─カパッ
「………」
─戌の刻あたり
島原は輪違屋脇の小道に忍んでいてごらんなさい
土方さんの言った意味が分かります
沖田と早弥が言っていた〝良いこと〟を聞き鉄は身を潜めて時が来るのを待っていた
「(ケドよぉ…)」
いくら待っても何もおこる気配はなし
「(花街のはずれじゃんココ…)」
ただ時間が過ぎていく
─ざり…
「Σ!!」
とそこへ何者かの足音が聞こえた
「綺麗どすやろ夜桜…あんさんにも見せたかったんどすえ」
「…そうだな」
京都弁を喋る女の声と、どこかで聞き覚えがある様な声…
「だが、屯所の桜の方が美しい」
「まぁ、つれないお方…でも、そこが一番素敵どすえ
土方副長」
「………」
そこには、昼間鉄のことを怒鳴りつけた土方歳三がまさに目の前にいた
しかしその隣には土方にくっつく女がいた
そして、二人は鉄に見られているとはつゆしらず
二人の世界に入っていった
「(お堅い人だと思ってたのに…!ι」
鉄の目から見れば信じられない光景だった
そこへ…
─ザザザザ…
「!!」
何処からか来たのか土方を囲む様に男共が現れた
女もさりげなく口が笑っていた
「土方歳三だな…?」
男の一人が土方に聞く
「…だとしたらどうする」
土方は冷静に言い返す
しかし、それが気に入らなかったのか
「幕府の犬め…!
天誅!!」
一斉に土方に飛びかかる
「土方さ…」
それを見ていられなく飛び出そうと身を乗り出した鉄
だが…
─シュン
.
「ぎゃああッ!!」
鉄には何がおこったのか分からない
いや
頭が追い付いていないのだろう
その間にも土方は男共を斬り捨てていく
ある者は顔を斬られ
ある者は胴を斬られる
「あ…ああ……」
女は恐ろしい光景に動けずにいて
鉄は土方から目がはなせなかった
「…なかなかの芝居だったな」
土方は女に目を向ける
「お願い…ッ許し…」
命ごいをする女
けど…
─ブシュッ
「ぎい…!」
容赦なく左目をその刀で貫く
女の声を聞き鉄は吐気に襲われる
「くそう、貴様…!よくもお三津をォ!!」
女の彼氏だったのか一人の男が土方に刃を向ける
だが…
─ザンッ
土方には敵わずその手と首は飛んだ
「うゎあッあ…ああ…
うあぁああぁ!」
斬られた男の体が鉄に倒れこむ
あまりのことに鉄は完全に混乱してしまった
そこへ
「鉄クン!!」
『鉄クン!しっかり!!』
新撰組の隊服をなびかせ一番隊がそこに到着した
「お…沖…?」
「ケガは無いですか?」
「──!!」
「私達が出る必要はありませんね…」
『土方さんだけて充分だったな』
そこでやっと新撰組が来たんだと鉄は分かった
「どうして…それに、早弥さんその格好…」
早弥が隊服を着ていることに疑問をうかべる
『え?ああ…言ってなかったね。私も新撰組一番隊の隊士なんだよ』
「!!?」
驚くが理解した鉄
そして、今のこの状況を教えてほしいのか沖田に視線を送る
「…すべて分かっていたんですよ。彼らが長人づあること、女を使って土方さんをハメること…」
何も言えない鉄
─パチャ…
血溜まりを踏む音が静かなこの空間によく響く
「──ガキ」
固まる鉄に土方は言う
「分からねェなら教えてやる」
残酷な言葉を…
「ここで身に付くのは
鬼のなり方だけだ」
何も言えない
土方達は去り、そこには地獄絵図の様な光景があるだけ
──鬼すら 恐れませんか──
沖田と早弥の言葉が蘇る
手につく血がやけに赤黒く見えた
──…キモチ ワルイ
──お前は
本当は、デカイ男だ…
きっと なれるサ
きっと──…
.