やっとテスト終わったらー!!
どんどん書きますよぉ!!
ガタガタという音と共に、高らかな汽笛の音が聞こえてくる。
(いいな...なんかこういうの...)
列車の窓から見える景色を見ながら、俺はふとそんな事を思った。
今まで馬車や船などは乗ってどこかに行くというのは経験したが、何気に列車に乗るというのは初めてだ。
馬車よりも景色がどんどん変わっていき飽きることはなく、多種多様な景色が楽しめる。それにこの汽笛の音も、なんだか物新しくていい。
(こうやって落ち着いた感じもいいなぁ...日の光も心地いいし、また一眠りと━━━)
「ちょっと」
意識が深く沈もうとするのを、右斜めから飛んだ不機嫌な声に遮られた。
「ん?どしたよオルタンシア」
「いやどしたよじゃなくて...あんたなんでまだここにいるのよ」
オルタンシアはこの個室部屋を指差しながら、俺にそうやって言ってくる。その表情は、まさにイライラしてるという感じだ。
「まぁいいじゃんか。窓も直しただろ?」
「それはあんたが壊したんでしょうが。ていうかここは個室席なのよ。だからあんたは出ていってくれないかしら」
「冷たい奴だな...」
飛び込んだときに割れた窓は、俺がしっかり錬金術で直しときました。
「まあその話は置いといて」
「ちょっと!?まだ終わってないんだけど!!」
「気にしない気にしない。それより聞きたい事があるんだけど...」
「はんっ!私が答えるとでも?」
なーんでこの子はこんなに面倒なんだろうか?最初に見せたあの聖女の如き笑顔はどこに行ったのだ。いや、これが素なのか。
「一つだけでいいから!答えてくれたらもう出るから!な?」
「......一つだけよ」
オルタンシアは視線を逸らしながらぼそりと呟いた。
「今回来る留学生がどんな奴って話で聞いてる?どんな些細な事でもいいんだよ。教えてくれないか?」
「留学生の事?そんなの同じ学校のあなた達の方がよく知ってるんじゃないの?」
「それもそうなんだけど...なんていうの?...相手方の印象はどうなのかと思いまして...」
厳しい言い訳だが、残念なことに俺の頭ではこれぐらいが限界だ。ほんっとこういうのは性に合わない。
「そうね、優秀な人だというのは聞いてるわよ。なんでも事務局が事前調査しての結果なのだから」
「ふーん。なるほどね」
表向きは納得したような態度をとったが。内心は疑問ばかりだ。
成績はからっきし。物は壊すわ授業は寝るわとリィエルの学院での評価は散々だ。そんなのはきちんと調べればわかるはずなのに...
(胡散臭いなぁ...わざとリィエルを呼び寄せたのか?だとしたら何が目的なんだ?)
ルミ姉が対象ではないことから、天の智恵研究会が関わっているということはないだろう。だがこれにはグレン先生曰く、国の政治家の思惑が絡んでいるようなので安心は出来ない。
まあ政治家が絡んでどうなるのかなんて俺にはわからないのだけれど。
「話すことは話したわ。さっさと出ていってくれないかしら。私、あなたといるのが不愉快で仕方ないの」
「ひっでぇ言われようだな。大丈夫だよ。言われずとも出ていく━━」
と、そこまで言った時俺の耳なにか小さな爆発音のような物が聞こえた。
(なんだ今の。前方車両の方から聞こえたけど...)
俺は個室の扉を開けて、耳を澄ませる。
「あなた一体何を...」
「しっ。静かに」
俺の口に指をたててオルタンシアに黙るようにジェスチャーして、俺は耳をたてる。
聞こえてくるのは、小さな爆発音となにか金属を叩き合うような音。
(戦闘が起こってる!?)
恐らく爆発音は魔術、金属音は剣激の音だろう。こんな列車のなかでそんな事が起こるなんてあり得ないかもしれないが、この短期間の経験上こういうのは無視してると大抵ろくな事にならない。
「ちっ!!」
俺は弾けるように駆け出した。後ろからオルタンシアがなにか言っているような気がするが、残念ながら今は相手にしてられない。
(間に合え!頼むから皆無事でいろ!!)
勢いよく車両との間の扉を開き、前方車両へと近づいていく。それにつれて、聞こえてくる音はより鮮明に、より大きくなっていった。
そして最後の扉へとたどり着き、それを壊すぐらいの強さで開いた。
「誰だ!」
高らかに叫びながら右手を前に突き出してスペリングの準備をした体勢で、その車両に乗り込んだ。
完全な臨戦態勢で臨んだ俺は、どんな状況にでも対応しうるという確信はあった。すぐにでも戦闘を始められる覚悟もあった。のだが...
「今日こそは決着をつけてやるぜ!!」
「望むところですわ!!貴女方の野蛮なその態度、今ここで改正してさしあげましょう!!」
俺も、さすがに聖リリィ女学院の生徒が束になって言い争いながらドッタンバッタン暴れてるなんて想像するだろうか?
「えぇ...なにこれ?」
緊張していた体から呆れるようなため息とともに力が抜ける。
今目の前では二つの集まりが対立するように並んでいる。一つは黒い髪の粗野な言葉遣いの少女を筆頭に、もう一つはクリーム色の髪のおしとやか(に見える)少女を筆頭に。いやそんなことよりも...
「なにこの状況?」
「俺だって知りたいところだよ」
俺の独白に答えたのは、同じように頭を抱えるグレン先生だった。その後ろにはルミ姉にシス姉、行方不明になっていたリィエルと見知らぬ女子が一人。
「乗れてたんですね。安心しました」
「俺はギリギリだったっての。この子がリィエル見つけてなかったらマジでやばかった。」
そう言ってグレン先生は後ろの見知らぬ少女を指差すと、彼女は俺に向かってペコッと頭を下げた。
「リィエルのことあんがとな。俺はシンシア=フィーベル。そこのグ...じゃなかった、レーン先生と一緒に送られたアルザーノ魔術学院の講師。よろしくな」
危うくグレン先生と言おうとしてしまったのでギリギリで誤魔化す。一応今グレン先生は女体化しているので、名をレーン=グレダスと偽っているのだ。これがバレると後々面倒なので、公の場で先生の名を呼ぶのはNGなのだ。
「私はエルザと申します。見ての通り聖リリィ女学院の生徒です。シンシア先生でよろしいですか?」
「ああ、多分年変わんないからタメ語でいいよ。あと先生もいらない。そんな偉くないし」
「そんなことありませんよ。16歳で
と、そんな風に純粋な善意での誉めを惜しげもなく俺に言ってくるので背中がむず痒くなってくる。
いやホントにそんな凄い奴じゃないのに。ただヘマして龍の血飲まされてたまたま適合して龍人になっただけなのに...その過程で
「で、シス姉。これはどういう状況なの?」
「それがね...」
シス姉の話によると、どうやらグレン先生達一行はリィエルを連れてきてくれたエルザと共に列車に乗り席を探していたようだ。
そして席に座ろうとしたとき、あの今絶賛口論をしているおしとやか女子が取り巻きを引き連れて絡んできたらしい。
なんでもこの車両は自分達の派閥の物だとかなんとか。
「なんじゃそりゃ!?ただの横暴じゃねぇか!」
「それは私だってそう思うわよ。でもそれを言う前にもう一つの集団が来て、一触即発状態になっちゃったってわけ」
いや一触即発ってもう爆発してるんですが...
「すみません...うちの学校ではああやって喧嘩がよく起こるんです。白百合会と黒百合会というあそこで相対してる二人がリーダー各なんですけど...迷惑かけてしまって申し訳ないです」
「そんな、エルザさんは何も悪くないよ」
ルミ姉が笑顔でフォローするが、まったくもってその通りだ。
聖リリィ女学院っておしとやかなお嬢様学校なんじゃなかったっけ?こんな派閥争いで荒々しかったり、むっちゃ毒を吐く奴がいたりするなんて聞いてないんだけど...
これは女子目当てだったグレン先生は御愁傷様としか言えんな...
「と、とりあえず後方車両なら巻き込まれないのでそちらにいきますか?」
「だな。こんな面倒事はたくさんだ」
「ん、うるさい」
グレン先生が辟易とした表情で、リィエルも眉を潜めながらエルザに同意する。そんな二人に、エルザも苦笑を漏らさざるを得なかった。
━━━━
確かに後方車両は派閥争いには捲き込まれない。それは確かだった。だが...
「席がねぇ...」
グレン先生がぼそりと呟くように言った通り、空いている席がほとんどないのだ。
この列車はアルザーノ帝国の帝都であるオルランドから出ている。ならば必然的に乗車している人の人数も多いわけで、それも列車が出てからかなり時間が経っている。席が埋まるのも仕方ないだろう。
「にしてもあんな事やってる暇があったら席を譲ったりしなさいよね!人としてどうかと思うわ!」
「それは俺も思った。てか列車で暴れるってどうなのよそこんとこ」
「あそこにいる人のほとんどがどこかの有力貴族の跡取りだったりで、大人も注意したくても出来ない状態なんです」
「権力が怖くてなんも出来ないってか。軟弱な大人達だぜまったく」
長いものには巻かれろなグレン先生からよくそんな言葉が出るものだとシス姉と二人して冷たい視線を送るが、グレン先生は気にしていないのか気づいていないのかそのまま席を探し続ける。
「つってもな~、聖リリィ女学院まで数時間かかるし、その間ずっと立っとくのもなぁ。俺やシン、リィエルは良いにしても白猫とルミアにエルザには酷だからな...」
「先生!いい方法がありますよ!」
「ほう?なんだ、シン言ってみろよ」
グレン先生が怪訝な視線をこちらに向けるのと同時に、他の四人も同じように俺を見る。
「簡単なことですよ。俺たちは座る席が欲しい。けれど他の席は埋まっており、前方車両はなんかよくわからん派閥争いのせいで占領中。ならすることは一つ!」
「だからなんなのよ?」
「フッフッフッ...」
シス姉の問いに、俺は不敵に笑ってみせる。
「簡単じゃねえか、前で暴れている奴全員ボコって黙らせて前方車両を解放!で、俺らはそこに座る。女学院の生徒とコミュニケーション(物理)も出来るし一石二鳥ですよ!!」
「っ!...確かに」
「いやいや納得するんじゃねぇーよ!?それ問題だから!あとコミュニケーションのあとのカッコはなんだよ!?」
グレン先生が全否定するが、そうでもしないと座れないのだ。相手がルールを守らないのなら、こちらも律儀に守る必要はない。
「てなわけで行くぞリィエル。無双の時間だ」
「ん、敵は狩る」
「だめだってんだろうがぁぁぁぁぁあ!!」
「「あがっ!?」」
一際大きな声で怒鳴りながら、グレン先生が俺ら二人に拳骨を振りかざした。何故だ...解せぬ。
「でもどうしますか?」
「あ~手短なのは誰かが席を退くのを待つしかねぇな」
「ねぇ先生、やっぱりボコって黙らせるのは━━」
「無しだあほが」
ちぇ...結構いい策だと思ったんだけどなぁ。
けどそれじゃ次の駅まで待たないといけないんだけど、確か次の駅って結構先だよな...こりゃキツそうだな。
「あ、あの...席ならどうにかなるかもしれません」
「「「え?」」」
エルザの唐突な発言に、リィエルを除く俺達三人はそんなまぬけな声を出した。
「え、どうにかなるってどうやって...」
「多分もっと奥にある個室席に、私の友達がいるはずなんです。彼女はいつも個室席を一人で使ってるから、お願いすれば入れてくれるかもしれません」
「マジでか!?やったなお前ら!!」
一人でヤッターと子供のようにはしゃぐグレン先生に、シス姉がため息を吐く。なんだか大人げないな、学生の席を喜んで借りる教師の図って。あれ?それもしかして俺も入る?
「あ、でも...」
「ん?どした?」
エルザは何故かそこで言い淀む。それに俺が尋ねると、エルザは少し間を開けて話し出した。
「その子、ちょっと気難しい子で。ちょっと口が悪いというか...」
「大丈夫大丈夫!こっちにも口も悪いすぐに手を出すし、胸とかその他もろもろ気難しい奴がいる痛い痛い痛い痛い!?」
「あなたは一体誰の事を指して言ってるのかしら?」
シス姉が俺の頭を全力で握りながら笑顔で聞いてくるが、俄然目が笑ってないのでその表情には恐怖しかない。
「誰もシス姉の事なんて言ってないだろ!?」
「あんなにこっちガン見しながら言ってたじゃない」
いやだって...ねぇ?
こうやってすぐに暴力に出るし、素直じゃないし、いつまでも胸は板のままだし、もう救いようがないというか...
「へぇ...シンはそんなに死にたいのね。今この列車から投げ下ろしたら簡単に行けるわよ?あの世」
「後生ですからお助けくださいお姉様」
シス姉のやつ、自然に俺の心を読んできやがった!さすがにシス姉の声音が氷点下を軽く越えてきそうなので、全力で謝っておく。
本気で怒ったシス姉は手がつけられないんだよ。これは体験談です。
「姉弟なかがいいんですね?」
「仲良くなんてないわよ!?」
「そんなばっさり否定しなくてもいいんじゃないですかね...」
さすがにそんなきつく言われると心に来るものがある。
「さてと、んじゃまぁそのエルザの友達の所に連れてってくれないか?」
「わかりました。断られたらすみません」
申し訳なさげに謝れるが、こっちはお願いしている側だ。そんな下に出られると何だかえもいわれぬ罪悪感があるな...
とそんな事を考えながらエルザ先頭で歩いていると、どうやら個室席のある車両へとたどり着く。
そしてエルザは迷うことなく一つの個室席の扉をノックする。
「どうぞ」
返事が返ってきたのを確認すると、エルザはこちらの方を向く。
「確認してくるので、少しだけ待ってもらっていいですか?」
その問いに全員で首を縦に振る。そしてエルザは部屋へと入っていった。
なにか話す声は聞こえるが、声が聞こえるだけで何を話しているのかまではわからない。この扉結構遮音性いいんだな。これ閉めてたら多分あの爆発音聞こえなかったわ。
「でもいいんでしょうか?こんなにお邪魔して」
「相手が良いって言うならいいんじゃねぇのか?ま、良いって言えばの話だけどな」
「ですね...」
俺らが座れるかどうかは、この扉一枚奥にいる少女の意見一つで大きく変わるのだ。出来ればOKでありますように。
そこで部屋から少し騒がしい声が聞こえたかと思うと、エルザが扉を開けた。
「ちょっと無理やりですけど大丈夫です」
「マジ!じゃお邪魔しまーす」
「ちょ、シン!?」
シス姉が制止を促すように言うが聞く気はない。とりあえず扉を大きく開くと━━━
「「あっ」」
俺は思わずそんな声を出してしまった。だって仕方ないだろう?
扉の奥に居たのは、優雅に紅茶を飲みながら俺と同じように呆けた顔になっているオルタンシアがいたのだから。
「な、な...」
そんな硬直を先に解いたのはオルタンシアだった。
「なんであんたがここにいるのよ!?」
「エルザに誘われて」
「ここに来るってあんたの事だったの!?」
最悪!!と言いながらキリッと睨んでくるが、俺の後ろではグレン先生やエルザ達が驚いたような表情になっている。
「シン...知り合い?」
「ああ、これに乗るとき間に合いそうになかったから窓割って飛び込んだんだよ。その時に入ったのがこの部屋で、その経緯で仲良くなった」
リィエルが何故か不機嫌そうな声音で尋ねたのにそう返すと、オルタンシアはふんっと鼻をならした。
「仲良く?何を寝惚けた事を言ってるのかしら?こっちはあんたと仲良くなる気なんてさらさらないんですけど」
「んな酷いこと言うなよ。」
俺はやれやれと首を振ると、左側にどすっと衝撃が乗った。その覚えのある衝撃を受けた方を見ると...
「......」
無言でリィエルが俺の腕に自分の腕を絡ませ、むすーとした表情でオルタンシアを見ていた。
え?なにこの状況...
「リィエル?どした?」
「なんだか、こうしたい気分」
「ああ、そう...」
よく分からない態度をとるリィエルに、敵意と嫌悪感を丸出しにするオルタンシア。そんな俺達を苦笑いしながら見るシス姉とルミ姉、そしてエルザ。加えてこれを面白そうにニヤニヤと眺めるグレン先生。
(カオスだ...むっちゃカオスだ...)
そんなよく分からない空気に、俺はそう思うしかなかった。
俺をあわれむように、列車は汽笛を響き渡らせた。
邪ンヌの口調ってこれであってるかな...少し不安になってくる。
感想お待ちしてまーす。