女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん【完結】   作:笹の船

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難産でした……


20年越しの再会

「それで? ルポライターが入手した情報っていうのは?」

 

 N03地区での作戦から3日後。私は病院のベッドの上で簡易的ではあるけれどデブリーフィングを行っていた。勿論、部屋の中に作戦に参加したメンバー全員を入れることは出来ないから、第一、第五部隊と416とG11には基地で待機してもらっている。だから、私の隣にいるのは45と9だけだ。

 本当は基地に戻ってからやりたいところだったし、それが無理でも作戦メンバーを司令室に集めて映像通信で全員に情報を共有したい。

 したいのだが、ルポライターからそれはやめてくれとの要望が入った。ついでに言えば、かなり重要度の高い情報なので電子デバイスによる録音などが出来ないよう病室にジャミングをかけるとまで言いだした。ちょっと、ナースコールとか呼べなくなるでしょうが。

「安心しろ。お前の容体が急変したら俺が医者を呼んでやる」

「社長自らナースコールをしてくれるとは恐れ多いわね。まあ、その厳めしいツラにビビらずについて来れるナースがいるかは怪しいものだけど」

「コリンズ指揮官。上司に対して向ける態度とは思えんな」

 

 んで、余りにも重要度が高いとのことで私の病室にクルーガーとヘリアン、そしてペルシカという豪華キャストが私の病室に集まっていた。ヘリアンとペルシカはともかく、クルーガーがいるだけで室温が3度くらい上がってる気がする。むさいんだよコイツ。

 

「……とりあえず、情報の共有から始めるわよ」

 

 小さく肩をすくめながら、ルポライターが口を開いた。

 

「まず最初ね。かなり古い型だったけど、記憶媒体を見つけたわ。古すぎて今の端末で閲覧できるように色々フォーマットの調整をするの大変だったけど、どうにかなったわ」

「それは重畳だね。で、一体中にはどういう情報が入っていたんだい?」

 

 そう問いかけたのはペルシカだ。相変わらず不摂生な生活をしていそうな顔をしている。隈が酷いけど、ちゃんと寝てるんだろうか。

 

「そうね。焦らす様なものでもないし、真面目な話だから単刀直入に行きましょう」

 

 ルポライターの表情が引き締まったものになる。心なしか、病室の空気も張り詰めてきたような感じがした。

 飄々としていることの多い彼女がここまで言うってことは、かなりヤバそうな情報が入っていたらしい。心して聞くことにしよう。

 

「記憶媒体の中には、起業間もない鉄血工造のスキャンダルについての情報が遺されていたわ。で、この情報が問題なのよね」

「わざわざ俺達まで呼んだんだ。かなり危険な情報と見ていいんだな?」

 

 クルーガーが腕を組みながらルポライターを真っすぐと見据える。嘘や冗談は許さない、と言外に語っているような気配が漂っていた。

 ま、ここまでグリフィンの上層部(ペルシカも重要人物だから含んでも大丈夫でしょう)を集めた以上、冗談でしたなんて笑い話にもならない。それに、そんなことをすれば自分の評判に関わるのだろうし、それが分からない程ルポライターもバカじゃないだろう。

 そんなことを考える傍らで、ルポライターはクルーガーに向かってゆっくりと頷いた。

 

「悪いけど、こっからは本当にこの病室にジャミングかけさせてもらうわね。一応、ナースセンターには話通してある。一応確認するけど、盗聴器とか持ってたり、仕込まれたりしてないわよね?」

「ここはグリフィン傘下の病院だ。不審なものが持ち込まれればすぐに分かるし、私達もエントランスでもろもろの検査を受けている。検査に使うセンサー類は常に最新式にしているから、問題は無いはずだ」

 

 ルポライターの問いに答えたのはヘリアンだ。無駄に仕事に生真面目な彼女の事細かな説明に、ルポライターも一応は安心できたらしい。

 と、ここでルポライターが45達の方を向いた。

 

「ああ、それとそこのお二人さん」

「……私達のことかしら?」

「ええ。私の使うジャミング、人形にも効いちゃうの。別に電脳を焼き切ったりするような奴じゃないけど、効果範囲内にいる間は気分が悪くなったり、頭が痛くなったり……まあ色々影響が出るわ」

「……じゃあ、私達は病室の外で見張りをしてるわね。9、行きましょ」

「了解、45姉」

 

 45達はルポライターの言葉に特に異論を唱えることなく、そのまま病室の外へと歩いていった。二人が病室を出る寸前、45がふと立ち止まってこちらに振り返った。

 唇の端を吊り上げて、笑みを浮かべる。大丈夫、心配はいらないと伝える為だ。

 果たしてそれはちゃんと伝わったんだろうか。45は私の笑顔に対して小さく頷き、そして病室の外に出て扉を閉めた。多分、伝わったんだろう。

 二人が病室の外に出たのを確認して、ルポライターが手元の小さな端末を操作した。

 耳に響く小さな音が端末から響き始める。我慢できない程ではないけれど、絶妙に耳に刺さる高周波な音に思わず顔をしかめた。

 

「あら、この端末の音が聞こえるなんて耳がいいのね」

「できれば早いところ終わらせてほしいわ。私には辛い」

 

 分かってるわよ、とルポライターが微笑を浮かべた。

 

「で、肝心の中身だけど。……E.L.I.Dを自在にコントロールすることを目的とした研究データだったわ」

 

 部屋の気温がスッと低くなったのは気のせいじゃないだろう。よりにもよって、E.L.I.D絡みと来たか。

 私は当然のこと、クルーガー、ペルシカ、ヘリアン全員が険しい表情をしていた。

 

「収められていたデータには、費用対効果が低いってことでプロジェクトを破棄することが決定されたとあるけど……」

「ま、私ならそんなプロジェクトを放置しようとは思わないわね」

 

 神妙な面持ちでそう言ったのはペルシカだ。研究者の彼女がそういうからこその重みがあるその発言に、その場の誰もが頷く。私だって、そういう立場だったら放っておこうとは思わないだろう。

 E.L.I.Dをコントロールできるとなれば、これ以上優秀な使い捨ての駒は無い。なまなかには殺せない、明確な意思を持たない兵士。理性がない故に恐怖も、躊躇いも、罪悪感も感じることのなく、反乱も起こさない完璧なキリングマシーン。

 そして世界が崩壊液で汚染された今、代わりはいくらでも調達できる。もしプロジェクトが成功したのなら、戦術人形のお株はほとんど奪われてしまうかもしれない。

 そうなれば、莫大な利益を稼ぐことが出来るのは火を見るよりも明らかだ。そこに飛びつく奴はたくさんいるだろう。

 何より、私は……私達はそういう研究をしていた奴に弄ばれたことがある。もしかしたら、奴らの研究……その大本になったのはルポライターが入手した情報と同じものなのかもしれない。

 ……もしかして、まだ残っているのだろうか。私を……隊長や皆、第10部隊の皆を弄んだあいつ等みたいなクソッタレが喉から手が出るほど欲しがるような研究データは、まだ存在しているというんだろうか。

 

「ルポライター。そのデータ、アナタが入手した記憶媒体にあるのがオリジナルなのかしら?」

 

 声が震えたのは、トラウマを思い出したからか……それとも怒りからだろうか。自分でもその辺りは良く分からなかった。

 ただ、オリジナルであってほしい。そこのある情報が最後のものであって欲しいと願ったのは確かだ。

 けれど、私の願いは残念ながら叶うことはなかったようだ。

 

「……アナログの日誌の方では、ウィルスソフトを送ってサーバー側のデータを破損させ、あの媒体に入っているものをオリジナルとしたかったようだけど」

 

 失敗した、というのはルポライターの口ぶりからわかった。つまり、もしかしたらまだあの手の情報が残っているということになる。

 思わず、お腹の古傷に手をやってしまった。二重の意味でハメられてしまったあの日……奴らの目先の欲の為に、家族を失ってしまった……悪夢のような日。

 アレが再び起こる可能性が、今出てきてしまった。

 

「クルーガー……アタシ達をハメた奴らが持ってたデータ、消したんだったわよね?」

「……少なくとも、お前がいた第10部隊をハメた奴らが持っていたであろうデータは消した。そこは間違いない。伝手を使って消したからな」

「そう……」

 

 少なくとも、誰かがすぐに手に入れられるところにはもうないと思っていいんだろう。

 でも、裏を返せばまだ誰にも見つかっていない場所に残っている可能性があるということでもある。

 人間が見つけるのであればまだいい。前みたいに潰してやればいいだけだ。

 だが、今回はかなり事情が変わる。

 

「N03での作戦行動中、鉄血のドリーマーとコンタクトしたわ。奴らも、おそらくルポライターが入手したデータか、ターゲットが持っていたウィルスソフトを狙っていた。どうやら、写真館にいたE.L.I.Dに阻まれて上手くいかなかったみたいだけど……」

「何……? だとすれば、かなり厄介な事態になるかもしれんな」

 

 顎に手を当てて、ヘリアンが考え込む。

 E.L.I.Dの研究データにしろ、ウィルスソフトにしろ、鉄血の手に渡ればこちらにとっては不利になるのは間違いない。

 ただでさえ物量で押され気味なグリフィン側だというのに、鉄血側にE.L.I.Dが加われば手が付けられなくなる。

 

「頭が痛くなるわね……また奴らとお宝探しの競争をしなきゃいけないのかな……」

 

 思わず天井を仰ぎながら漏らした私の言葉に、答えてくれる人はいなかった。

 運命とかがあるなら、それを呪いたい気分だ。どうしてだ。どうして、崩壊液絡みの技術を悪用しようとする奴らと闘わなきゃいけない日々を送る羽目になるんだ……。

 ジャミングの高周波が耳に刺さって、頭痛を引き起こし始めた。辛いな……。

 

「まあ、悪い話ばかりじゃないわよ」

「……?」

 

 私がゆっくりとルポライターの方へ視線を戻すと、やや不敵な笑みを浮かべた彼女と目が合った。どうやら、今度はいい話らしい。

 

「E.L.I.Dを自由にコントロールする研究、当然と言えば当然だけど人体へ入り込んだ崩壊液を制御するための薬……物質かな。が、開発されていたらしいの」

「それが何だって――」

「コリンズ指揮官、話は最後まで聞いて。……考えてみて。人体へ入り込んだ崩壊液をコントロールできるっていうことは、E.L.I.D化を制御できる。それはつまり、突き詰めればE.L.I.Dに対するワクチンが出来るって言うことでもあるのよ」

 

 ワクチン……ワクチンか……。出来たら、もしも大切なヒトがE.L.I.Dになったとして助けることができるんだろうか。

 まあでも、殺す以外の選択肢が出来るかもしれないっていうのはいいことだ。確かにいい話であることに違いは無い。

 

「まあ、目ぼしい情報はこんな感じね。ちなみに、ウィルスソフトも入っていたわ。もし取られてたらヤバかったかもしれないわね」

 

 ルポライターの言葉にペルシカが小さく手を上げた。

 

「それは私にくれるかな? 前時代のウィルスソフトには興味があるし、上手くやれば今後鉄血の傘ウィルスの類に対抗できるプログラムも作れるかもしれないからね」

「ペルシカ、扱いには気をつけろよ」

「言われずとも分かっているよ社長殿。何かあったら守ってよ?」

「それはお前の働き次第だな」

 

 まあ、ペルシカが持つなら安心だろう。彼女は口も堅いし、腕も確かだ。

 張り詰めていた空気が少しずつ緩んでいく。

 ルポライターが端末を操作する。耳に刺さっていた高周波が消え、いつの間にか力んでいた肩から力が抜ける。

 

「では、ひとまず今日はこの辺りで解散としよう。大丈夫ですか、クルーガーさん」

「ああ。怪我人の病室でダラダラしてはコイツが働く時間が遅れるだけだしな。今日はこの辺りでいいだろう」

 

 クソヒゲめ、少しは他の基地の指揮官に仕事を回したらどうだ。なんでアタシに……。

 

「今回の任務、失態が目立っているぞコリンズ指揮官。護衛対象を放棄させる旨の指示に、自らが前線へ飛び出し、挙句重傷を負う。私情を優先した行動が余りにも多い。指揮官としても軍人としても下の下だな。気が緩みすぎなんじゃないのか」

「……ッ」

 

 腹立たしいが言い返すことは出来ない。でも、間違っていたとも思わない。

 だからせめて、クルーガーを睨みつける位はさせてもらう。

 

「……ふん。まあ、早くその傷を治せ。話はそれからだ」

 

 言って、クルーガーは病室を出ていった。ヘリアンとペルシカもそれに続いていく。それと入れ替わるように、45と9が戻ってきた。

 

「コリンズ指揮官。アナタには、もう一つ言っておくことと、見せたいものが一つある」

 

 ふっと一息つくと、ルポライターが神妙な面持ちで私を見つめていた。

 一体、なんだろう。

 そう思って待っていると、ルポライターが珍しく迷っているかのような表情をしている。

 けれど、腹をくくったのか私の方を真っすぐと見ると、ゆっくりと口を開いた。

 

「今回の情報を残した人物の名前はね……『ブライアン=コリンズ』よ」

「……コリンズ、ですって?」

 

 世界が止まった気がした。私と同じ姓。ただの偶然だろうか。それとも……。

 そう思っているとルポライターが一冊の手帳を取り出した。ぼろぼろの、小さな手帳だ。

 

「姓が同じなのはきっと偶然ではないわ。私があの写真館で見つけたこの手帳……ブライアンさんがどんな思いで仕事をしていたのかなんかがつづられてたけど。……アナタの名前が、アナタについての記述もあったの」

 

 ルポライターが何を言っているのか、イマイチわからない。

 いや、言葉は理解できる。手帳の主はブライアン=コリンズといって、私と同じコリンズ姓で、手帳の中には私についての記述もあった。

 そこから導き出される答えは……答えは……。

 

「間違いないわ。この情報を残したのは、アナタのお父さんよ。手帳はアナタに渡す。これは、アナタが持つべきものだから」

「…………そ、そんなことを……言われたって……」

 

 どうしろというんだろう。今更、記憶にもロクに残っていない父親の手帳なんてものを渡されたところで、私はどうしたらいいんだろう。

 

「細かいことは自分で読んで欲しいけど……少なくとも、アナタのお父さんとお母さんは最期の瞬間までアナタを愛していたと思う。最後の方は……もう意識がもうろうとしてたのか字もかなり乱れていたけど」

「…………」

 

 待って。写真館にこの手帳があって、最期の瞬間までお父さんとお母さんが手帳に何かを書いていたとしたら。

 あの場所で、あの時、私達が戦ったE.L.I.Dは……。何かを守るように、必死に写真館へ侵入するもの全てを殺そうと暴れていたあのE.L.I.Dは……。

 お父さんが追いかけていたスキャンダルは、鉄血がE.L.I.Dをコントロールしようと行っていた研究だった。もしも鉄血がデータを盗まれたことに気づいたら、どんな手を使ってでも口を封じようとすることだろう。鉄血じゃなくてもそれくらいはやるはずだ。

 私は、あの街が滅ぶ直前にじいちゃんたちに預けられた。もし、スキャンダルを握ったのが相手にバレていて、お父さん達がそれに私を巻き込みたくないとしていたのなら。

 

「ルポライター……日記、全部読んだの?」

「……ええ」

「単刀直入に……聞くわね」

「どうぞ」

 

 聞くのは怖い。でも、いつか知ることな気がする。だから、いま知ろう。自分の意志で、お父さんとお母さんの最期を……。

 

「……二人は。E.L.I.Dになったのね?」

 

 45と9が息を呑む音が聞こえた。ルポライターがどういう表情をしているか分からない。私自身、俯いて毛布の上に置かれた右手しか視界に収めていないから。

 

「……ええ。写真館に死体は無かった。アナタ達が倒したあの個体が、恐らく……」

 

 ルポライターはその先を言わなかった。でも、十分だった。

 ……私は、親を殺したのか。いや、救ったんだろう。E.L.I.Dになり、理性を失って、人間として死ぬことすらできなかったあの二人を……ちゃんとあの世に送ることができた。

 他の誰かに任せるのではなく、私の、私達の手で……ちゃんと……。

 水あめのようにネバついて、重苦しい空気が病室を満たす。いつもなら、軽いジョークでも口にして吹き飛ばすものだけど、流石に今はそんな気分じゃない。

 

「もう一つ。あの写真館に遭ったネガフィルムの一つが、状態が良くてね。現像してみたの」

 

 ルポライターが静かな口調でそう言って、ガサゴソと自分のカバンを漁る音が聞こえた。

 やがて、一枚の写真が私の前に差し出される。ルポライターからそれを受け取って、写真に写っているものを見た。

 そこには桜色の着物に身を包んだ満面の笑みの小さな女の子と、そんな彼女を挟み込む様に立つスーツ姿の男性と女性が写っていた。

 男性はブロンドの髪をオールバックにした、茶色い瞳の人。女性は私と同じ黒い髪に黒い瞳をした、セミロングヘアだった。二人共、穏やかで幸せそうな笑顔を浮かべている。

 

「この人、指揮官に似てるね」

 

 そう言ったのは9だ。言われてみれば、なんとなく私に似ているかもしれない。

 いや、きっと似ていて当然なんだろう。多分、この写真は……。

 

「この写真を、アナタに見せてあげられなかったのが心残りだと……手帳には書いてあったわ」

「……そっか。……そっか……」

 

 視界がぼやける。瞼から湿ったものがこぼれて、頬を伝いポトリと音を立てて掛布団を濡らす。二つ、三つ。それは数を増やし、止まることはなかった。

 顔も声も名前も。何一つ思い出すことすらできなかったお父さんとお母さんに、20年前のモノだったとしても、写真越しだったとしても、会うことができた。

 ずっと会いたかった。例え叶わない願いだったとしても、夢でいいから一度だけでも会いたかった。私にもちゃんとしたお父さんとお母さんがいたんだ、という証が欲しかった。

 

「ルポライター……」

 

 何とか絞り出した声は震えていて、ちゃんと言葉になっているかも怪しい。

 それでも、私がずっと欲しかったものを手に入れてくれた彼女には、感謝を伝えたかった。

 

「ありがとう……」

「お礼を言われるようなことじゃないわ。家族との絆は……繋がりは。大事にするべきだもの。たとえそれが、余所の家族であってもね」

 

 そう言ってルポライターが私に向かってウィンクする。それは綺麗なウィンクで、明らかに私より上手いのがちょっと腹が立った。

 

「まあ、また何かあったらアナタ達に護衛か被写体を頼むから、その時はよろしくね」

「今度は……もっと危険度の低い護衛がしたいものね」

 

 震えていて、情けなさ全開だけどそんな軽口をたたく。

 そうして、二人してクスクスと笑い合った。私は泣いてたからしゃくりも混ざっていて、どうにもカッコがつかなかったけど。

 

「じゃあ、私も行くわ。怪我、お大事にね」

「うん。ありがとう。またね」

 

 手をひらひらとさせながら、ルポライターは病室を出ていく。

 扉が閉じられ、部屋が静寂に包まれた。私も、45も、9もしゃべらない。

 ただ、窓から差し込んだ日光が写真を照らしていた。

 

 お父さん、お母さん。色々あったけど、私は生きてます。大切なヒトも、出来ました。

 どうか、安らかに。私はもうちょっと、この世界で生きていくから。

 だから、見守っていてね。

 




これにて今回のシリアス編はおしまいです。
次回からほのぼのに戻る予定です。
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