狼姫たちの闘い   作:ナユ

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忍びの舞
忍の舞❶


夜――

 

―タン…

 

桝屋から正面の家の屋根に立つ山崎 その視線は、桝屋に入っていく男たち…

 

脳裏をよぎるのは昼間の土方との会話…

 

――「――…今桝屋に侵入など危険極まりないぞ。」

 

――「…承知しております。」

 

――「君があせることはない…それに“泉”がダメならば“髪結いの弓”が動けばいい…“優”もいる…。」

 

――…これで最後や。失敗は許されへん。

 

山崎は決意を決めた。

 

いざ、潜入しようとすると、自分を見る人影に気がつく山崎…

 

その人影は山崎に向かって手裏剣を投げてくる…

 

―ガカカッ

 

――十方風華手裏剣!!! “風魔”やと…!?

 

―チャキッ

 

クナイを数本構える山崎…

 

―ーヒュオォォォ

 

風が2人の間を吹く…

 

木の葉が舞い屋根瓦に付く瞬間にお互いに動き出す…。

 

勝負は簡単についた…

 

山崎の背に死ぬほどではないが傷が出来る…

 

「戯言で“風魔”は語っとらんちゅう訳やな。女だてらになかなかのもんや。」

 

「…笑止。」

 

フ…と笑いながら言うクノイチ 山崎はさっと手裏剣を放ち刀を構え直し相手へと向う…

 

「ふふっ」

 

クノイチは軽々と手裏剣を避け刀を手に山崎へと向う

 

しかし…

 

 

―くんっ

 

 

「!!」

 

手裏剣は途中で方向を変えクノイチの背後をとる… 

 

前からは山崎の刀が迫る…

 

それからはコンマ一秒が遅く感じられた…

 

クノイチはとっさにジャンプして攻撃を全て避ける…

そして、山崎の背後をとる…

 

 

「帰って幕府の犬に伝えるのね。不粋な覗きは火傷の……もとよ。」

 

 

背の傷をなでながら言い風と共にその場から立ち去る…。

 

.

 

 

「――――…。」

 

背の傷を広げるように抑える山崎 そんな、山崎に新たに近づく人物…

 

『ススム…。』

 

「!……雅…。」

 

山崎の背後に居たのは雅…

 

『…歳さんに聞いたの…。あんまり、思いつめないでススム……。』

 

「……。」

 

『屯所に戻ろうか…。』

 

山崎に声をかけながら桝屋の2階の部屋を見る。 雨戸が閉まる中一部屋だけ雨戸が少しあいていた…

 

格子の間からは明かりが漏れ2人の人物がこちらからでも見える…

 

 

 

――…やっぱり、稔麿…。入京してたんだな…。

 

 

「……帰るで…雅…。」

 

 

桝屋を見る雅に静かに声をかける山崎

 

 

『あぁ…。勇さんや歳さんが心配してる…。』

 

 

そう言い2人もその場を立ち去る…

 

 

 

———————————————————————

 

「――…月影に忍の舞というのもなかなかに美しいものだ…。」

 

―トクトクトク

 

「ぜひ次は座敷で舞ってもらいたいものだよ。」

 

桝屋の二階から忍同士の戦いを見ていた吉田稔麿は酒を小姓の北村鈴に注がせながら言う…。

 

「でもあの忍大した刺客じゃありませんでしたね。あれなら俺一人だって…。」

 

「フフ…いせいのいいボウヤね。」

 

「!?」

 

「後から来たヤツの実力は私も知らないわ…戦って勝てるかどうかなんてわからないんじゃない?それに、もしあたしが居なければ今頃奴らはあんた達の頭の上よ。」

 

「ああ、勿論 感謝してるとも。」

 

立ち上がる鈴を止める吉田

 

「先生!!」

 

「忍にはやはり忍だ。君の協力には助けられてるよ。寝言なんて聞かれては恥ずかしい限りだからね。」

 

「さぁ…寝言だけならいいけど…。」

 

「……。」

 

「なんにせよあんた達もう少し慎重に動いたらどう?この様子じゃあ壬生狼もとっくにあんたに気づいてるハズよ。お好きな“火遊び”もいいけれど…自分でバラしりゃ世話ないわね。」

 

「フフ…それは言えてるね。だからこそこちらとしては動きやすくなるのさ…。

 

ご覧の通り彼らは長人が居ると知りながら隊士ではなく忍を送ってきた…つまり“私”ならば。この“吉田稔麿”ならばまだ何かしでかすだろうとふんでいるのだろうね。よってまだ正面からは手を出さず謀り事が完全に膨れ上がるのを彼らは待っている…つまりこれはワナだ。」

 

「…。」

 

「しかしこの状況を逆手にとればその間遠慮なく事を運ぶことが出来…私の計画はただの火遊びで終わらずにーー。」

 

―パチン…

 

「彼らが仕掛けたワナのおかげで都をかけた“大バクチ”となる」

.

 

 

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