最後にその手が掴むもの   作:zhk

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居たい場所

 

「何故だ!何故お前が生きている!? 」

 

「あ?」

 

全員が呆けている中、最初に動いたのはライネルだった。ライネルは驚きから目を見開きながらシンシアを指差す。

 

「お前はバークスが殺したはずだ!それはバークス本人が言っていたんだぞ!!」

 

「じゃあお前は俺が死んでんの確認したのかよ?」

 

「い、いや確認していないが...」

 

「ならめんどくせぇ法螺吹くな、ったく...」

 

シンシアはボリボリと頭をかきながら、めんどくさそうにライネルへと向き直った。

 

「なぁおいお前」

 

「なんだ、この俺をお前とはーー!」

 

「ルミ姉にあんなことしたの、お前か?」

 

苛立ちを顔に浮かべながら、シンシアはルミアの服装を指差しながらそう尋ねた。ルミアは今服を破られ鎖に縛られている。

 

「いや、これは俺じゃ...」

 

「えなんて?お前が?やった?あ、そう。」

 

シンシアは勝手に納得したように返事をすると、満面の笑みをライネルに向けた。

 

「とりあえず、殴る量を倍にするなお前」

 

「は?」

 

「いや、元々百回殴ろうと思ってたけど二倍だがら二百回か...まぁ死なないように頑張って歯食いしばれよ?」

 

ポケットに手を突っ込み、明らかに舐めているとしか取れない態度でライネルにそう言った。それは明らかな宣戦布告、状況はライネルの圧倒的有利なのにも関わらずだ。

 

「お前わかってるのか?この木偶人形三体に勝つつもりか?」

 

「え?当たり前じゃん。何普通の事をおかしいみたいに言うんだお前?」

 

いぶかしむようにライネルを見るその態度が限界だったのか、ライネルの堪忍袋は簡単に限界を越えた。

 

「いいだろう!!ならばその減らず口を叩き切ってやる!!行け、僕の人形達!!」

 

その声と共にリィエル・レプリカが二体シンシアへと向かってくる。その手には大剣が握られており、スピードもかなりの物だ。

 

「さて、やりますか」

 

そう言いながら、シンシアは両手を合わせた。

 

「《万象に(こいねが)う・ーー》」

 

「おいシン!?その魔術は!!」

 

グレンが制止させようとするが、詠唱を始めてしまった物は止められない。

 

「《我が腕手(かいなで)に・不殺の刃よ》っ!」

 

詠唱を終えるとシンシアば右手を地面につける。すると地面に電撃が走り、シンシアの手に刀が握られる。

 

「そらっ!」

 

そして接近するリィエル・レプリカの大剣を華麗に避けて、その頭へと作り出した模造刀を振り下ろす。するとスパンという気持ちのよい音と共にリィエル・レプリカは気を失い、その場に倒れた。

 

「ほいおしまいっと...」

 

刀を投げ捨てながら、ライネルのいる方向へと歩き出す。

 

「な、何故、何故そうも簡単にレプリカ達を倒せる!?こいつらはリィエルと同じスペックなんだぞ!!」

 

目の前の事実を受け入れられないのか、半狂乱になりながらライネルがまくし立てるが、それをシンシアは不敵に笑って答えた。

 

「何故か知りたいか?」

 

腕を組みながら、シンシアは口を開いた。

 

「正義は必ず勝つ!!それが常識だからだ!!」

 

堂々と胸を張りながら、大きな声でそうシンシアは叫んだ。その声は部屋にこだまし、三々五々と響き渡った。

 

「やっぱこいつバカだわ...」

 

グレンが大きなため息とともに呆れるように、シンシアを見るがそんな事はシンシアは気にしない。

 

「そんな、そんな非合理な!?」

 

「ああもうお前うっさいな...理論とかそんなのどうでもいいんだよ!!ガッツと根性と気合いがありゃ大抵の事はどうにかなんだよ!!」

 

「それはどれも一緒だと思う...」

 

吊るされるルミアも、緊張感なく呆れるように笑う。

 

「と、とにかく!!お前は殴る!!それだけだ!!」

 

シンシアは指の骨をポキポキと鳴らしながら、一歩、また一歩とライネルへと近づいていく。

 

「さて...二百回。耐えろよ?」

 

「ヒィ!!《猛き雷帝よ・極光の閃光以て・ーー》」

 

「えちょっと待ってそれは聞いてないって!!」

 

ライネルが始めた詠唱に驚きながら、シンシアは焦りによって動きが止まってしまう。

 

「《指し穿て》!!」

 

だが、呪文は起動しない。

 

「あれ?なんで?」

 

「俺の固有魔術だよ。」

 

グレンが片手に愚者のアルカナを握りながら、シンシアの隣へと立った。

 

「術者を中心とした、一定両石内における魔術起動の完全封殺ができんだよ。」

 

「え?それ勝ちじゃないっすか!?」

 

「お前みたいな奴にはあんま効果ないけどな」

 

ライネルが近くにいながら、二人してもう二人の世界に入っていく。

 

「じゃ、こいつとりあえず殴りますね。」

 

「おいおい、俺にも殴らせろよ?」

 

「じゃ俺と先生で一発ってことで」

 

そう言うとシンシアは腰を抜かして座り込んでいるライネルの胸元を掴みそのままあげる。ライネルの顔には既に余裕はなく、ただ恐怖がそこにはあった。

 

「じゃ三、二、一でいくから」

 

「ヒィ!!」

 

「行きまーす。三~、あれ?三の次ってなんだっけ?まぁいいやオラァ!!」

 

「うごぉ!!!」

 

シンシアの全力を込めた一撃を受け、ライネルはぶっ飛び壁に頭をぶつけ倒れた。

 

「おい、俺がやる前に伸びてないか?」

 

「やり過ぎましたかね...」

 

完全に白目を向いているライネルをグレンが眺めると、シンシアは罰が悪そうに目をそらした。

 

「さて...先生はルミ姉を頼みます。俺はあいつと少し話を...」

 

シンシアは緩慢な動きで後ろのリィエルへと向き直る。そこでシンシアが見たのは、部屋から出ていくリィエルの姿だった。

 

「あいつ!!」

 

直ぐ様リィエルを追いかけようとなけなしの残りの魔力を振り絞って、無詠唱で【フィジカル・ブースト】を使い扉の方まで一気に飛ぼうとする。しかし、何故か魔術は発動しない。

 

「は?くそっ!なんでだよ!!」

 

何度も何度も行使しようとする。今まで何千何万と繰り返した行為なのだ、それがいきなり出来なくなれば戸惑うのが当然だろう。だが今はそんな悠長な事は言ってられない。

 

「ちっ!!【我・秘めたる力を・解放せん】っ!!」

 

どうにか詠唱することで発動した【フィジカル・ブースト】を脚にかけて、その場から飛び出した。

 

「シン!」

 

「俺が止めてきます!!こんな所で終わってたまるか!!」

 

痛みふらつく体に鞭を打ちながら、シンシアはリィエルのあとを追っていった。

 

「あいつ大丈夫なのか?顔も青かったし、傷だらけだったぞ。やっぱり俺がーー」

 

「大丈夫ですよ」

 

グレンもリィエルを追うために走りだそうとするのを、鎖をほどかれたルミアが遮る。

 

「シン君は、やると言ったら必ずやりきりますから。絶対にリィエルを連れて帰って来てくれますよ」

 

笑顔でそう話すルミアには、絶対的な自信があるのにグレンは見て取れた。

 

「信頼してんだな」

 

「はい!自慢の弟ですから」

 

満面の笑みをグレンに向ける。その顔に、グレンは優しく微笑んだ。

 

ーーー

 

リィエルside

 

ただ走る、ひたすら走る。

 

どこか宛があるあるわけではない。というより無くなったと言う方が正しいだろう。

 

自分で選んだのだ。兄に着いていくのも、グレンに刃を向けるのも、システィーナやルミア、シンに酷いことをしたのも全て自分が選んだこと。

 

だからこの様は自業自得だ。誰も悪くない、ただ自分が悪いのだ。

 

何も無い、人間ですらない、生きる理由もいる場所も何もかも失った私には、一人きりがお似合いだろう。

 

そう、これが正しい、正しいのだ。それなのに目から流れる涙は止まらない。胸が痛い。

 

「リィィィィィエルゥゥゥ!!」

 

いきなり呼ばれた自分の名前に驚き、私は足を止めて振り向いた。そこにはこちらを追いかけるシンシアの姿があった。

 

ーーー

 

シンシアside

 

「やっと...追い付いた...」

 

【フィジカル・ブースト】を解き、俺はリィエルの目の前で止まる。ふさがりかけていた傷は開き、手や足には血が滴り落ちる。マナも限界を軽く超えているため寒気がする。マナ欠乏症の典型的な例だが、今はそんなことは気にしない。

 

今ここで止めなければ、もう手は届かない。ならば、俺が手を伸ばすだけだ。そうでなければ、俺が人を辞めた(・・・・・)意味がない。

 

「お前どこ行くつもりだ?今から宿舎に戻るぞ」

 

「......」

 

俺の声に反応せずに、涙で濡れる顔をこちらに向ける。

 

「どうして...助けてくれたの?」

 

ゆっくりと言葉をリィエルは紡ぎ出した。

 

「どうして?私は...人間じゃないのに...」

 

「いやいや人間だろ、どっからどう見ても」

 

「違う、私は人形。」

 

「んなわけねぇだろ、人形が涙流すかよ...」

 

リィエルの泣き面を指差しながら反論する。だが、それだけではリィエルは止まらない。

 

「みんなに、システィーナやルミアにも酷いことをしたし、私はシンを、シンを殺そうとしたのに...」

 

「そんな事気にしねぇよ。シス姉やルミ姉にはきちんと謝ればいいんだよ。なんなら一緒に俺も謝ってやる」

 

いや待てよ...あの暴力姉に頭下げるのはなんか癪だな...まぁそこはどうにか飲み込むか。

 

「私には...生まれた意味も、何のために生きるのかも、いるべき場所もない。そんな私がーーー」

 

「あー!!もう!!めんどくせぇ!!」

 

「っ!?」

 

俺がいきなり叫んだ事に驚いたのか、少しリィエルが体をビクつかせる。けれどもうこれ以上、ややこしい話は面倒だ。本音で語り合った方が早いし俺好みだ、腹を探り会うようなやり方は俺のやり方じゃない。

 

「生まれた意味?んなこと俺も知るかよ!!誰も知らねぇよ!!お前が知ってんなら逆に俺が聞きたいね!!何のために生きるか?そんなの自分で決めろ!!人に聞くんじゃねぇ!!」

 

俺の思うことを、リィエルに全て話す。そしてリィエルの本音を聞き出す。至って簡単だろう?

 

「居場所がない?それはお前が探せ!!お前がいて、楽しくて、それを守りたいと思うものを!!自分が『いるべき』じゃない、自分が『いたい』場所を!!」

 

「私が...いたい場所...」

 

リィエルが考え込み始めた。もう少し、もう少しだ。

 

「私は...ルミアや、システィーナと一緒にいたい...クラスのみんなと...一緒にいたい...」

 

「なら、そこをお前の場所にしろよ」

 

「ダメなの...」

 

「は??」

 

リィエルの言葉に俺は首をかしげた。何故だめなんだ?

理由が検討もつかない。

 

「私はもうみんなの所には居られない。みんな私の事を怖がってる、私がいたら、きっとみんなが笑顔じゃなくなる。だから...だから私は...」

 

嗚咽を鳴らし、涙で顔を腫らしながら言葉を紡ぐ。最後の方はもう小さくて聞こえない。

 

「ふざけんなよ...」

 

それは俺の口からふと出た。何か考えた訳ではない、衝動的に口からこぼれた。

 

「ふざけんな!!お前が居なくなったら、みんな悲しむんだよ!お前もみんなといられなくて悲しむんだよ!!んな終わり方があるか!!俺は全員が笑って終われるハッピーエンドじゃなきゃ認めねぇよ!!!」

 

「でも私は...私には何もない。そこにいる権利も何も...」

 

「ああわかったよ!!ならなーー」

 

俺はリィエルへと近づき肩を掴んだ。そしてーー

 

「俺の隣を居場所にしてやる!!」

 

「...え?」

 

衝動的に出たその言葉に、リィエルは驚きのあまり固まる。

 

「そこならシス姉やルミ姉、クラスの奴等とも一緒にいられる!!はいこれで権利ゲット万事解決!!」

 

「いいの...?」

 

リィエルは不安げにこちらを見ながら、そう問いた。それに返す言葉なんて決まっている。

 

「いいに決まってんだろ。」

 

そして俺はリィエルの頭に手をのせ、視線を合わせるために少し屈む。

 

「お前をどれだけの人が否定しようと、どれだけの人が拒絶しようと、俺だけはお前の側にいてやる。」

 

誰も泣かせない、それが俺の目指す正義の魔法使いならば、ここでリィエルを泣かせたままではいられない。誰が否定しようと、俺は、俺だけは最後まで彼女の味方であろう。そうでなければ悲しいすぎるじゃないか。

 

「だから泣くな、泣き顔は見たかねぇよ」

 

俺は今出来る最高の笑顔で、リィエルにそう言った。

するとリィエルは、より涙を流し始めた。

 

「え!?えっと...俺はどうしたらぁ!!」

 

「シン!!」

 

いきなり泣き出したリィエルに戸惑っていると、リィエルが俺に向かって飛び込んでくる。その勢いで後ろに尻餅をつく。

 

「ぐすっ...ひっく...ごめんなさい...ありがとう...」

 

「バカ、気にすんなよ。」

 

俺はリィエルの頭を優しく撫でながら、近くの壁にもたれ掛かった。

 

これがハッピーエンド。ルミ姉も助けることができ、リィエルも連れ戻せた。シス姉との約束もこれで守れそうだ。

 

「よし、先生と合流するか...」

 

「...ん」

 

リィエルを少し離して俺は立ち上がる。大分落ち着いたのか、目を腫らしているがいつも通りの眠たげな目をしていた。少し物欲しそうにこちらを見ていたのは俺の気のせいだろう。

 

「んじゃ行くーー」

 

そこまで言って、俺の視界が大きく歪みそしてそのまま力なく床へと倒れ伏した。なんの受け身もしなかったため身体中に衝撃が走る。

 

(あー、限界なのね...まぁ逆によく動けた方だよな...)

 

気がついてから直ぐ様リィエルやルミ姉がいるところまで走っていって、ほぼゼロに近い量しかなかった魔力を強引に絞り出して『隠す爪(ハイドゥン・クロウ)』や【フィジカル・ブースト】を使ったのだ。そりゃ倒れるだろう。

 

それにリィエルやバークスとの戦闘の傷も、気がついた時には何故か少し治っていたが激しく動いたせいで開き血を流したため、貧血状態のようだ。

 

よくよく考えたら俺ってなかなか無茶していないこれ?

 

(まぁ...あとは先生にお願いしよ...うんそうしよ...)

 

朦朧とする意識の中、ぼやける思考でどうにか考え大丈夫だと確認し終えると俺は意識を落とそうとする。

 

「ーーン!?シン!!シン!!!」

 

遠くで声が聞こえる、多分リィエルだろう...その声には明らかに焦りが込められているのがシンシアでもわかった。

 

(なんか...しまらねぇな...ハハッ...最後まで...かっこよく終わらせたかった...な...)

 

そしてそのリィエルの声さえも聞こえなくなり、俺の視界は真っ暗になった。

 

 

 

 

 

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