最後にその手が掴むもの   作:zhk

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評価バーが、赤い!だと・・・

ランキングに乗って怒涛のお気に入りの増える量に若干引き気味なzhkです。

みなさんありがとうございます!

前座はこれくらいにして、本編どうぞ!!


何故か始まる修羅場

さて、なんやかんやありまして一応生徒の信頼と尊敬はゲットしました。シンシア=フィーベルです。

 

グレン先生は何かしたみたいだけど、俺からすればあいつらの目の前でちょっと暴れただけ。それだけで他の奴等から信頼が貰えるなら御の字だ。

 

「御の字、なんだよな?」

 

「おまえ首かしげてる暇があるなら俺を助けろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「「「レーン先生ぇぇぇぇぇぇ!!」

 

俺の眼前を余裕のない表情でグレン先生が駆けていくのを、俺達のクラスの女生徒達が羨望の視線を向けながら追いかけていく。

 

確かに信頼は手に入れられた。が、グレン先生に関してはそれがなかなか面倒な事になっている。

 

暇な時間になれば女生徒から追いかけ回され、質問攻め(私的な事について)を受け、さらには黒百合会と白百合会でグレン先生を取り合う始末。そこに嫉妬の意を込めてシス姉とルミ姉も参加するのだからなおのこと質が悪い。

 

「ありゃ大変だな・・・」

 

「グレンの敵・・・?」

 

「んや、先生もあれで内心楽しんでるからいいんじゃない?多分・・・」

 

「ん、シンがそう言うなら」

 

グレン先生も、花も恥じらう女子達に追いかけ回されて嫌な思いはしてないはずだ。それにグレン先生はここに来る前にあんな状況に夢見ていたから大丈夫だろう。まぁ、その夢が予想と同じかどうかはまた別の話なのだが。

 

あ、爆音と叫び声が聞こえる。また先生シス姉達の暴走で飛んで来た魔術に当たったな。南無三・・・

 

目をつむりながら合掌をしてると、チョンチョンとリィエルが俺をつついた。

 

「シン、この本すごい。読んでたら、なんだか力がついてくるみたい。勉強って面白いかも」

 

「そっか・・・よかったな・・・」

 

今まで教科書すらろくに読まず、教室は昼寝の場所くらいにしか考えてなかったリィエルからすれば、自主的に勉強を始めたのは大きな成長だ。そこはとても嬉しく思う。けれど・・・

 

「リィエル、それ本が上下逆だぞ」

 

「・・・・・・あっ」

 

やっと今気がついたみたいな声をあげて、リィエルは本を元に戻した。その様子に、遠くで起きてる騒動に参加していないエルザも苦笑い。

 

「内容はわかってたのか?」

 

「ちゃんと目は通した。グレンが言ってたから間違いない」

 

「それただ眺めましただけなんじゃ・・・」

 

エルザの言うとおりだ。こいつ先生が言った事を文面通りに受け取ったな?

 

「それは一番だめな勉強だよ・・・勉強した気になってるだけで、リィエルの力にはなってないと思う・・・」

 

「そうなの・・・困った・・・」

 

リィエルは本当に困ったように、がっくりと肩を落とした。今のままじゃこの短期留学を成功させるのは難しいし、勉強するしかないんだが・・・

 

「ブンポー?こーぶん?表意ルーンと・・・表音ルーン・・・くー・・・くー・・・」

 

不安だ。猛烈に不安だ・・・

 

「リィエル起きろ。寝てる場合じゃないぞ」

 

「はっ!これ、読んでると眠くなる」

 

「でもこれ読まないと勉強になんないぞ」

 

「むぅ・・・困った」

 

しかしどうしたものか。このままじゃリィエルは本当に落第してしまう。それはリィエルのためにもシス姉やルミ姉のためにも避けたいところだ。でもいかんせん手段がなぁ・・・

 

「な、なら私が勉強教えてあげようか?私がわかる範囲なら教えてあげるよ」

 

「本当?」

 

「うん!」

 

屈託のない笑みでそう返すエルザを、リィエルはじっと見つめる。そして少し迷ったあと、ゆっくりと口を開いた。

 

「わかった・・・教えて、エルザ」

 

「!うん!一緒に勉強しよう!!」

 

エルザはリィエルの手をとって、しっかりと答えた。

 

リィエルの大きな成長に、俺は微笑ましくなってくる。前はグレン先生に依存しそれ以外の事柄にまったくと言っていいほど関心がなかった彼女が、自分から一歩歩み寄ったのだ。

 

目の前で生まれた友情に感慨深くなる。さて、それじゃ俺も二人の勉強のサポートを━━━

 

「ここにいたわねっ!!」

 

ガンっというドアを壊すくらいの勢いで開かれた扉から、そんな叫び声が聞こえた。途端、俺の中に暖かさが全部抜かれ、気だるさだけが支配していく。

 

「なんだよオルタ、今いいとこだったのに」

 

「そのオルタって呼び方やめなさい!!」

 

「だから、お前名前長いんだって。親愛の証だと思っとけよ」

 

「そ、れ、が!嫌だと言ってるのよ!!!」

 

腰から抜いた剣をひっきりなしに俺に向けながら怒声を繰り返すオルタンシア、改めオルタ。

 

何故こうなったか、それはあの模擬戦あとからだ。

 

しっかりと授業には出るようになった。なのだが、俺にずっと絡んできてやれ『再戦だ』だの『リベンジだ』だのと、何度も俺に模擬戦を挑んでくるようになったのだ。

 

「私が勝ったらオルタ呼びをやめなさい!さぁやるわよ今すぐに!!」

 

「いやだ!俺は今からリィエルとエルザの勉強を見んの!素行の悪い優等生は屋上で惰眠でも貪ってろ!!」

 

「それもこれもあんたに雪辱を晴らしてからゆっくりさせてもらうわ!!」

 

ああもうこいつ話を全然聞かない奴だな!!なんか怒った時のシス姉みたいに面倒くさい。

 

「オルちゃん、先生も困ってるからそれくらいに・・・」

 

「先生!?エルザ、こいつを先生なんて呼ばなくていいわよ!こんなお人好しのバカに敬うところなんて一つもないわ!!」

 

「エルザ、俺にはため口でいいって言ってるだろ?あとお前そこまで言う?」

 

というかお人好しは悪いことじゃないんじゃない?

 

「うるさい、騒がしいからどこか違う所に行って。邪魔」

 

「はぁ?なによあんた」

 

「留学生のリィエルだよ。自己紹介で言ってたでしょ?」

 

「あんなのろくに聞いてないわよ」

 

「聞けよそこは・・・」

 

呆れていると、オルタンシアは咳払いをして話題を強引に戻す。

 

「それより私はこいつが借りれればいいの。それじゃ私はこれで━━━」

 

「だめ」

 

俺の襟首を掴んで力ずくに連れていこうとするリィエルを、いつもより低めの声音で止める。なんでこいつ怒ってんだ?さっきまで普通だったのに・・・

 

「シンには今から勉強教えてもらうの。だからあなたが邪魔」

 

「勉強ならエルザに教えてもらえばいいでしょ。別にこいつじゃなくても問題ないわ」

 

「シンとエルザ二人いれば、もっと捗る。だからうるさいだけのあなたは邪魔」

 

二人の視線が交錯する。それはまるで、二人の間に電撃が流れているような、一触即発な雰囲気。

 

「ふーん言うじゃない。この青髪のチビ」

 

「うるさい白髪頭」

 

「なっ!?これは白髪じゃないわよ!!」

 

睨み合う二人に、俺とエルザはオロオロとするしかない。というかなんでリィエルもそんな好戦的なんだよ!?そんなにオルタが気に入らなかったのか!?

 

「し、シンさん・・・これはどうしたら・・・」

 

「えっ?どうしたらって・・・」

 

俺にどうしろとエルザさん。ここ二人を俺一人で抑えるなんてほぼ無理に等しいよ?

 

でもこれどうにかしないとリィエルの勉強も進まないよなぁ・・・うーん・・・

 

「そうだ、いいぜオルタ。模擬戦受けてやるよ」

 

「言ったわね!!」

 

「え・・・」

 

嬉々とするオルタに反して、絶望したみたいな顔を向けるリィエル。待って最後まで話を聞いてその顔向けられると罪悪感すごいから。

 

「ただし、お前がふたりおしえるのを手伝ってくれたらな」

 

「は?なんで私がそんな事を・・・」

 

「じゃあやらない」

 

「わかったわよ!やればいいんでしょやれば!!」

 

やっぱりこいつチョロい。ちょっと煽ったりしてやったらすぐに乗るんだから扱いは簡単だ。

 

これでリィエルに勉強も教えられ、うるさいオルタも黙らせられる。加えて教える人が増えるのでエルザの勉強も捗る。まさに完璧だ!!

 

「じゃあ私がエルザを教えるわ。こんは生意気なチビ見たくもないし」

 

「私もこんな老けて白髪が生えたやつに見られるよりもシンの方が何百万倍もいい」

 

「「ふんっ・・・」」

 

完璧だけれど、何故か仲の悪いお二人だった。

 

仲良くしてくれないかな・・・ははは、胃が痛いや・・・

 

 

シンシアside

 

━━━

 

グレンside

 

大勢の人でにぎわう食堂で、俺は絶賛白猫、ルミア、フランシーヌ、コレット、ジニーの六人で昼食中だ。

 

前の俺なら『やったぜハーレムだやっほぉぉぉぉぉ!!』とか言ってたかもしれない。いや絶対言ってた断言出来る。けど、今の状態はそんなのんきな事は言ってられない・・・

 

「争うよりも、皆さんで一緒に食事をとった方が早いですわね」

 

「そうだな。これなら皆楽しく食べられるし!!」

 

「うん、皆で食べる方が美味しいしなんでこれが思い付かなかったのかしら?」

 

「こうしたら皆との距離が縮まったみたいで嬉しいな」

 

今の会話を文面だけに表せば、きっと見目麗しい女子達が仲良さげに昼食をとりながら談笑ているように感じる。だが考えてみろ。

 

これで、全員目が笑ってなかったらどう感じるだろうか?

 

白猫、ルミア、フランシーヌにコレットの四人はお互いに牽制し合うように視線で火花を散らし合う。全然和やかじゃない。俺が思ってたのと全然違う。

 

「嬉しくない・・・こんなの嬉しくねぇよ・・・」

 

「良かったじゃないですか。これで人気者ですよ」

 

「お前完全に他人事だな」

 

「私は関係ありませんから」

 

このなかで唯一まともなジニーも冷たくあしらわれ、俺は深く項垂れる。

 

「でも先生には感謝してますよ。学院史上最悪とまで言われたこのクラスをまともにするだけじゃなく、くっだらない派閥争いもなくなりそうですし」

 

「なんでそうなるんだ?」

 

出来れば今目の前の険悪な空気から現実逃避したいがために、俺はジニーの話に聞き入ることにする。じゃなきゃ身が持たん。

 

「結局ここの派閥というのは、この閉鎖された学院の中で自由を求めた結果なんです」

 

「ほう」

 

「ほとんどが家のしきたりやしがらみで自由を制限されている身。加えて家から離れているこの学院でもこの始末。先生なら気がついてるんじゃありませんか?」

 

「ああ、ここまで息苦しそうな場所は久しぶりだ」

 

ジニーが何を告げたいのか、それはなんとなく理解できる。

 

この学院、端から見ればかなり設備の整った学院に見えるが、その実周囲は深い森に囲まれ湖や山が隣立している。つまり、自然の檻のような物なのだ。

 

世俗の穢れを一切排除した無菌室の世界。そんな所にいれば居心地の悪さを感じるものが少なからず出てくるだろう。それに貴族のお嬢様となれば、面倒な事柄がかなり絡んでくるはず。そのストレスは計り知れないだろう。

 

そのストレスを吐き出し、自分という存在をきちんと固定するために出来たのが、今のこの派閥のシステムというわけか。

 

「まぁ先生にプライド叩き折られて、色々気がついたんじゃないですか?ここから皆も成長していくでしょうし、派閥間の争いも少しずつ緩和されていく事でしょう」

 

「達観してんな・・・お前ホントに15か?」

 

「年齢は偽ってませんよ」

 

いやでも・・・なんだかすごい大人びてるというかなんというか・・・彼女も彼女なりにそう言い黒い部分をたくさん見てきたのだろう。

 

それにあのお転婆お嬢様に振り回されるのが日常だったと考えたら、こう成長するのも仕方ないか。

 

「それにしてもリィエルとシンはどこに行ったのかしら・・・」

 

ぼそっと白猫が呟いた事に、目の前で豪快にライ麦のパンをかぶりついたコレットがそれに答えた。

 

「リィエルとシンさん?あの二人ならあそこじゃねーの?」

 

コレットが指差した方向は、食堂の一角。そこには・・・

 

「シンとリィエル。」

 

「それにエルザと、オルタンシアさん?」

 

四人が並んで昼食をとっているのが見えた。

 

 

「本当にこれ食べたら模擬戦するんでしょうね?」

 

「ちゃんとするって。けど腹減ったってお腹鳴らしたのをお前だからな」

 

「なっ!?それについては言わないでよ!!」

 

「白髪頭は大食い」

 

「なによ青チビ、文句でもあるの?」

 

「私は事実を言っただけ」

 

「上等じゃない!あんたとの模擬戦はキャンセル。先にこいつをぐうの音も出ないくらい痛め付けてやるわ」

 

「やってもいいけど勝つのは私」

 

「はわわ・・・シンさん・・・」

 

「ちょっとお前ら、飯の時くらい仲良く━━」

 

「「シン(アンタ)は黙ってて!!」」」

 

「すいませんでした・・・」

 

 

遠くて何の会話をしているのかはわからないが、とりあえずなんだかあちらもあちらでリィエルとオルタンシアで険悪な空気が流れてる。ご愁傷様だな、お互いに。

 

「にしてもなんであの二人はお前らに関係なしに一人なんだ?ハブいてんのか?だとしたら俺さすがに許せないんだけど・・・」

 

「ご、誤解だ先生!!」

 

「そうですよ!!私達から自分で距離をとっているんです!!」

 

ぱっと向けた矛先に、二人はあわてふためいた。それが逆に怪しく感じるがそれよりも先に二人が弁明し始めた。

 

「エルザは前期の途中から私達のクラスに転入して来たのですが、どちらの派閥の誘いも断っていて・・・」

 

「それでクラスでも浮いていたオルタンシアと二人でよく居るのが多くなったんだよ」

 

「それじゃ、なんでオルタンシアさんはクラスで浮いてるの?」

 

そこでまた浮かんだ質問を飛ばしたのはルミアだ。だがその質問に、コレットもフランシーヌも苦い顔をして、言いにくそうにするだけ。それに見かねたのか、ジニーが口を出した。

 

「彼女は周りにとても冷たいんですよ。関わるなと言わんばかりに。それと彼女の実力、そして次代の龍の巫女という肩書きが声をかけるのを憚らせているんですよ」

 

「えっ!?オルタンシアさんて次の龍の巫女なの!?」

 

「ええ」

 

ガタンっと机から身を乗り出して、白猫の考古学マニアに火がついたがそれに対して冷たいジニーの反応。

 

「でも指名されてからですね。あんな卑屈になったのは。前まではただ素直じゃないってだけでしたが・・・何かあったのでしょうね」

 

「それに私達も首を突っ込むわけにはいかないだろ?私達が勝手に介入していいような問題じゃないんだからさ」

 

「それもそうだな・・・」

 

これはベーテン家の大きな問題だ。何の関係もない輩が横やりをいれるのは、不躾と言わざるを得ないだろう。

 

「にしてもあのオルタンシアがあそこまで激情するとはな・・・シンさんのお陰?」

 

「それをお陰と言っていいのかわかりませんが、少し前に戻ったような気がしますね。」

 

やっぱりこういう時、シンは何らかのいい薬になるんだな。リィエルの時もしかり、あいつは人に内心を引き出すのが得意なんだろうな。本人無自覚だけど・・・

 

「というかあのシンさんは何者ですの!?私達と同い年であそこまで戦いなれてらっしゃいますし・・・」

 

「だよな!私とコレット、システィーナとルミアの四人がかりでも勝てないなんて強すぎるわあれ」

 

「あいつに負けたのだけは・・・それもこっちは団体なのに・・・!!」

 

「システィ落ち着きなよ」

 

そうだ、こいつらはシンの強さを直に体験したいと言って四人で挑んだのだがシンの圧勝。巧みな漆黒魔術(ブラック・スペル)に高い身体能力、鋭い先読みに翻弄された彼女らは手も足も出てなかった。

 

「どうやったらあんな強くなるんだ?なぁ先生教えて━━━」

 

「それは教えられない。」

 

コレットの問いに、無意識に口調が強くなってしまった。それに気がついた俺ははっと顔をあげると、全員が困惑したような顔つきをしていた。

 

「あ、あいつはどうやったかを秘匿しててな!それを俺も知りたいんだけど、いっくら聞いても教えてくれないんだよ!!いやー困ったもんだよまったく」

 

「そ、そうなのか・・・それよりもさ!━━」

 

納得したのかコレットは違う話題を白猫に投げ掛け、そこからまた話が進んでいく。

 

(言えるわけねぇだろ。そうしたらどうなるかわかってんのに・・・)

 

何の代償もなしに、人の域を越えた力をほいっと手に入れるなんて出来ない。彼女らには、もっときちんと順序よく力をつけさせないといけない。

 

シンの()()がわかっているからこそ、余計にそう感じた。

 

 

 





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