最後にその手が掴むもの   作:zhk

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魔法科高校の常識はずれとは真逆の主人公だから、こっち書いてるときとあっち書いてるときとで、なかなか違った楽しさがあるね。

まぁそんな事は置いといて第4話、始まるよ!!


テロリスト襲撃

グレン覚醒。

 

それは全生徒を震撼させる大ニュースとなった。生徒だけではない。グレンの事を甘く見ていた教師陣にも与えたダメージは計り知れない。

 

今までとは全く違う授業方針、さらにはその質の高さ。それは他クラスの生徒がグレンの授業を聞きたいがために、立ってまで聞きにくるほどだった。

 

つい最近までグレンの事を見下していた人間が大半のはずだったが、今ではこの学院で最も親しまれる教師へと早変わりしていった。

 

そして普通なら休日である今日、学院には生徒は誰一人といない筈なのだがーー

 

「なんで休みの日にまでここに来なきゃなんねぇんだよ...」

 

「仕方ないじゃない。ヒューイ先生が突然居なくなったせいで、私達二組だけ授業が遅れてるんだから。」

 

教室にはいつも通り、二年次生二組の生徒達が集まっていた。そのなかで、際立てて気だるそうに机に突っ伏すシンシアの姿がそこにはあった。

 

シンシアの周りにはいつも通りシスティーナとルミアが陣取っている。

 

「あー!せっかくの休みなんだから動きまわりたいんだけど!!」

 

「アンタは犬か!授業が遅れてるってのが聞こえなかったの!?」

 

他の生徒からすれば『また始まったよ...』位にしか感じないいつも通りの喧騒が始まる。それをルミアはまた苦笑いして見るしかなかった。

 

「あー動きてぇ...体動かしてぇ...じっとしていたくねぇ...」

 

「アンタ本当に魔術師目指してるの...?」

 

最早魔術師見習いとは思えないシンシアの発言に、姉としてシスティーナはため息を溢すしかなかった。

 

「ま、まぁシン君、グレン先生の授業だから頑張ろ?」

 

「でもさルミ姉、そのグレン先生はどこにいんのよ?」

 

シンシアは教卓を指差しながらそう尋ねる。今の時刻は既に授業開始をとうに過ぎており、普通ならこのように騒ぐことなんて出来ないはずだった。

 

しかし教卓には未だにグレンの姿は無い。つまりは遅刻なのだ。

 

「あいつったら...最近は凄く良い授業をしてくれるから、少しは見直してやったのに、これなんだから、もう!」

 

システィーナが苛立ちを込めながら呟く。

 

「もしかして今日学院休みだと勘違いしてんじゃねぇの?」

 

「そんな...さすがにグレン先生でもそんなことは...ないよね?」

 

シンシアの予想に、さすがにルミアも否定しきれなかった。

 

「あーあ!やっぱりあいつはダメダメね!今日という今日は一言言ってやる!」

 

「いつもいってんじゃん...」

 

シンシアもシスティーナの態度に呆れながらそうぼやく。周りには二組の生徒だけではなく、他クラスの生徒までいるため席は全て埋まってしまっていた。

 

「なんか...あいつ最近凄い人気よね...」

 

ふと、システィーナがそんな事を呟く。それを見たシンシアとルミアは顔をあわせて、悪そうな笑みを浮かべる。

 

「おいおいルミ姉?シス姉が愛しのグレン先生を他の生徒に取られて嫉妬してんぜ?」

 

「へ!?!」

 

「そうだねシン君。きっとシスティは先生がどんどん人気者になっていくのが寂しいんだよ。」

 

「ちょっとルミアまで!?」

 

システィーナの顔が赤くなっていくが、シンシアはそんな事関係無しに話続ける。

 

「いやー嫉妬深い女は怖いねぇ。もしかして、シス姉は愛が重いタイプだったのか!!」

 

「だからそんなんじゃないわよ!!!私は、あいつがどんな女子と話そうが別にーー!」

 

「あれ?シン君は一言も女子なんて言ってないよ?」

 

「ぐーー」

 

シンシアとルミアはさらに悪そうな顔をしながらシスティーナを面白そうに見る。

 

「し、シンはどうなのよ!?」

 

「は?俺?」

 

いきなり話の方向を向けられたシンシアは戸惑いながら自分を指差す。

 

「そうよ!あなたも学生の端くれなんだからす、好きな人とかいないわけ!?」

 

「ごめんそういう事にはあんま興味ないわ。」

 

システィーナがかなり勇気を出して聞いた質問を、シンシアは真顔で否定する。

 

「俺は恋愛より友情とかの方が感覚的に感じるかな。そういう恋愛とかはよくわからん。」

 

シンシアはそう言いながら首を横に振る。確かに昔から女子の事も普通に名前で呼ぶし、何の苦もなく話しかけられるシンシアを小さい頃から見てきたシンシアやルミアからすれば、それも納得できる話だった。

 

「じゃあシン君はどんな子が好みなの?」

 

「好み...一緒にいて楽しいとか?」

 

「それ友達と変わらないじゃない...」

 

まだシンシアには恋愛は早いとシスティーナとルミアが感じた時、急に教室の扉が開かれた。

 

「あ、先生ったら、なに考えてるんですか!?また遅刻ですよ!?もう.....え?」

 

誰もがグレンの入室を考えたが、そこに現れたのはチンピラ風の男とダークコートの男の二人組だった。

 

「お、ここか?皆勉強熱心だねー。あ、君達の先生はちょっと取り込んでてさ、だからオレらが代わりに来たってことでよろしく!」

 

「ちょっと、貴方達、一体何者何ですか?」

 

そこでシスティーナが席から立ち上がり抗議する。そしてそのまま二人の前に立ちふさがった。

 

「ここは部外者立ち入り禁止ですよ?どうやって入ったんですか?」

 

「おいおい質問は一つずつにしてくれよ?オレは君らみたいに学は深くないなからサー。」

 

システィーナの真剣な言葉も響いていないのか、ニット帽を被ったチャラチャラした男はそのふざけた態度を崩さない。

 

「まず、オレたちはテロリストでーす!」

 

「は?」

 

男の唐突な宣言に、クラス中が困惑する。

 

「ふざけないでください!そのような態度をとるなら、こちらも貴方方を気絶させてーーー!」

 

「《ズドン》」

 

たったその一言。その一言が紡がれた時、システィーナの耳元を雷が走った。

 

「え?」

 

「《ズドン》《ズドン》《ズドン》」

 

さらに三つ、システィーナの首、腰、肩を雷閃が通りすぎる。その後ろには、その一撃によって開けられた穴がいくつも出来ており、穴の向こうが見えるほどだった。

 

「【ライトニング・ピアス】?」

 

「へー?知ってんだ。ま、なら信じてくれるよね?」

 

軍用魔術【ライトニング・ピアス】

 

重装甲の鎧すら簡単に貫く程の貫通力を誇る魔法。似たような物で【ショック・ボルト】があるが、アレとは比べる事すらおこがましい程射程距離も弾速も威力も違い過ぎる。

 

それをこの男はいとも簡単に連射したのだ。その実力は、この学院に通う生徒であれば理解できるだろう。

 

「という訳で、君達人質でーす。あと、逆らったらぶっ殺すから」

 

そう言う男の目は全く笑っていなかった。もはやパニックすら起こせない。

 

「じゃあ質問なんだけどー、この中にルミアちゃんって女の子いるかなー?」

 

その質問に全員がシンと静まりかえるが、何人かがルミアのいる方向を見てしまった。

 

「なるほどー。ルミアちゃんはこの辺にいるのかー?君がルミアちゃん?」

 

「ち.....違います....」

 

尋ねられたのはリンだった。リンは既に泣きそうな顔をしながら震えていた。

 

「じゃあさ、誰がルミアちゃん?」

 

「し、知りません...」

 

「あっそう。俺さ...嘘つきは嫌いなんだよね...」

 

そう言うと男は指をリンへと向ける。先程の魔法を見れば、男が何をしようとしているのかなんて誰もがわかってしまう。

 

「私がルミアです」

 

そこでルミアが席をたった。

 

男はルミアへと寄っていく。

 

「君がルミアちゃん?まぁ、知ってた。」

 

「え?」

 

「だってほらー、さすがに事前に調べるでしょー?そのときにねもう知ってたんだ!」

 

「じゃあどうして最初から...」

 

「ルミアちゃんが名乗り出るまで、関係ないやつを一人ずつズドンしていくゲームだったから!」

 

男はそれを笑顔で口にした。クラスの全員がこの時思った。

 

こいつは狂っていると。

 

「ハハ!でももうやんないから安心して?だってこのまま殺すと一方的な蹂躙じゃん?それじゃ面白くないんだよ。」

 

「外道!」

 

ルミアはいつも見せないような怒りを顔に見せながら、男を睨んだ。

 

「まぁ良いけどね、じゃいこうか?」

 

そう言って男はルミアへと手を伸ばす。

 

しかし、その手はルミアを掴むことはなかった。

 

「あ?」

 

「え?」

 

逆にその手を掴んだのは、シンシアだった。

 

「なにお前?もしかしてこの子の事好きなの?いやぁごめんねとっちゃって。でも君も自分の命の方が大事でしょ?」

 

「......」

 

男は笑顔でそう語るが、シンシアは一向に手を離さない。

 

「シン君ダメ!?離さないとシン君が!」

 

「ほらー?ルミアちゃんも言ってるよ?ここは潔く離した方がーーー」

 

「ーーるな」

 

「へ?」

 

シンシアが何かを呟くが、それは男の耳には聞こえない。

 

「なんて?聞こえないんだけど?」

 

男がシンシアへの詰め寄る。そしてシンシアの頭に指を指す。

 

「悪いけど、もっかい言ってくんない?この状況で言えるなら」

 

男は下卑た笑みを浮かべながら、シンシアへと向く。そしてシンシアはゆっくりと口を開け、

 

「その汚ねぇ手で、ルミ姉に触るなって言ったんだよこの屑が。」

 

はっきりと、教室中に聞こえるようにそうシンシアは言った。

 

「あー。うんわかった。じゃ死ね。」

 

男から笑みが無くなり、無感情な顔になる。

 

その光景を全員が固唾を飲んでいた。最早あの距離からでは避けられない。横のシスティーナは恐怖のあまり目を瞑っており、ルミアは顔を青ざめて口を抑えていた。

 

そしてーーー

 

「《ズドン》!」

 

と声が響いた。

 

 

が、雷閃は現れない。

 

「へ?え?」

 

クラス中がその光景を見た。だがそれは信じられなかった。

 

目の前にではシンシアに向けられていた指が、あらぬ方向へと曲がっていたからだ。

 

「い、痛ってぇぇぇぇ!!オレの、オレの指がぁぁぁ!!」

 

男はそう言いながら後ろに後ずさっていく。それをシンシアは見逃さなかった。

 

シンシアはすぐに机に上に立ちあがる。

 

「うらっ!」

 

「ぐぼぉ!」

 

そのままシンシアは未だに痛がっている男の顔に、全力で回し蹴りを食らわせる。それは当たった瞬間男の顔で足に纏った魔力が爆発したことでさらに威力をあげる。

 

男はその勢いで黒板にぶつかり、壁には大きな溝ができる。

 

「てめぇらがどこの誰だかはしんねぇけどな...」

 

シンシアはその瞳をギラギラと闘志に揺るがせながら、テロリスト二人へと睨み付ける。

 

「てめぇらの外道っぷりは見てて吐き気がするんだよ!ここでその貧曲がった精神を、叩き直してやる。」

 

「このぉ、ガキが!!」

 

男は起き上がり、指をシンシアへと向けて【ライトニング・ピアス】を発動させる。しかし、

 

「当たらねぇだと!?」

 

シンシアはすべての【ライトニング・ピアス】をすんでの所で回避する。

 

「なんであたんねぇんだよ!?」

 

そしてシンシアは、一気に教室の床を蹴り男と距離を詰める。

 

「くそ!《ズーー」

 

「遅ぇわ!」

 

シンシアはそこで向けられた指に向かって全力で右手の握り拳を振りかざす。その瞬間、貯めた魔力が一気に男の腕でインパクトを起こし、男の腕の骨をボロボロに砕いた。

 

「ぎぃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

男は痛みのあまりその場に倒れ込むが、シンシアはそれを見下すように見る。

 

「どうだ?追い詰められる気分は?」

 

「ヒィッ!?」

 

シンシアは右手を握り、魔力を全快まで貯める。

 

「寝ながら自分の罪を悔い改めろ!!」

 

シンシアは右手を全力で振りかぶり、男の顔へと叩きこむ。だがこの時、シンシアは怒りのあまりあることを忘れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、敵は一人ではないのだ。

 

「がぁ!!」

 

シンシアのストレートはチンピラ風の男に入る前に、シンシアの体に激痛が走る。

 

シンシアはその時、自分の背中を見ると、自分の体に五本の剣が刺さっていた。

 

「見事な魔闘術(ブラック・アーツ)だ。だが、まだまだだな。」

 

そうダークコートの男が言い、指を少し動かした。それをトリガーに、シンシアの体に突き刺さっていた剣が無造作に引き抜かれる。

 

「あぐっ!?」

 

神経を直接引き裂かれる痛みに耐えきれず、シンシアはその場に倒れ込んだ。シンシアが倒れた場所には、赤い血が広がっていく。

 

「さすがだぜレイクの兄貴!このクソガキなんてさっさと殺してーーーえ?」

 

チンピラ風の男の言葉が語られるよりも先に、剣はチンピラ風の男の頭へと突き刺された。

 

「貴様は使い物にならん」

 

そしてチンピラ風の男は、シンシアの隣に横たわるように倒れた。

 

「きゃあああああああああ!!!」

 

教室中が大パニックになる。それもそうだ。自分のクラスメイトが目の前で大ケガを負っており、目の前で人が殺されたのだから。

 

「騒ぐと、この場の全員を殺すぞ」

 

その騒ぎに耐えかねたのか、ダークコートの男は静かに殺気を放った。それは確実に人を殺していなければ出せない物だった。

 

「貴様、来てもらおうか。」

 

「でもシン君が!?」

 

「今この場で貴様が動かないのであれば、この場の全員を殺すことになるぞ?」

 

「ッ!?...わかりました」

 

ルミアは苦虫を噛むような表情をしながらダークコートの男へと着いていった。

 

「システィ、シン君をお願い」

 

ルミアはそう静かに親友に頼みながら、教室から出ていった。そしてダークコートの男は教室に魔術によって鍵をかけ、生徒を出られないようにし、その場から離れていった。

 

その場に残ったのは静寂だけだった。

 

「ぐ...あぁ...いてぇ...」

 

そこで静寂を破ったのは、シンシアの呻き声だった。

 

「シン!?」

 

やっと恐怖から解放されたシスティーナがシンシアの元へ向かう。それをきっかけに、教室にいる生徒全員がシンシアの元へと走り寄っていく。

 

「あぁ...シス...姉...無事か?」

 

「アンタ!私の事より自分の心配しなさい!!」

 

システィーナやウェンディ、ギイブルなどクラスでも成績優秀者がシンシアへと治癒魔術、【ライフ・アップ】をかけるが、シンシアの顔色はあまり良くならない。

 

シンシアの傷はかなり深く、さらには大きな血管の部分が的確に切られているため、出血量は半端ではなく多い。

 

「ルミ...姉は?」

 

「っ!?」

 

シンシアが息絶え絶えに声を出しながら聞いた質問に、その場にいる全員が顔をしかめる。

 

「そういう...ことか...くそ...完全に...失敗...じゃんか...だっせぇな...俺...」

 

「そんな事ない!」

 

シンシアが自嘲気味に言ったその一言にシスティーナが反論する。

 

「アンタはよくやったの!だから今は何も喋らないで!!」

 

「そうだぜシンシア!お前格好よかったぜ!」

 

「テロリスト相手に立ち向かうなんて...全く呆れた人ですわ...」

 

「最早無謀だよ。全く...」

 

さらにクラスメイトや他の生徒からも賛辞の声が飛んだ。その声に苦笑を溢しながら、シンシアは全員に向けてサムズアップをした。

 

そしてシンシアへとかかる【ライフ・アップ】が増え始める。シンシアのクラスメイト全員がシンシアへと魔法をかけているのだ。

 

「俺は...正義の...魔法使いに....なれたの...か...」

 

徐々に痛みが無くなっていく感覚の中、ふとシンシアが呟いた。シンシアの視界が一気に暗くなる。遠くでクラスメイトがシンシアを呼ぶ声が聞こえる。だが、その声が聞こえなくなり、シンシアの意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 

 

 




死んでないよ!!

ちゃんと生きてるからね!!まだヒロインともあってないのに...
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