新人アイドル応援番組「明日のアイドル一番星」
司会は天道輝でお送りします。
アイドルマスターSideM(ドラマチックスターズ)とアイドルマスターシャイニーカラーズ(イルミネーションスターズ)の越境もの。
主にSideM側、天道輝というアイドルについて掘り下げたものになります。

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シャニマスでのプロデュース中、シーズン1でラジオ収録を失敗し、ファン数が足りなくなったためにオーディション「明日のアイドル一番星」を受け、その後にW.I.N.G優勝およびトゥルーエンドまでこぎつけた激アツ展開を経験し、

「もし輝が一番星とSPOTLIGHTのせいにしての司会だったら、プロデュース中に輝と2回も出会っているのでは!? 」

という天啓を得て執筆したものです。
よかったら見ていってください。


明日のアイドル一番星

「──じゃ、今日は頑張ろうな! 」

 

「準備いいですかー? 」

 

「お、時間だな……。はい、お願いします!! 」

 

 舞台裏から駆け足を使い、この番組のため組まれたセットの中心近くに立ち、はつらつな返事をADに返す。

 ADは頷くと、撮影開始のカウントダウンが進んでいく。

 ここに来て最後の深呼吸。

 初めてテレビというメディアに出演する彼女たちを緊張させないようにするには、俺が堂々とするのが手っ取り早い。

 

 3,2,1とカウントは進み……カメラが回り始めた。

 自身のソロ曲のボーカルカット版、爽快な音楽があいさつ代わりに鳴り響く。

 

 カメラの向こうの見ていてくれる人たちに向けて、変身ヒーローの決めポーズのごとく、マイクを持っていない方の手を掲げ、人差し指を立てた。

 

「──明日のアイドル! 一番星!! 」

 

 始まったのは、新人アイドル発掘番組、「明日のアイドル一番星」。

 デビューから2ヶ月以内のアイドルを対象に、その魅力をメディアで発信する最初の機会として企画されたものだ。

 

 司会は俺、天道輝。

 28歳、元弁護士だ。

 

 ある日、ひょんなことからアイドルとして活動することになった俺は、315(サイコー)プロダクションという男性アイドルのみが所属する事務所でかけがえのない仲間と出会い、その仲間たちや拾ってくれたプロデューサーと一緒にアイドル界の一番星になるべく、夢を追い続ける毎日だ。

 

 ──そんな日々の中で、飛び込む前は少しだけ不安だったアイドルとしての仕事になんとなく自信が持てるようになっていた頃、この仕事が舞い込んできたという訳だ。

 

「ではお待ちかね、今日のアイドルに出てきてもらいましょう! みんな、拍手で迎えてあげてくれよな! 」

 

 パチパチと、スタッフを含めてなお10人もいない観客が、おおらかに人を迎えるような拍手をする。

 人は少ないものの、その雰囲気は充分に場を暖めてくれた。

 

 拍手に乗じて、3人の少女が円形のステージに現れる。

 

 直前まで緊張していたためか、地面より一段高いステージに転びそうになるメンバーを慌てて支えつつ飛び出すというなんとも締まらない登場だったが、観客の笑顔を誘い、結果的に彼女たちの緊張もほぐれたようだ。

 

「はい、今回登場していただいたユニットは……! 」

 

 チラリとアイコンタクトを取ると、黄色のアクセントが入ったユニット揃えの衣装を身に纏う快活そうな金髪の少女が他2人に促し、呼吸を合わせた。

 

「「「私たち、イルミネーションスターズですっ!! 」」」

 

 息の合った名乗りと共に、この番組は始まった。

 

 

 

 

 番組内の企画は多種多様だが、特に人気のあるものは、この企画だ。

 

「目指せ一番星! なりきりファーストスタ~!! 」

 

「イェーイ!! 」

 

「い、いえー……? 」

 

「むん、頑張ります! 」

 

 三者三様の返事を聞きつつ、手に持ったルール表を流し見してから企画説明を行う。

 

 ルールは簡単。

 箱から文字の紙を取り出し、書かれていたお題になりきって俺のソロ曲「THE FIRST STAR」のサビを歌う、といったものだ。

 自身のソロ曲を目の前で歌われるのは少しだけ気恥ずかしいものの、それは真剣に取り組む新人たちの前ではおくびにも出さなかった。

 

「じゃあ、はじめは櫻木さんからどうぞ! 」

 

「ほわっ……で、できるかな……? 」

 

「「ファイト(頑張れ)、真乃! 」」

 

 赤をアクセントに入れた薄桃色の髪の少女、真乃はお題箱から紙を掴んで取り出し、それを開く。

 

「えっと、中身は……【遅れてきたサンタ】、ですか? 」

 

「その通り。悲しいことに、お正月にやって来てしまったサンタさんだ。……では、ミュージックスタート! 」

 

「え、ええ~!? 」

 

 困惑する真乃をよそに、サビ前のメロディが鳴り始めた。

 

 ……

 

「──今日はいい日じゃ~」

 

 おじいさんのような言葉遣いで歌詞をアレンジした真乃は、アドリブながら中々の完成度で歌い切る。

 彼女の声には、聞くものに癒やしを与えるように思えた。

 

「……櫻木さん、ありがとう! 皆さん拍手をお願いします! 」

 

 観客は真乃へ精一杯の拍手を送る。

 

「ほわっ……ありがとう、ございました。」

 

 真乃は緊張しながらも深く一礼をして、ステージからユニットメンバーの待つ場所へと戻っていく。

 次は青をアクセントにした衣装と整えられた黒髪が特徴的な少女、風野灯織の番だ。

 撮影直前は誰が見ても緊張していると言われるであろう緊張ぶりの彼女だったが、今は少しだけ落ち着きを取り戻しているようだった。

 

 

 

 

「では、今回はここまでです! お相手はドラマチックスターズ、天道輝と! 」

 

「「「イルミネーションスターズでした~!! 」」」

 

「は~い、オッケーでーす。」

 

 カメラが切られると、ADが手で丸を作った。

 

「はぁ、緊張したよ~。」

 

「うん。ラジオとはまた違った感覚だった。」

 

「でも、楽しかったね。」

 

「うん! もちろん楽しかった~! 」

 

 スタッフへのお礼を済ませると、今回のゲスト、イルミネーションスターズの3人は緊張が解けたことで、自然体で今日の感想を話し合っていた。

 ならば邪魔することも無いかとスケジュール帳を取り出して確認しながら楽屋へ荷物を取りに行こうとした時。

 

「あの、天道さん。」

 

「ん? 」

 

 呼ばれて振り向くと、そこにはイルミネーションスターズと、そのプロデューサーであろうスーツを着こなした男性が居た。

 

「今日はありがとうございました。」

 

 プロデューサーが頭を下げると、3人も続いて頭を下げる。

 

「良いですって、お礼を言われるようなことはしてないですよ。」

 

 なんとなく気恥ずかしくなり、頭を上げるように言ったところで、プロデューサーは頭を上げた。

 

「実は、うちのイルミネーションスターズが、あなたにお礼を言いたいと申し出ていまして。」

 

「え? 」

 

 呆気にとられているうちに、プロデューサーは3人を俺の前に立たせた。

 

「えっと……今日は、天道さんのおかげで緊張せずに話せました! 」

 

「私も放送前に緊張をほぐして頂いた事と、番組中での数々のフォローに対して、お礼を言わせてください。」

 

「わたしも、天道さんってすっごく話しやすい人なんだなーって思った! あと、いっぱい喋れて楽しかったな~! 」

 

「私からもお礼を言わせてください。あなたが導いてくれたおかげで、うちのアイドルはこれからもっと輝くためのヒントを得ました。──ありがとうございました。」

 

「「「ありがとうございました!! 」」」

 

「……。」

 

 ……。

 

「あの、天道さん? 」

 

 真乃が心配そうに覗き込んでいるのを見て、ハッと意識が戻る。

 

「いや、大丈夫。……ありがとな、櫻木さんに風野さんに八宮さん! 今日はとてもいい感じだった。だから、その調子でアンタ達3人で一番星を掴んでくれよな! 」

 

「「「はい!! 」」」

 

「うん、良い返事だ! ……また共演できる時には、福島名物の薄皮饅頭を食わせてやるよ! それじゃ、お疲れ様でした! 」

 

「「「お疲れ様でしたー! 」」」

 

 笑顔であいさつをする3人とそのプロデューサーを尻目に、そそくさと楽屋へと戻る。

 

「輝さん、待ってました~。」

 

「遅い。弁当は用意しているんだろうな。」

 

 楽屋には別スタジオでの仕事を終えた俺のユニットメンバー、柏木翼と桜庭薫が座っていた。

 

「あー悪い、先に食べてもらったほうが良かったか。」

 

「そういう話では無いんだが……。──ん? 」

 

 桜庭は俺の顔を見るなり、眉を吊り上げて不思議そうにこちらを見つめる。

 

「何だよ、桜庭? 」

 

「……いや、なんでもない。」

 

「本当に何なんだよそれはー! 」

 

「まぁまぁ、輝さん、薫さん……。」

 

 明らかに何かを含んだ微笑みを浮かべた桜庭に突っかかる俺を翼が止める。見慣れたいつもの光景だ。

 しかし、今回は何かが違うようで。

 

「……あれ? ほんとだ。輝さん、何かいいことありました? 」

 

「何だ、翼まで藪から棒に? 」

 

「いえ……。あ、そうだ。鏡見てみます? 」

 

 ちょいちょいと椅子ごとに取り付けられた化粧鏡を指す翼に促されて鏡に顔を映す。

 

 ──そこには、にやつきを抑えきれていない28歳、元弁護士の顔が映っていた。

 ……俺、こんな表情で楽屋まで来たのか?

 

「自分の表情も操れないとは、アイドルとしてどうなんだ? 」

 

 桜庭が放つため息混じりの皮肉にも今回ばかりは反論できない。

 

「きっと、とても良いことがあったんですね。一緒に弁当でも食べながら、オレたちに聞かせてください。」

 

 ニコリと屈託のない笑みを浮かべた翼は、弁当を取り出しつつ椅子に座り直す。

 ぐにぐにとにやけ顔を引っ張ることで無理やり直して座った俺は、こうなった原因を思い返した。

 

「──今日の収録、新人のアイドルたちからお礼を言われたんだ。」

 

 

 

 

 一番星。

 それは、夜空でいちばん最初に輝く星のこと。

 

 天道輝の夢は、ヒーローになることだった。

 星のように誰かの道標となり、迷える人々を優しく導けるような、そんなヒーローになりたいと思っていた。

 

 ある事情から弁護士を退職しアイドルとなった今も、それは変わっていない。

 だから、今回のお礼は、彼にとって重大な意味を持っていた。

 

 ──あなたが居てくれたから、もっと輝くためのヒントを得る事ができた。

 

 処女航海に戸惑う船を導くため、夜空に煌めく星のように。

 一番星は輝き、太陽に負けないヒカリで、安心を届けたい。

 たとえ案内が終われば、彼らが空を見上げることは無くなろうとも。

 

 ──心配せずとも、隣にはキミの仲間がいるということを、知らせてあげたい。

 

 天道輝の望みは、この番組の中で、確かに達成されたのだ。

 

「……とても、良いことがあったんですね、輝さん。」

 

「僕も、それをどうこう言うほど野暮ではない。……良かったな」

 

「ん? 桜庭、いまの! 」

 

 俺が身を乗り出すと、桜庭はこれみよがしにため息をついた。

 

「……今回くらいは君を認める。そういったんだ、天道。」

 

 わずかに眉をひそめつつ言い直す桜庭。

 

 ──今日あった嬉しいことが、2つに増えた。

 

 

 

 

 数ヶ月後。

 番組のために特設された大規模な会場で、生放送が行われていた。

 W.I.N.G二次選考を突破したアイドルたちを対象に、ライブバトル形式のオーディションを行う番組だ。

 1位のユニットには、演出で当てられたスポットライトをそのまま当てられ、その場でライブを披露することができる権利が与えられるのだ。

 

 司会を任された俺と桜庭、翼は司会席に立ち、ちらりとオーディションを受ける顔ぶれを見る。

 

 ──そこには、いつかの番組で共演した3人組、イルミネーションスターズの姿もあった。

 

(おわったら、もらったうすかわまんじゅう、いただきます! )

 

 口パクをしつつこちらに手を振ってきためぐるにさりげないアイコンタクトを取ると、頑張るぞ、といった風に3人で小さくガッツポーズを取っていた。

 

 ──頑張れ、と司会という中立の立場ながら応援したくなる気持ちを抑えて本番を待つ。

 

 彼女たちの登竜門、夢の舞台までもう少し。

 開始のカウントダウンに合わせ、ドラマチックスターズで呼吸を合わせる。

 

 3,2,1……。

 

「せ~の!! 」

 

「「「SPOT LIGHTのせいにして!! 」」」

 

 

 ──夢の舞台へ立った時。

 

 ──俺のヒカリが、少しでも役に立ちますように。

 

 




「ねえねえプロデューサー、輝さんから薄皮まんじゅうをもらったよ! 大切な人と食べなさいって! だから、イルミネのみんなとプロデューサーと食べることにしたんだー! 」

【今度はお礼に餃子を食べさせてあげよう】

「もちろんだよ! 餃子、もちもちのパリパリにしようね! 」

(よし、楽しく話せたな)

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