなイレギュラーを抱え込んだ基地のこと、少しでも知っておいた方がいいんじゃない」
「……分かった。でも暴れないでよね」
まあ、よんごーのいうことも最もだ。ここで情報を得る、あるいは強固なパイプを作っておけば後々何かしら役に立つかもしれない。
風呂場でそれを作る必要性はまるでないと思うのだけれど……まあ、愛しい私のお姫様の提案だ。乗っかってあげるのが旦那の務めだろう。……私女だけど。
「って、訳なんだけどD08の皆は私達が一緒に入っても大丈夫?」
「私はオッケーかな。お姉ちゃんは?」
「騒がないのなら別に問題ないわ」
「私も問題ありませんわ」
「別に。好きにすればいいと思う」
「私も構わない。ただ、私には余り触れないでほしい」
「私もオッケーだよ! 45姉が二人もいるっていうのはなんか不思議な気分だけどね」
「んふふ。いいんじゃな~い? 私は歓迎するけど」
ギリッ、と奥歯を噛み締めるような音が隣から聞こえた。
うーん、大丈夫だろうかコレ。
よんごー、このメンツと一緒にお風呂入ったら辛いだけじゃないのかな……。
「絶対化けの皮剥いでやる……!」
「よんごー、やっぱりやめておいた方が」
「問題ないわよ!」
……絶対ダメだと思う。
「はぁ~……極楽極楽ぅ……」
シャワーを浴び、全身をくまなく清めた417がゆっくりと肩まで湯船に浸かる。
これで、湯船に浸かっているのは私たち二人にD08の七人を加えた九人が入っていることになった。ちょっと狭いけど、キツキツというわけでもない。
ここのお風呂は十人くらいまでなら入れる大きさだから、私たち二人が入ってもスペースに余裕はある。
大きめに作っといて本当に良かった……。
……しかし、それにしてもだな。
「すっごい……皆浮いてるわね……」
「あはは……」
「チッ!」
D08のメンバー誰もかれも皆がでっかいものをこしらえてるわけだから、湯船に浸かるとまあ浮くわ浮くわ。ここまで来るともはや嫉妬とかムカつきを通り越して壮観である。
私もそれなりにはあるけど、浮くほどかと言われると微妙だ。よんごー? 言うに及ばず。
裏拳が飛んできたので、とっさに両手でガードする。危ない、鼻先1mmくらいだったぞ。
「くっ……なんで分かるのよ!」
「殺気が駄々漏れだし、ワンパターンだからね」
それにしても本当に大きい。同じ型の人形は416を始めとして何人かいるけど、全員がウチの子達よりも大きいんじゃないだろうか。特にヴィオラと417。
私と同じくらいの身長のヴィオラはともかく、417はかなり身長が小さい。下手したらS09の指揮官のユノちゃんよりも小さいんじゃないかな。
で、このメンバーの中で上から数えた方がいい大きさのものを持っているわけで。
……犯罪臭がトンデモナイわけなんだけど、これ設計した奴何考えてたんだろう。
隣を見ればなくはない、程度の膨らみを持ったよんごーがいる。
もはや私に殴りかかる気力もないようで、その瞳からはハイライトが消え失せていた。
だからやめとけって言ったのに。
「これは夢……これは夢……これは夢……」
もはや現実を受け止める気にもならなくなったらしい。よんごーが呪詛を唱えながらUMP45の豊かな二つの山を凝視している。
「まあ、そっちの私の気持ちもわかるわよ。嫌になるわよね~、周りがでっかいのばっかりだとさ」
同情するようなセリフを吐いてはいるけれど、その表情はこれ以上ないくらいのドヤ顔だ。
でも嫌味ったらしさはあんまり感じない。まあ、こんなメンツの周りで自分だけ……っていうのはそれはそれで一種のコンプレックスを感じて辛かっただろうなあ。
「45姉、酷かったよねー。私なんか散々もみくちゃにされたもん……」
ほんのちょっぴり遠い目をしてそう語ったのは417だ。まあ、その見てくれでそんなものをぶら下げていたらUMP45的には色々と思うところがあっただろう。
ん……416も同じようにちょっと遠い目してるな。Uziもか。G36Cは苦笑してて、ヴィオラは……無表情だ。
「あー……えっと、ヴィオラ……だっけ? 大丈夫?」
「え……あ、ああ。大丈夫だ。ちょっと、嫌なことを思い出しただけだから……」
そう言って俯き加減に笑うヴィオラの目は、少し淀んでいた。
……知っている。私は、あの目を知っている。知らないわけがない。何度鏡越しにあんな目を見てきたことか。
「うりゃ!」
「わひゃぁ!?」
唐突に417が驚きと甘さを伴った悲鳴を上げる。
何事かと視線をそっちに向けてみれば……あぁ。うん。
UMP45が417の胸を揉みしだいていた。
「ほらほら、辛気くさい空気なんてダメダメ! ってことで、うりゃぁ!」
「ひゃぁあ!?」
あ、今度はUMP9がヴィオラの胸を。うーん、こういうスキンシップは向こうじゃ普通なのかな。うちではあんまり見かけないけど。
「うぁっ!?」
そんなことを考えていたら、私も背後から胸を揉まれた。そんなことをしてくるのは、この場において一人しかいない。
「よんごぉ……ッ!?」
下から持ち上げる様に優しく、けれどもゆっくりと円を描くように揉みしだかれる。
「ふにゃぁ……! ちょ、45姉……やめっ……あっ……!」
「な、9……やめ……ろ……! んんっ……!」
あー、ちょっと! こんなところで人がいっぱいいる中でピンク色な空間を作るな! よんごーは私の胸を……んんっ!?
「ちょ、よんごっ……首筋……ダメ……舐めないで……!」
ヤバイヤバイ! ソレされたら私スイッチ入っちゃう……! お客の前でそんな醜態さらすのだけは……!
「やめ……なさいっての!」
最後の力を振り絞って、私は頭を湯船ギリギリまで下げて、勢いよくそのまま後ろに振り上げる。
「ゴガッ!?」
後頭部がよんごーの顔に当たる鈍い感覚と、よんごーのくぐもった悲鳴が聞こえ、同時に拘束が解ける。
「ハァッ……ハァッ……よんごー! 先上がるわよ!」
「うぐぐぐ……シーラ……本気で頭突きは無いって……」
鼻を押さえてこちらを睨みつけるよんごーを無視して、私は立ち上がる。とにかく、早くこの場を離れて落ち着かないと――
そう思って脱衣所に向かおうと湯船から風呂場の床に足をつけた瞬間、バランスを崩した。
しまった、胸を揉まれた余韻が残ってて腰に力が入りきらないのを、完全に忘れてた。
崩れた体勢を立て直せない――
後頭部に衝撃が走る。視界一杯に星が散って、直後私の意識は暗転した。
カッコ悪いなあ……。
D08のメンバーとのかしましい時間はもうちょっと続くんじゃよ!
何話続くかは知らない(無計画
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