最後にその手が掴むもの   作:zhk

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やっと出るよ!あの子ですよあの子!!

そう、自分を型どったチョコをあげて自爆するあの子ですよ!!


列車に乗るのは一苦労

グレンが女体化するという事件もあったが、無事にルミアとシスティーナ、リィエルの留学も決まりシンシアとグレンの二人も臨時講師として聖リリィ女学院へと行くことが正式に通達された。

 

一応二人が抜ける間二組はセリカが見るということで決まったが、それよりもクラスの男子がシンシアとグレンに向ける憎悪と羨望の視線が強かったがそれはここでは割愛。

 

決まることが決まればあとは向かうだけ。シンシア達一行はフェジテを出発し、馬車に乗って移動していた。

 

馬車は二階式の物で、上は吹き抜けになっており、そこではルミアとシスティーナが楽しげな会話を繰り広げている。

 

二人ともいつものアルザーノ帝国魔術学院の制服ではなく、聖リリィ女学院の修道服に似た制服に身を包んでおり普段とは違う雰囲気を醸し出す。

 

それに比べて下の階は...

 

「......」

 

「......」

 

向かい合うように配置されている席にグレンとリィエルは座っているが、グレンは手元の資料を何やら真剣な表情で読んでおりリィエルも何も喋らないため閑静な空間が広がる。

 

ちょこんと座るリィエルはグレンの方を何度か見るが、グレンは資料にしか目がいっておらずこちらを見ていないし、その資料も自分が見たところでわからないのでする事はない。

 

リィエル本人に、居ずらさや気まずさは感じない。ただ代わりに、自分のために着いてきてくれた四人にある罪悪感のみ。

 

(誰かに甘えるのは...駄目なのに...)

 

本来この留学も、リィエル一人で行くべきものを無理言ってこのような形になっている。深く考えることをあまりしないリィエルにも、それはなんとなく察する事は出来た。

 

(でも...一人になるのは...怖い...)

 

いくらわがままだと言われても、リィエルにとってまた孤独を味わうことは何に変えても嫌だった。前まではそんな事感じることもなかったが、シンシアやシスティーナ、ルミアやクラスの皆と出会った事で成長した心に、周りへの申し訳なさが蔓延る。

 

もう、前までのように一人ぼっちは彼女は耐えられないのだ。

 

(皆...怒ってるかな...)

 

自分のせいでシスティーナやルミアは、元々ウェンディ達と約束していた歌劇鑑賞をキャンセルする事になり、グレンも女になることになってしまった。これらもすべて、リィエルが文句を言わなければならなかった事だろう。

 

それを皆は怒ってるのではないのか。私の事を疎ましく思っているのではないだろうか。そんな考えがリィエルの頭の中で反芻し続ける。目尻が少しだけ熱くなり、キュッとスカートの裾を強く握ると...

 

「謝ろうとか思ってんなら、そりゃ筋違いだぞリィエル」

 

「え?」

 

まるで自分の胸のうちを見透かされたように言ったグレンの言葉に、リィエルは驚きを隠せない。その表情を見たグレンは、少しため息をつくと手に持っていた資料を鞄に直してリィエルへと向き直った。

 

「大方お前の事を俺らが嫌うんじゃないかって思ってんだろ?ここ最近ずっとそんな暗い顔してりゃわかるっての」

 

どうやら無意識の内に、心の重々しさが顔に出ていたようだ。リィエルはそんな事実を今更ながらに理解するも、それを気にする様子はない。

 

「俺らはただお前が心配なだけだ。嫌いになんてなるかよ。特にそこで寝てるやつはな」

 

そう言ってグレンが顎で指す先には、寝息をたてながら気持ち良さそうに眠るシンシア。

 

馬車の壁に体を預け、ぐっすりと眠る彼は二人が会話していようと起きる気配はない。

 

「聖リリィ女学院つったらプライドの高いお嬢様の集まりだ。そんな中に男一人で行くのはかなり抵抗があるはずなのに、こいつ一切愚痴言わないんだよ。」

 

そう言うと、グレンはニヤリと笑って見せた。それを怪訝にリィエルは思うが、その笑みの意味はすぐに伝えられた。

 

「なんでも、お前の助けになりたいんだってさ。やー愛されてるねぇー。お兄ちゃん嬉しいわ!」

 

「シンが...」

 

そこでリィエルはシンシアの方を向くが、自分の話をされていてもシンシアは関係ないと言わんばかりに爆睡しており、それに少しだけ笑みが浮く。

 

(なんでだろう...シンにそう思われて嬉しい...なんだか、胸の奥が暖かくなるみたいな感じがする)

 

自分でもよくわかっていない感情。けれど、リィエルはそれを意図も簡単に受け入れていた。それがなんなのか、リィエルが気がつくにはまだ幼いらしい。

 

「リィエル」

 

そこでグレンが彼女の名を呼ぶが、そこにはさっきまであったおちゃらけた物ではなく、グレンにしては珍しい真剣な声音であった。それをリィエルも察知し、視線をグレンへと戻す。

 

「シンが大切なら、絶対にそいつから手を離すなよ」

 

「?ん、わかった...」

 

何の事かはさっぱりわからなかったがとりあえず返事をすると、グレンは納得したのかまた資料を読みふけり始めた。

 

そのグレンの言葉の真意に、リィエルは気がつくことはなかった。

 

━━━━

 

シンシアside

 

フェジテを出て早三日、俺達は帝都オルランドへと辿り着いていた。ここからは馬車ではなく鉄道列車に乗って、聖リリィ女学院があるリリタニアへと向かうことになる。

 

「ひえー!あんなでっけぇの魔術なしで動くんだな!!」

 

「きっと人間の叡智の結晶だよ。魔術がなくてもここまで出来るんだって...すごいね...」

 

俺とルミ姉が目を奪われているのは、目の前の大型の蒸気機関車。

 

十を越える車両を連ね、悠然としたその巨体からはモクモクと白い煙が棚引き時折甲高い汽笛を駅全体に鳴り響かせる。

 

(オルランドには居たけど見るのは初めてだな...なんだかんだオルランドに居たときはほとんど街には出てなかったしそれもそうか...)

 

ものすごい近くにこれほどの物があったにも関わらず、俺はこれを見るのは初見だ。まぁ見たくても見れなかっただろうけど。

 

でもこれは凄い。原理はよくわからないが、魔術を見慣れている者からしてみれば、魔術なしでこれほどの事をする事に感嘆の声しか漏れない。

 

とまぁ感動的な事を考える俺達の横では...

 

「煙たい...ったくこんな面倒くさいもん作りやがって...絶対これ環境に悪いわそうに違いねぇ」

 

「ちょっと先生!?これは現代の技術を駆使して作り上げられた物ですよ!それなのに先生ったら━━━!?」

 

といつも通りといっても過言ではない光景にルミ姉と揃って苦笑が溢れる。いつも通り...いつも通り...

 

あれ?

 

「なぁルミ姉」

 

「どうしたのシン君?」

 

ふと覚えた疑問を、俺はルミ姉に投げ掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リィエルどこ行ったん?」

 

「「「えっ?」」」

 

俺の声に三人は揃って素っ頓狂な声をあげ辺りを見渡すが、そこにはあの青髪の少女の姿はない。

 

「もしかしてリィエル...」

 

「迷った!?」

 

シス姉がそんな叫びをあげるが、そうならばかなり事は重大だ。

 

もうあと十数分すれば列車は出る。恐らくこの駅構内にはいるだろうが、ここは人が多い。人一人探すのは少し骨がおれる。

 

「そうも言ってられないか!先生俺リィエル探してきます!!」

 

「俺も行く!白猫とルミアはここで待ってろ!」

 

そう言って俺とグレン先生は走り、二手に別れてリィエルを探し始めた。

 

「最近人探してばっかだな...」

 

呆れるような俺の声は、人混みの中に薄れていくように消えていくのだった。

 

━━━━

 

「いねぇ...」

 

走り回って五分、リィエルの姿を見つけることも出来ずに俺は呆然と立ち止まる。

 

行き交う人に聞いたりはしたが、残念ながら有力な情報はなくただ時間だけがゆっくりと過ぎていく。列車の出発まで本当に時間がない。

 

「でもどうする...?」

 

なにか、何か手掛かりは...あまり使わない頭をフル回転させながら考えていると、すっと俺の横を見覚えのある制服が通り過ぎる。

 

そちらに目を向けると、俺の横を通ったのは聖リリィ女学院の制服を着た俺と同い年くらいの少女。

 

(そう言えば、聖リリィ女学院の生徒には聞いてなかったな。何か知ってたらいいんだけど...)

 

考えていても仕方ない。善は急げと言うので、俺はすぐにホームへと歩いていく少女へと声をかけた。

 

「すみませーん!」

 

俺の呼び掛けに反応したのか、少女は立ち止まりこちらに振り向く。

 

白っぽいグレーの髪を耳くらいまで伸ばし、金色の瞳をしたその少女は俺を見た。

 

「なんでしょうか?」

 

「あのさ、君と同じ服装をした奴を探してるんだけど。青い髪で俺の肩くらいの身長の、だるそうな目をしてやつ」

 

出来るだけリィエルの特徴をピックアップしながら説明しながら思ったが、この子むっちゃ美人だわ。

 

端正な顔立ちに髪と同じ絹のような肌の色。少し冷たいような印象を受けるが、間違いなくシス姉やルミ姉とも並ぶくらいの美人だ。

 

「ああ、その子なら見ましたよ」

 

「え!?マジで!!」

 

その少女はにこやかな笑顔でそう答えたのに対し、俺は興奮ぎみに返す。

 

「確か今貴方が向かっている方向に歩いていきました」

 

「こっち?何やってんだよあいつ...ホームと逆じゃんか。」

 

どう間違えたら移動してた方向と反対に進めるんだよ。俺は少しため息を漏らしながら、そちらへと走り出す。

 

「おっとそうだ、教えてくれてサンキューな!」

 

手を振りながらそう言うと、彼女も同じように微笑んで手を振り返した。それを確認すると、俺は走り出す。

 

(優しい奴で助かった。さて探さないとな!!)

 

心のなかで意気込んで、俺はさらに歩調を早めた。

 

しかし...

 

「いないんだけど!!」

 

走り回って探したが、リィエルはどこにもいない。

 

「あの子の話だとこの辺にはいるはずなんだけどな...」

 

もう大分ホームから離れてしまってる。そろそろ戻らないと列車が出てしまうなと思ったその時、

 

甲高い汽笛が俺の耳に入った。

 

「っ!?やべ!!」

 

今の汽笛が何を意味するか。それは至って単純な事。

 

今から列車が出るのだという合図だ。

 

「ああもう!お願いだからグレン先生が見つけてますように!!」

 

内心そうやって祈り、人混みの間を縫うように走りながらホームへと向かう。ホームまで辿り着くと、もう既に列車は入り口の扉を閉め動き始めていた。

 

「うっそだろおい!!」

 

このままでは列車に置いてかれる。もし先生やリィエル、ルミ姉にシス姉も乗っているのだとすればここで俺だけが残される訳にはいかない。

 

だって俺の荷物全部シス姉が持ってるから俺は今無一文。置いていかれれば、俺はもう聖リリィ女学院へと向かう手はない。

 

「ええい背に腹は変えれねぇな!!」

 

もう方法なんて度外視だ。なにがなんでも乗らなければならない。

 

そして俺は走りながら詠唱を始めるのだった。

 

━━━

 

「ふふっ...」

 

優雅にも列車の後方にある個室席の一つで、一人の少女は席に腰掛けながら愉悦の表情を浮かべていた。

 

(あんな簡単な嘘に引っ掛かって...単純な奴)

 

嗜虐的な笑みを浮かべるのは先程シンシアにリィエルの目撃情報を与えた少女だ。だがそれは真っ赤な嘘。

 

(すぐに人を信じるなんて、とんだバカもいたものね。ま、今頃まだ駅のホームであくせくいない連れを探してるのでしょうけど)

 

その光景を想像すると、また笑みが溢れていく。そして暇潰しのための本を鞄から取り出し読もうとしたその時━━

 

「うらぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

「きゃあああ!!!」

 

勇ましい掛け声と共に、誰かが列車の窓を叩き輪って飛び込んできた。それまで余裕の表情だった彼女もこれはさすがに予想外だったようで、驚きの叫びをあげた。

 

「やばこれ止まらグエッ!?」

 

飛び込んできたその人は勢いを殺しきれなかったのか、そのまま個室の扉へと直撃。ガンッという鈍い音が鳴ったかと思うと、その人は扉の前でバタリと倒れた。

 

「え?え???」

 

彼女は意味がわからなかった。窓から人が飛び込んで来るなんて普通はあり得ない。それに電車は既に出発しており、それなりの速さが出ていたはずだ。そこに飛び込んでくるとは、一体どれほど命知らずなのだ。

 

「痛っ~!さすがに【タイム・アクセラレイト】で突っ込めばなんとかなるか...いやぁ乗れてよかったよかった!」

 

目の前で自分の存在なんて気がついていないかのように安堵の息を漏らす者を見ると、少女はその飛び込んできた者に見覚えがあった。

 

太陽の光に映える銀髪を短く切り、深緑の瞳を持つ青年。そしてなにより目立つのは、右頬にある黒い紋様。

 

間違いない。今しがた自分が嘘の情報を流した本人だったのだ。

 

「あっ!!!すみません!!!ケガなかったです...ああさっきの」

 

やっと彼女の存在に気がついたのか、飛び込んできたきた謝罪をしたかと思うと、青年は彼女が誰かに気がついた。それを見ると、彼女は冷ややかに嗤って見せた。

 

なにせ嘘の情報に踊らせれていたのだ。自分に怒りを覚えていても仕方ないだろう。だが騙され、愚かに怒る青年に嘲笑を向けてやろうとしたが...

 

「情報ありがとな!なんかそいつ移動してていなかったけど、教えてくれて助かったぜ!」

 

「......は?」

 

飛んだのは罵声や怒声ではなく、純粋な感謝だった。それに少女は困惑の表情になる。

 

(騙されたのよ?いや、こいつそれにすら気がついてないの?どれだけおめでたい頭してるのよ!?)

 

最早彼女には、目の前の青年がある種の異物のように思えた。底なしの明るい笑みを見せられているのに、彼女の表情はひきつったままだ。

 

「そだ、お前って聖リリィ女学院の生徒だよな?今から俺もそこに行くんだよ。聞いてない?短期留学生が来るって話」

 

「は?あなた何をいってるの?頭打っておかしくなったのかしら?」

 

なんだかこんな奴の前で良い子ちゃんぶるのが面倒に感じたのか、少女は嫌悪感を露にしながらバカにするように答える。

 

「聖リリィ女学院は女子校よ。男が入れる訳が━━」

 

「え?それも聞いてないの?臨時講師で女の講師に加えて、男の講師も来るって話」

 

「はぁ!?あんた講師なの!?」

 

あんな奇々怪々な事を見せられたあとでは、講師と言われて驚愕の声しか出ないが、何故か青年は自信ありげに胸を張る。

 

「んじゃ先に自己紹介しとくか。アルザーノ帝国魔術学院から来た臨時講師、シンシア=フィーベルだ。年は16。そんな変わんないと思うからタメ語でいいぞ」

 

「16って...私と変わらないじゃない...」

 

もうなんなんだこの男は。ここまで意味不明な者は彼女の人生において出会ったことがない。

 

すると、彼女はシンシアがこちらをじっと見つめていることに気がついた。

 

「...なによ」

 

「いや、自己紹介」

 

「私が?何であなたにしなければいけないのよ」

 

「人の名を聞くにはまず自分からって言うだろ?それに今後また関わるかもしんないし」

 

気さくに笑いながら、そんな事を言ってくる。その顔に下心などなく、言葉通りの事しか思ってないのだろう。

 

「なんでわたしが...」

 

断ろうとするが、シンシアの曇りのない瞳がじっと彼女を貫く。それを見て、彼女は察した。

 

これは言わない限り引き下がらないと。

 

「...オルタンシア。オルタンシア=ベーテンよ」

 

半ば彼女、オルタンシアが折れる形で自己紹介するが、

そこには嫌々やっているというのがひしひしと伝わってくる。

 

「オルタンシアか。よろしくな!」

 

だがそんな事も気にならないのか、単に相手の名を知れて満足なのか、シンシアはにこやかな笑みを崩さない。

 

それに対してオルタンシアは、嫌悪感を隠す気もなく顔の全面に張り出すのだった。

 

 

 

 

 

 





一応今回からfate要素ありのタグをいれます。

あとどんな物でもいいので感想をください!!

作者は感想に餓えてます...

それでは次回もお楽しみに!
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