女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん【完結】   作:笹の船

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シーラさん武器庫に往訪の巻


★共同模擬演習開始

 武器庫へと往訪する日が来た。

 今日、私と一緒に武器庫へ行くメンバーは私含めて全部で6人だ。

 私、M14、スプリング、スコーピオン、一〇〇式、トンプソンとなった。

 選定基準はあんまり考えたわけじゃない。ただ、404とARの二つの正体に関してはグリフィン内でもかなり特殊な立場だから、念の為他社の接触は避けることにした。

 何か45にお土産を買って帰らないとなあ、なんて考えていると私達の乗った車が武器庫へと到着した。

 当然のごとく車を止められたので、私が降りていってIDカードを提示する。これでグリフィン所属であることは証明できるはずだ。

 

「確認しました。ようこそ武器庫へ。シーラ=コリンズ指揮官」

「今日はよろしくお願いします」

 

 警備兵にこんなことを言っても仕方がないような気もするけど、挨拶は大事だ。おばあちゃんがそう言ってた。

 ゲートを開けてくれた警備兵に会釈をしながら、車に戻る。

 その後は中の職員に誘導されながら駐車場へと連れて行ってもらった。

 

 車から降りた途端、私達の耳に爆発音が聞こえてきた。

 

「ッ!? 何ッ!?」

 

 スコーピオンが慌てた声を出す。

 私を含めた他のメンバーも、声や態度にこそ出さないけれど即座に戦闘態勢を取る。

 まさかとは思うけど、襲撃された……? このタイミングで?

 油断なくその場であたりを見回していると、再度爆発音が響いた。

 が、私は同時に肩の力が抜けた。爆発音を出している人間(・・)が見えたからだ。

 

「……皆、大丈夫よ。あれ、人間が出してる音だから」

『は?』

 

 何人かの子達が素っ頓狂な声を上げる。気持ちはわかるぞ。私も同じ気持ちだ。

 私がスッと指を指すと、皆もソッチへと視線を投げて、そしてそれぞれの反応を示した。

 

「ええ……何、あれ」

「何というか、規格外だな……」

「アレが……人間?」

「あらあら……」

「凄いですねぇ。あ、こっちに気づいたみたいですよ」

 

 私達の視線の先で爆発音を出していたのは、筋骨隆々の男性と、同じく筋骨隆々な女性兵士だ。二人とも見覚えがある。

 と言うのも、武器庫は雑誌で紹介されていたのだ。『突撃!あなたの街のPMC!~PMC“武器庫”編~』だったか。結構大規模な出版社から発行されていたものだと記憶してる。

 社外向けの雑誌で会社紹介とはなかなか勇気あることをするなとは思った。下手したら外部から襲撃でもかけられかねないだろうに。

 で、話を戻すと男の方はその雑誌の表紙でキメ顔をしていたここの総合責任者……いわゆる社長だ。女性の方は確か『(つるぎ)部隊』と呼ばれる武器庫で最強と呼ばれる部隊の隊長だ。

 あ、二人の後ろに小柄な男が……いや、社長とクレイモアのガタイが良すぎるから相対的にそう見えるだけかな?

 ともかく、二人についてくるように黒髪黒瞳の男性が二人をたしなめるように大声を出して一緒にこちらに歩いてきていた。

 

「だから! 客が来るっつってんだから自重しろって言ってんだろ!」

「いいじゃないかジャベリン。いいパフォーマンスになるだろうし」

「向こうのあの顔見てソレが言えんのか!?」

 

 ジャベリンと呼ばれた男性が頭を抱えている。彼も確か雑誌に載っていたな。確か『槍部隊』の隊長を務める人物だったはずだ。

 彼は苦労人の気質がありそうな気がする。まあ、周りがぶっ飛んでると相対的にまともな奴が気を遣うことになるから、気持ちはわかる。私もそういう経験あるし。

 なんてことを考えているうちに、武器庫の三人が私達の目の前にやってきていた。

 

「ようこそ武器庫へ。総合責任者のジョン・マーカスだ」

「わざわざお出迎えありがとうございます。グリフィン管理R06地区前線基地のシーラ=コリンズです」

「そんなに固くなるな。もっと楽で構わんぞ。スイートキャンディ」

 

 マーカス社長が右手を差しだして、握手を求めてきた。

 一瞬頬が引きつってしまったのは許してほしい。相手に悪意がないと分かってても、やはり男に触れるというのはまだ勇気がいる。

 それに、古い名前で呼ばれたことに対しての引きつりでもある。嫌いって訳じゃないけど、少なくとも部下であるM14達の前で呼ばれたい名前ではない。

 そんな私に気づいたのか、マーカス社長はすぐに手を引っ込めた。

 

「いや済まない。お前のことはクルーガーから聞いていたんだが、初対面の奴と挨拶するときの癖でな。安心してくれ。少なくとも、ウチの野郎共にそういうコトをする奴はいない」

「……お気遣い感謝するわ。お会いできて光栄よ討伐者(スレイヤー)

 

 討伐者(スレイヤー)。それがマーカス社長が正規軍にいた頃のコードネームだ。私が正規軍に入った時には既に彼は退役していたけれど、その武勇伝は伝説として語り継がれていた。

 そんな彼であれば、クルーガーの奴が信頼して私のことを教えていてもおかしくない。教えるんなら私に一言断りくらい入れろヒゲゴリラめ。今度会ったらブラジリアンワックスを顔面にぶっかけてやる。

 しかし、そうなると私のことは結構知られているんだろうか。

 そんな私の疑問に答える様に、クレイモア隊長が口を開いた。

 

「噂は前から聞いてたよ。色々大変だったみたいだね、スイートキャンディ」

「……ええ、まあ。おかげさまで今はよろしくやれてますよ」

 

 これは私の過去も大体知られていると見た方がいいのかな。余り知られたいものじゃないんだけど……まあ提携先とはいえ外部の軍人が来るわけだし、調べてられていてもおかしくはない。

 基本的に正規軍の時の情報はちょっとやそっとで手に入らないようにしてあるはずだし、何よりクルーガーが色々手回しをしていたはずだから残っていないはずだけど……。

 そんなことを考えている私の肩に、そっと誰かの手が置かれた。見ればクレイモアが私の方を見て微笑んでいる。

 

「社長も言っていたけど、堅苦しい話し方はいらない。それに、提携先だからとか気にしなくてもいい。後補足するなら、お前について知ってるのは私とボスだけだ。安心してくれ」

 

 まあ、それなら大丈夫か。マーカス社長……ああ、もう。スレイヤーのオッサンでいいや。それとクレイモアだけが私の過去について知っているだけというなら問題なし、かな。

 

「クレイモア。ここで立ち話するのもいいが、彼女達をまずは案内するぞ」

「了解ボス。お前達、着いてきな!」

 

 言うだけ言ってスレイヤーのオッサンとクレイモアは踵を返してそそくさと建物のある方へと歩き出していった。

 

「最初からそうやってくれればいいんだがな……」

 

 後に取り残されたジャベリンがぼそりとぼやく。……苦労、してるんだろうなあ。

 

 

 その後は一号館と呼ばれる建物へ案内され、レクリエーションルームで今日の予定についての確認とお互いの自己紹介をした。

 今日私達の案内と演習の相手をしてくれるのは、ジャベリン率いる槍部隊の面々だったらしい。ソレで最初代表でジャベリンがいたのか。

 駐車場でスレイヤーのオッサンとクレイモアがやり合っていたのは、一応歓迎の意を込めたパフォーマンスとのことらしい。……私達がPMCじゃなきゃ逃げるわよ、あんなの。

 ちなみにそれに対して、ジャベリンがくだらない理由による喧嘩だろうと指摘したら、プロレス技をかけられていた。言わなきゃいいのに。

 少なくとも、ジャベリンがどういうタイプの人間かはなんとなくわかった気がする。

 真面目過ぎて貧乏くじ引かされるタイプね。ついでに言うなら一言余計なことを言ってシバかれるタイプ。将来胃薬と育毛剤のお世話になりそうな気がする。

 

「指揮官、中々失礼なこと言いますね」

 

 苦笑いしながらそういったのはM14だ。あれ、声に出てたかな?

 

「小声ですけどね。聞こえたら大変ですよ。……でも確かにあれは、ね」

 

 そう言ってM14もクスクスと笑い出した。だって……ねぇ?

 

「いだだだ! これから模擬戦だって言ってんのに! 社長、やめろって!」

「なに。この位昔のシゴキに比べたら大したことないだろう?」

「ちっくしょう! 今に見てろよクソゴリラ!」

「その意気だ。ほら、もうちょい強く行くぞ」

「だ~か~ら! 止めろって言ってんだろあ”あ”あ”あ”!」

 

 ……仲が良さそうで何よりだ。

 

 

 

 それから少しして、私達は武器庫の訓練所へと向かっていた。

 

「酷い目に遭った……」

「お疲れ様、とだけ言っておくわ」

 

 私達を訓練所に案内しながらジャベリンが首をさする。

 正直8割くらい自業自得感あるから、あまり同情はしない。

 

「しかし、どうしてまた近接戦闘を? それも、コリンズ指揮官まで一緒にやるなんて」

 

 ふと思いついたように、ジャベリンがこちらを向きながらそんな問いかけをしてきた。

 まあ、彼の疑問も分かる。確かに指揮官は直接戦闘をするわけじゃないから、最低限の護身術だけ持っていればいい。

 でも、私はそれじゃあ足りないんだ。とはいえ、それは人においそれと話すようなことでもない。

 だから、それっぽく誤魔化すことにした。

 

「人形に頼りっぱなしってのも性に合わないし、最近ちょっと鍛えなきゃなって思ってて」

「ふぅん? まあ、守られっぱなしはなんか嫌なのは分かる気がするな」

 

 ジャベリンもそんな私の心中を察してくれたのか、そこそこに流してくれた。

 気配りのできる男は嫌いじゃないわよ。まあ、だからと言って馴れ馴れしいのは嫌いだけど。

 ジャベリンに関しては、今のところはまだ信頼できる男だとは思う。油断はできないけど……。

 マーカス社長? アレはまあ……変なことはしないって信じられる点では安心できるけど、一緒にいると疲れそうだからなあ……。

 

「おし。着いたぞ」 

「これは……」

 

 格闘をメインとした模擬戦をするということで、屋内の訓練所へと連れてこられた私達だけれど、目の前に広がっているのはハイスクールの体育館が2つか3つは入りそうなくらいの広さを持つ場所だった。

 大した規模だ。グリフィンでもここまでの設備は中々用意できないだろう。

 

「大したものね。コレを私達10人ちょっとだけで貸し切っちゃうの?」

「まぁな。多分、これだけ広くないとダメな気もするし……」

「……?」

 

 どういうことだろう。私達だけだったらこのフロアの3分の1程度で十分だとは思うけど……。

 まあ、広ければそれだけ動きにも幅が出せる。デメリットはそんなにないだろうし、ありがたく使わせてもらおう。

 まずはそれぞれの実力を把握するという意味も込めて、軽めに組手をすることになった。

 槍部隊が今日は全員揃っているということで、ちょうど私達も向こうも6人だ。

 だから、くじ引きでペアを組むことにした。

 で、その結果の対戦カードはこんな感じだ。

 

 私とジャベリン

 スプリングとスピア

 M14とランス

 一〇〇式とトライデント

 スコーピオンとパイク

 トンプソンとパルチザン

 

 こんな感じだ。ちなみに対戦する順番もさっきの順だ。

 そういうわけで、私とジャベリンは今向かい合ってる。

 あ、ちなみにここに来る前に私は着替えを済ませてある。今はグリフィンの制服じゃなくて動きやすいミリタリーパンツにタンクトップだ。

 肌が露出するのは嫌だけど、それよりも動きやすさの方が大事だから上着は着なかった。

 

 それはそれとして……。なるほど確かにジャベリンは隊を率いる立場に立つだけのことはあるらしい。

 姿勢としてはリラックスして立っているだけなんだけど、隙らしい隙が見当たらない。

 無防備に近寄ったらぶっ飛ばされそうだ。んん、ちょっとこれは武者震いと言うかそんなのが来たぞ。

 私自身、自分をバトルジャンキーと思ったことはないけど、正規軍にいるときは毎日誰かと組み手してたからなあ……。こういう感じは久しぶりで、柄にもなくテンション上がってる。

 

「じゃあとりあえず、怪我しない程度に軽めにやるか」

 

 ジャベリンの何と無しに言った言葉。それに対して、けれど私はこう返した。

 

「怪我しない程度に? そんな甘っちょろいこと言ってて訓練になるの?」

「いや、こっちとしては客にケガさせるわけには……」

 

 ほぉーう? 私相手じゃ加減しないとケガさせるんじゃないかとか思ってるのかな?

 いや、実際のところは万が一を避ける為、だろうけど。

 でもそういう言い方は、ナメてると捉えられても仕方ないぞジャベリン。

 

「オッケ。じゃあ精々、怪我しない様に逃げてよね」

 

 トントン、と軽くその場で跳ねて体をほぐす。あー、ダメだ。早く始めたい。

 

「やれやれ……思ってたより血の気が多いんだな。ま、そういうのも悪くない」

「溜まってんのよ」

「言い方……」

 

 私のちょっと悪意ある言い方にジャベリンは顔をしかめながらも構えを取る。

 案外ノリがいいかもしれない。

 

「それじゃあ両者準備よろしいですか?」

 

 それじゃあいっちょやってやりますか。

 

勝って笑うか、負けて泣くか(Heven or Hell)。どっちにしても大怪我だけは避けてくださいね?」

 

 スプリングの言葉に思わず笑ってしまう。勝って笑うか、負けて泣くか(Heven or Hell)だって? そんなの、私が勝つに決まってる。

 

「では、用意……」

 

 スプリングが右手を上げる。体が戦闘用のソレに切り替わり、神経が研ぎ澄まされていく。

 それじゃあ楽しい楽しいダンスの時間だ。

 

「始めッ!」

 

 スプリングが手を振り下ろすと同時に、私とジャベリンはお互いに向かって地面を蹴った。

 さあ、遊ぼうじゃない(Let’s Rock)




ジャベリン君より社長とクレイモアさんが目立ってしまった気がする……許して。
次回戦闘シーン一杯……の予定。
結構派手にやりたいから頑張りたい。
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