『あ、総司!』
豚小屋の前で子豚と遊んでいた早弥は、背後に気配をかんじ振り向いたソコには沖田がサイゾーと一緒にいた
「はい、サイゾーを小屋に戻そうと思いまして」
そう言いながら沖田はサイゾーを戻し、早弥も子豚を戻す
そのとたん、サイゾーは沖田に何か訴えるように鳴き始める
「コラコラ、サイゾーはよくてもトシゾーが怒るんですよー」
『おとなしくしててね~』
二人は豚小屋を離れ道場の前まで来た
─ギシ…
「〝試合〟で道場に立ったの、実はすごく久しぶりだったんですよ。懐かしいなぁなんて思っちゃいましたよ」
木刀を眺める二人の脇には、汗だくで床に寝転んでいる鉄がいた
「…あの時は竹刀を使ったけれど普段は皆、木刀を使うことが多いんです。私も強くなりたくて、これでいっぱいアザを作りました」
『そのたんびに、私が総司のケガを治療してたんだよね』
「そうでしたね」
懐かしく語る二人を見て
「…やりませんか」
「俺一人じゃあ素振り程度しか出来ねぇや」
そう、笑いながら鉄は沖田を誘った
「…ホントに、面白い子ですねぇ。私なんかに稽古を願い出るなんて、あなたと雫くらいだ」
小さく笑いながらそう言う沖田
それを横から見守っていた早弥も、同じく笑顔だった
.
─カーーー…ン コーーー…ン
ゴンッ
ガッ!
いつもならまだ静かな道場内で、激しく木刀があわさる音が響きわたっていた
─ガァァン!
力いっぱい振り下ろしたせいか、鉄の右手が痺れる
『…防具を付けた方がいいよ、鉄クン』
「竹刀とは違います。ただでは済みませんよ」
「あなたこそ…本気で来ないと後悔しますよッ!!」
二人の忠告を無視し、鉄は沖田に突っ込んでいく
容赦なく攻撃を仕掛ける沖田
だが、それを上手く交した鉄
そしてまた、二人の木刀があわさり動きを止めた
「…教えてください
何故、あなた達は刀をとったんですか
なんの為に強くなったんですか」
その言葉を聞いたとたん、沖田は手に力をいれ鉄を押す
しかし、鉄はソレにも負けずに木刀を振り下ろす
「…俺は仇を討つ為に強くなりたいッ
…だけど
そんな理由があったって…
俺には人を…ッ
人を……!!」
─ドンッ
.
「ぐッァアぁあッ!!!」
沖田が振るった一撃が、容赦なく鉄に命中した
─ドサァッ
「ぐぅ…」
『鉄クン!』
「……ッ」
「…なんだよ、骨の一本も折れてねぇじゃねぇか…」
それでも立ち上がる鉄
「殺すつもりで来てくださいよ
あの時みたいに
思い出させてくださいよォ!!」
─あの
焼けつくような 感情を
身も凍る
絶望を
「沖田さん…
さっき言いましたね
強くなりたかったって、アザいっぱいつくったって!!
ついには人を殺せるほど
あなたは一体…
なんの───…
なんの為に…!!」
『やめて鉄クン!!!』
早弥の声に二人の動きが止まった
「私の答えはあなたの答えにはなりません」
さっきまでとは違い、鉄は沖田の話を静かに聞いた
「私には何も出来ません
──…でもね
〝私に勝てるまで〟
とは言わないけれど
あなたの気が済むまでお相手しますよ」
暫くの沈黙の後、鉄は笑い、また沖田に向かっていった
.
───────…
「…すいませんι」
「いーーっすよ…」
『………ι』
あの後、結局鉄は沖田にこてんぱんにやられ、身体中にアザを作り床に倒れている
「あーーーっ、久々に思いっきし動いてスッキリしたぜーー~!!」
『…あのさ~』
今まで見守っていた早弥が話かける
『鉄クンアザがひどいよ、手当てしよう?』
「その方がいいですよ?」
「沖田さん、雫
ありがとう」
その言葉を聞き、沖田と早弥は笑った
「ねぇ、鉄クン」
寝転ぶ鉄の背中に沖田は話かける
「なんの為に刀をとるか、なんの為に強くなるか
それはきっと、人それぞれですよ
他の人にしてみれば、くだらないことやとんでもないことかもしれないけど
焦らないで、悩んでください
いっぱいいっぱい悩んでください
そうじゃないと…」
「ぐーーー~…」
「『………』」
真剣に話してる途中、鉄のイビキが聞こえた
「もォーー~…、せっかく真面目に話してるのにぃ~」
『アハハハι』
「こーいうところまでそっくりなんだからなァ」
『だね~』
──なんの為に───?
「…言ったらきっと、笑われちゃいますよね?
土方さん…」
そう言った沖田の顔を見た早弥は、困った様な顔をして沖田の隣に寄り添った
寝てたと思っていた鉄が起きてたなんて気づかずに…
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