それではどうぞ!
〜春〜
「勝己、あんた案外制服似合うじゃない」
「案外ってなんだよ!」
「学ランの方が似合ってるかもと
思っていたけどブレザーもってことよ」
お袋は真面目な顔で言う。
「・・・おう、もう出るぞ」
「ちょっと待って勝己!」
「なんだぁ?!」
俺はお袋に振り返った。
「行ってらっしゃい!」
「・・・行ってくるわ」
——————————————————-
俺は雄英高校への電車に1人で揺られていた。
まだ時間も早く電車内の客もまばらだった。
(ったくデクのやつ、なんで俺おいて
先に行くんだよ・・・)
俺は携帯に表示されているデクからの
メッセージを見て思う。
そこには『用事があってかなり早く家を出るから
明日の朝は一緒に行けないからよろしく』と。
用事は教えて貰えず、
時間を聞くとホームルーム開始1時間前には
学校に着きたいと返ってきた。
それを受けて俺も大分早く家を出たのである。
・・・流石に1時間早く出るのは勘弁だったが。
腕時計はホームルームの40分ほど前を
指し示している。
《次は雄英高校前〜次は雄英高校前》
「っと、着いたか」
(さっさと学校行ってデクから用事の内容を
吐かせよう)
そう思いながら電車のドアを出た。
—————————————————-
「学校広すぎんだろ・・・」
校門から教室までよもや10分もかかるとは
思わなかった。
(流石というか、大袈裟というか・・・)
改めて雄英高校のスケールのデカさには
驚かされる。
「あった・・・ドアもデケェのかよ、
バリアフリーってことか?」
俺は扉に手を掛け勢い良く開ける。
真っ先に目に飛び込んで来たのは・・・
直角に綺麗にお辞儀する深緑のもさ髪の少年。
「試験日の程は申し訳ありませんでしたー!」
その姿勢のまま謝る、『恐らく』俺の知り合いの
コイツを見てため息が出た。
「何やってんだデク・・・」
「か、かっちゃん?!何で?!」
心底驚いた様子のデク。
「何でって、何がだよ」
俺は自席にカバンを置きながら話す。
「時間だよ!どうしてこんなに早く?」
「お前が早く学校に行く理由を知りたかった・・・
っても今ので分かったけどな。」
「そ、そう?どうだった僕の謝罪」
おずおずと俺に聞いてきた。
「困惑しか感じなかったわタコ、もうちょい
何かあっただろうが・・・」
「そ、そんなぁ?!コレよりいい案なんて・・・」
ガラッ
デクの言葉は扉の開く音に遮られた。
俺もデクも扉の方に視線を向ける。
そこには、あん時のメガネがいた。
「き、君!合格していたのか?!」
メガネは驚いた声で叫ぶ。
「ったりめぇだろうが、何寝ぼけたことを」
俺の言葉に反応する。
「君じゃない!君が合格しているのは
ほぼほぼ分かっていたよ!たが・・・」
メガネの視線がデクへ向けられる。
「よもや君が合格しているとは・・・
一体どうやって「実力だよ」」
俺の言葉にメガネは顔に疑問が浮かぶ。
「なぁデク?」
「ここで僕に振る?はぁ・・・」
デクは嫌そうな様子でメガネに向き直る。
「んんっ!緑谷出久です。よろし「違ぇ!」」
「今言うべきは入試の成績だろうが!
名前なんて何時でもいいんだよ!」
「ぼ・・・俺も是非聞きたいな」
「えぇー・・・」
メガネも食いついてきたことに
不満の声を上げる。
「・・・じゃあ言うよ?」
「はよ言えや」
必要ない確認を俺に取ってくる。
「ヴィランP81ポイント、レスキューP60ポイント
です・・・」
「つまり?」
俺が間髪入れずに続ける。
「つまり・・・実技試験『首席』・・・になるかな」
「て事だメガネくん、凄ェだろコイツはよ」
俺は言いながら振り返った。
そこには口を開けたまま固まっている
メガネがいた。
「おーい」
俺は肩を叩きながら言う
「はっ!」
どうやら我に返ったらしい。
「失礼少し、驚きのあまり・・・
てっきり君がトップかと・・・」
「2ポイント差で俺は2位だ。
それよりお互い何か言うことあんじゃねぇの?」
メガネの言葉を軽く受け流し、
俺は言い放つ。
「そうだねかっちゃん、
とりあえず君の名前は?」
「飯田・・・飯田天哉だ」
「よろしく飯田くん。それと、
試験日の事は本当にごめんね」
「いや・・・謝るのは僕の方だ緑谷くん。
君の事を何も知らないのにも関わらず、
発言一つだけで『物見遊山』等と罵ってしまった。
僕はヒーロー失格だ・・・」
「そんな事はないよ!
あれは僕の発言が・・・」
「いや、あれは・・・」
俺はデクとメガネのやり取りを
椅子に座りながら見ていた。
(良かったなデク誤解が晴れて、
後は丸顔女か・・・)
がそんなに心配はしていない。
デクの性格は話していたら直ぐに分かるしな。
俺は2人の会話に耳を傾けた。
「いやはや爆豪くんには驚かされたよ!
あのギミックに向かって行くことを提案
するのだから!お陰で僕のレスキューPも
高い評価を受けていたからね」
「でしょ!かっちゃんは凄いんだよ!
でも少しセンチメンタルなとこがあってね。
そこを指摘するとキレるから要注意「おい」」
デクがギギギと音を立てて此方を見る。
「な、何かっちゃん?」
「誰がセンチメンタルだって?」
俺は『笑い』ながらデクに近づく。
「ち、違うんだよ!そこもかっちゃんの
チャームポイントだっていうのを!」
「死刑確定」
俺はデクに拳を振りかぶる。
デクはいつも通りノーガードで
拳を受けようとし、メガネも流石に
デクが悪いと思ったのか止めにこない。
「歯食いしばっとけよデク」
俺がデクの頭にゲンコツを振り下ろされる
その瞬間、何か柔らかいものが俺の拳と
デクの頭に挟まれた。
「何だこれ?」
よく見るとクッションだった。
「入学初日だと言うのに何を
しているのですか?!」
声の方を見ると、ポニーテールの
巨乳の女がいた。
所謂美人と呼ばれる顔立ちだが、
目は吊り上げられ此方を睨んでいる。
俺とメガネの横をすり抜けてゆき、
デクの元へと歩を進め、手を差し伸べる。
「大丈夫でしたか?怖かったでしょうに・・・」
嫌に優しい笑顔を向ける。
俺はそれに違和感を感じた。
「い、いや、ダイジョブだよ。」
デクも困惑気味だった。
「どうぞお使い下さいな」
女はそう言うと、手からハンカチが飛び出した。
「ありがとう・・・僕は緑谷出久、
ねぇそれって君の『個性』?」
「八百万百ですわ。
そうこれは私の『個性』で創り出しましたの。」
「創り出すって事は、どんな物でも出せるの?」
「生物ではなく、
なおかつ構造を知っていれば何でも」
『個性』の凄さを尾首にも出さず言う。
「す、凄いよ八百万さん!」
「そんな事はありませんわ。
私の『個性』も万能ではありませんもの。
誰しもがそれぞれ輝く場所がある。
それを学ぶ為にここに来た・・・筈なのに」
視線を俺の方に向ける。
「このような出会ったばかりの方に暴力を
振るおうとする野蛮な方々でも入れるとは
残念ですわ。」
「ひでぇ言い草」
「野蛮な方・・・」
メガネはダメージを負ったらしく、
膝から崩れ落ちていた。
「なぁあんた」
「あんたではありません。
八百万百という名前がありますもの。」
「ちっめんどい「何か?」何も?
・・・八百万は推薦入試でここに入ったのか?」
「何故そう思われたのですか?」
「何となくだな」
「理由はともかく、当たりです。
私は推薦入試で合格しました。
それが何か?」
気丈の態度を崩さない。
俺はその仮面を外す事にした。
「いや、なら知らねぇ事があるから
教えてやろうと思ってな」
「それは一体?」
「一つ、一般入試の実技試験はロボットを
ぶっ壊すものだった。」
俺の言葉に困惑の表情を浮かべる。
「それが何か?」
「まあ最後まで聞け。
二つ、それにはビルレベルの巨大ロボットが
現れた、0Pのギミックとしてな。
三つ、緑谷出久はそれを単身で無力化した。」
「えっ?!本当なのですか?」
驚きを孕んだ声で
デクにわざわざ確認をとる。
「えっと、まあ、はい」
「おいおいマジかよそれ!すげぇ!」
「すげぇんだなお前!」
デクが答えた途端、聞いていたのか
教室に生徒達が流れ込んできた。
「おっす!おれ切島鋭児郎!
お前みたいな熱いやつと3年間過ごせる
なんて嬉しいぜ!」
「俺は上鳴電気!よろしくな!
お前アレ倒すんなんてえぐすぎんだろ!」
「私は芦戸三奈!よろしく〜!」
「・・・」
「・・・」
ワラワラと入ってきた生徒達にデクが囲まれる。
俺はそれを横目にまだ驚いた様子の
八百万に話しかける。
「ほら見てみろよ。普通は『感嘆』すんだよ。
だが、お前は『驚き』だったなぁ?
ロボットの姿も見てないのに!
何故だ?」
「それは・・・」
言葉に詰まる。
「俺は、デクを手を差し伸べるべき存在、
つまり『格下』に見てたんだと思った。」
「そ、そんな『格下』だなんて!
私はそんな事は一度も!」
怒りの声で身を乗り出す。
「そうか?じゃあいいわそれで。
ただ状況確認もせずに間に入って己の
正義感振りかざすのは止めとけ。
俺と緑谷出久は幼なじみで、あれは向こうの
ちょっかいに反撃しただけ。
メガネもその場面を見ていたから止めなかった。
なんならメガネとデクに確認取れよ。」
「必要ありませんわ。
そこまで自信を持って言うなら本当でしょう。」
静かに話す。
「一つだけよろしいでしょうか?」
「ああ、何だ?」
「お名前、聞かせて頂いても?」
「爆豪勝己だ」
「爆豪さん、3年間よろしくお願いしますわ。」
そう言って手を出す。
(ここまで言われといて握手求めるとか
どんなメンタルしてんだコイツ・・・)
仕方なく握手を受ける。
「私に人を見下す面は無いことをこれから
示していければと思いますので。」
「へぇ楽しみにしとくわ」
「それじゃあ私はメガネの彼に謝って
来ますのでそれでは」
そう言い放つと踵を返しメガネの方へ
向かっていった。
瞬間、身体が浮く。
「・・・放せ丸顔」
「丸顔って呼ぶな!麗日お茶子やって!」
「ハイハイ、下ろせって」
丸顔が五指を合わせると体の浮遊感が消え
地面に降りる。
「合格出来たんだなお前」
「お陰で様で、
それより・・・また女の子に要らんこと
言ったんちゃうの?」
丸顔がジトっとした目で見てくる。
「ばぁか、向こうから突っかかってきたんだよ。
誤解生むような事すらした事ねぇわ」
「どの口が言うんよ・・・
それより、あのモジャ髪の子は?
やっぱり落ちたん?」
俺は無言でデクの方を指さす。
「居るやん!合格出来たん?!」
「出来たも何もアイツは首席だよ」
「しゅ、首席ぃ?!ホンマ?!」
叫びながら肩を掴んでくる。
「うるせぇ、てか離せ」
「ご、ごめん」
肩から手が離される。
「聞きたい事あんなら俺じゃなく直接
デクに聞けよ・・・」
「分かった!聞いてk「お友達ごっこしたい
なら他所へ行け」」
声の方を向くと寝袋に入ったオッサンがいた。
「ここは・・・ヒーロー科だぞ」
『なんかいるぅ!!』
その人物はのそっと寝袋から体を出した。
「ハイ静かになるまで8秒かかりました。
時間は有限、君たちは合理性に欠くね」
「ねぇあの人先生だよね?」
丸顔が小声で話しかけてくる。
「多分な、てことはプロヒーローなんだろうが
見たことねぇな・・・」
視線をくたびれたオッサンに向ける。
「担任の相澤消太だよろしくね」
『担任?!』
「早速だが・・・」
寝袋の中から体操服を出す。
「コレ着てグラウンドに出ろ」
—————————————————-
「「個性把握・・・テストォ?!」」
「入学式は?ガイダンスは?」
「ヒーロー目指すならそんな時間ないよ」
「そんなぁ・・・」
丸顔の嘆きを軽く流す。
「中学でやっただろ?
『個性』禁止の体力テスト。
緑谷、中学の時ソフトボール投げ
何メートルだった?」
「63メートルです」
「じゃあ『個性』使っていいからやってみろ
円から出なきゃ何してもいい」
デクにボールが投げ渡される。
「思いっきりな」
「分かりました」
そう言ってデクは手首の付け根を合わせ、
ボールを両手で挟み込んだ。
「ハンドボール投げだろ?」
「かめは〇波じゃん」
周りはザワつき始めた。
デクは腰を落として手を斜め上に向けた。
「はっ!!」
瞬間、強烈な風が辺りに吹き砂埃が舞う。
そしてボールは見えなくなった。
ピピッ
「まず自分の『最大限』を知る。
それがヒーローの素地を形成する合理的手段」
そう言って見せてきた端末には『685.7m』と
示されていた。
「なんだコレ!すげぇ面白そう!」
「685メートルってまじかよ」
「『個性』思っきり使えるんだ!
さっすがヒーロー科!!」
デクの結果を受け口々に話す。
「・・・・・・『面白そう』か。
ヒーローになる為の3年間、
そんな腹づもりで過ごす気かい?」
冷たい視線と声で周りは静かになった。
「よし、トータル成績最下位の者は
見込み無しと判断し除籍処分としよう」
『はあああ?!』
先公の発言に驚きの声を上げる面々。
「生徒の如何は先生の自由、
ようこそこれが『雄英高校ヒーロー科』だ」
「上等・・・!!」
デクと目が合ってそう呟いた。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
急募、峰田を除籍から救う方法。
まあそれは置いといて、
デクの確執が取れたかと思いきや次は爆豪・・・。
エリート嫌いは原作より酷いですからね、彼。
勿論八百万も悪気があった訳では
ないので悪しからず。
次回は峰田を救出する方法を見つけてからの投稿に
なるので少し遅くなるかもです。