短篇集的な何かです
【ドンケルハイト】
賢者の石の材料であり、生息地は黒い大樹の森の中の奇跡の森、11月8日~25日でしか採れないとされている花の名前である
なぜ他の時期に採れないのか?
この花の秘密に迫っていこう
まずこの花は時期以外では咲いていない
ではどこにいるのか?
答えは簡単だ、地面に埋まっているのだ
月の力を存分に蓄えると花が枯れ、根に球根を増やす
こうして考えると、ドンケルハイトはもっと増えているはずであった
誤算だったのは、彼等は栄養価がとても高かったこと、その一点だったのだ
彼等が初めて感じたのは危機感だった
この辺りのモンスターもドンケルハイトを食べる
しかも時折やってくる派手な格好の者達が何かを地面に指し、高揚感が駆け巡った後無理やり本体(球根)ごと連れ去られるのだ
連れ去っていく連中も分はわかっているのか、すべては採っていかない
それでも少しずつ、少しずつ数を減らしていった
そんな花達の中で一輪、崖に咲いていたため長くを生き、栄養剤の恩恵を極限まで受け続けた花は、ついに知性を得た
初めて物事を考えた花は思った
このままでは全滅する!
花達は根っこで繋がっていた
心も繋がっていた
それはそうだ、彼等は根っこに球根を作り、そこからさらに球根を増やしていくため、根っこではつながっているのだから
根っこでつながっている花達に、心は伝染した
心を手に入れた花達はある決意をする
ここから出よう、と
次の開花の日、開花の瞬間を見に来たのか、複数の踏みしめる感じが伝わってくる
「トトリちゃん! 今日ドンケルハイトの日なんだよ!」
「うわぁ、すごい…こんなきれいな花、初めて見ました! うわぁ…」
「ねね! すごいでしょ! ドンケルハイトって言ってね、すっごい素材なんだよ!」
「珍しくロロナ先生が先生っぽい…「ふぇ!?」な、なんでもないです! あ、そろそろ咲きそうですよ!」
「じゃあ咲く前に、栄養剤ィ~! プスッとな~」
ふるふると花達が震えだし、開花…しなかった
ズボッという効果音とともに、花が地面から自ら出てきたのだから
そう、花達は栄養剤を待っていたのだ
奴ら錬金術士?共は、咲いたあとでしか採取しない、しかも栄養剤という摩訶不思議なごちそうを惜しげも無く使ってくれる
自らの足で逃げるための栄養剤を運んでいるともしらずに!
「「え、えぇええええええ!?」」
その花あ、立っていたのだ、自らの足(根)で
驚くのもつかの間、その好きに花達は逃げ出した
誰も採られたことがない情報を元に、崖に咲くドンケルハイトの元に、自らの足で!
ただしその歩みは、さながら生まれたての子鹿のようであった
「「あ、歩いたぁ!?」」
「って、なんでロロナ先生まで驚いてるんですか! こういう花なんじゃないんですか!?」
「ううん、私が知ってるドンケルハイトはあるかないんだけど、なんでだろぉ…、う~ん…」
「ロロナ先生! どうするんです! 逃げちゃってますよ!」
「もしかして師匠が取り過ぎちゃったから!? もう採れなくなったらこれって私のせいになるの!? 師匠のバカー!! うわーん!!」
「うわ、先生が泣いてる!? し、しっかりしてくださいぃ~!! って、あれ? なんでこの子は逃げないんだろ…」
彼等も馬鹿ではない
採る数を減らしてくれれば、栄養剤(錬金術士)という存在は大歓迎なのだ
モンスターに狙われやすい場所からの逃亡はいつでも出来た
しかしすぐに移動しなかったのは、栄養剤をくれる人からすればどこに移動したかわからない、見つかるまで栄養剤を一生もらえなくなってしまうかもしれない事態を避けるため、ドンケルハイト達は栄養剤が来る日に決行したのだ
そして、自分たちを欲しているのも分かっている、9を助けるために1を犠牲にする、ドンケルハイト達の苦渋の決断なのだ
「うわ~生贄っぽい… ロロナ先生、なんだか使いにくくなちゃったんですけど…」
「だね~、どうしてこうなっちゃったんだろぅ…」
ドンケルハイトは今日も元気に崖で咲く、栄養剤を待ちながら
多分、それほど続かないかもしれませんが、のんびり見てやってください