最後にその手が掴むもの   作:zhk

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懲りずになんと新作を投稿する残念作者です...

なんかね...テスト期間中無性に書きたくなったから書きました。魔法科高校の常識はずれとは交互に投稿しようと思っていますので、その辺は悪しからず!!

それでは本編をどうぞ!!


ロクでなしとの邂逅
出会いというのは、必ずしも良い物とは限らない


爽やかな朝。鳥がさえずり、空には雲一つ無い気持ちの良い快晴。そんな日ならば、普通ならば気分が上がるものだろう。

 

だが、今彼らはそんな余裕は無かった。

 

「全く!何で昨日の内に用意しとかないのよ!」

 

「だから悪かったってシス姉!今日錬金術の授業があるなんて聞いてなかったし...」

 

「それはアンタが寝てたからでしょうが!!」

 

まだあまり人が出ていないような時間に、そんな喧騒を撒き散らしながら石畳を蹴る人影が二つ。

 

一人は銀髪のロングヘアーに少しつり目のエメラルドのような色の瞳の少女。少し勝ち気な印象が目立つ。

 

その横を走るのは、彼女と同じ銀髪だがこちらは耳にかかる程度の長さで少女とは違い、少し癖っけのあるような髪型の少年。目は少女より暗い織部色の瞳で、その目を焦りからなのか大きく見開きながら走っていた。

 

「アンタのせいでルミアまで待たせちゃってるんだからね!ちゃんと謝んなさいよ!」

 

「も少しシス姉はルミ姉の優しさを真似た方が良いと思う...」

 

「何か言ったかしら...?」

 

「ヒッ!わかった!わかったからその笑顔で握りこぶし作んないで!怖い怖い!!」

 

そのまま二人が走っていくと、街灯の方に一人の少女が見え始める。髪は鮮やかな金髪で、青い目の清楚な雰囲気を醸し出している少女だった。

 

「ルミアーーー!遅くなってごめんーーー!」

 

銀髪の少女は、その視線の先の清楚な少女、ルミア=ティンジェルに声をかける。

 

「悪いルミ姉、待たせちまって。」

 

「いいよそんなの。シン君忘れ物は持ってこれた?」

 

「おう!ばっちし!」

 

シン君と呼ばれた少年、シンシア=フィーベルは明るい笑みでそう返した。

 

「何で自慢げなのよ...」

 

そして彼の実の姉、システィーナ=フィーベルはあきれたように首を横にふってそう呟く。

 

「ま、まぁ忘れ物に気付けたわけだし、今からでも十分間に合うから大丈夫だよ。」

 

「あーやっぱりルミ姉は優しい!どこかの説教ばっかの姉とは違う...」

 

「あなたは本当に痛い目みたいのかしら!?」

 

「あぁ!だから笑顔でグー作るなって!殴られるって結構痛いんグホッ!」

 

シンシアが最後まで言う前に、システィーナの鉄拳が顔にクリティカルヒットする。

 

朝方の静かな町並みも、三人が話始めればそれだけで十二分に騒がしくなる。もはやこの光景は、この近隣にすむ住民にとって朝を告げるものになりつつあるのは彼らの知る話ではない。

 

「さ!このバカはほっておいていきましょうルミア」

 

「誰がバカだ誰が!一応ペーパーテストの点はそんな変わらねぇだろう!」

 

「ハハハ...」

 

未だに続く二人の会話に、ルミアは苦笑いを溢しながら三人一緒に魔術学院へと向かっていった。

 

ーーー

 

ここ、北セルフォード大陸の北西にある帝政国家、アルザーノ帝国の南部に位置する都市フェジテ。

 

ここの最大の特徴は、なんと言ってもアルザーノ帝国魔術学院が置かれる学究都市であるという点だ。

 

アルザーノ帝国魔術学院とは、四百年前に設立された国営の魔術師育成の専門学校だ。この学校の存在こそがアルザーノ帝国が魔導大国として恐れられる理由であり、帝国の名高い魔術師達は、大概この学校を出るといういわば魔術師の登竜門である。

 

そこへルミア、システィーナ、そしてシンシアの三人が向かっている訳だか、システィーナの表情は優れなかった。

 

「でも何で急にいなくなったんだろうなヒューイ先生。何の連絡もないなんておかしくないか?」

 

「仕方ないよ。先生にだって色々都合があるもの」

 

そう、システィーナが憂鬱になっているのはこれが原因だった。

 

最近、シンシア達の担任であった教師が急に講師をやめてしまったのだ。授業は分かりやすく、親しみやすい先生だったため、生徒からの人気は高かったのだ。

 

「ああ惜しいな~。ヒューイ先生の授業は凄くためになってたのに...」

 

「そうそう。あの先生実技の点数おまけしてくれたからなぁ~。」

 

「アンタのは違うでしょ...」

 

システィーナの思うこととは全く違うベクトルの方向の考えを持っていたシンシアをジロッとシスティーナが睨む。

 

「だってしゃーないだろ?俺は筆記は良いんだけど実技はからっきしだし...」

 

「確かにそうね。シンはいつになったらまともに魔法が使えるのかしら...」

 

「返す言葉もございません...」

 

シンシアは筆記に関しては文句なしの実力者だ。しかし、何故か実技に置いては学年でも下から数えた方が早いのである。その理由としては、彼が得意とする魔法は自分の身体強化を図る物が大半であり、それはこの学校ではあまり評価されないのだ。

 

まぁその理由としては、『使えて当たり前』の魔法だからというものなのだが...

 

「でもシン君は得意魔法だけなら他の人よりも数段上なんだから、自信持って?」

 

「ありがとールミ姉。でさ、今日来る代わりの講師ってどんな人なんだ?」

 

シンシアは手持ち鞄を手で持ち、肩から背負うように持ち直しながら尋ねた。

 

「アルフォネア教授が太鼓判を押すぐらいなんだから相当な実力者何じゃないかな?」

 

アルフォネア教授とは、大陸でも数人しかいない魔術師の最高峰の階級、第七階梯(セブンデ)に到達した人物だ。その人物が先日教室にやって来て、そう発表したのだ。

 

「まあそれも今日わかるでしょう。とりあえずヒューイ先生の半分くらいは良い授業をしてくれればいいけど」

 

「俺は面白い先生がいいなー。なんかこう、型破りな感じの。」

 

シンシアとシスティーナ。この双子の兄妹のすれ違う意見は今に始まったことではない。何かと意見が対立するこの二人だが、意外と兄妹仲は良いのだ。

 

そんな登校中の他愛ない会話をしながら、十字路に入った時だった。

 

「うおおおおおお!?遅刻、遅刻ぅううううう!!」

 

「え?」

 

「きゃあっ!?」

 

「なんだなんだ!?」

 

目をかっと見開きながら、口にはパンを咥え全力ダッシュでこちらに向かう男が現れた。かなりのスピードで走っているため、このままではぶつかるだろう。

 

「おいガキども!!!そこを退けぇぇぇぇ!!」

 

どうやら相手も自分が止まれない事を理解したのか、シンシア達にその場から退くことを要求する。

 

「お、《大いなる風よ》!!」

 

その瞬間、システィーナがとっさに黒魔である【ゲイル・ブロウ】を発動し、現れた風が走ってくる男性へと当たり、吹き飛ばしていく。

 

「うおおおああああ!!」

 

走ってきた男性は何か叫びながら宙を舞い、そして近くの噴水へと落ちていった。

 

大きな音をたてながら、噴水へと落ちていく様を三人は呆然と見ていた。

 

「うおっ!!飛んだとんだ!!大丈夫かあの兄ちゃん」

 

「システィ...さすがにやりすぎだと思う」

 

「そ、そうね...あはは...ついやっちゃった。どうしよう...」

 

三人が噴水をジッと見ていると、男はなにも言わずにそのまま立ち上がり、そして噴水から出た後三人の前に歩み寄ってきた。

 

「ふっ、大丈夫かい?君たち」

 

「イヤ、貴方が大丈夫?」

 

システィーナが相手の心配をしている中、シンシアはというと

 

「スッゲェ!!あんだけ吹っ飛ばされたのにあっさり復活した!!スッゲェ!なんかスッゲェ!!」

 

その絶望的な語彙力の無さを発揮しながら目を輝かせていた。その真反対の光景に苦笑いを浮かべるルミア。

 

「ふふっ!そうだろう少年!!俺じゃなかったら絶対ケガしてたね!!これは俺だからこそ出来た事だ!!」

 

シンシアの純粋な好奇心による誉めに、あっさりと鼻を伸ばしたのか自信満々なご様子の男性だが、残念なほどに決まっていないとシスティーナとルミアは感じた。

 

「ていうかさー!一体どういうわけ!?いきなり人様に魔術を撃つなんてさー?えー?」

 

「う、ごめんなさい...」

 

システィーナもぐうの音も出ないのか何も言い返せない。

 

「本当に申し訳ありませんでした。私からも謝りますから許してくださいませんか?」

 

「あー、もう仕方ないなー!俺はちっとも悪くなくて、お前らが一方的に悪かったのは明確だけど、そこまで言うなら許してやらんでも...ん?」

 

そこで男は何かに気づいたのか、ルミアを食い入るように見始めた。

 

「ん?ん?」

 

「あ、あの...私の顔に何かついてますか?」

 

そんなルミアなどお構い無しに、男はどんどん距離を縮めていく。そして遂に目と鼻の先というような所までやって来た。

 

「いや...お前...どっかで...」

 

そして男はルミアの頬をつつき、引っ張り、体に触り始めーー

 

「アンタ、何やっとるかぁあああああああああ!!!」

 

「ギョエエエエエエエエエエエエ!!!!」

 

システィーナの全力回し蹴りが、男に直撃した。

 

「うわ痛そー」

 

シンシアは顔をしかめながら飛んでいった男性を哀れむように見ていた。システィーナとはよく喧嘩をするため、その度にあの強烈な暴力が火を吹くのでその恐ろしさは見に染みてわかっていた。

 

「不注意でぶつかってくるのはまだいいとして、何なのよ今のは!!女の子の身体に無遠慮に触るなんて信じられない!最ッ低!!」

 

「ちょっと待て、落ち着け!?俺はただ、学者の端くれとして純然たる好奇心と探求心でだな!?やましい考えは多分、ちょっとしかない!」

 

「なお悪いわ!?」

 

「ぐぼぉ!!」

 

今度はシスティーナのボディブローが華麗に男の腹に突き刺さった。

 

「シン!早く警備員を呼んできて!こいつやっぱりただの変態だわ!!」

 

「ちょいちょいシス姉、この人からはそんな感じはしなかったから本当に悪意があってやったんじゃーー」

 

「呼んできて!!」

 

「はい直ちに!!」

 

やはり姉には勝てない...と内心自分の立場の弱さに哀しみながら、シンシアは鬼の形相をした自分の姉に敬礼する。

 

「あの...反省しているみたいだし許してあげようよ」

 

「はぁ?本気?貴女は本当に甘いわね、ルミア...」

 

「ありがとうございます!!このご恩は一生忘れません!!ありがとうございます!!」

 

と、男は少し涙目になりながら感謝の辞をルミアに述べていた。それを見てシンシアとシスティーナは半ば引きながらそれを見る。

 

「なぁシス姉、あの人にはプライドとかねぇのか?」

 

「あるわけ無いじゃない。あんな虫みたいなろくでなしにプライドを語るのも烏滸がましいわよ。」

 

「おいお前ら二人!全部丸聞こえだぞ!!」

 

そんなこんはで許してもらった男性はその場からスッと立ち上がり、胸を張って言った。

 

「さてお前ら、その制服着てるってことは魔術学院の生徒だろ?こんなところで何やってんだ?」

 

「許してもらったらすぐこれよ...何なのこの人達?」

 

「切り替えが早いというか、成長しないというか...」

 

「は、ははは...」

 

この男の態度に、三人で呆れるほかなかった。

 

「今何時だとおもってんだ?急がないと遅刻だぞ?ヤッベェ...今の俺すごい教師っぽくね?」

 

「まぁアンタが教師なら学校生活楽しそうだな!」

 

「わかってんじゃねぇかお前!」

 

そこで男とシンシアは固い握手を交わした。それを冷たく軽蔑するような目で見ていたシスティーナが口を開く。

 

「嘘よそんなの。まだ余裕で間に合う時間じゃない?」

 

「んなわけねーだろ!!もう、8時半過ぎてるじゃねぇーか!!!」

 

そう言って男は三人に時計を見せる。その時計が指す時間は8時35分。しかし、シンシア達が持つ時計はまだ8時ちょうどだった。

 

「その時計針が進んでませんか?ほら」

 

そう言ってシスティーナが男に時計を見せる。授業開始は40分なので、今からゆっくり行っても十分間に合うだろう。

 

「..........」

 

「..........」

 

そして四人の間に、謎の沈黙が始まる。

 

「撤収!!」

 

「「逃げたーー!」」

 

シンシアとシスティーナの声がシンクロするが、そんな事を今は気にしている状況ではない。あの男は来たときと同様の速さで駆け抜けて行った。

 

「なんか...嵐のような人だったな...」

 

「な、何なのあの人?」

 

「うん、でもなんだか面白い人だったね?」

 

「確かに。あの人がいるとなんか面白いことが起きそうだ。」

 

色々感覚のおかしい親友と弟を見てシスティーナは頭を抱えていた。もはやこれでは自分がおかしいのか二人がおかしいのかわからないといった感じのようだ。

 

「私はああいう手合はもう二度と会いたくないわね!!見ててイライラする。それにあんな感じの奴ならシンだけでお腹一杯よ!!」

 

「ちょっと待て!今なんでさらっと俺ディスられたの?さすがにあそこまで俺ひどくはないと思うんだけど...」

 

「あはは...」

 

乾いた笑いをルミアが溢しながら、再度三人は学校へと向かう。全員の頭にさっきの男は強く印象付けられたが、システィーナのみそれを記憶から完全に除去した。

 

やがてふたりの前に、いつも通りの魔術学院の壮大な姿が見えてくる。彼らはそのまま、その重い門をくぐり、学舎へと入っていくのだった。

 

ーーー

 

「遅い!!」

 

学院の二階最奥の教室、三人のいる二年次生二組の教室にはいつも通りとはまた違う空気が広がっていた。

 

「どういうことなのよ!もうとっくに開始時刻を過ぎているじゃない!!」

 

「確かにへんだね...」

 

システィーナの左隣に座るルミアが少し心配そうにそう返す。しかし、システィーナの右隣ではーー

 

「Zzz...Zzz...」

 

完全に熟睡モードに入ってしまっているシンシアの姿があった。

 

「アンタも起きろ!!」

 

「あべし!!」

 

システィーナによる教科書を使った一撃によって、シンシアの意識が現実の物へと覚醒する。

 

「痛ってー。何すんだよシス姉。」

 

「何すんだよじゃあないわよ!一応授業中なのよ!自習しときなさい自習!!」

 

システィーナの説教に心底嫌な顔を浮かべるシンシア。

 

「いやだってさ、俺一応教科書の内容もう全部覚えてるしさ、それに俺が練習すべきは筆記ではなくて実技な訳であって。」

 

「知ってるわよアンタの瞬間記憶がスゴいのは昔からじゃない」

 

シンシアは人の数倍の記憶力を持っている。彼は一度見たものなら忘れず、その内容を頭にずっと維持できる。これは昔からそうで、勉強などは教科書をパラパラとめくるだけで覚えられてしまう。

 

「でもシンは応用の問題には弱いんだから、そこら辺をもっと重点的にやれってヒューイ先生も言ってたじゃない。」

 

「うっ...」

 

そう、彼の瞬間記憶は完璧ではない。彼の瞬間記憶はただすぐに覚えるだけなので、覚えた物を応用して使っていくのには本人の技量が必要不可欠なのだ。

 

それが、姉であるシスティーナに追い付けない理由なのである。

 

「シン君もがんばろ?わからない所は私やシスティが教えるから」

 

「よし勉強するかー!」

 

「ちょっと!?何で私に言われたら屁理屈こねるくせにルミアの時は素直に聞くのよ!」

 

「当たり前だろう?」

 

「なんですって!?」

 

既に今日何度目かの口論が始まった。まぁ結局いつも通りシスティーナの暴力(今回はチョークスリーパー)によってシンシアが沈没して終わった。

 

「全く...あのアルフォネア教授が推す人だから少しは期待してみれば...これはダメそうね...」

 

「そ、そんな、評価するのはまだ早いんじゃないかな?何か理由があって遅れてるのかもしれないし...」

 

「そうだぞシス姉。そうやってすぐ決めつけるからシス姉は友達が少なーー」

 

システィーナが再度シンシアの頭に教科書を振りかざし、ガンッ!という野太い音が響き、シンシアは完全に机に突っ伏してダウンしてしまった。その頭には赤く大きなタンコブが出来そうだ。

 

「余計なお世話よ...」

 

周りのクラスメイトからシンシアに同情の視線が送られるそんな時だった。

 

「あー、悪ぃ悪ぃ、遅れたわー」

 

教室の扉が開き、つい最近聞いたような声が聞こえる。やっとここに着いたようだが、既に授業時間の半分以上が終わってしまっており、真面目なシスティーナが激怒するには十分な条件が揃ってしまっていた。

 

「やっと来たわね!ちょっとあなた、一体どういうことなの!?あなたはこの学院の講師であるという自覚はーーー」

 

だが、システィーナの説教は驚きによって塗りつぶされる。それもそうだろう、何故ならば

 

「あ、あ、あああ、あなたは!?」

 

それは今朝の変人もとい突っ込んできた男性だった。

 

「違います。人違いです。」

 

「そんなわけないでしょーー!!」

 

そうして出会ったロクデナシ教師、グレン=レーダスと生徒達。ここから様々な物語が幕を上げる!!

 

しかし、その物語の中心人物はというとーーー

 

「ああ、お星さまだー。頭の周りを回ってるー。」

 

少し、いやかなり残念な出会いであった...

 

 

 

 

 

 

 




思ったより進まねぇなぁ...

まぁこんな感じですすんでいきます。今丁度長期休暇なので結構な頻度で投稿できると思うので、ぜひ楽しみに待って頂けたらなと思います!!

ではまた次回お会いしましょう!!

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