女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん【完結】   作:笹の船

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パピコを食べるってディスコードでフレが話したことから思いついた話です。


ほかほかアイス

「あっつい……」

 

 じわりと額に浮いた汗を手の甲で拭いながら、まるで効き目のない司令室のエアコンを睨みつける。勿論、睨みつけたからと言って涼しい風が出てきてくれるなんてことは無いのだけれど。

 あまりに暑いので、私も今日は下着の上に半そでブラウスを一枚着ているだけだ。グリフィン制服なんて暑くて着てられない。下も制服じゃなくて黒地のホットパンツだ。

 

「流石に暑いわね……シーラ、ちゃんと水飲みなさいよ?」

「そこまで自己管理が出来ないほど素人じゃないってば」

 

 そう軽口は叩くものの、実際問題水を飲もうが塩分を取ろうがこの暑さじゃ遅かれ早かれダウンしちゃうだろう。45も今日はパーカーを羽織らず、いつものミニスカートとブラウスを着ているだけだ。タイツもはいてないから、生足が眩しい。しかも首筋を流れる汗が妙に艶めかしい。正直ちょっと目に毒。

 それはそれとして、しばらく気温が上がるらしくそれの対策として溜めていたバッテリーを使い、スプリングのカフェと皆の宿舎にエアコンをつけて快適に過ごせるようにしたのだ。

 対策をしたのはのは良かったんだけど、その結果司令室のエアコンを動かすだけの電力が賄えなくなるという事態に陥ってしまった。

 まあ、書類仕事なんだしうちわでもあればいいかと高をくくっていたのは認める。

 実際は思ったよりも暑くて今みたいに死にかけているわけなんだけど、命張って前線に出ている子達の宿舎が過ごしやすくなるのだと思えば、高くついただけの価値はあると思う。

 

「それでシーラが倒れたりでもしたら、皆後悔すると思うわよ。司令室のエアコンが聞くくらいのバッテリーを残す様に止めるべきだったって」

「う……確かにぶっ倒れたらまた皆に仕事持って行かれそうだな……」

 

 45はウチの基地でも一番長く私の副官を務めてくれているし、働かざるもの食うべからずの精神を持っていてくれるから私の仕事を根こそぎ持って行くということはない。……いや、違うか。前に私の仕事根こそぎ持って行って、私に文句言われたのがショックだったからやらないだけかな。

 アレは可愛かったけど、当たり前のことを言っているはずの私がなぜかかなりの罪悪感を感じてしまった。惚れた弱みもあるだろうけど、可愛いってやっぱりズルいよなあ。

 それにしたって暑くて仕事にならない。腕もじっとりと汗をかいてきちゃってて、書類が湿ってしまう。これは一旦休憩かな。私の私室であればエアコンは使えるようになっていたはずだし、一旦そっちに退避しよう。

 

「45、一旦休憩しましょ。これだけ暑いんじゃ仕事もできないし」

「全く……書類もいくつか持って行くからね。シーラこの部屋に戻ってくるか分からないし」

「そこまでサボり魔じゃないってば」

「どうだか。仮眠するって嘘ついて、街に出てったサボり魔さんはどこの誰かしらね」

 

 45……まだそれひきずってるのか。……なんか、この先しばらくはそれをネタにお説教というかお小言貰いそうだなあ。やっぱり仕事だと嘘ついて45も一緒に連れて行くべきだったな。

 

「シーラ? あの時私も連れて行けばよかったとか、そんなこと考えてないでしょうね?」

「まさか。ほら、書類持ったなら行きましょ。……アナタも汗かいてるみたいだし」

 

 人形も汗をかくんだなあ、と妙に感心する一方で、暑いのを隠しきれずに思わず汗をぬぐう動作をしてる45を見て意地悪な気分になった。素直になればいいのになあ。

 

「……何よ。書類も持ったんだし、休憩するんでしょ。ここで油売ってたって仕事は終わらないわよ」

「仰せのままに。お嬢さん」

 

 意地なのか何なのか、暑いとは言おうとしない彼女の頑なな態度を微笑ましく思いながら私は司令室を出た。

 廊下もそこそこに暑い。最も、司令室よりは風が流れているのか熱がこもっているような印象は受けないから大分マシな感じだ。

 すれ違う他の子達も皆暑そうな顔だったり、素振りをしている。いつもよりも廊下ですれ違う子の数が少ないのは皆涼しい宿舎かスプリングのカフェにいるんだろう。

 N03での作戦以降近くで大きな鉄血の動きもなく、最寄街で大きな事件が起きたりもしていないから私達も比較的余裕のある日々が送れている。

 ネゲヴやジェリコはそんな日々に若干の不満を感じているようだけれど、私としてはどうかこのまま続いてほしいと願ってしまう。

 戦うことくらいしか生きていく術を知らない私だけど、別に命の取り合いが好きなわけじゃないのだ。……ま、戦いから縁遠い人にこんなことを聞かれたら「何を戯言を」と睨まれそうだけれど。

 そんなことを考えていたら自分の部屋の前についた。エアコンは部屋を出るときに消してしまったから、きっと中は暑いだろう。

 でも大丈夫だ。エアコンで部屋を涼しくするまでの間、暑さをしのぐ方法が部屋にはある。

 

「45、書類は机の上に置いといて。ついでにエアコンもつけといてくれると」

「いいけど、ちゃんと仕事してよね?」

「分かってるってば。もう、信用ないなあ」

 

 唇を尖らせながら、机の横にある小さな冷蔵庫の前で屈む。

 こういう暑いときにはアイスを食べるものだと相場は決まっているものだ。それに、いま確かこの中には45と分けあいっこ出来るアイスが入っていたと思う。

 冷蔵庫を開けるとひんやりとした冷気が中からあふれてくる。さらに冷凍スペースを覗けば、記憶の通りアイスの袋が入っていた。

 それを取り出して、袋を開ける。チューブ状の容器に詰められたアイスが二本、入っていた。二つの容器はそれぞれリングがついていて、それを引っ張ると口が開いて中のアイスが吸いだせるようになる、という構造だ。

 一つの袋に二つのアイス。ずいぶん昔におばあちゃんの故郷の日本で売られ始めたものらしい。おばあちゃんが子供の頃なんかは、カップルや仲のいい二人で分け合ってこのアイスを食べるのがしきたりだったとか、なんとか。

 どこかの酔狂な人がそれを残った人類に向けて再開発したらしく、そのしきたりは今なおこうして残っていたりする。

 

「45、ほら」

「わっ……っとと。ちょっと、食べ物投げないでよね」

 

 片方のチューブを切り離して、45に向かって放り投げる。ちょっと危なっかしかったけれど、45はちゃんとアイスをキャッチしてくれた。

 それを見届けてから、リングに指をかけて封を切る。口が開いて、アイスが吸えるようになった。吸えるアイスって、中々面白い発想だよなあ。

 ふと45の方を見れば、リングに指をかけたままオロオロとしていた。そうか、この子はこのアイス見るの初めてだったのか。

 

「よんご、貸ひへ?」

「え、あ、うん」

 

 アイスを咥えながら、45の方に手を出す。45はちょっと申し訳なさそうな、悔しそうな表情をして私にアイスを手渡してくれた。

 

「これね、こーすんの」

 

 さっきやったようにリングに指をかけながら、上に引っ張って封を切る。口が開いて、ちょっとアイスがはみ出してきたその光景に、ちょっぴり45が目を輝かせた。可愛いな。

 

「ん」

「ありがと」

 

 アイスを受け取った45が、私がそうしているようにそれを咥える。直後、ずぞぞぞぞ! とすごい音を立てて吸い込もうとし始めた。

 

「ぶっふ! あははは! 45、そんなに強く吸ったっていっぺんには出てこないわよ。これはちょっとずつ溶けて吸い出せるようになるのを待ちながら食べるアイスなんだから」

「う……それを先に言ってってば!」

 

 顔を赤くして45が私を睨みつけてくるけれど、正直可愛さしかない。この子、作戦とか仕事が絡むと器用万能チックなのに、変なところで不器用というか抜けてるよなあ。まあ、そんなところも大好きなんだけども。

 

「いじわる」

「何言ってんの。よんごーの不注意でしょ。何だった私のと交換する? 多分、こっちの方が溶けてるよ。さっきまでずっと握ってたし。まあ、大して変わらないかもだけど」

「うーん……じゃあ貰おうかな」

「あー。よんごーそんなに私が口付けたアイス欲しいんだ? やらしー」

「なっ……またそういういじわるする! いいわよじゃあ。私頑張って自分の溶かしながら食べるから!」

 

 あ、拗ねちゃった。ちょっとからかい過ぎたかな。

 まあ、アイス食べれば少しは機嫌も直るかな。このアイス、私は美味しいから好きなのよね。コーヒーチョコ味だし、45もコーヒー好きだから気に入ってくれるといいけど。

 ……あ、美味しいみたい。ちょっと頬が緩んでる。

 しかも結構気に入ったのね。ちゅーちゅー頑張って吸い出そうとしてる。いつもしっかり者というか、クールな子なんだけどこういう時は年相応の女の子らしいというか……。いつでもこうであってくれればいいのになあ。

 そんなことを考えていると、勢いよく部屋の扉が開かれた。

 

「しきかーん。45姉……あー! 二人ともアイス食べてる! ずるーい!」

「ん“っ!? な、ないん!?」

「45姉、私にもひとくち!」

「えー……もう、仕方ないな……ってちょっと! 9! ひとくちって言ったでしょ! 食べすぎ……あー、もうほとんどないじゃん」

 

 突然部屋にやってきて、45のアイスをかっさらった上にほとんど食べてしまった9は実に満足そうだ。

 一方の45は恨めしそうに9を睨んで唇を尖らせている。可愛い。

 

「ところで9、用事は?」

「んーん。司令室に二人がいなかったから、こっちにいるかなって思って顔を出しに来ただけー」

「へぇ? じゃあ私はアイスの食べられ損をしたわけね?」

「よ、45姉怒ってる?」

「初めて食べたアイスが気に入ったみたいでね。もっと味わいたかったんでしょ」

 

 45のムスッとした表情がなんだかおかしくて、クスクスと笑い声が漏れてしまう。そんな私を見た45が一層不機嫌そうに唇を尖らせた。

 仕方ないなあ。

 

「よんごー」

「何……んむっ!?」

 

 45の口に私の食べかけのアイスを突っ込んでやる。一瞬ビックリして動きを止めた45だけど、すぐにそのままアイスを吸い出し始めた。

 ……あー、これなんか……すごく、背徳感あるというか……。

 まるで、お乳を赤ちゃんに与えてるみたいな気分になる。図らずもイケナイことをしてる雰囲気になってしまったかもしれない。

 

「お義姉ちゃん……結構攻めるよね」

「や、その。思ったより背徳的な絵になっちゃったよね」

「~~~っ!?」

 

 あー、45の顔が真っ赤になった。流石にこれはやばいかもしれない。

 

「シーラのバカァ!」

「よんご、ごめ……いたたたっ!? ごめん、ごめんってば!」

 

 いくら恥ずかしいからってそんなにほっぺ引っ張らなくてもいいじゃん! 痛い痛い!

 

 結局、その後45は完璧に不貞腐れてしまって機嫌を直すのに一日かかった。

 でも、アイスはまた食べたいらしいので用意しておこうと思う。

 




パピコ、しばらく食べてないし自宅の冷蔵庫は安物故にアイスの保冷が出来るほどのパワーが無いのでパピコ買っても保管出来ないんですよね。
まさか二本一気に食べるわけにもいかないし(お腹冷えて死ぬ

45姉は個人的にパピコみたいなチューブ系アイス食べるの下手であって欲しい。

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