女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん【完結】   作:笹の船

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戦闘描写難しい


嫌な予感

 鉄血人形、ヴェスピドの額に穴が開く様子がドローンのカメラに映し出された。

 やったのはM14だ。一体、二体と額に穴を開けられ沈黙するヴェスピドの数がどんどん増えていく。ダミーも連れて行っているから、攻撃回数もかなり多い。

 M14のメインフレームと、ダミー達がトリガーを引くたびにその数だけ鉄血人形達の頭に穴が開く。正確で素早い射撃は順調に奴らの数を減らしていた。

 

 私のいる臨時司令部が街の南、404とルポライターがいるのが街の西側エリア、そしてM14率いる第一部隊が今交戦しているのが街の北東エリアだ。

 この様子だと、一番近い鉄血の地域は北東、あるいは東側の方なんだろう。だが油断は禁物だ。M14達が交戦している部隊が囮の可能性も、まだ十分に残されている。

 M14達の戦況は有利と言って良い。

 M14を始めとして、一〇〇式、トンプソン、FAL、AK47の五人で構成された第一部隊は、全員が基地内で古参のメンバーだ。

 そんな彼女達がほぼ真正面からの戦闘をして、ヴェスピドやリッパー、プラウラー、スカウターと言った下級の鉄血人形達に後れを取ることはまずない。

 ドローンの画面内で破裂音と同時に炎が舞い上がった。AK47の焼夷手榴弾だ。固まっていたヴェスピドたちが焼かれて機能を停止させていく。

 またそのすぐそばで固まっていたプラウラー達には、FALの殺傷榴弾が連続して降り注ぎガラクタへとその姿を変えていく。

 そんな彼らの仇をと言わんばかりにイェーガーがライフルで射撃をしてくるが、それをフォースシールドを展開したトンプソン達が受け止める。

 その隙に一〇〇式が前へ飛び出していき、桜逆像を展開。突っ込んでくる一〇〇式に気づいたイェーガーが慌てて彼女に照準を合わせるも、そこをM14が狙撃して相手を沈黙させる。

 それでも潰しきれなかったイェーガーが一〇〇式に撃ち返す。一〇〇式は桜逆像でそれを受けつつ、そのまま距離を詰める。もう彼女の間合いだ。

 一〇〇式が自分の間合いにイェーガー共を収めた瞬間、ダメージに耐え切れなくなった桜逆像にひびが入って粉々に砕け散る。砕け散って空気に溶けていくそれらは、まるで桜の花びらを思い起こさせた。

 そんな桜の花びらをまとった一〇〇式がより一層鋭さの増した動きでイェーガーの射線から外れ、トリガーを引く。

 連続した銃声が辺りに響き渡り、音が続くだけイェーガーに開く穴の数が増えていく。どのイェーガーも、一〇〇式を捉える前に穴あきチーズにされていく。

 運よく一〇〇式に捉えられなかったイェーガーは、彼女を照準を合わせようとしてM14に狙撃され機能を停止させる。

 そうして一〇〇式のマガジンの中の弾が無くなり、彼女がリロードに入った時にはもう第一部隊の他に立っている奴はいなかった。

 

『敵影無し。各員、戦闘態勢はそのままに一旦私の方まで戻ってきて』

 

 通信機越しのM14の声に、それぞれの了解の意を示す声が私の方にも聞こえてきた。第一波は撃滅成功みたいだ。

 でも、これで終わりだとは思えない。奴らとこうして交戦した以上、多分後続の部隊がやってくるだろう。

 もしもルポライターが予想した通り、ターゲットが遺したウィルスソフトやそれに類するものが目的なら、最悪ハイエンドモデルが出張ってきたっておかしくない。

 油断は禁物だ。それに、いくら第一部隊がそこらの相手に負けないと言っても弾がなければただの女の子だ。

 弾薬が底をつく前に、ルポライターにはブツを見つけてもらうか、一度戻ってきてもらわないと。

 通信機に手を伸ばし、ルポライターへつなぐ。盗聴対策はしてあるけど、その辺に強いハイエンドが来たら意味ないだろうな……。

 でも、現状確認は必要だ。四の五の言ってもいられない。

 

「ルポライター? そっちの首尾はどう?」

『あら、コリンズ指揮官。寂しくなっちゃった?』

「寂しくなっちゃったから、状況を報告してくれないかしら?」

 

 軽口をたたき合いたい気分ではあるけれど、鉄血人形と第一部隊が交戦を始めた以上あまりのんびりとは出来なくなった。

 それに、あと数時間もすれば日没だ。夜戦用の装備は無いわけじゃないけど、出来れば避けたいところではある。特にルポライターは暗くなる前にモーテルに戻ってきて欲しい。

 

『戦闘音は私達にも聞こえたわ。ソレと写真館の位置は特定できた。今いる町の中心部から西に少し行ったところね』

 

 西か……第一部隊が交戦したのが北東エリアだから、奴らの拠点がそっちの方角にあるとするなら比較的安全ではありそうだけど……。

 ひとまず、もう少し第一部隊には北東から東方面を警戒してもらって問題なさそうならルポライター達の後を追わせよう。

 

「了解よ。404小隊、北東方面に展開していた鉄血は今のところ第一部隊によって撃破済み。後ろから撃たれることは無いと思うけど、アレが囮の可能性もある。細心の注意を払って、ルポライターを護衛して」

『了解!』

 

 全部隊連れてきたいところではあったけど、そうすると基地の守りが甘くなる。

 それに、一応比較的敵性勢力が確認されない場所への調査だったからそこまでの戦力を動員するわけにもいかなかった。

 心配し過ぎだろうか。けれど、妙に胸騒ぎがする。

 こういう時は決まって悪いことが起きるものだ。今回ばかりはそうでないといいんだけれど。

 

「ねえ、45」

 

 我慢できず、通信機で45に声を掛けてしまった。

 

『どうしたの、シーラ?』

 

 返ってきた声に、ほんの少しだけ安心する。程よい緊張感を含ませた、それでありながら気負いを感じさせない声。

 45は元気だ。それが分かる。それだけで少しだけ気分が楽になる。

 

「……なにか、こう。変わったこととかは無い?」

『どうしたの? ……ホントに寂しくなっちゃった?』

 

 くすり、と意地の悪そうな笑みを浮かべているのが通信機越しに分かる。

 そりゃあ、まあそうなるわよね。

 まあ、素直にゲロっちゃうかな。指揮官としてはよろしくないんだけど。

 

「ん……まあ、ね」

『しっかりしてよしきかーん? アナタがそんなんじゃ、皆の士気が下がっちゃうんだから』

「ごめん。でも、気を付けてね……」

『私達を誰だと思っているの? 泣く子も黙る404小隊よ?』

「そうね。……しっかり頼むわよ」

『お任せあれ』

 

 通信が切られた。

 嫌な予感はぬぐえない。何かとてもマズいことが起きそうな気がしてならない。今まで何度も45を送り出したけれど、こんなにナーバスになることなんてここしばらくは全くなかったのに。

 それでも、彼女達ならきっと大丈夫。そう言い聞かせて、部屋の隅に置かれた細長いケースへ目をやる。

 ケースに表示された数値は『92%』となっている。フルチャージにはもう少し時間がかかりそうだ。

 

「指揮官、よろしいですか?」

 

 ノックと同時に部屋の扉が開けられる。

 そちらの方を見れば、第五部隊のM590が真剣な表情でこちらを見ていた。

 

「モスバーグ、どうしたの?」

「偵察に出したドローンの映像で、ここから北東の方向から鉄血がこちらに進軍しているのを確認しました。かなりの数です」

 

 思わず天を仰いだ。ため息を我慢できたのは自分を褒めたい。予想とは違うけど、嫌な予感が当たってしまったみたいだ。

 こちらに一直線とは、向こうはこっちの位置を把握できていると考えてよさそうだ。

 そうなると、ハイエンドモデルが裏にいると考えていいだろう。ここで夜を明かすなら、少なくともその前にこちらに向かっている奴らの撃滅と街に出た二部隊の帰還が最低条件だ。

 その為にも、ここを落とされるわけにはいかない。とは言え、こういう状況の時の為の第五部隊だ。その実力を存分に発揮してもらうことにしよう。

 

「モスバーグ、すぐに迎撃準備を。ここは盗られるわけにはいかないわ。守るわよ」

「了解!」

 

 敬礼をして、モスバーグが退室する。

 北東か。西や南から来ていないのなら、最悪後退することもできそうだ。

 とはいえ、そう簡単にこのモーテルをアイツらの支配領域に置かせるわけにはいかない。

 ここを盗られたら街に出払っている第一部隊と404小隊が戻ってこられなくなってしまう。特に404が戻ってこられないのは最悪だ。彼女らだけならまだしも、彼女達の傍にはルポライターがいる。

 すぐにでも呼び戻して態勢を整えたいところだけど、今戻ってこられたらかえって危険だ。

 ひとまず、クルーガー宛に応援要請は出しておこう。

 弾も配給もたっぷり持ってきているけれど、無限にあるわけじゃない。鉄血の奴らがこっちに向かってきている以上、奴らもここを落とす気で攻めてくるだろう。

 そうなれば、戦力をこちらに送り続けてくるという線も十分にあり得る。もしも向こうの陣地に人形製造工場の類があれば、それこそジリ貧だ。

 ルポライターはクルーガーにとっても大事な客だ。彼女を失うことはグリフィンの評判にもかかわる。応援を拒むってことは無いと信じたいところだ。 

 ベッドから立ち上がって指揮機材を操作する。まずは本部に向けて通信だ。

 

「こちらR06前線基地指揮官、シーラ=コリンズ」

『コリンズ指揮官か。こうして通信してくるということは、不測の事態が発生したか?』

 

 出たのはクルーガーだ。それに察しも良い。こういうところだけは信頼に値するな、クルーガーは。

 

「残念ながらその通りよ。到着時に報告した通り、街の南側のモーテルに臨時司令部を構えているけど、ここに鉄血の大群が押し寄せてきているのが確認できたわ」

『そうか。それは貴君の部隊だけでは対処が不能なほどの数なのか?』

「数は問題じゃない。防衛に徹すれば落とされないような子達を連れてきた。問題は物資が足りなくなる可能性よ」

『なるほど。大群で押し寄せてくるということは向こうにはこちらの司令部の位置はバレていると見ていいな。消耗戦になるわけか』

「察しが良くて助かるわ。奴らの進撃を食い止めて、落ち着いたらすぐにルポライターには帰ってきてもらおうと思う。帰ってきたら成果に関わらず撤退するわ。構わないわね?」

『できれば成果アリを……いが……彼女……必ず……』

「ちょっと、クルーガー?」

 

 急に通信にノイズが走り始めて、ついには切れた。

 何度か繋ぎなおそうと試してみるも、それらはすべて無駄に終わる。

 どうやらこの辺り一帯にジャミングがかけられたとみていいだろう。いよいよまずい状況になってきた。

 出来れば、もう今すぐに作戦を放棄して撤退をしたい気分だ。

 だがそれをするにも、第一部隊と404小隊と連絡を取らなければならない。繋がってくれるといいんだけど……。

 わずかな希望にすがるように通信機を手に取る。

 

「第一部隊、M14。聞こえる?」

『指…官! 現在鉄…と…戦中……なりの数いて……04小隊……援護に行けな……』

 

 クソッ! こっちもほとんどダメか!

 伝わるかどうかわからないけど、指示は出さないと。

 

「M14、とにかく目の前の敵を倒して。あまりに数が多すぎるなら適当に減らしてからでいい。404小隊と合流して。合流したら、すぐに戻って来なさい」

『合流したら……令部に戻れば……すね?』

「そう。戻ってきて。アナタ達が戻り次第、作戦は終了。帰投するから」

『…解です!』

 

 よし。これで第一部隊の方はなんとか……。

 

「指揮官!」

 

 モスバーグの悲鳴じみた私を呼ぶ声。

 直後に爆音。それとほぼ同じタイミングで部屋の扉が内側に膨らんだかと思えば、そのままこちらに吹き飛ばされてきた。

 避ける余裕もなかった。とっさに顔を腕で覆えたのはラッキーと言うべきか。

 だが、飛ばされてきた扉をもろに食らい、そのまま一緒に壁の方まで吹き飛ばされる。

 そして頭に強い衝撃を受けたと感じたの最後に、私の意識は途絶えた。




次回も戦闘シーンアリの予定。
出来れば三日後には更新したい……

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