最後にその手が掴むもの   作:zhk

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ホントおかしなところが多くて毎度申し訳ございません...ご指摘等言ってくださった方々、誠にありがとうございました!!

では新章スタート!!


大切な物のためならば
こんにちは転校生(バーサーカー)


 

まだ日も指さないような時間、シンシアはもぞもぞとベッドから起き上がった。時計で時刻を確認すると、今はまだ朝の五時。家族の誰も起きていないこの時間が、シンシアの起床時間だ。

 

「早く着替えよ...」

 

掛け布団を綺麗にたたみ、タンスから運動用の服を取り出してパジャマから着替える。

 

シンシアは毎日このように朝早くに起きるのには理由がある。それは朝のジョギングのためだ。

 

もう初めてかなりの時間が経つため、これをしなければ一日の調子が上がらない。

 

片手に脱いだパジャマを持ち、自室から出る。まだ家族は熟睡中なので、シンシアはひっそりと歩きながら洗面所へと向かう。

 

洗面所で顔を洗い、完全に意識を覚醒させる。そして自分の脱いだパジャマを洗濯籠にいれようとした時、

 

「ん?」

 

シンシアの動きが止まった。その籠には、もう既に誰かの寝巻きが入れられている。

 

「これって...シス姉の?」

 

寝巻きの持ち主を思い出していると、玄関のドアが開き、誰かが家から出ていく音が聞こえる。シンシアは自分のパジャマを乱雑に籠に入れ、静かに玄関の扉をあける。

 

そこから見たのは、自分と同じような格好をして走っていくシスティーナの姿だった。

 

「何やってんだ?シス姉の奴...」

 

いつもならこんな時間にシスティーナが起きることはまずない。いつもならシンシアがジョギングを終えるぐらいにシンシア達の父と母が起き、その後でシスティーナ、最後にルミアといった感じのはずだった。

 

それにシスティーナの顔は、どこか楽しげな物だった。

 

「...怪しいですなぁ」

 

シンシアは意地の悪い顔をしながら、この後の予定を変更する。

 

(シス姉がなんかおもしれぇ事してたら、それをネタにしていじってやろ!)

 

そしてシンシアはシスティーナを尾行していく。システィーナはそれほど早く走っていないため、シンシアがゆっくり走っても十分追いかけられる。

 

システィーナを追いかけて数分、シンシアがたどり着いたのは、

 

「公園?なんでこんなとこに...」

 

そこはフェジテの色々な場所にある自然公園の一つだった。朝早い時間のため、その場には誰もいないはずだったが、そこにはシスティーナ以外の人物がいた。

 

「グレン先生!?なして?」

 

自然公園にいたのは、グレンだった。二人は何か会話を始めるが、シンシアからではなにも聞こえない。

 

(え?なんて言ってんの?もうちと近づくか...)

 

シンシアは近くの木を伝いながら、徐々に二人へと近づいていく。そうすると少しずつシンシアの耳に二人の会話が聞こえ始める。

 

「せ、先生...私もう...限界です...」

 

「おいおい大丈夫か?まだまだこれで終わると思うなよ?」

 

「だ、ダメですって...もう腰が...」

 

聞こえるのはシスティーナのどこか艶かしい声に、グレンの意地の悪そうな声だった。

 

(何やってんだ?ここからじゃよく見えねぇ...)

 

シンシアはより近づくために、さらに二人に近い木へと飛び移る。

 

(次のとこへ、よっと!)

 

シンシアが静かに木から木へと伝って行くなか、シンシアはグレン達のすぐ近くの木に飛び移ろうとする。

 

(うし!ここなら!!)

 

ぼきっ

 

シンシアの足元で嫌な音が鳴る。

 

「へぁ?」

 

何が起きたか確認するよりも早く、体に浮遊感が襲う。

つまり、足場にした木がシンシアに耐えきれず、折れたのだ。

 

「おぉぉちぃぃるぅぅぅ!!」

 

いきなりの事にシンシアは対応出来ず、そのまま重力に引かれるがままに落ちていく。

 

「うぎゃあ!!」

 

「へ!?」

 

「なんだ!?」

 

シンシアが無様な悲鳴をあげながら落ちた先は、運が悪いことに硬い石畳。そこに顔面から地面に直撃したシンシアは、その場でピクピクと震えている。

 

「痛ってー。あんな簡単に折れるなんて聞いてないっての...」

 

だが何もなかったかのようにシンシアは起き上がる。その光景にグレンもシスティーナもポカンとしていた。

 

「し、シン?アンタ一体なんでここに...」

 

「う、うっすシス姉に先生。いやぁただ朝早くから家を出たシス姉が気になって見に来たんだけど...まさか二人がそんな関係だったとは...」

 

「「は?」」

 

シンシアの的外れな言葉に、システィーナとグレンは二人してすっとんきょうな声をあげる。

 

「いや、だってシス姉グレン先生に抱きついてんじゃん。そういう関係なんでしょ?」

 

シンシアは二人の体制を指差しながら、もう片方の手で小指を立てる。

 

今システィーナとグレンは、シンシアが急に落ちてきた事に驚いたシスティーナがグレンに飛び付いている状態なのだ。それにやっと気がついたシスティーナは、顔を急に赤く染めた。

 

「な!?違っ!?これは事故であって!?私と先生はそ、そんな関係じゃ!?」

 

「あーわかったわかったって。でも先生、これだけは言わしてください。」

 

そう言うと、シンシアは真剣な顔つきになると。

 

「シス姉はやめたほうがいい。絶対彼女にするには向かない。」

 

シンシアはシスティーナを指差しながら、そんな事を口走る。

 

「だって説教臭いし、家庭的でもないし、優しくないし、包容力もない。もはや残念物件です。弟としても、姉を彼女にするのはおすすめ出来ないっすね。」

 

「大丈夫だシン。俺もこいつを恋人にするのはイヤだ。恋人にするならルミア一択だな!」

 

「さっすがグレン先生!わかってらっしゃるぅ!」

 

隣に本人がいるにも関わらず、シンシアとグレンは仲良くシスティーナを貶し始める。

 

「シス姉は結婚出来るのか...もう俺はシス姉の将来が心配で心配でーーー」

 

「遺言はそれでいいかしら?シン?」

 

後ろから感じる強烈な殺意に、シンシアはカクカクと固い動きのまま後ろを振り向く。そこには般若の如くオーラを纏ったシスティーナが笑顔で立っていた。

 

「いや、俺まだ死にたくーー」

 

「《問答無用だこのバカ弟ぉぉぉぉぉぉ》!!」

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁ私は鳥よぉぉぉぉ!!!」

 

システィーナが放った全力【ゲイル・ブロウ】でシンシアは、公園の端へと吹っ飛んでいった。

 

今日も一日が、何気なく始まる。

 

ーーー

 

「痛い...もうね、全身が痛い...」

 

「ど、どうしたのシン君...」

 

「いや大丈夫ルミ姉、ちょっと嵐にあってな。」

 

「え?嵐?」

 

朝の通学で、シンシアは節々痛む体に渇をいれどうにか登校する。その隣で朝の一場面を知らないルミアは心配気にシンシアを見るが、さらにその隣のシスティーナはシンシアを睨み付けるように見ている。

 

システィーナは実はグレンに拳闘を習っていたのだ。先の事件で何も出来なかった自分に嫌気が差したシスティーナは、ルミアを護れるほど強くなるために、グレンに魔術戦のレクチャーをして貰うはずが、何故か今は拳闘になっている。

 

(で、それはルミ姉に言うなって...シス姉がつけたキズの説明がキツい...)

 

その事実を知らされていないルミアは、シンシアのその少し無理のある言い分を少し不思議そうに見ながら、そのまま話を切った。

 

そして三人はいつもの道を歩いていると、見慣れた十字路にある人物が最近待っている。

 

「お、先生!今日も遅刻してないっすね!」

 

「朝からお前のテンションについてくのはキツいぜシン...」

 

そこにいたのは、眠たげな表情でこちらを見るグレンだった。

 

「先生、私に構わずにもっとゆっくりしててもいいんですよ?」

 

「別に、お前のためじゃねぇし。俺は朝散歩するのが趣味なんだよ。」

 

「男のツンデレは需要ねぇっすよ」

 

「ツンデレじゃねぇ!!」

 

グレンは最近、ルミアの登校についているのには理由がある。最近行動が活発化してきた天の智恵研究会が何時何時襲ってくるかわからないため、登校の時間だけでもというグレンの心配から来る行動なのだか、周りの生徒にはそうは見えていない。

 

その護衛をするルミアは、学院内でも屈指の人気を誇る少女だ。容姿端麗、誰にでも優しい、まるで天使のようなルミアのファンは多い。そのルミアについて回るかのようなグレンは、他の生徒からは誹謗中傷が絶えない。

 

だがグレンはそんな事気にする事もなく、今日も飄々と登校している。本人からすれば、本当にどうでも良いことなのだろう。

 

「あ、そういえば転入生が今日来るんですよね?」

 

「へ?そうなの!?」

 

シンシアが驚いたように声をあげると、それをシスティーナが冷たい視線を送りながら話す。

 

「昨日のホームルームで先生が言ってたでしょ!?アンタは何をしてたのよ!!」

 

「香草焼きに囲まれる夢のような世界に居たな」

 

「それは本当に夢なのよ!!だいたいシンは人の話をねぇーー!!」

 

システィーナの長くなる説明を聞きながら、シンシアはグレンに尋ねる。

 

「で、先生。転入生ってどんな奴なんすか?」

 

「お前のその鋼のメンタルには感嘆するよ俺は...」

 

横で怒鳴られているのにも関わらず、いつも通りのシンシアにグレンは呆れ半分でそう返した。

 

「転入生はなぁ~、お前も知ってる奴だよ...」

 

「俺が?」

 

「ちょっとシン!?聞いてるの!!」

 

まだ聞きたい事がシンシアにもあったが、それをシスティーナが遮る。

 

「聞いてるように見せかけて実は聞いてないと思わせて実は聞いてるように見せてた。」

 

「結局聞いてないんじゃない!?」

 

システィーナがまたギャンギャンと叫ぼうとするが、それを前に走って逃げる。

 

「ちょっと待ちなさい!!」

 

「待ちませーん。待って欲しかったら追いかけてーー」

 

ある程度前に進んだ所で後ろに振り向いたシンシアはそこであることに気がつき、言葉を詰まらせる。

 

シンシアの目の前の三人の後ろから、大剣を持ちながら走る少女が一人。

 

「三人ともしゃがんで!!」

 

「は?」

 

シンシアの言葉にそのままグレン達はしゃがみ、そしてそちらに走り寄る。

 

大剣を持った少女は走る勢いを殺さずに、グレンへとその華奢な手に握られる大剣を振りかざそうとする。

 

「ごめん先生!!」

 

「え?うがっ!?」

 

シンシアはしゃがんだグレンを踏み台にして飛ぶ。

 

「せりゃ!」

 

振りかざされた大剣はシンシアの目の前にある。それをシンシアは空中で【タイム・アクセラレイト】を起動し、最小限の動きで大剣の軌道を変え、誰にも当たらずに地面に当たるよう仕向ける。

 

大剣はシンシアの思惑通り、石畳へと叩きつけられる。シンシアはそのまま着地するが、【タイム・アクセラレイト】ので三秒間動きが遅くなる。

 

そして三秒が経つと、シンシアの目の前の少女は口を開いた。

 

「久しぶり、シン」

 

「久しぶりだな、リィエル。とりあえず大剣直してくれないか?」

 

大剣を握る少女、リィエル=レイフォードは無表情のまま首を横に振る。

 

「だめ、これは挨拶。だからシンにもする」

 

そう言うとリィエルはまたも大剣を振り上げて、今度はシンシアに叩き付ける。だがそれをシンシアは【フィジカル・ブースト】を使って地面を蹴り、ギリギリの所で避ける。シンシアが元いた場所には、大きなクレーターが出来上がった。

 

「リィエル、この挨拶誰から教わった?」

 

「ん、アルベルトから。久々に会う戦友にはこうするって」

 

「アルベルトさんかよ...とりあえず俺を戦友と思ってくれてる事はありがたいけど...」

 

「ちょっと待て!!なんでお前ら平然とこの状況で会話してんだよ!!」

 

「「ん?」」

 

シンシアとリィエルは二人してグレンの方を向くが、その二人の周りはかなりひどい有り様だ。

 

リィエルが大剣を振り回したために各所にクレーターが出来ており、さらにはシンシアが【フィジカル・ブースト】を全力で使ったため、石畳が幾つか剥げている。

 

その状況で普通に仲良く談笑を始めるのだ。これをおかしいと言わずしてなんと言おう。

 

「いや...二人して『なに言ってんの?』みたいな顔をするな。」

 

「だって先生、リィエルっすよ?これぐらいあるでしょう?」

 

「うん。シンの言うとおり。」

 

「お前は胸を張るな!!」

 

グレンは叫びながらリィエルの頭をグリグリと押さえる。その横で石畳を拾い集めるシンシア。この異常な光景に、ルミアもシスティーナも置いてけぼりを食らっている。

 

「せ、先生?その子は...」

 

システィーナがおどおどとしながらも、グレンにリィエルについて尋ねた。

 

「ああ、こいつは俺が魔導師時代の同僚。ルミアとシンは直接会ってるけどお前は初めてだったな」

 

「良かった...刺客かと思った」

 

システィーナは安堵の息を漏らした。確かにシスティーナからすればいきなり自分たちにそんな物騒な物を振り回しながら近づかれれば、また天の智恵研究会の連中だと思うのも無理は無いだろう。

 

「ま、予想はついてるとは思うが、転入生はこいつだ」

 

「え?リィエルが学院に来んの?」

 

「うん。私もまじゅつがくいん?ってとこに行く。」

 

「おおじゃあ今日からクラスメイトじゃん!よろしくな!!」

 

「ん、よろしく」

 

シンシアとリィエルの会話の後ろでは、リィエルについてグレンが説明している。

 

「つまり、彼女はルミアの護衛ってことですか?」

 

「ま、そう言うことだな。だろ?リィエル」

 

「ん、任せて」

 

そしてリィエルは少し胸を張りながら、

 

「グレンは私が守る」

 

と、突拍子も無いことを口にする。これにはさすがにシンシアも呆けたように口を開けている。

 

「俺じゃねぇ!こっちの金髪の子、ルミアを守るんだよ!!」

 

「私はルミア?よりグレンを守りたい。」

 

「んな事が通るかアホ!!」

 

グレンはまたリィエルの頭をグリグリとしながら、今度は振るがリィエルは無表情のままボーッとした顔のまま変わらない。

 

「だ、大丈夫なのあの子...」

 

「大丈夫だろ、リィエル強いから」

 

そう何故か自信満々に答えるシンシアに、システィーナは今後の不安を隠す事が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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