今回は1話以来の8000文字越えになります。
それでは本編どうぞ!
窓の縁に肘をかけ、
電車の窓の外で流れる景色を眺める。
耳にはめられたイヤホンからは
英会話が流れている。
今更何をした所で学力が大幅に変わるもの
でも無し、特に勉強しようとは思わなかった。
しかし・・・
隣に座っている緑髪の少年をチラリと見る。
「この公式は・・・」
ブツブツと呟きながらノートを見ている。
その光景は見慣れない者からすれば
不審者ギリギリである。
だが、時折通る駅員も声を掛けないのは
デクが制服を着ている事と、
『この電車は雄英高校に向かっている』から
である事が大きい。
周りを見渡すとコイツ程に無いにしても、
熱心に単語帳などを読み込んでいる
制服の人達もかなり多い。
(かといって・・・
今この状態のデクと知り合いに
思われんのはゴメンだな・・・)
独りごちにため息を漏らす。
[次は雄英高校前〜次は雄英高校前〜
お出口は左側です。]
アナウンスと共に電車がスピードを緩める。
(仕方ねぇ・・・)
俺はデクの頭をはたく。
「アダッ!」
「もう着くぞ、人も多いんだから
サッサとノートしまえ」
デクの返答を聞かずに席を立つ。
「ちょ、ちょっと待ってかっちゃん」
カバンをガチャガチャさせながら隣に立つ。
「人・・・多いね」
「まあ天下の雄英様だからな」
デクの声に冗談交じりに返す。
「ははっ、そうだね」
そう軽く笑い返しながら視線をドアに向ける。
電車は駅に着いて少し時間を置いてから
プシュっと音を立てて扉が開く。
流れ込んできた冷たい空気が、
電車の中の人による『熱気』を解した。
開いたドアから人が流れ出す。
「いくぞ」
「うん」
——————————————————-
「ここが雄英か」
軽く見渡すと、
高層ビルと見紛う程に大きな校舎。
綺麗に整備された道の端には雄英高校出身の
歴代ヒーロー達の銅像が並べられている。
「ほら行くよかっちゃん」
デクはスタスタ歩いていく。
「意外だな?オールマイトの母校だとか
なんとかで騒ぐと思ってたのに」
俺は疑問を口に出した。
「いやぁ僕も写真とかも撮りたいよ?
けどそんなの他の受験者の邪魔に
なっちゃうしね、それに・・・」
立ち止まって拳を握るデク。
「『4月から何回でも見れるしね』」
俺に歯を見せて笑うデク。
(っとにコイツは・・・!)
タダでさえヘドロ事件でデクに注目が
集まっているのに、この発言。
普段、デクは周りに牽制したり
我に乗った発言をする奴じゃない。
にも関わらず口に出したのは
それが事実と言わんばかりの自信に
他ならない。
その自信は間違いなくこの中で自分が
1番努力したからであるという自信。
(周りの視線を受けてもその自信は、ん?)
なるほどな・・・。
「おいデク、そりゃいいんだが・・・
周り見てみろ」
「え、周り?」
デクは俺の言葉を受けて辺りを見渡す。
そこには殺気にも似たような視線で
睨んでくる他の受験者達。
デクはそれに気づき青くなっている。
「デクやるなぁ!
試験前に勝利宣言なんてよ!」
俺はわざと大声を出しながら
背中をバンバンと叩く。
「ちち、違うんだよ!
み、皆さん誤解です!決して
そんな感じで言ったわけじゃあ!」
ワタワタしながら歩くデク。
ガッ!
「「あ」」
不注意から足を引っ掛けて
前に倒れ・・・なかった。
デクはフワフワと宙に浮いていた。
その隣には短髪の丸顔女。
(・・・なるほどこいつの『個性』か)
デクはお陰でコケること無く地面に立った。
「あ、ありがと「ウチが!」へ?」
デクのお礼の言葉を叫んで止める。
そして丸顔はデクを睨んで言い放つ。
「アナタを助けたのは『私がヒーロー志望だから』
・・・気に入らへんからって助けへんわけにいかんし」
「あ、あの」
デクの制止も聞かずに玄関の方に踵を返す。
「・・・ウチ、絶対負けへんし」
そう言い放ちさっさと歩いていってしまった。
「・・・へぇ」
(重さに作用する強力な『個性』に
あの負けん気の強さ、意識してて損ねぇな)
「ご、誤解です。違うんです・・・」
orz状態のデク。
「俺らもさっさと行くぞ。」
俺はデクの言葉を待たずに歩き出した。
——————————————————-
「今日は俺のライヴにようこそー!!
エヴィバディセイヘイ!!!」
シーン・・・
「こいつぁシヴィー!!受験生のリスナー!
実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!
アーユーレディ?!」
『YEAHHH!!!』
シーン・・・
プロヒーローであり雄英高校の教師でもある
プレゼント・マイクの的はずれなテンションを
受け流しながら、デクを見た。
そしたら案の定口を抑え目を輝かせていた。
これ以上目立つのは嫌だったんだろうが
普通だったら今のも返してただろうな。
「入試要項通り!リスナーにはこの後!
10分間の『模擬市街地演習』を
行って貰うぜ!!持ち込みは自由!
プレゼン後は各自指定の演習会場へ
向かってくれよな!!!」
「やっぱ同校同士で協力させねぇって事か」
デクの会場はA、俺はEだった。
「そだね」
「演習場には仮想敵を、
3種・多数配置しておりそれぞれの
攻略難易度に応じてポイントを設けてある!
それを各々の『個性』で行動不能にし
ポイントを稼ぐのが君達の目的だ!
勿論アンチヒーローな行為はご法度だぜ?!」
「質問よろしいでしょうか?!」
いかにも真面目で固めたような奴が挙手した。
俺はそれを聞き流しながら机の下で
関節を解す。
この公の場で、あるまじき失態とか何とか
叫んでいる。
(何してぇんだコイツ)
「それに・・・そこの縮れ毛の君!」
声の方向がいきなりこちらへ向いた。
その視線の先には・・・
「へ?!僕?」
デクがいた。
「あの校門近くでの発言は何だ?!
此処に居る者全てが必死に合格を
勝ち取ろうと思っているんだ。
それを嘲るように周りを牽制して・・・!
『物見遊山』のつもりなら帰りたまえ!」
「なるほど・・・一理ある」
「かっちゃん?!」
デクが横で騒ぐが、言ってることに殆ど
間違いはねぇ。
だが・・・『物見遊山のつもり』?
(足元すくわれるぜ?コイツを舐めてっと)
確かに先の発言には殆ど間違いなかった。
間違いは2つ。
1つはコイツが周りを牽制出来るような
メンタルをしていないこと。
2つ目は校門前の発言に『間違いがない』こと。
此処に居る・・・全受験生の中で、
『誰よりも歩いてきた道が汗水血反吐で
汚れている奴は居ねぇ』ンだよ。
それをわざわざ忠告してやる程
俺はお人好しではなかった。
そのあとのギミックについての発言は
聞き流した。
「・・・ます。失礼致しました!」
どうやら質疑応答が終わったらしい。
「俺から以上だ!!最後にリスナーへ
我が校の『校訓』をプレゼントしよう
かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った!
『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』と!
『Plus ultra!!!』
それでは皆良い受難を!!」
俺はその言葉を受けて、鼻で笑った。
———————————————————-
俺は会場に着いて辺りを見渡した。
(広いな・・・10分間でこの規模か)
まるで街、そう言っても間違いない程の規模。
そんな会場を幾つも用意出来るあたり、
雄英高校の力のでかさを確認できる。
軽くストレッチしつつ他の受験者を見る。
(どいつもこいつも自分の『個性』に
自信ありって顔してんなぁ?!)
頭に血が上るのに気づいて頭を振り思考を正す。
(それよりも・・・)
注意するべき奴に当たりを付けておく為に
改めて辺りを見渡した。
(朝の丸顔女に勘違いメガネ・・・
他にもちょいちょい居んな)
女の『個性』も恐らく想像通りだし
メガネの『個性』はふくらはぎから飛び出す
マフラーから脚スピード系だと思う。
コイツら言うだけあって集中した顔してやがる。
(俺もそろそろ準備しねぇとな・・・)
去年の誕生日に買って貰った
高性能サウナスーツを脱いで下の
タンクトップとスポーツパンツ姿になる。
ザワザワ・・・
途端、周りがざわつき始めた。
メガネも丸顔も俺の方を見ている。
驚きの目で。
俺は理由も分からなかったので
ストレッチを続けた。
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「何だよあの筋肉・・・!」「そういう『個性』か?」
「いやドーピングだろ?!」「いやあれは・・・」
周りが彼の肉体の理由についてくだらない
論議をしている。
普段なら注意していただろうが今回ばかりは
そうもいかなかった。
自身も体を鍛えている身からして
あの肉体は積み重ねられた努力の賜物だと
一目で分かった。
だからこそ注目してしまったのだ。
(クソッ・・・)
試験をすぐ前にして集中していない
自分に腹が立った。
にも関わらず彼は注目を一身に浴びながら
我関せずと入念に準備をしている。
(恐らく彼は合格するのだろうな。
あれだけの鍛錬を重ねてきたのならば
勉学もハイレベルなものだろう・・・
もし僕が合格出来たなら、話かけてみよう)
そう思った。
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(すっごいムキムキやん・・・)
シンプルにそう思った。
と、同時に疑問に思った。
(朝のあれは何やったんやろ?)
朝、緑髪の地味目の子が漏らした言葉の
内容自体は見過ごせなかったが、
声は大きくなかったので偶然近くにいた人達にしか
聞こえていなかった。
しかし、彼が騒ぎを大きくして結果として
緑髪の子ばかりに注目が集まった。
だから私は彼も同類なのだと、あの発言を
面白おかしく扱う様な人なんだと思っていた。
私が睨んだ時にニヤついた顔で返されたし。
(けど・・・)
彼の姿を見てどちらが本当の彼なのか
分からなかった。
「アカンアカン!集中せんと!」
顔を両手で叩いて気合いを入れ直す。
(確認を取るのは終わってからでいい。)
そう思って彼から視線を外した。
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ストレッチも終わり、会場の方に
向き直る。
(天下の雄英のことだ、どっかで仕掛けて
くるだろうしそれは受験者のヒーローとしての
素質を問うものだろうな)
『ハイスタート〜』
「ほらな!」
言葉を聞いた瞬間駆け出す。
駆け出した先には数体のロボット。
(2Pが1体に1Pが3体!)
ロボットに向かって走りつつ思い出す。
あの地獄の4ヶ月を。
「使わせて貰うぜ!」
丹田から体全体にかけて流し込むように
『力』を込める。
体の表面に黄色のプラズマのような
物が流れる。
「いくぞぉ!」
『標的発見!ブッコロス!』
「大層なこと抜かしやがるロボットだな!」
脚に大きく『力』を分担し、一気にロボットの
懐に潜り込む。
『標的ロスト!標的ロスト!
標的ロs・・・「うるせえ!」』
警戒音を鳴らし機械らしからぬ感情的な
声で叫ぶポンコツの胴体に蹴り込む。
すると案外簡単に壊れた。
(ンだよ・・・遠距離武器もねぇし何より)
「認識がついて来れてねェな!」
もう一度『力』を体全体に等分し
残りの三体も攻撃を繰り出す間もなく破壊する。
「これで5ポイント!」
後方を確認すると殆どの人はまだこちらにすら
たどり着いていない。
その中で大きく後方を引き離し走る
2つの影が見える。
さっきの丸顔とメガネだった。
2人と目が合うと笑いながら手招きしておいた。
瞬間2人の顔が歪み更にスピードが上がった。
(それじゃねえと張り合いがねぇしな!)
俺は更なるポイントを求め脚に『力』を割き
走り出した。
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所変わって雄英教師達が集まるモニター室
ここで各会場の受験者の動向を伺っている、
のだがほぼ全員の教師の目は1つの会場に
向いていた。
「オイオイ凄イナ」
「くけけ・・・!まだ3分だってのにもう
19体、合計ポイント38だぞ?」
E会場の各モニターには黄色い跡を残しながら
物凄いスピードで駆ける姿が映っている。
「彼・・・もう確定じゃないですか?」
「受験番号6824爆豪勝己・・・見込みありだな」
「これでも『個性』が発現したのは中学三年生の
秋頃だったらしいから驚きですね・・・」
「彼にはそれだけの才能・・・いや、努力を
積んできてたのだろう。でなければ発現して
すぐの『個性』をあれだけ自信を持って
扱う事はできないだろうな。」
皆、口々に爆豪勝己を褒める。
「たっだいま〜!」
「うるさいのが帰ってきた・・・」
「イレイザー今日もキビシィ!」
「静かにしろマイク」
「だってぇ!皆俺ちゃん抜きで何か
楽しそうに話してたんだもん!」
プレゼント・マイクが体をくねらせて言う。
「お前が司会進行やりたいって言ったんだろうが・・・」
イレイザーヘッドが漏らすように呟く。
あえて普通に返さないのは彼なりの静かに
させ方なのだろう。
「てか山田帰ってくるのいつもより遅くない?」
「本名止めてミッドナイト先生」
ミッドナイトの声に真顔で返す。
「ハイハイ、で何で?」
「何でって言われると、
受験者の中に気になる子が居たからかなって・・・
引くなイレイザー!そう言う意味じゃない!」
声を荒らげ必死に弁明をする。
「えっと・・・確か緑谷、出久だったかな?彼」
「ああ・・・朝校門近くで騒いでいた奴か。
あんな規律を守れない奴がどうしたんだ?」
「あいっ変わらず厳しい言い方するねぇ!」
「茶化すな山田」
「だからぁ!はぁ・・・もういいや。続けるね?
俺ちんもさ?最初は記念受験かなって思ってたのよ
それがA会場でイチバン早くスタートに反応して!
ものっすごいスピードで消えてっちゃったのよ!」
イレイザーヘッドはめずらしく真面目な顔で
叫ぶプレゼント・マイクを見て少し気になった。
「13号、受験番号6825緑谷出久のポイントを
調べてくれ」
「了解しました!」
13号はイレイザーヘッドの言葉を受けて
パソコンに入力していく。
「出ました・・・何だこれ?!」
「どうした13号?」
「・・・見た方が早いです。モニターに出します。」
一際大きなモニターにポイントが表示されてる。
「行動不能にさせた数15体で・・・
ポイント『45』?!」
表示された情報から読み取れる事、
それは倒したロボットの全てが3ポイント。
「すごいね彼!どうやってその数の3ポイントを
倒したのかな?」
「校長・・・」
「3種類のロボットの中で最高のポイント。
勿論ヤワに倒せるように出来ていないし
何より数も少ない。気になるね彼の『個性』!」
「一応・・・届けでは『物質吸引』となっています」
「へ?そんな名前なの彼の『個性』?
凄かったよ?!空も飛んでたし!」
「分かった!とりあえずその話は後にしよう!
ポイント的にほぼ合格は確定だし、入学が
決定してから本人に聞いてみるのさ!
ささ、救助ポイントの採点に戻るよ!」
小さな手をぺちぺち叩いて注意を促す。
イレイザーヘッドは自席に戻る際
1度も発言していないにも関わらず
笑みを浮かべているオールマイトに
声をかけた。
「どうしましたオールマイト?」
「・・・いや、優秀な金の卵達を見つけると
どうも嬉しくてね!」
「・・・そうですか、失礼します」
頭を下げて席に戻った。
「ふう・・・」
2人の活躍がプロヒーローである雄英高校教師達を
唸らせている。
(ホントに自慢の弟子達だよ・・・まったく!)
モニターに映る2人の姿を見てそう思った。
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「79・・・!」
1ポイントロボットの頭をもぎ取る。
(もうそろそろ10分か・・・?)
時間を正確に図る術を持ち合わせていないので
感覚に頼るしかない。
「ラストスパーt?!」
途端地響きと共に辺りが陰る。
「何だぁ?!」
振り返るとビル並にデカいロボットが
そこにはいた。
(なるほどな、コイツがギミックか)
ほかの受験生は背を向けて逃げ出している。
その中に苦い顔で走ってきたメガネと丸顔を
見つけた。
「おいお前ら!」
すると2人のみ振り返った。
俺は歩いて近づいた。
「何してるん?!アンタもはよ逃げんと!」
「そうだぞ!アレは「違うな」」
「お前らはあれから本心で逃げたいなんて
思ってねェ。
俺は『お前ら』としか言っていないのに
わざわざ振り返った・・・違うか?」
「「っ!」」
「ほらな?図星だろ?」
俺は笑いながら話しかける。
「それはそうやけど・・・」
「最後までやりきらないとポイントが・・・」
「その心配は要らねぇ。
メガネのポイントは54で2番目、丸顔は39で4番目だ」
((何でポイントを知ってるのかはこの際
聞かないでおこう・・・))
「それに・・・恐らくあのデカブツを叩かねぇと
全員やられて終わりだ。
分かり易く言い換えてやるよ。
お前らは自分より強いヴィランから逃げ出す奴が
ヒーローになれるって思うのか?
違うだろ?ヒーローってのは
『命懸けで綺麗事を実践する仕事』だ」
これは受け売りだがなと続ける。
「はよ決めろじゃねぇと「ウチやる!」」
「僕もだ!
そこまで言われて引き下がれるわけない!」
二人とも身を乗り出して叫ぶ。
「話がはえぇ!
丸顔!「麗日です!」
『個性』で無重力に出来んのか?」
「何でウチの『個性』を・・・?」
「見てたからに決まってんだろ?!
早く答えろ!」
「出来る!」
「よし!」
次に俺はメガネの方に向いた。
「『個性』有りで走幅跳はどんだけ跳べる?」
「・・・14メートル弱だ」
「分かった。なら作戦はこうだ」
俺は2人の『個性』を考慮して立てた
作戦を伝える。
「それ・・・作戦って言えんの?」
「うるせぇ!無駄口叩いてる暇ねぇんだよ!
直ぐに行く!準備は?」
「いける!」「ああ!」
「じゃあ行くぞ!」
(まずウチの『個性』で爆豪君の体と
飯田くんの衣服を無重力に!)
試験でとっくにキャパを超え、とてつもない不快感が
押し寄せてきているが気合いで抑える。
(そして僕がビルへ跳ぶ!)
背中に爆豪君を背負ってビル同士の壁を蹴って
上へ上へと昇っていく。
(そこから・・・)
全力で0ポイントロボットへ跳ぶ。
「いっけぇ!」
背中の爆豪君を勢い良くロボットへ押し出す。
「あとは頼んだ爆豪君!」
「上出来だ!丸顔!」
「解除!」
勢いはそのままロボットへ向かっていく。
俺は『力』を全て右腕に込める。
俺は右腕が軋む音を無視しながら
腕を振りかぶる。
「死ねェェ!!!」
拳を振り抜く。
瞬間、ロボットの前面が大きな音を立てて
ひしゃげた。
拳の勢いで前へのスピードが相殺されて
俺は真下に落下する。
右腕を確認すると見た目に大きな変化は無かった。
(けどまあ3割になると骨にダメージくんな・・・)
体全体に風を受けながら思う。
地面まで目下5メートルになった時、
メガネに抱えられ跳んできた丸顔がみえた。
五指が触れることが発動のキーとなるという
その『個性』を発動させるため、肌が出ている・・・
「ぶベラッ!」
顔に張り手を受けた。
『個性』が発動し、落下が止まる。
「良し!」
「良しじゃねぇわ!何してくれてんだてめぇ!」
俺は丸顔に叫ぶ。
「いや、しゃあないやん!
うちも必死やってんで!」
「必死にやってる事なんて別に偉くもなんとも
ねえんだよ!」
「はぁ?!うちが助けんかったら地面に顔面
ぶつかってたんですけど?!逆に感謝してもらわな
気ぃすまへんわ!」
「よしたまえ君達!試験はまだ「しゅーりょー」」
狙ったかの様なタイミングで試験の終了が
告げられる。
「「・・・」」
メガネの顔が赤くなっている。
「ンン!・・・ともかく!
今は喜び合う場面だし、何より此処は喧嘩するような
場所じゃあないだろう?!」
「せやな・・・!なら」
と言い俺に手のひらを向けてきた。
「・・・はあ?」
「ハイタッチしかないやん!」
「はっ・・・ねえわ」
アホみたいな提案は一蹴する。
2人に背を向けて言う。
「またな」
俺は2人の言葉を待たず歩き出す。
出口付近でリカバリーガールとすれ違った。
「腕は大丈夫なのかい?」
「知ってんだろ?余裕だわ」
右腕を振る。
「ホントに頑丈な子だねアンタは」
リカバリーガールは肩をすくめて言う。
「俺と喋ってる時間あるんだったら他のやつの
怪我を治してやれ。
じゃあ俺は帰るわ、またな」
出口の方へ歩き出す。
「またな・・・かい。
まああのポイントならそうなるか」
出口に消えていく爆豪勝己を見ながら呟いた。
————————————————————-
〜A会場〜
そこには根津校長とパワーローダーがいた。
そしてめのまえには動かなくなった
大量の3ポイントロボット。
「どうだいパワーローダー君?」
「くけけ・・・!
どうもこうも中身からやられています」
「・・・と言うと?」
「基盤の殆どイカれてますね。
元の位置から『引き剥がされた』様な・・・
だからこそ外傷は無くても無力化されたんでしょう。
これは直すとなると相当骨が折れますよ」
(『引き剥がされた』か・・・)
「ありがとうパワーローダー君!
詳細は後日調べようか。お疲れさん。」
「くけけ・・・ではお先に失礼します」
根津は1人A会場で1人呟いた。
「緑谷出久、爆豪勝己、
オールマイトが育てた金の卵・・・か
身に付けた強大な力に呑み込まれなければ
良いんだけどね。」
吐き出された言葉は誰かが反応するはずも無く
散っていった。
読んで頂きありがとうございます!
書きたい事を書いていたらいつの間にか
8000文字を超えていて自分でもびっくりしました。
しかし力不足から終わり方をぶつ切りに
してしまったので、書ききれなかった事は
次回以降に持ち越します。
是非宜しければ、指摘や提案、
感想などよろしくお願いします!
補足
本編で場面転換や第一者視点が変わる際に
線を使っているのですが、
---------- ←これを人が変わる時
—————————— ←これを場面が変わる時
と統一します。