最後にその手が掴むもの   作:zhk

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リィエル=レイフォード

 

《其は摂理の円環へと帰還せよ・ー》

 

バークスの隠れ家である地下へと続く道のなか、アルベルトとグレンはキメラが蔓延る道を、キメラを撃破しつつ進んでいく。

 

今目の前には宝石獣と呼ばれる亀型キメラが立ちふさがっている。その体は魔鉱石によって作られており、大抵の攻撃ではダメージは通らない。

 

ならばどうするか?それならば、その防御力を越える一撃を叩き込めばいい。簡単な話だ。

 

「ォォォォォ....」

 

宝石獣が唸り声をあげながらグレンに襲い掛かろうとするが、それをアルベルトが遮る。

 

「《鋭く・吠えよ炎獅子》、《吠えよ》《吠えよ》!」

 

そうアルベルトが唱えると、宝石獣の足元で三度の爆発が起こり、宝石獣の足を止める。それを確認し終えるとアルベルトは自分の後ろに立つグレンへと視線を移す。

 

「《五素より成りし物は五素に・(しょう)(ことわり)を紡ぐ(えにし)は乖離すべし・ー》

 

グレンは宝石獣を見ながら、ゆっくりと、だが確実に詠唱を進めていく。それはこの圧倒的な強度を誇る魔獣すら打ち破る一撃を放つ、グレンの持つ最高威力の魔術。

 

「ォォォォォ!!」

 

それを宝石獣も感じ取ったのか、目の前のアルベルトではなく狙いをグレンへと定めて吠えると、グレン目掛けて稲妻が飛ぶ。

 

「《光の障壁よ》」

 

だがそれで焦るアルベルトではない。アルベルトは冷静に障壁を張り、稲妻を断つ。その間にも、グレンの詠唱は続き遂には終わりへと近づいていく。

 

《いざ森羅の万象は(すべから)く散滅せよ・ー》」

 

グレンの左手の前には三段の魔方陣が高速で回転し始める。

 

「《遥かなる虚無の果てに》っ!!」

 

そして詠唱を終えると、グレンは左手を突き出し三段の魔方陣を前面に展開する。そしてーー

 

「ぶっ飛べ有象無象!!黒魔改【イクステンション・レイ】!!!」

 

グレンの左手から三つの魔方陣を貫き、光の衝撃が宝石獣を襲う。その光は圧倒的で、宝石獣はその光に飲まれ見えなくなる。

 

そして残ったのは、体の大半を抉られた無惨な宝石獣の姿のみだった。

 

「はぁ...はぁ...きっついな...」

 

グレンは肩で息をしながら、両手を膝についた。グレンではまだこの魔術、【イクステンション・レイ】を放つには技量が足りない。元々これは『神殺し』の異名を持つグレンの師であるセリカ=アルフォネアが作り出した魔術。グレンはそれを裏技を使い、本物の少しの威力を使っているに過ぎない。

 

それでもグレンには相当に厳しい事で、今もマナ欠乏症一歩手前だ。

 

「ご苦労だった。これを使え」

 

そこでいつの間に後ろに移動したのか、アルベルトがグレンに何かを投げる。

 

「こいつは、魔晶石?」

 

「使え、そうすれば少しは楽になるだろう」

 

魔晶石は、魔力が無くなったりした時などの非常事態に自分の魔力を補給するための物だ。自分の魔力を少しずつ貯蓄していき、それを非常時になれば使うのだが、この動作は一流でもなかなか難しい技術なのだ。そのため魔晶石とはかなり高価な物なのだ。

 

「へっ...甘いのはお前も一緒なんじゃねぇのか?」

 

「知らん、先に進むぞ。もう少しで敵の本陣だ。」

 

そこで話を終わらせ、アルベルトはグレンに一瞥もくれずに進んでいく。それをグレンはふらふらと歩き着いていく。そして二人は通路の奥にある扉を開いた。

 

「ここは!?」

 

そこで二人が見たのは、おぞましい物だった。部屋には大量の円筒ガラスが並ぶ部屋だった。だがそれだけならまだいい、問題はその中身だ。その中にあるのは、人間の脳髄だった。

 

「な、なんなんだよ...これ...」

 

グレンが唖然とするなか、アルベルトは一つ一つ円筒ガラスを見ていく。

 

「...全ての円筒に異能力名がラベルされているな、これは恐らく『異能者』の成れの果てと言ったところか。

確か内定調査によると、バークスは相当の『異能嫌い』だったようだ。恐らく奴は、異能者を人間だと思っていないのだろう」

 

「これが人間のやることなのかよ!!」

 

ガンと鈍い音をたてながら、グレンは近くの壁を殴り付けた。アルベルトもその表情をいつも以上に険しくしながら怒りを露にしている。

 

「!?まてアルベルト!!こいつはまだ生きてる!!早く助けー」

 

「やめろグレン、そいつはもう...」

 

アルベルトは悲痛な面持ちで首を横に振る。グレンが見つけたのは、他の円筒ガラスの中にいる少女だ。まだ年齢はグレンの生徒達となんら変わらないその少女はまだ息をしていた。

 

だが、両手両足を切除され全身を多数のチューブに繋がれている彼女は最早生物として生きてはいない。正確には生かされている状態だ。

 

そこで彼女はグレンの目を見ながら、ゆっくり口を動かした。

 

コ、ロ、シ、テと。

 

その一言に絶望しそうになった、その時だった。アルベルトがグレンの前に出て、聖句を述べ始める。グレンには、アルベルトが何をしようとしているのか理解出来た。だがそれを止められない。

 

止めたところでグレンには何も出来ない。少女はもう、どれだけ願おうと救うことは出来ないのだ。

 

真に、かくあれし(ファー・ラン)

 

最後の聖句を唱え終わると、詠唱済み(スペル・ストック)していた【ライトニング・ピアス】を少女の胸へと放った。その雷は正確に少女の胸を貫き、少女の命を刈り取った。

 

「悪いな...嫌な役目を押し付けちまって」

 

「気にするな、お前では出来ないのは理解していた」

 

二人の間に重苦しい空気が漂う。

 

「貴様らぁ!!自分が何をしたのかわかっているのか!!」

 

そこで望まぬ乱入者が現れる。それはこの目の前の惨状の元凶、バークス=ブラウモンその人だった。

 

「なぁ、お前聞くだけ無駄だろうが。少しは罪の意識とかはねぇのか?」

 

「はぁ?罪の意識?何をふざけた事を。全く、貴様のような教師だから、生徒も生徒なのだな。」

 

「なんだと?」

 

いきなり引き合いに出された自分の生徒に、グレンは眉を潜める。

 

「あのガキ、白髪のガキも同じ事をいっとったわ。命をなんだと思ってるんだとな。実に下らん」

 

「おいテメェ!!シンをどこにやった!あいつは無事なんだろうな!!!」

 

グレンはここ一番の怒りを、バークスへと向けた。

 

「ふふ、それは自分で確かめるがいい。まぁたどり着ければの話だがな」

 

「いいぜ!ここでテメェをぶっ倒してーー」

 

「待てグレン、この男は俺が相手しよう」

 

今にも殴りかかりそうなグレンをアルベルトが制す。その瞳には、明らかにいつもよりも鋭さを宿した意志が籠っていた。

 

「お前は早くリィエルを説得に行け。シンの生存が不確かな今、一分一秒も時間が惜しい。それに、今この瞬間にも、王女があのような姿にされつつある可能性を否定出来ない。だから行け。」

 

「......援護頼むぞ」

 

それだけ告げると、グレンは走り出す。目指すはバークスの背後の出入口。

 

「馬鹿が!《猛き雷帝ー》

 

「《気高く・吠えよ炎獅子》!」

 

バークスの詠唱よりも早く、アルベルトの【ブレイズ・バースト】が放たれる。その炎はグレンだけを避けるように放たれ、バークスのみを包み込む。

 

そのままグレンは何の障害もなく、出入口から出ていった。

 

「さて、お前はここで俺が裁く。異論は認めんぞ」

 

「たかが帝国の犬が!!吠えずらをかかせてやろう!!」

 

そして両者が魔術を放ち、戦いの火蓋がきって落とされた。

 

ーーー

 

「おりゃぁぁぁあああ!!」

 

勢いよくグレンは最後の扉を蹴破った。その大きな音に、その場にいる全員が驚愕の表情を浮かべる。

 

「先生...!」

 

「悪いなルミア遅くなって。」

 

「本当に...無事でよかった...」

 

そこで気丈に振る舞っていたルミアが涙を流した。その姿にグレンは笑みを返して目の前の二人に目を向ける。

 

グレンを見て驚くリィエルの兄を名乗る少年と、その少年を守るように剣を構えるリィエルに。

 

「おいリィエル、いい加減にしろよ。さっさとこっちに戻ってこい、今なら頭グリグリするだけで許してやる。」

 

「嫌。私は兄さんのために戦う、それが私の存在する理由」

 

そのリィエルの目には光がない。何か、目を向けるべき何かから目を背け、機械的になっているようにグレンには感じた。

 

「おいおいどうした?俺をブッ刺した時はそんな暗い顔じゃなかったじゃねーか。なんかあったのか?」

 

「...うるさい。グレンには関係無い」

 

「なら当ててやるよ。シンになんか言われたんだろ?」

 

「っ!?」

 

一瞬、リィエルの大剣の剣先が震える。それが動揺の証だとグレンはすぐに理解した。

 

「お前がシンと戦ってたのは知ってんだぜ?あいつはあいつで後で叱らなきゃならんが、とりあえず今はお前だ。お前もわかってんじゃないのか、自分はそんな事をしたくないんだって」

 

「ち、違う...私は...」

 

リィエルが少し後ずさりながら、目を背ける。

 

『お前はこんなこと...望んでないんだろ!!シス姉やルミ姉達と過ごした時間は無駄だったってのか!?違うだろ!!』

 

リィエルの頭の中で、シンシアの言葉が反響する。その度に、リィエルの心の芯が大きく揺らぎ続ける。

 

「お前がいるべきはそこじゃない。お前には陽向がお似合いだ。」

 

「リィエル!!あいつの言葉に気を向けるな!!」

 

グレンとリィエルの兄が、リィエルを間に声をかける。それにリィエルはさらに心が揺らぐ。

 

「私は...兄さんのために生きる...そう決めた...」

 

「ああそうか。なら、俺に一つ教えてくれよリィエル」

 

リィエルの呟きに、グレンはそう問いた。

 

「お前の兄さんの名前ってなんだ?」

 

「......え?」

 

その瞬間、リィエルの動きが完全に止まりグレンの方へとゆっくり顔を向けた。

 

「そんな大好きなら、名前教えてくれよ?ほら、さぁ。」

 

「名前...兄さんの名前...」

 

「おいおい早く教えてくれよ。」

 

「兄さんの名前、名前は!....うっ、頭が痛い...なんで?」

 

何故かリィエルの頭に兄の名前が浮かばない。それを思いだそうとすると、その名前が消えていくように思い出せなくなる。

 

「兄さん...兄さんの名前は...なんだっけ?」

 

「僕は僕だ!今そんなことはどうでもいい!!」

 

「でも!わたし!!うぅ!!」

 

リィエルがさらに名前を思いだそうとするが、あまりの頭の痛みにその場に座り込む。

 

「グレン=レーダス!僕の妹に何を!」

 

「うるせぇ!このニセモノが!!お前はリィエルの兄じゃない。だろ、ライネル!!」

 

「っ!!」

 

リィエルの兄、ライネルは顔を驚きで埋めつくしながらグレンを見た。

 

「リィエル、お前の兄さんの本当の名前は、シオン」

 

「シオン...シオン...」

 

その名前を口にした瞬間、リィエルの中で空白だった物が埋まっていく。

 

(そうだ。思い出した)

 

そこでリィエルの頭に浮かぶのは、今まで頭の奥底で眠らせていた記憶。

 

だが、その記憶にはおかしな部分があった。それは...

 

「私が...イルシア?私はリィエルの筈なのに...」

 

そこで呼ばれる自分の名前はリィエルではなくイルシア。その事がリィエルには疑問でならない。

 

「二年前、俺とアルベルトは天の智恵研究会が運営する研究所を強襲した。その支部に居たシオンという名の内通者と突然連絡が取れなくなったからだ。」

 

グレンはゆっくりと真実を語り始める。それをその場にいる誰もが息を飲んで聞き入っている。

 

「その道中、俺達はシオンの妹であるイルシアを発見した。だが彼女は何者かに受けた傷で...すぐに息を引き取った。」

 

「そしてその後、その研究所でシオンの遺体を発見。同時にある少女を保護した。その少女はイルシアの記憶を受け継いでいて...名を『リィエル』と言った。」

 

「それって...」

 

全てを理解したのか、ルミアは声を震わせながら呟いた。

 

「リィエル、お前は世界初の『Project:Revive Life』の成功例。イルシアの記憶を受け継ぎ、錬金術で体を作られ生まれた魔造人間だ」

 

「そんな...嘘...嘘だ...」

 

絶望したように首を横に振りながら、リィエルは『兄』の方を向いた。

 

「兄さん...嘘だよね...」

 

リィエルは乾いた笑みを浮かべながら、『兄』へと向く。それはまるで最後の希望をみるかのように。

 

だがーー

 

「ちっ。やっぱりがらくたはがらくたか...」

 

いきなりその男の口調が変わる。優しげな雰囲気はもう無く。そこには非情で冷淡な声だけが響く。

 

「お前をどうにか手駒にしようと色々手を尽くしたんだが、それもこれも全部グレン=レーダスに潰されたよ!!」

 

「そんな...嘘...だ...」

 

リィエルの目に写る物を、絶望が黒く塗りつぶしていく。

 

「全く、これには失望したよ。こんなコロコロ自分の意志を変えるなんて。本当にがらくただね。」

 

「お前...黙れよ」

 

グレンは腰からペネトレイターを引き抜き、ライネルへと向ける。だが、それでもライネルには焦る様子はない。

 

「怖い怖い。それを少し下げてくれよ」

 

逆に余裕のその態度に、グレンは不審に思った。

 

「兄さん...全部嘘だよね?...兄さんは私の兄さんで...昔も...今もそうだよね...?」

 

まだ現実を見れないリィエルは、これだけの事を言われても兄にすがり付く。だが...

 

「もちろん君は大切な妹だ。けど...」

 

そしてライネルは歪んだ笑みを浮かべながらーー

 

「もう要らないや」

 

「てめぇぇぇぇぇ!!」

 

グレンは直ぐ様ペネトレイターの引き金を引く。鉛玉が狂い無くライネルの頭へと飛んでいく。だが、それは横から現れた何かに遮られた。

 

「なんだと!?」

 

ライネルを守るように現れたのは、三人のリィエル。服装は違うが、それぞれが同じように錬金術で大剣を作り出し構えている。

 

「馬鹿な!!『Project:Revive Life』が成功してるのか!?」

 

「お前には出来ないとでも思っていたのか?今回は感情や人格は削除した、完全な僕の人形だ!!」

 

「あぁ...ああ...」

 

リィエルが考えることを放棄するように、その三体を見ないように視界から外し頭を地面へと伏せた。

 

「くそ!!リィエル三人とか洒落になんねぇ!!」

 

グレン一人でも、リィエルは手に余る相手だ。それを同時に三人など出来るわけがない。

 

「ふふ!これでお前らを殺して計画は完璧だ!!全く、これじゃこの娘とそこのがらくたのために死んだあのガキは無駄死にだったな!!」

 

「......え?」

 

ライネルの放ったその一言に、リィエルも、グレンも、ルミアも凍りついた。それは最も考えたくなかった事実で、最も恐れていた事だ。

 

「ちょっと待て、誰が死んだってんだよ...」

 

「ああ、銀髪で深緑の目の色をした少年だよ。確か、名前はシンだっけな...?」

 

「「「っ!!!」」」

 

三人が同時に息を飲んだ。現実逃避していたリィエルも、床から頭をあげてライネルの方を見る。

 

「そんな...兄さんは言ったよね?...シンは殺さないって...」

 

「ああそうさ。僕は殺していない、殺したのはバークスだけどね。気になるなら奥の地下牢に行けばいいよ。血みどろの彼が転がっているだろうからね。」

 

「そんな...」

 

「嘘だろ...」

 

ルミアは悲痛な面持ちに、先ほど流した安堵の涙とは真逆の悲しみの涙を流し、グレンはその言葉に途方にくれていた。

 

「でも、君が悪いんだよリィエル」

 

「私...が...?」

 

いきなり呼ばれた自分の名前に、リィエルは緩慢に動きながら反応する。

 

「そうさ、君が彼と関わらなかったら、君が彼と戦った時に気絶で済ませれば、彼は死ななかっただろうね。これは、君が殺したのと同じだよ」

 

「私が?私がシンを...殺した?」

 

小さな声を震わせながら、ぼそりと呟いた。それが感情のダムを決壊させていく。

 

「ああ、ああ...ああああああああああ!!」

 

リィエルが感情の爆発から叫び声をあげる。それをライネルは高笑いをしながら見ていた。

 

「これは傑作だな!!がらくたの人形の最後にはふさわしい!!行け木偶人形ども、奴等を殺せ!!」

 

その声とともに、リィエル・レプリカ達がグレンとリィエルへと襲い掛かる。

 

「リィエル!ちっ!?」

 

どうにかリィエルを助けに行こうとするが、グレンへと二人のリィエル・レプリカが大剣を振るっていくので自分の事で精一杯になる。今のグレンに、絶望に打ちひしがれ動かないリィエルに向けられた、リィエル・レプリカの攻撃を止める術はない。

 

「リィエル!!避けろ!!」

 

「リィエル避けて!!」

 

そして遂にリィエル・レプリカはリィエルへと肉薄し、大剣を掲げて振り下ろそうとする。

 

(ああ、私死ぬんだ...)

 

目の前で自分が剣を振るうのを、光の灯らない目で見ながら、リィエルはゆっくりと考えた。

 

(でも...兄さんに会えるなら...いいや...)

 

リィエルは目を閉じ、凶刃が自分へ振るわれるのを甘んじながら受け入れようとした。

 

その時だった。

 

リィエルの顔の横を、何かが通り過ぎた。目で見た訳ではない。だが、何かが通ったような風が吹いたのだ。

 

そして自分の前からガンっと言う金属音が響き渡った。そしてリィエルは目を開く。

 

そこで見たのは、リィエル・レプリカの持つ大剣に何かが突き刺さっている。それはーーー

 

「刀...?」

 

「ビンゴだ」

 

後ろから聞こえた声に振り向く間もなく、目の前のリィエル・レプリカが何者かに殴り飛ばされた。そのままリィエル・レプリカはライネルの足元まで飛ばされ、そして動かなくなる。

 

「間に合ったのかな?これ?」

 

そしてリィエルの前に影が出来た。それはまるで誰かがリィエルの前にたったように。

 

ゆっくりと、リィエルは顔をあげる。するとそこには見覚えのある人影。

 

輝くような銀髪は、少し血がついており所々が赤く染まっている。見慣れた魔術学院の制服にも血がついており、白いシャツは真っ赤に染まっている。さらにその白いシャツもボロボロで、右肩から先がきれいに破かれている。破いた部分は右目を怪我しているのか、包帯代わりに目に巻き付けていた。

 

「ま、ギリギリセーフだよな!うんきっとそう!!」

 

その声は優しく、だがどこかしっかりとした強さのある声。その声はリィエルも、グレンも、ルミアももう聞くことが出来ないと思った声だった。

 

そして彼は、ゆっくりとリィエルへと振り向きーー

 

「大丈夫かリィエル?」

 

明るい笑みを溢す、シンシア=フィーベルの姿がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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