あれから夜になり、隊士達は酒を飲み騒いでいた
だが鉄だけは縁側に座りほうけていた
「………」
─カラッ
「お酒は嫌いですか?」
「鉄クンもどお?」
そんな鉄のもとに沖田と早弥が会いに来た
「………」
「私も好きじゃないんですよねー」
『そうそう、アレは飲み物じゃないよね~』
「………」
聞いていないのか反応がなく沈黙が流れる
「──先刻はすいませんでした」
それをやぶったのは沖田からだった
「どうも力の調整が出来ないっていうか…気付くと敵を見る目になってしまって」
静かに語る沖田
「そのせいで誰も稽古してくれないし、土方さんにも心配かけてばかりだし…」
『あれ?私は総司と稽古してるけど?』
少し落ち込んでいる様子の沖田を慰める様に笑いかける早弥
「…そうでしたね」
その言葉に嬉しそうに微笑み返す
「けど、危ない奴ですよねぇ私って!」
「本気だったんでしょ?」
一瞬固まる二人
構わず話し続ける鉄
「気にしてませんよ。っていうか、むしろ嬉しいし」
「──…よかった」
鉄の言った事は、二人にとってとても嬉しい言葉だった
「鉄くん…一つ…聞いていいですか」
「何?」
「誰の、仇を討つんです?」
それは早弥も気になっていた
鉄はさっき土方に言われた事を思いおこす
「なんで、わかったんだろ?あの副長…やっぱ態度に出しすぎなのかな俺…」
『鉄くんの目、すごく必死に見えたよ』
「………」
何かを思いだす様に鉄は語りだす
「二年前、俺の父ちゃんと母ちゃん…目の前で殺されたんだ」
風が三人の間を吹き抜ける
「辰兄は家にいなかったし。俺は押し入れに隠れてて助かったけど…何も、出来なかった」
その時の事を思いだしたのか、鉄の手に力がこもる
.
「──…あの時」
あの時とは、沖田に攻撃をくらった時だろう
「あなたの目が、あの男の目と重なって─また何も出来ないのか、またこの目に負けるのか。俺はなんて、弱いんだろうって──…」
鉄の脳裏に楽しかったあの頃──お父さんとお母さんの笑顔が浮かぶ
「そう思ったら
悔しくて
悔しくて──…」
鉄の瞳から大粒の涙が流れる
──────
「──…鉄クン…」
沖田が話しかけるも歩き出す鉄
『何処へ行くんですか』
しばらく黙るが話だす
「辰兄には言わないでください。辰兄、父ちゃん達が殺されてからは毎日向かない肉体労働して俺のこと食わせてくれたんです。でも新撰組に入れてこれからは得意のそろばんで食っていけるって喜んでる。危ない目になんてあわせられないよ」
『鉄クン…』
本気にお兄さん思いだなぁ
「ええ、でも。…一人で生きていくつもりですか」
鉄に語りかける沖田
でも
「必ずここに戻ってきます」
心配は…
「もっと強くなって」
いらないみたいだ
「今度こそあなたを倒す」
強いね鉄クンは
「もっともっと強くなる為に」
君なら
「絶対、新撰組に入ってみせる!」
出来そうな気がする
鉄の背は堂々としていた
──…この子
似てるなァ…
「…仇を討つと言いましたね」
沖田と早弥は鉄の背に問う
『その為になら、人すら捨てられますか』
「『鬼すら恐れませんか』」
「…鬼ですら
倒してみせます!」
「…よろしい」
『………』
鉄の目には強い意識が宿っていた
「それでは
良いことを教えてあげましょう」
.
まだしばらく続きます。