女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん【完結】   作:笹の船

84 / 118
絵師さんの45姉の絵を見て思いついた話でもあります。
風呂上がりの女の子っていいですよね


熱いシャワーを浴びながら

 ジェリコ達が着任してから数日後。いい加減保有できる部隊数も増やそうと第6部隊を新しく新設して、彼女達にはそこに所属してもらうことにした。

 第6部隊の運用方法はまだ未定だ。ひとまずは第4部隊みたいな感じで、第二の育成用部隊みたいな感じで運用しようかなとは思っているけれど。

 一応、彼女達は今のところ素直に私の指示に従ってくれる。ネゲヴは元からじゃじゃ馬な子のようで、ことあるごとにスペシャリストだなんだと言っているらしい。もっとも、その後にジェリコに怒られては拗ねるというパターンがお決まりとなっているようだけれど。

 他の人形達もネゲヴの言動に腹を立てるということもなく、むしろジェリコとのやり取りを見て微笑ましいものを見るかのような雰囲気みたいだ。ネゲヴはソレに不満みたいだけれど、彼女の練度は低くはない、程度なのよね。

 ジェリコもネゲヴもダミーを2体運用できる練度を持ってはいるから、即戦力にすることは出来なくはない。でも悲しいかな、ウチのエース達は皆ダミー4体運用が当たり前だ。そんな彼女達の前では、流石に役者不足と言わざるを得ない。

 ネゲヴとジェリコは既に他の基地で運用、育成をされていた子達のようだけれど、色々あってウチに来ることになったようだ。具体的には彼女達を指揮していた指揮官が死んで、その上彼女達が他の指揮官の指揮下に入ることを拒否したからウチに回されてきたらしい。だからウチは問題児の更生施設じゃねえっての。クルーガーめ、今度会ったらマジでブラジリアンワックス塗りたくってやろうか。

 今頃本部のデスクでふんぞり返っているであろう髭面に心の中で中指を立てていると、私の部屋のシャワールームへの扉が開いた。

 

「シーラ。次どーぞ」

「45……色々と突っ込みたいところなんだけど、まず一つ言いたいことがある」

 

 シャワールーム……というかその手前の脱衣所から出てきたのは45だ。彼女が私の部屋のシャワールームを使うことは珍しいことではないけど、ろくに髪も拭かず水滴を滴らせながら出てくるのはいかがなものか。

 人形だから風邪は引かないだろうけど、見てるこっちが寒々しい。後、前から何度か脱衣所でちゃんと体を拭いて服も着ろと言っているのにこのザマだ。

 なので、私はベッドから立ち上がり45に近寄って彼女が手に持ったバスタオルをひったくり、彼女の頭をちょっと乱暴に拭いてやった。左腕は使えないけど、この位朝飯前だ。

 

「ちょ、シーラ! もっと優しく……!」

「うっさい! 前からちゃんと拭いて出て来いって言ってるでしょ! この聞かんぼうめ!」

「わかっ……わかった! 分かったってば! だから体まで拭こうとしてくていいから! それくらい自分で出来るから!」

 

 本当だろうか。拭くのサボってずぶ濡れのままで服を着てそうで心配だ。いや、髪長いと乾かすの大変だっていうのは知ってるけども。

 まあ今大体髪は拭いたし、残りは自分で出来るだろう。というより、それくらいは自分でやって欲しい。私は45の恋人ではあるけど、お世話係ではないのだ。いや、指揮官って仕事が人形のお世話係だと言われてしまったらちょっと反論に困るけど……。

 45を解放し、すれ違うようにシャワールームへと向かう。まだ左腕は動かせないけど、体を洗うくらいなら一人でもどうにでもなる。というか、どうにかする。流石に洗ってもらうのは恥ずかしいし……。

 

「じゃあ、私もシャワー浴びるわ。……ちゃんと体拭いてから服着なさいよ?」

「分かってるってば。ほら、早く入りなよ」

 

 あ、ちょっとうっとおしそうに追い払うような手の払い方したな。何かムカつくからちょっとからかってやろ。

 

「大丈夫? 一人で出来る? 服着るところまでおねーさんが手伝お……」

「とっとと入れ!」

 

 おーこわ。一人でクスクス笑いながら脱衣所の扉を閉じた。その直後、柔らかいものが扉にあたったような音と小さな衝撃が走る。さっき45が枕をひっつかんでこっちを睨んでたから、枕を投げたんだろう。後でちゃんとベッドの上に戻しておいてくれるかな。

 そんなことを考えながら服を脱ぐ。左腕が上手く動かせないから、普段何気なくやっていた動作にも気を遣わなくちゃいけなくて中々に煩わしい。変に動かすと傷口が痛むしね。

 そう言えば、私なんか妙に左肩を怪我するような気がするな。指揮官になる前、あの時も鉄血の奴に左肩を撃ち抜かれた。今回の父さん達の爪も、左肩に突き刺さった。

 単なる偶然だろうけど、なんかちょっと運命的なものを感じるかもしれない。いや、怪我の運命なんてあって欲しくないけどね。

 全裸になって、脱衣所からシャワールームへと入る。いつもならヘアゴムを外すんだけど、今は片手が使えないから45と部屋に戻ってきたときに外してもらった。だからすぐにシャワーを浴びられる。

 シャワーを出す。少し熱いお湯に一瞬顔をしかめてしまったけれど、すぐにそれも心地良くなった。

 上手いことシャンプーを手に取って、髪につける。そのまま右手で出来る限りわしゃわしゃと髪を洗った。片手が使えないっていうのはやっぱり不便だ。

 それにしても、ネゲヴとジェリコ……か。資料を読んだけれど、中々に重たい経歴だった。色々あって、かなりあっちこっちの基地をたらいまわしにされていたらしい。

 正確に言えば、彼女達が今までの基地の指揮官に対して反抗的な態度を取り続けた結果、どこの指揮官も彼女を迎え入れることを拒むようになっていたとのことだ。

 あのヒゲ、本当にそういうコト全く教えずに私んところに送ってくるからやっぱりブラジリアンワックスの刑だ。資料は確かに送られては来たから、事前にそれを知る術は確かにあったけど。

 まあ、それを知ったからと言って私が拒まないだろうっていうのも計算の内だったんだろう。あのヒゲめ。私情を挟むなとかそういうのやめろとか言ってるくせに、こういうときだけ私のそういう性格を上手く使うような真似しやがって。やっぱりブラジリアン……いや、芸がないから戦術人形のコスプレでもしてもらおうか。ガチムチの髭面のオッサンが女物の制服……。

 ウェ……想像したら吐きそうだ。それはもはや生物災害に等しいだろ。ああ、でもそれを鉄血に見せたら気持ち悪さでぶっ倒れてくれたりしないかな。ハイエンドモデルとか結構感情豊かに見えたし、意外と効くかもしれない。

 そんなことを考えながら、体を洗っていく。手間も時間もいつもよりかかるけれど、出来ないわけじゃあない。

 それに今みたいに考え事をしながら洗っていれば、そのうち終わっているものだからそこまで苦でもない。ま、片手が使えないだけでいつもやってることだしね。

 で、元々何を考えていたんだっけ……クルーガーの放送事故みたいなコスプレのインパクトが強すぎてなあ……。

 あ、ネゲヴとジェリコか。まあ、信用してもらうには時間がかかりそうではある。とはいえ、焦ったって仕方がない。私にできることを一つずつやっていって、信用してもらうしかないな。

 ふと、体を洗っていると左肩の傷が目に入った。

 傷跡が残っているけれど、一応外面だけ見ればすっかり傷口は塞がった。痕は中の筋肉とか諸々が治るのを待つだけだ。

 待つだけなんだけど、そういえば医者からは定期的に病院に来て経過観察をさせてくれと言われていたんだっけかな。あの一週間で満足できないとでもいうんだろうか。

 まあ、万が一があったら……ていうのは分かるし、それに備えてのデータ収集の意味合いもあるんだろうけれど……。グリフィンの医者が信用できないって訳じゃないけど、なんか気が進まないんだよね。

 まあでも、嫌がっていたらそのうち45かG36あたりに無理やり連れていかれることになりそうだし、大人しく行くことにはする。

 ああ、そうだ。今度病院行くときにジェリコとネゲヴを護衛につけるかな。三人で行けば道中の車内で積もる話もできるだろうし。

 そうしよう。なかなかいい機会があったもんだ。まあ後は、護衛を『お願い』出来る位には信頼を勝ち取れるようになりたいところだ。最悪命令すればいいんだけど、それはなるべく避けたいところだ。

 さて、体も洗い終わったことだしそろそろ出ようかな。やっぱりシャワーはいいなあ。ちょっと熱めに設定するとこれがまた気持ちいい。

 傷が完治したらそのうちまた共同浴場でお湯にも浸かろう。おばあちゃんもよくお風呂に入ることが好きだと言っていた。もともと日本には温泉がたくさんあって、お湯にゆっくりつかるっていう文化があったらしいけど……。

 機会があるなら、いつか日本に行って温泉でも楽しみたいところだ。……まあ、崩壊液の汚染区域になっていなければだけど。

 それもそのうち調べてみようかな。もしもまだ観光みたいな感じで温泉が楽しめる場所が残っているなら、皆を連れて行きたいところだ。

 そんなことを考えながら、脱衣所で体をしっかりと拭いてショーツを穿く。

 そしてそのまま脱衣所の扉を開けて部屋に戻る。ベッドの上に腰かけて端末を見ていた45が顔を上げて私の方を見た。

 

「あ、おかえ……シーラ! ちゃんと服着なさいよ!」

「えぇー……だって暑いんだもん。あとこの腕じゃ着るのも面倒くさいし」

「アナタは私達と違って体冷やしたら風邪ひくでしょ! 着なさいってば!」

 

 全裸は恥ずかしいからショーツくらいは穿くけど、上はしばらく裸でいたい。というか、室温がとてもちょうどいい感じで全裸でいるのが一番気持ちいい気がするのだ。せめてあと2分くらいは裸でいさせてほしい。

 が、45はそれすら許す気がないらしい。目がかなり吊り上がってる。

 

「ダメ! また風邪ひかれて無茶でもされたらたまらないもの! ほら下着貸して! 着させてあげるから! ほら腕上げて! バンザイして!」

「わ、わ!? ちょっと! まっ……分かった! 着る、着るから! あっ、そこ掴まな……あっ、あっ……」

 

 結局、私の抵抗もむなしくそのまま無理くり服を着せられてしまった。……早く怪我なおらないかな。私の穏やかな風呂上がりの時間が、穏やかじゃなくなっちゃうよ。

 あ、45からにらまれた。……うーん、顔に出てたかな。ま、いいか。

 さて、明日もお仕事頑張りますかね!

 




感想、評価は執筆の励みになりますのでどうぞよろしくお願いいたします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。