それでは本編どうぞ!
目が開くと、覚えがない
真っ白な天井が飛び込んできた。
「こ、ここは?」
朦朧とする頭を振って
体を起こそうとする。
しかし、上手く体が動かない。
唯一動く頭で辺りを見渡す。
窓の外に見える闇が今の
時間を告げる。
徐々に覚醒してきた意識。
(そっか・・・俺はあの後・・・)
おそらく自分は病院に運び込まれたのだろう。
枕の近くにナースコールを見つけ押す。
直ぐに看護師さんがやって来た。
「起きたみたいですね。
右腕に違和感無いですか?」
「右腕?っ!」
言われてみれば右腕の怪我で
ここに来たであろうのにも関わらず
右腕にはギブスさえつけられていなかった。
「・・・無いです」
疑問はあったがありのままに答えた。
「そうですか!よかったです!」
俺の言葉を受けて看護師は
紙にペンを走らせる。
俺は看護師に尋ねた。
「ここは?」
看護師さんはペンを置いた。
「ここは市内の病院です。
恐らく混乱していらっしゃると
思いますが今日はもう遅いから
お休みになってください、って
もう今は日付越えてますけどね」
フフッと笑う看護師さん。
それから書類を脇に抱え立ち上がった。
「何かあったらナースコールを
押してください。
それじゃあお休みなさい」
そう言って扉を閉じる。
(お休みって言われても・・・)
近くの台に置いてあった携帯を見ると
時刻は午前2時と示していた。
(あん時が8時位だったから、
大体16時間も寝てたわけか・・・)
道理で眠く無い訳である。
「それにしても・・・
違和感無く治るもんなんだな」
手を開いたり閉じたりして
動かして見るが何か変わった様子も無い。
『力を込めて』動かすのは流石にやめといた。
(とはいえ・・・暇だな)
眠たくないとはいえ午前2時、
誰かに連絡出来る時間でも無いし。
(寝るしかねぇか・・・)
暇を潰す物が有るでも無し。
布団に戻るしか無かった。
デクとオールマイト、そして親に
『起きた』とだけメッセージを
送ってから眠りについた。
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朝、いつも通り5時に目が覚める。
もう習慣なので目覚まし時計が
無くとも目が覚めるのである。
そしてそのままいつも通り柔軟体操。
そのままの流れで日課のランニングしに
外に出ようとした。
そこでめんどくさいことが起きた。
看護師が俺を止めようとしやがる。
大丈夫だ!って言ってんのに聞きやがらねぇ。
自分の具合は自分で分かるってのに。
看護師3人を引きづったまま元気さを
アピールしていた時。
スパァン!
頭に衝撃を受けた。
「痛ってえ!何すんだ!」
「あんたこそ何やってんの!
怪我したんなら大人しくしときな!」
声を受けた。
聞き間違えるはずもなく
母の声だとわかった。
「・・・親父は仕事か?」
「ああ、どうしても外せない会議が
あるらしいからね。晩に来るってさ。」
「そっか」
(おかしい・・・怒ってない)
それこそ親子でないと分からない
口調に込められた感情。
勿論爆豪親子もそれがある。
間違えず察する自信もある。
にも関わらず母の口調から
『喜び』の感情が聞きとれた。
(分っかんねぇ、何でた?)
疑問もそのはず。
爆豪勝己の母、光己は怪我をすることに
めっぽう厳しかった。
その理由は言うまでもなく、
我が子を心配するが故であるが。
じゃあ何故今回だけ例外なのか?
(直接聞く事でもねぇが・・・気になる。)
「爆豪さん?
とりあえず部屋に戻りましょう。
ご飯もまだですし、お母さんもご一緒に」
思考は看護師さんの声に
よって引き戻された。
「ありがとうございます!
面会時間外なのに申し訳ありません。」
お袋が余所行きの声で謝った。
(さっき叫んでたろうが・・・)
そこを指摘出来るだけの勇気は
無かった。
2発目の平手を喰らうのはごめんだった。
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「では7時になりましたら担当医が
詳細の説明に参ります。
その後食事を配膳ということで
よろしくお願いします。」
看護師は説明をして部屋を出た。
部屋には俺とお袋が残った。
「これ、プリンとゼリー
朝ごはんの後にでも食べな」
バックから取り出しながら話すお袋。
「お、おう」
先も変わらず『いつも通り』。
(いや、寧ろさっきよりも・・・)
持ってきてくれた着替えを整理している
母の背中を見て思う。
「ねえ勝己」
「どした?」
作業の手を止めて話しかけてきた。
振り返り俺と目が合う。
その目は優しい目をしていた。
そしていきなり目が潤んだと思うと
俺に抱きついてきた。
「おめでとう」
「えっ?」
「えっ、て何よ!
あんた『個性』が出たんでしょ!」
爆豪の言葉にハッ!とさせられた。
爆豪からしたらこの『個性』は突発的な
ものではなく、オールマイトから見初められて
そこから自分の力で得たもの。
つまり『個性』を得た事に対して
驚きの感情は無かった。
『個性』が出た事は隠そうとしていた
わけではないが、何しろ引き継いだ
その日は報告する事は出来なかった。
故に母からしたら・・・
(なるほどな、
お袋が知るわけねぇもんな)
朝から感じていた違和感の正体
に気づいた。
そして母の体を抱き締め返した。
少し経ってから手を緩める。
「母さん思うんだけどさ」
離れたお袋が俺を見て言う。
「勝己に『個性』が発現したこと・・・
100人に聞いても100人が奇跡って
言うんだろうけど、私は違うと思う。
あんたが折れずにがんばったから、
だからこそだと思うよ。」
母から紡がれる思いの丈。
「やっぱり神様ってヤツは
諦めないとこにやってくるもんよ」
「お袋普段、神なんて信じてねぇだろうが」
「そうだっけ?
じゃあ今日から信じるわ」
歯を見せて笑いながら話すお袋。
(『神様』か・・・案外的を得てるかもな)
実際、日本の平和の守護神である
オールマイトに会い、認められたからこそ
今こうやって笑い合うことが出来るのだから。
(ごめんね・・・勝己・・・ごめんね・・・!)
自分に『個性』が無いと分かったあの時を
笑って話せる様に『強く』なろう。
それこそが恵まれた事への恩返し。
「お袋、俺『強い』ヒーローになるよ」
「強いヒーローか、
まああんたらしいっちゃらしいかな」
「らしいってなんだよ!
俺が力こそヒーローって
言ってる様に聞こえるじゃねぇか!」
「今そうやって言ったじゃないの!」
「っち!」
「あ!また舌打ちした!
あんたいっつも止めろって言ってるでしょ!」
スパァン!
「痛ってぇ!何すんだババァ!」
ギャーギャー!
この息子にしてこの母あり。
さっきから部屋に来ていた看護師は
親子のいきなりの豹変ぶりに入って
いけないかった。
「さっきまでいい話してたのに・・・」
いつもは父・勝や緑谷といったストッパーが
いるのだか、看護師達には間に入る事は
荷が重かったようである。
——————————————————-
「という事でね、
別に今からでも動かして構わないよ。
まあ明日には退院しても良いでしょう」
「ありがとうございます」
担当医から大まかな説明を受けた。
「とはいえいきなり激しい運動は
くれぐれも!控えて下さいね?
ただでさえ自傷してしまう程強力な『個性』に
目覚めたのだからね。」
「・・・」
「返事は?」
「・・・はい」
「よろしい」
朝の一件があったからか
念入りに釘を刺された。
「まああの怪我で直ぐに動けるのは
近くにオールマイトが居て
運んできてくれたのと、ここに丁度
リカバリーガールがいらっしゃったことだね。」
ホントラッキーだったね!と笑い合う
医師と看護師とお袋。
実際はオールマイトがリカバリーガールに
連絡をとってから運んできたのだという事は
デクからのメッセージで知っていた。
ラッキーでも何でもないのである。
(とはいえ・・・毎回怪我する訳にもいかねぇ。)
テレフォンパンチ1発で気絶してしまう
様なレベルではヒーローどころか雄英すら
入れない。
次にオールマイトに会えた時に相談してみっか。
幸いあと4ヶ月もある。
俺にはオールマイトもジジイもデクもいる。
こんなにも周りには助けてくれる人が
居て、不安なんて物は無かった。
午前はほぼ検査で時間が潰れた。
まどろっこしいが文句は言えねぇ。
午後からは親父とデクが来た。
親父が心配そうな顔をしていたので
腕立て伏せをして元気をアピールしたら
デクとお袋にキレられた。
・・・お袋はともかく何でデクまで?
と思ったが口に出すのは止めといた。
とか色々していたらその日も潰れ、
次の日には退院出来た。
退院する時も、医者と看護師に
釘を刺された。
・・・もう二度と入院しねぇ。
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退院してからはいつも通りの
生活に戻った。
・・・トレーニングも大人しく控えている。
激しいのはな!
ランニングは激しいに入んねぇンだよ!
その旨をデクに伝えると、
「ホント、かっちゃんって
修行の虫ダヨネ」
俺からしたらデクの方が間違いなく
修行バカな気がするんだが。
オールマイト曰くどっちもどっちだとさ。
・・・適当に答えてんじゃねえだろうな?
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〜オールマイトの事務所〜
「マジでゴメン!!」
今、俺の眼前には大の大人が
土下座している。
「顔上げてくれよオールマイト。
別にアンタの責任じゃねぇって。
あん時は俺も舞い上がってたからさ」
オールマイトにそう声を掛ける。
コレで大人の土下座を見るのは
2回目になる。
あまりいい気分では無い。
「爆豪少年・・・!」
オールマイトは目をうるうるさせている。
「その目を止めろその目を!
気持ちわりぃんだよ!
それより大事な事があんだよ!」
「そうだね・・・本題に入ろう」
服に付いたホコリを払いながら
立ち上がった。
「さて爆豪少年、雄英高校の
入学試験日まで何日かな?」
「馬鹿にすんなオールマイト
あと135日だ。」
「そう、あと約4ヶ月だな。
つまり!あと4ヶ月である程度『個性』を
物にしなければならない!」
「まあそうだな」
「しかし!この『個性』ワンフォーオールは
筋肉量が物を言う。」
マッスルフォームになるオールマイト。
「筋肉というものは身体が成長するにつれて
詰め込める筋肉量も増えてくる。」
「つまり・・・使いこなすのは厳しいと
いうことですか?」
デクがおずおずといった感じで尋ねる。
「正解だ緑谷少年!
よってこれからの4ヶ月、
爆豪少年には少ない出力で精密な動きが
出来る様になって貰いたいのさ!」
血を吐きながらトゥルーフォームに戻り
言い放つ。
「それで・・・だ。
まさか爆豪少年、もう『4ヶ月』なんて
思ってないよね?」
ニヤリと笑うオールマイト。
「はっ!こちとらどんなけ不利な状態で
闘ってきたと思ってんだよ!
4ヶ月で十分だよ!
『強い個性』で温く生きてきたエリートども
なんかぶっ殺してやるぜ!」
「えぇ・・・」
(発破をかけたつもりだったんだけど・・・)
「オールマイト。
かっちゃんをヤル気にさせるなら
それは駄目ですよ。」
緑谷がオールマイトに声を掛けている。
オールマイトも大分扱いが上手くなったが
緑谷の様に微調整は無理な様である。
「かっちゃん!」
「なんだァ?」
「『僕が1位で入試を突破するから』
かっちゃんも2位でウチの中学から
ワンツーフィニッシュ頑張ろうね!」
「・・・あ?!」
(まじかい緑谷少年!
特大の爆弾発言を!)
爆豪の方をチラリと見ると…
青筋が浮かびまくっていた。
「デクてめぇ俺が「今のままならね」」
もう飛び出しかけている爆豪を
言葉で止める。
「違うでしょ?
かっちゃんなら越えてくるでしょ?
今の自分ぐらい簡単に」
クスッと笑う緑谷。
「ったりめぇだろうが!
オールマイト!サッサと
『個性』の練習始めんぞ!」
踵を返してトレーニングルームに
歩いていった。
「あ、ああ」
オールマイトにはやり過ぎに思えたのだが
爆豪はまんまと乗せられたようである。
「ね?」
オールマイトはウインクする
緑谷が少しだけ恐ろしく見えた。
「さ、オールマイト!
気を抜いたら負けるのはホントですから。
僕も負けたくないですし!
今日もよろしくお願いします!」
緑谷少年も爆豪少年に付いて
走っていった。
「はぁ・・・爆豪少年に関しては
敵わないな全く・・・」
苦笑を漏らし、
どっちが先に見てもらうか
揉めている2人を追いかけた。
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4ヶ月という時間は想像よりも
早く流れる。
それこそ受験ならば尚更。
「筆箱は?受験票もちゃんと入れた?」
「しつこいって!何回も確認したわ!」
「まあまあ、母さんも心配してるんだよ」
今日は国立・雄英高校の入学試験日。
「勝己!いってらっしゃい!」
「・・・いってくるわ!」
倍率300倍を誇る日本随一のヒーロー学校。
今日両親に見送られ、受験に向かう人達は
不安で心がいっぱいだろう。
だが爆豪勝己の目には不安の
色は見えなかった。
背負ってる物が違うから?
自分に自信があるから?
理由は知る由もないが恐らく
違うであろう。
「かっちゃんおはよう!」
「おう」
その理由は・・・恐らく・・・
読んで頂きありがとうございます!
この終わり方はわざとです、はい。
まあ皆さんには続く言葉は分かって
頂けると思っておりますので。
また今話やこれまでで何度も、
爆豪の『恵まれている描写』と
親子間、特に母親との話を繰り返しています。
そこにはこだわりを入れていますが
ここで語るには長くなるので、もし
詳しく知りたいという方がいらっしゃったら
感想で質問して下さい。
できる限りお答えします!