今回から七巻突入!!
新キャラのあの子は次回から登場です
女子校行くの?マジで...?
それはまさに突然だった。
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緊急通知
アルザーノ帝国魔術学院 学院教育委員会
以下、一に該当する者を、二の通りの処分とすることを決定し、ここに通達する。
一.対象者:リィエル=レイフォード
二.処分内容:落第退学
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「いやいやいやいや!!!どういうことですかこれ!?」
ダンと学院長の机を力強く叩きながら学院長に詰め寄る。俺のとなりには俺と同じような状態のグレン先生、そしてそんなグレン先生に吊られるように持たれるリィエル。
事のはじまりは掲示板に書かれていた通達だ。
「リィエルは成績わるいですけど!!これはさすがにいきなり過ぎませんか!?」
「そうですよ!!だってまだ前期末試験も終わってないのに!!」
掲示板に書かれていた事を簡略化して纏めると、リィエルは成績がこの学院を通うのに満たしてないから退学ということだ。
ここは完全実力主義の場所だ。能力、意欲のあるもの以外はどんどんと切り捨てられる。俺もよく実技のテストが赤点で崖っぷちに立っていたが、それでも落第退学まではならなかった。
本来落第退学の前に、指導や補修、追試に留年などがあるはずなのだ。それらを成績に一番関わってくる前期末試験もしていないのに決定するのはさすがに理不尽だ。
「そうです学院長!きっと何かの間違いです!!」
「お願いです...もう一度よく確認してくださいませんか?」
同じように学院室へと来ていたシス姉とルミ姉も、必死に嘆願するなか学院長はため息を吐いた。
「君たちの言うとおり、これが普通なら何かの間違いなんじゃろうな...」
学院長は俺達を一瞥すると、この理不尽な話の真相を話始めた。
「リィエルちゃんは、元王女のルミアちゃんの護衛として帝国宮廷魔導士団の特務分室から派遣された執行官。それはシンシア君も同じ。そうじゃな?」
「まぁ俺は訳ありですけど、それがどうしたんですか?」
学院長の言葉を肯定しながら俺は首をかしげる。
「ここ、アルザーノ魔術学院は様々な帝国政府の思惑や利権、縄張り争いが絡んでくる場所なんじゃよ」
「え?そうなんすか?」
「お前知っとけよ...」
グレン先生が呆れるように俺をジト目で見てくるが許してほしい。大体政治とか興味ないし。
「リィエルちゃんが王女の護衛としてこの学院に入るとき、国軍省の横やりをおもしろく思わん輩がいたのじゃよ。奴等は王女の護衛という媚を売るために、リィエルちゃんを学院から排除に動いたんじゃ」
「そんな...」
うん...だからつまり、国軍省の息がかかったリィエルが邪魔だってこと?あってるかな...まぁ細かい事はいいや。
「それよりもどうにかならないんですか!?」
声を荒げながら学院長に尋ねる。そんな俺に、リィエルは俺よりもわかってないような表情でこちらを見た。
「ねぇシン、らくだいたいがくってなに?」
「え?えっと...」
これははっきり言うべきだと頭は理解しているが、それをすぐに口に出来るほど俺も安直じゃない。言い淀んでいる間に、俺よりも先にルミ姉が動いた。
「リィエル、落ち着いて聞いてね。落第退学っていうのは...強制的に学院をやめさせられることなの」
「...え?」
ぼけーとして表情が一変、そこに動揺という感情が現れ始める。
「それって...もうシンやグレン、ルミアやシスティーナ、クラスの皆と一緒にいれないってこと?...やだ...それはいやだ...」
「っ!お願いします学院長!!何とかしてください!!」
いつものだらけた態度からは感じられないほど真摯にグレン先生は学院長に頭を下げた。それを見るなり俺も同じように頭を下げる。
そんな俺達二人に、学院長は不敵な笑みを見せた。
「いやはや、本当に君たちはついているのう」
「へ?ついてるって...」
「実はな、ちょうどリィエルちゃんに名指しで短期留学のオファーが来てるのじゃ。聖リリィ女学院から」
「「聖リリィ女学院!?」」
学院長の言葉に、俺とグレン先生が同時に驚愕の意を込めた言葉を口にする。
聖リリィ女学院
帝都オルランドより北西の湖水地リスタニアにある私立の魔術学院で、その名の通り女子校である。そしてそこは上流貴族の子女が集まるお嬢様学校だ。
「今回の反国軍省派のリィエルちゃんに対する攻撃点は成績不振による学院在籍の疑問、そんな彼女が留学を成功させれば?」
「成績評価に大きな点数が加わって...」
「落第退学は回避出来る!」
ルミ姉とシス姉の言葉に、学院長は優しく頷いた。
「うっしゃ!やったなリィエル!これで退学せずに済むぞ!!」
俺やグレン先生、シス姉にルミ姉が歓喜の表情を浮かべるなか、リィエルはキョトンとした表情で俺に尋ねた。
「ねぇシン、タンキリューガクってなに?おいしいの?」
「えっとな...簡単に言うと、ここと違う学院に通うんだよ。まぁ三週間くらいかな?」
「え...?別の学校...?」
いきなり暗くなるリィエルに俺は怪訝に思うのも束の間、リィエルは驚きの一言を口にした。
「やだ。...わたし、リューガク?したくない...」
「いやでも、それじゃお前退学になるぞ?」
「それもやだ」
「なら留学を...」
「リューガクも、やだ...」
リィエルは激しい拒絶を露にするが、現状そんなわがままは言ってられない。
「リィエル、やだやだ言ってても仕方ねぇぞ!」
文句を言うリィエルにイライラし、少し強い口調で言い放つ。だが...
「うるさい...いやだ、リューガクも、タイガクもどっちもやだ...」
体を震わしながら言うリィエルに俺が困惑するのも束の間、
「絶対いやだ!!!シンのバカ!!」
と叫んで俺の足を全力で踏みつけた。
一応言っておくと、俺がこの前受けた火傷はまだ完治してない。
サポートに杖を使ってるし、走ったりはあんまり出来ない。出来るには出来るのだけれど、医者からは安静にしとくようにとのお達しが出ている。
そんな足を踏まれればどうなるか。
「いってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?」
悶絶するほど痛くなるのだ。
痛みのあまり学院長室の床でのたうち回ってる内にリィエルは持ち前の運動神経を使い、全力でこの部屋から去っていった。
「おいリィエル!?くそ!世話が焼けるなおい!!」
グレン先生は頭をガリガリとかきながらリィエルの跡を追う。
「学院長!短期留学は前向きに検討します!!白猫!ルミア!リィエルを追うぞ!!お前もさっさと起きろ!!」
「まじで痛かったです...」
杖を支えに立ち上がるが、まだ足がじんじん痛む。もうちょいで完全に直るのに...酷くなったらどうしてくれんだあいつ!
「もう怒った!絶対一発ぶん殴る!!逃がすかおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
怒り心頭の俺の叫びが、学院中に木霊した。
━━━
脱兎の如く部屋から出たリィエルを追ったのだが、怪我のせいで最近ほとんど動けていない俺は体が大分鈍っておりあっさり逃げられ、俺達は追いかけることから捜索する方向へとシフトしたのだが...
「いねぇ...」
「どこ行ったんだよあいつ...」
学院をくまなく探し回ったが、リィエルは見つからず、走り回ったすえにたどり着いた学院内の礼拝施設で一休みをしていた。
「ひょっとして、リィエルはもう学院外に行ったんじゃ...」
「だとしたらもう手がつけられないな。フェジテは広いし」
グレン先生がため息をこぼすが、俺も同じような心境だ。
この学院内ならまだしも、フェジテ中からリィエル一人を探し当てるなんて無理に等しい。はてさてどうしたものか...
頭を抱えながら考えていたその時、俺に黒い影がさした。ふと顔をあげると、そこにはついさっきまで少し遠くで説法をしていた牧師が俺の前に立っていた。
(あれ?でもこの人どっかで...)
僧服を着込み、鍔広帽を被る鋭い眼差しの男性に俺は少し既視感を覚えた。頭を捻りながら思い出そうとしたその時、
「お前アルベルトか!?」
「「え!?」」
「あそれだ」
グレン先生の声に反応しルミ姉とシス姉がアルベルトさんを見ると、アルベルトさんは一瞬でいつもの魔術礼服へと切り替わった。この人ホントに多才だよね...
「久しぶり、でもないか。社交舞踏会以来だな。シン、足の怪我の方はどうだ?」
「ぼちぼちですかね。もう治りますよ。」
「そうか...」
怪しげな視線を俺に向けてきたが今はスルーする。
「お前達に話がある。少し待っていろ...」
「「「「???」」」」
俺達が疑問に思うのを無視し、アルベルトさんはさっきまでいた講壇へと向かう。そして講壇の裏へと手を伸ばし、なにかを引っ張り出した。
その何かとは...
「「「ええええー!!!」」」
それを見て、俺とシス姉、ルミ姉は素っ頓狂な声をあげざるを得なかった。なぜなら...
「んーーー!んんーーー!!」
それは、腕と胴と足を完全に固定されたリィエルだったのだから。
いやていうか今講壇の裏から出したよね?一応神父なのにそれを躊躇いなくするって...
アルベルトさんの宗教感に少し疑問を浮かべつつも、アルベルトさんはリィエルの拘束を解く。
「少しは頭は冷えたか?リィエル」
「むぅ...」
落ち着いたが、まだふて腐れているようでリィエルはその場に座り込んだ。
「それでは話そうか。内容はもちろん、リィエルの今後についてだ。先に言っておくが、これを俺達の方で揉み消すのは無理だ。よほど政治家どもは女王陛下に媚を売りたいらしい」
「ったくくそ面倒くせぇな!うぜってぇ!!」
「てことは、リィエルが退学を回避するには短期留学を成功させて実績を作るしかないってことですか?」
「そういうことになるな」
その答えを聞き、俺は地面に座り込むリィエルの方へと歩いていきしゃがんで視線を合わせる。
「だそうだリィエル。背に腹はかえらんねぇぞ?」
「...いやだ。行きたくない」
涙目でそう言われればこちらも強く言えないのだが、残念ながら今回ばかりはそうも言ってられない。難しい表情をしていると、声を発したのはアルベルトさんだった。
「グレンもお前も、少しは察してやれ。確かにこの短期留学の話は、リィエルにとって酷な話だとは思う」
「はぁ?何言ってんだよお前」
「忘れたのか?リィエルは見た目以上に幼いんだぞ?」
「「っ!?」」
そこで俺はやっとアルベルトさんがなにを伝えたいのか理解した。
リィエルは天の智恵研究会の暗殺者であったイルシアという少女の精神を複製して作った魔造人間だ。見た目は俺達と変わらない十四、五歳だが、この世に生まれた年数はもっと短いだろう。
なら、精神はもっと幼いはずだ。
「わ、わたしは...」
ぼそりと呟くように話始めたリィエルに、全員が集中する。
「シンや、グレン...ルミアやシスティーナと離れたくない...一人になるのが...怖い...だから...」
「リィエル...」
俺は何もわかってなかった。
リィエルもわがままで駄々を捏ねていたのではない。特に依存心が強いリィエルにとって、グレン先生やルミ姉にシス姉、クラスの皆の存在は大きな物だろう。それからいきなり離れろというのは、やはり酷だ。
「ごめんリィエル、無理強いしちまって。」
「ん...」
「けどどうするんだよ?短期留学しなきゃこいつはこのまま落第退学だぞ?」
グレン先生の言うことももっともだ。けど今の話を聞いてまだリィエルに行くように促すには...
「あの先生...私に考えがあるんですけど...」
そこでルミ姉がおずおずと進言する。
「私とシスティも、一緒に短期留学する...というのはどうでしょうか?」
「あっ!それは良い案じゃない?これならリィエルも安心できるだろうし」
ルミ姉の意見にシス姉が賛成する。
なるほど。離れたくないのなら、一緒についていけばいいのだ。これならなんの問題もないし、リィエルも安心して短期留学を成功させられるだろう。
「それでいけますかアルベルトさん」
「可能だ。それが効率的だと上層部も判断し既に動いている。実は今回俺がお前達に姿を見せたのは、それが理由だ」
「とか言って、ホントはリィエルの事が心配だったんじゃ━━━」
「その頭に風穴を開けたいらしいな?」
「すみません嘘です冗談ですよあはは...」
さすがに殺気を出しながら頭に指を突きつけながら凄まれたら、俺も平謝りするしかない。だって怖いんだもん。この人ならそれくらいやりかねないし...
「良かったなリィエル!ルミアもシスティーナも一緒だってよ!これで安心だろ?」
グレン先生は上機嫌と言わんばかりにリィエルへと話しかける。これで万事解決だろうと俺もそれをにこやかに見ていると...
「シンとグレンは来ないの...?」
「「へ?」」
リィエルがまだ涙目でそう聞いてくるが、俺達は変な声を出すしかない。
「い、いやいや俺も先生も男だし...ねぇ?」
「そ、そうだな。あっこは男は敷地内にすら入れない訳だし...」
「いや、お前ら二人にも今回は同行してもらう。アルザーノ帝国魔術学院から来た臨時講師としてな」
「「はぁ!?!?」」
アルベルトさんがさも当然かのように言うが、それは絶対無理な話だ。
「いやいや!いやいやいや!!俺達男ですよ!!」
「案ずるな。それにお前は相手方のご指名だ。」
「俺が?」
アルベルトさんが俺を指差しながら言うが何故?
「この話を相手方にした時、臨時講師が来るならぜひお前にも来てほしいらしい。なんでも生徒達とほとんど変わらない年で、
「いやだから俺男って...」
「その点も了承済みだ。」
「ええ...」
女子校とは一体...これでいいのか?
「シンはいいとして、俺はどうなるんだよ!?俺はこいつみたいに誉められるようなもんなんもないぞ!?」
「案ずるな。もう手はうって━━」
アルベルトさんの言葉が最後まで言われるよりも前に、爆音と共に礼拝堂の壁が爆破され━━
「ふはははは!私を呼んだな!!」
現れたのは、遺跡調査の怪我の療養中だったセリカ=アルフォネア教授その人だった。
「いや呼んでねーよ!!てかなにしてんの!?ここ礼拝堂だぞ!?」
「知らんな!!」
さすがは神殺し。意図も簡単に神様に喧嘩を売っていく。その剛胆さは見習いたいものだ。
「話は聞かせてもらった!私に任せろ!!」
そう言ってアルフォネア教授は手に持っていた小瓶に入った液体を飲み、それを口に含んだままグレン先生を抱き締めた。そして━━━
大胆にも俺達の目の前で、グレン先生に向けてキスをした。
「え、えええええええ!!」(俺)
「な、な、な、なぁああああ!!」(シス姉)
「うわぁ...」(ルミ姉)
三者三様の反応をする中、約三秒間の接吻を終えるとグレン先生はアルフォネア教授を振り払った。
「おまっ!いきなりなにすんだよ!!」
「安心しろ痛くないから。《陰陽の理は我に在り・万物の創造主に弓引きて・其の躰を造り替えん》!」
なにか大層な詠唱をしたかと思うと、異変はすぐに起きた。
「あがっ!?なんだ?体が...熱い...うがぁぁぁぁぁ!!」
「先生!?」
グレン先生の体から煙が上がり、それは一面に立ち込めて先生の姿は見えなくなる。そして一際大きな声でグレン先生が叫んだかと思うと、煙は少しずつだが晴れていく。
「げほっ...ごほっ...セリカ、一体お前なにを...」
煙の中から声が聞こえるが、それは少し違和感を感じさせるものだった。
(あれ?先生ってこんな声高かったっけ?)
その違和感を口にしようとしたその時、俺は見た。
煙の中から現れたのは、グレン先生だ。けど...
「女?」
出るとこが出ており、しなやかや髪になったその姿は女性そのものだった。ルミ姉やシス姉、さらにはリィエルまでもが唖然とするなか、そこでグレン先生は自分の体に起きた変化に気がついた。
「へ!?え!?俺女になってる!?セリカてめぇ何しやがった!!」
「白魔【セルフ・ポリモルフ】を応用してお前を女にした。これで聖リリィ女学院の臨時講師として行けるな!!」
明るい笑顔をアルフォネア教授が見せるが、そこにはバカにするような意志がよく伝わってくる。
もしかして
「とにかく、今回の短期留学にはグレンとシンも同行する。それで良いな?リィエル。」
「ん。皆が来るなら」
リィエルは暗かった表情を安堵の物に変えてアルベルトさんへと答えた。
「こ、こんなの問題ですよ!?せ、せ、先生が女性だったら、わ、私困ります!?大体許せません!!私よりも、む、胸が━━━」
「あ、確かにシス姉よりも胸でかいですね先生」
「うるさい!!」
「あがっ!!」
ただ指摘しただけなのに、俺の顎に強烈なアッパーが飛んだ。自分で言おうとしてたんだからいいだろう別に...
(それにしても変だな...)
この短期留学の話、なにかきな臭い。こういうのは大概成績優秀な者が選ばれるはず。リィエルはその辺はあまりよくなかった、だからこうして退学の危機にさらされているのだ。
(それに俺を指定してきた事も引っ掛かるな...)
女子校という男子禁制の場所に、俺を招く理由。それが本当に
「ま、なんかあってもなんとかすればいいか」
懐から取り出した吊られた男のタロットを見ながらそう呟いた。
そんな俺を、不審に見つめるグレン先生の視線になんて気がつかずに。
今回はほとんど説明会でしたね...
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