あのバカ…昨日はアザだらけで帰ってきやがって…
イヤ、うちの鉄に限ってそれは有りえないと思いつつ…
礼儀知らずだしなァもしかしてひょっとしてイヤ万が一…!!
イジメにでもあってたりしたらーー!?
─ズキィィン
「ぐうッ!?ι」
いきなり苦しみだしたと思うと辰之助はその場にうずくまった
「…………なぁ…誰か呼んだ方がいいんかなぁ…」
「しかもなんか変な音しねぇ?」
他人から見れば辰之助のその動きはまさに変としか言えなかった
─…チャッ チャッ
天国の父さん母さん…鉄のおバカな兄ちゃんに何も相談しないで一人でボロボロになっていきまス………
正に兄の心知らず
市村家は今、家庭内崩壊の危機に晒されていまス…
悪く悪く考えすぎる辰之助だった
─チャッ
「Σ!!」
この音は……!!
ソ ソロバン──!?
そう、辰之助の背後に近づくある人がいた
(そして思い出したが実は今仕事中なのをこっそり抜け出してきちゃったところなのでしたー!河合さんだろうな…きっと…)
「……」
辰之助のすぐ後ろでその気配が止まる
そして首に冷たい何かが…
(ひ~~~っっιιιι)
「いけないねぇ、休憩時間はもう過ぎているよ」
「あ……?」
───────
「あ。辰兄だ!」
「おう、しかも後ろにいんのは」
『山南さんじゃないですか』
「?」
そう、辰之助の後ろにいたのは…
「〝時は金なり〟無駄にしてはいけないよ?市村君」
〝山南敬助〟
穏やかに笑う、彼がいた
.
『さて、修練の時間も近づいて来たし俺はそろそろ行くよ』
そう言うと雅は背を向け歩いていく
『雅~今度暇な時に団子食べに行こ~ねえ!』
そう早弥が話しかければ、雅は手をふってくれた
雅が行って鉄達に向き直った早弥だったが
「いや、しかし…
・・・
こんな可愛い新撰組隊士は初めてだ!
そうだ、稽古なんて止めて沖田君も誘っておじさんと遊ぼうか?楽しいぞ~vV」
「………」
と
鉄が山南に高い高いをされているところだった
皆は何を言えばいいのかわからず、鉄も悪意のない言葉に相当落ち込んでいるようだ
だが、そんな事を山南はわかっていなかった
「まだまだ遊びたい年頃だろうに…いくつになるのかな?鉄クンは」
・・
「十五っス」
「………」
「んーーー…メガネがくもっていたかな少し」
「いや、別にくもってなくても小…」
─ガチッ
ドスッ
ドスっ
落ち込む鉄にトドメをさすような事を言いそうになった藤堂を、永倉は顎に一発、原田は顔に一発早弥は腹に一発くれてやった
.
「……もしかしてサァ…」
そう言う鉄の目にとまったのはソロバン
「あんた辰兄の友達とか?」
「んな訳あるか~~!!」
鉄の〝あんた〟発言に動揺する辰之助
「大体目上の人には敬語使えって言ってるだろ!!っていうか使ってくれよ頼むからι
すみませんすみませんホントに~」
泣きながら言う辰之助を無視し、鉄は話を進める
「じゃ会計のお偉いサン?」
「いや…ソロバンとは関係ない役職なんだが。なんというか…計算すると心が落ち着く性格でね、必需品なんだ
こう…
腹ワタが煮えくりかえる時なんか特にね…」
─怖ッ…!?
山南の怖い一面を見てしまった皆だった
「でも良く考えりゃー辰兄とは雰囲気違うし友達なハズねぇよなー」
「ああそう?」
「更に言えばあいつらよりエラそうっ」
「「「ああそう?」」」
「雫はもちろん違うからな?」
『はいはい』
さりげなく凄く失礼な事を言ってますよ鉄クン
「いや…そんなに偉い者でもないよ?〝副長〟というだけだし」
「フーーーン…」
─ガシィッ
.
「今までドコ行ってたんだァア
バカ副長──ッ!!!!」
─がばぁ
余りの真実に鉄は我を忘れて山南を押し倒した
「なんで留守にしてたんだよ──ッしっかりしろォー!」
「しっかりするのはお前だ──!ι」
鉄が山南を揺さぶる中周りの皆は慌てだす
早弥だけは暖かく見守っていた
「あんたが居ねぇうちに鬼の化身が新撰組乗っとっちまったぞ!ιどーりで怖ぇはずだぜ!!偽物かよ~!!ιこうなったらアンタも危ねェ!!早く逃げろ」
「ずいぶんな言われ様だね
・・・
土方君も…」
「───土方君?ι」
「…新撰組には〝副長〟が二人居らっしゃるんだよ」
辰之助は涙を流しながら鉄に言った
「隊の動きは全て近藤局長・山南副長・土方副長の話し合いで決まるのさ。きっと二人より三人が良い知恵も浮かぶってもんだよ」
「………」
辰之助の説明に山南は少し考えるそぶりを見せた
「そーかァ?鬼副長の独断に見えるけど」
「わ、分からないだろ──?本当のところは!」
この会話に永倉隊三人は目をそらした
「な──んだぁ」
鉄の呟きに皆が目を向けると
「え──っと、山な…みサンだっけ?
この人だけが副長ならよかったのにな──」
その言葉に皆が固まった
もちろん山南も
「俺、山南さんか近藤さんだったら小姓やってもいいなー。優しいしいい人っぽいし!」
『鉄クンいい事言う~』
「そ、そうか?」
思わず早弥は鉄の事を誉めていた
「…あ、えーと…。ありがとう鉄之助君…
おかげで少し、勇気がわいたよ」
「『!』」
山南の手に力が入る、それに気づいたのは藤堂と早弥だけだった