女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん【完結】   作:笹の船

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今回は借金から始まる前線生活 https://syosetu.org/novel/182529/ とのコラボ?回です


★愛のフォーマット

 今日も一日バッチリ働いたので、私は45と一緒にいつも通りカフェでまったりしていた。夕食時でもあるから、この時間帯はいろんな人形達が美味しいものを食べたりおしゃべりしたりしていて騒がしい。

 とはいえ、皆いい子達だからお酒に酔ってとんちんかんなことをし始めるなんてことはないから……あ、何人かヤバい子達もいたっけ。

 まあいいや。とにかく、賑やかで皆楽しそうにしてるってことだ。

 私と45と言えば、何をするでもなくお互いに頼んだコーヒーやらミルクティーやらを飲みながらまったりしている。

 口を利かないわけじゃないけど、まあ頻度は多くない。ただお互いに隣に座ってるだけ。最近は、それでも大分安心感を感じられるようになった。

 とはいえ、何もしないでボーっと座っているのも退屈っちゃ退屈だ。だから、ちょうど目に留まった今月分の社内報をなんとなく手に取ってみた。

 どうやら今回は別の基地の指揮官が鉄血を相手に大金星を挙げたらしい。一面にデカデカと男性指揮官が戦術人形に抱き着かれて慌てている写真がプリントされている。……この撮り方、おおかたルポライターだろう。彼女はああいう隙を突く撮り方が抜群に上手いし。

 あ、やっぱり。写真提供に『ルポライター』って書いてある。で、肝心の記事はどんな内容だろう。

 何々……? 『大金星!鉄血のハイエンド2体を撃退!』か。かなりのやり手がいたものね。

 ……ん? この指揮官に抱き着いているWA2000型の人形、見たことあるような気がする。いや、わーちゃんはうちにも余所にもいるけど、男性の指揮官に惚れてそうなWA2000は知り合いにはいなかったはずだ。

 

「あー。そうか、この社内報の写真に写ってる彼が「ジョージ・ベルロック」って奴か」

「どうしたのシーラ?」

 

 思わず声が出ていたらしい。興味を示した45が私の方へ寄ってきた。

 

「ん? ああ、前に本社に行ったときに立ち話をしたWA2000がいてね。その子の指揮官が鉄血のハイエンドを2体下したんだって」

「へぇ。中々のやり手なのね」

 

 鉄血のハイエンドはどれも皆一筋縄では倒せないだけの性能がある。

 そもそも鉄血工造製の人形は軍で用いられる為に作られているものだ。民間に自律人形にコアを後付けして戦闘用に改造したI.O.P製とはハナから本体性能に差がある。

 その差を少しでも埋められるように研究を進めたペルシカは流石、と言ったところか。

 話がそれた。

 

「んで、前にこのWA2000とあった時に、私彼女をちょっと怒らせちゃってね」

「また余計な事でも行ったんでしょ?」

「余計……いや、まあそうなんだけど」

 

 確かに余計な一言ではあったと思うんだけど、少なくとも私の価値基準では真っ当なつもりだった。まあ、彼女のリアクションを見るに完全に余計なお世話だったのだけれど。

 

「どんなことを言ったの?」

「んーと……彼女、自分の指揮官と誓約をしてたんだけど」

「うん」

「その指揮官、彼女以外に9人だか10人くらいとも誓約してたらしいのよ」

「あぁ……なんとなく想像できた。アナタが一番嫌いそうなタイプの男ね」

 

 相変わらず45は理解が早くて助かる。

 複数の人形と誓約自体は問題ない。そもそも、誓約なんて言葉を使っているからちょっとややこしいのだけれど、あれの本来の役割はリミッターカットだ。寧ろ懐に余裕があるならより多くの人形に渡した方が、戦力的な面においてもメリットが大きい。

 が、問題は彼女が発した『女を見ればすぐ口説くような奴だけど』って言葉だった。

 

「彼女的には惚気話の一エピソードだったんだろうけどね……その後ちゃんと自分のことを大事にしてくれるって言ってたしさ」

「…………」

「でも私からしたら……そういう男ほど信用できないわ。これが自分の被害妄想だって理解したうえで、それでも……男ってのは女を食い物にする猿みたいな連中って思っちゃうのよね」

 

 だから、思わずからかうでもなく本気で聞いてしまったのだ。『それ、遊ばれてるだけとかじゃないよね。本当に大丈夫? 随分と軽そうな男みたいだけど』と。

 当然、一瞬であのWA2000は敵意をむき出しにしてきた。辛うじて前面に出すことは我慢してたけれど、それでも漏れ出すくらいには強い敵意だった。

 

「でも、それならシーラが口出すことでもないんじゃない? たとえ遊ばれてたとしても、その指揮官の為にそこまでシーラに敵意をむき出しに出来る位には首ったけなんでしょ?」

「ええ。だから私もすぐに謝ったわ。あれだけ相手を想っているなら、もう私が言うべきことはないしね。少なくとも、今のあの子は指揮官を愛することで幸せなのよ、きっと」

 

 男に食い物にされる女の子は出ない方がいい。だけど、だからと言って人の幸せにイチイチ口を出す様な無粋な真似は私だってしたくない。

 この社内報の写真がいい証拠だろう。写っているWA2000は顔を赤くしながら、それでもどこか幸せそうな顔をしているのだから。

 

「愛……か」

「この上なく理不尽で非論理的な概念よね。『愛』って」

 

 45がクスクスと笑う。笑っちゃいるけど、この子だってその理不尽で非論理的な概念にやられた子の一人だろうに。この子、自分の左手薬指の指輪を撫でているのを自覚しているのかな。

 それはともかく。割と自分の周りには複数人の相手に誓約の指輪を、結婚指輪と同じような扱いで渡している指揮官がちらほら見受けられる気がする。

 別に悪いとは思わない。それで当人たちが皆幸せになれるなら、それでいいんだと思う。

 ただ、どうしても私には複数人に渡すという選択肢を選ぶ人たちの思考が理解できない。

 いや、納得できないと言った方がいいのかもしれない。

 愛があるから。好きだから。その感情に貴賤も上下もない。惚れさせた以上は責任を取るし、取って見せる。そんな男気的な何かの結果なのかもしれないけれど。

 

「シーラ。アナタは間違ってないわよ」

「……私、何も言ってないと思うんだけど」

「顔に出したつもりはないんだけど?」

「アナタ、不安だったりストレス感じる時はマグカップのふちを触る癖があるのよ?」

 

 ……知らなかった。そうだったのかな?

 まあでも、図星であることは確かだ。嘘を吐いたり隠す必要もないから、素直に白状するとしよう。

 

「まあ、ね。複数人を愛するって、私にはどうしても理解できなくて」

「愛の形なんて人それぞれなんでしょう? 人間なんて、その辺特に理屈で割り切れないみたいだし、深く考えなくていいんじゃない?」

「そうかな……そうかもね」

 

 もしかしたら、私が古い考えにすがっているだけなのかもしれない。誰か一人を愛する。それが愛を語るうえでの前提条件だと、無意識に思い込みたいだけなのかもしれない。

 あのWA2000の指揮官は……ジョージ・ベルロックという男は少なくとも間違った愛し方をしているわけではないんだろう。

 誓約はその性質上、互いに信頼し合っていないと成立しない。複数人と誓約するということは、少なくとも誓約相手の人形とは十二分に信頼関係を結んでいることになる。

 そして、その状態で彼は鉄血のハイエンドモデル2体を相手に撃退して見せた。遊びで女を好きになる奴に、そんなデカい真似は出来ないだろう。ああいう土壇場こそ、愛という感情は綻びを生みやすいのだから。

 それに、そもそもこの写真は多分ルポライターが撮ったものだ。彼女は、人の隙を突くのが上手い。

 言い換えれば、それは被写体が一番自然な瞬間を写真に収めることに長けているということでもある。

 そしてこの写真のベルロック指揮官から、ただのおチャラけた女たらし名だけという軽薄な印象は見受けられない。きっと、それが答えなんだろう。

 雑誌をカウンターに置いて、ミルクティーを飲む。もうだいぶ冷めてしまっていた。もしかしたら、私の男に対する怒りというか恨みというか……まあそんな感じの感情を表しているのかもしれない。

 あれから、なんだかんだ時間も経った。信頼こそできずとも、それなりに信用できる男にも出会った。

 そろそろ、このドロドロとしてネバついたものを振り払う時期なのかもしれない。

 まあ、それはともかくとして。

 

「スプリング。紅茶をストレートで、おかわり」

「砂糖は控えてくださいね。最近甘いものを召し上がりすぎですから」

「もういっそコーヒーに変えたら、シーラ?」

「書類仕事で頭を使うから当分は必要だし、仕事終わりのまったりした時間に苦い飲み物を飲む趣味は私にはないの」

 

 飲み物くらいは甘いのとか関係なく自由に選びたいものだ。……まあ、パンケーキとかパフェは我慢した方がいいかなとは思うけど。

 まあ、男うんぬんは今度男と喋る機会に出も考えよう。

 とりあえず今は、温かい紅茶をゆっくり飲みた――

 

「指揮官! 紅茶はね、ハチミツ入れると美味しいよ! ハチミツは無いけどね!」

「9? それはジョークのつもりなの?」

「指揮官。最近あまり栄養を意識した食生活をしていませんよね? アナタはG11とは違うんですから、そのあたりしっかり意識してもらわないといざと言う時に……ってG11! アナタ部屋にいないと思ったらこんなところで寝てたのね!」

「ゲッ……416……」

 

 ええい! かしましいなあもう! スプリングはニコニコしてるだけでこの場を収める気なさそうだし、45は……ちょっと、なんでこの子私の腕に抱き着いてるの?

 

「シーラは私だけのモノよ」

「心配しなくてもアナタ以外になびいたりしないわよ」

「無理と言われると頑張りたくなるのが人情とお聞きしましたよ、指揮官」

「M14? それは一体……ちょっ、なんでアナタまで腕に抱き着くの!」

「ちょっとM14。出過ぎたマネは良くないわよ」

「副官こそ、もっとちゃんと指揮官の手綱を握ってもらわないと。何かあったりしたら、私はアナタを恨みますし、何ならその時は本気で指揮官を獲りに行きますから」

「上等じゃない。受けて立つわよその挑発」

 

 ……私を挟んで45とM14が火花散らし始めた。

 

「ふふ……これくらい騒がしい方が、きっと指揮官にとってもいいんですよ」

「スプリング……笑ってないで助けてほしいんだけど」

「そこは我らが指揮官ですから。この程度のピンチ、自力で解決してみてくださいな」

 

 何という無茶ぶり……鉄血ハイエンドを相手取って戦う方がマシかもしれないこの状況を、自力でどうにかしろと申すか。

 ええい、やってやろうじゃないの。

 とりあえず、45とM14の二人を腕から引きはがすことから始めよう。

 二度も冷め切った紅茶を飲む趣味は無いからね!

 




これでちょっとはジョージ君とも絡みやすくなるはず……はず……
キャラ貸してくれた塊ロックさんありがとうございました!
借金前線は完結済みだから、完結してからじゃないと読めないって人も安心だ!
借金に追われる指揮官と戦術人形のハートフルなラブコメアクションストーリーだぞ!
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