1ヶ月放置・・・なんだか定番になってきたぜ・・・
気長に待ってくれると、俺としても嬉しいです・・・
では本編です!どうぞ!!
「なぜ、とは悲しいな。同じ志しを持つ同士の下を訪れるのが、そんなに可笑しいことかい?」
「すくなくとも、俺はお前の事を同志だとは思ったことたぁねぇよ」
かなりキツい口調でシンシアがジャティスへと言い放つが、それにジャティスは怯えることも恐れることもする事なく、ただ人の悪いニヤニヤとした笑みをその顔に張り付けるのみ。
「冗談はいい。」
そう言うと、シンシアは片手を地面につけ直剣を錬成しジャティスへと構える。いつものような刃なしの物ではなく、しっかりと人を傷つけられる本物の剣を。
ジャティスの実力は、正気ではなかったとはいえシンシアは一度戦っているのでその高さはよくわかっている。
手を抜けば、こちらがやられる。
だからシンシアがそう判断するのもまた当然の事であった。
「要件は、なんだ」
はっきりとした言葉が、閑散とした玄関に響く。そしてその問いに、ジャティスはシンシアの声と同じような強さを込めて、
「エルミアナ王女、いや、ルミア=ティンジェルを迎えに来たんだよ。」
そう答えた。
「そうか・・・」
シンシアはジャティスの答えに対しそう小さく呟く。
問答なんてその程度で構わない。
だってそれだけで、
シンシアがジャティスへ牙を向ける理由としては、十分なのだから。
呟きが終わった途端、
彼の姿が揺らいだ。
瞬間、シンシアはジャティスの目の前、それこそ彼が持つ直剣のリーチまでほんの一瞬で肉薄した。
身体強化も使っていない。もちろん魔術も今さっき直剣を錬成した【
ただ単純な、彼の身体能力のみ。
ジャティスとの距離はそれなりの距離があった。それをほんの一瞬で縮めたという事実は、彼がどれだけの力を持つかを表現するのに十分すぎる。
(切るっ!!)
自身が出せる全速力のスピード、加えてその勢いから放たれる剣激だ。避けられるはずがない。シンシアがそう内心で確信しながら剣を振りかざそうとしたその時、
シンシアの目に、何かが写った。
「っ!?」
それを認識した途端、シンシアは片足で出ていた勢いを殺し、すぐさま後ろに飛んだ。
そして手に持つ剣を床に刺してスピードを緩め、もう一度ジャティスへ向けて剣を構える。
「ははっ!さすがだよ、君なら避けるだろうと思っていた。これがリィエルなら避けられなかっただろう」
感心するかのようにジャティスがシンシアへ言う。その表情は実に楽しそうだ。
シンシアが見たもの、それは一瞬だけシンシアとジャティスの間で光った何かだ。
何か、と書くがそれはシンシアですら何かはわからない。
けれど、それが何かしら危険な物であるというのは、彼の研ぎ澄まされた第六感が告げていた。
(見えない刃物?それを置ける魔術か・・・いや、ジャティスが使うなら
「罠みたいに仕掛けてるんなら、全部焼けばいい話っ!!《夕闇に
シンシアが詠唱を終えると、シンシアを中心に黒の業火が竜巻のように蠢いて辺りにあった物なにもかもを焼き尽くしていく。
自分を中心とした一定距離に炎を発動させ、全体を一掃するなんともシンシアらしい魔術。
だが、今この状況下においてその効果は絶大だ。
「なるほど、確かに君のような高速戦闘を得意とするならば、この空間に罠が仕掛けられていては戦いにくい。まったく、僕が仕掛けた【
黒炎が蠢く度、辺りからパリンパリンとジャティスが張っていた透明の刃達は破壊されていく。
罠の心配はなくなった。ならば・・・
「突っ込むのみ!!」
「だろうね!!」
シンシアが再度突貫するのと、ジャティスが
左右にステップしながら相手に軌道を読ませないように動きつつシンシアはジャティスの背後を取るも、彼が剣を振るより先にジャティスが生み出した
「ちっ!!」
だがその程度ではシンシアは止められない。
受け止められた剣を起点に足に魔力を込めると、【
現れた天使は、いとも簡単にシンシアの
「さすがだよ!!それじゃあ、これならどうかな?」
ジャティスはまたも
「撃て」
ジャティスが冷酷にそう告げると、がちゃりと言う音と共に
「あのさぁ・・・」
だがそんな状況にも関わらず、シンシアは至って冷静に、
「ワンパターンなんだよ。《吹き飛べ》っ!!」
そう口にしながら右手をジャティス達へ向けた。
すると、彼の右手から黒雷が乱れ飛んだ。
狙いなんて関係ない。たたひたすらに、前方にいる敵を破壊することにのみ重点が置かれた一撃は
館が一撃の重みに揺れ動く。それをシンシアは気にした素振りも見せずに剣を一振りしながら、吹き飛んだジャティスへと歩み寄っていく。
「うっ・・・まさか即興改変でここまでとはね・・・さすがの成長力だ・・・」
屋敷を揺るがすほどの威力の雷撃を受けたと言うのに、ジャティスの余裕そうな笑みが崩れることはない。それどころか、本当にダメージが入っているのかすら怪しくなってくる。
だからこそ、手が抜けられない。
シンシアは床に横になるジャティスの目前まで来ると、静かに剣の刃先をジャティスの首もとへ突きつけた。
「チェックメイトだ。洗いざらいはいてもらうぞ、狂信者が」
軽蔑、否、これは侮蔑だろうか。はっきりとはわからないがとりあえず良い感情ではない物をジャティスへ向けるシンシア。
だが、そんな時でさえ・・・
ジャティスは嗤っていた。
「くっくっくっくっ・・・狂信者、それは僕の事かい?」
「お前以外に誰がいるって言うんだよ?」
「ふふっ、本当に心外だよ。だって・・・」
そこでジャティスは俯いていた瞳をシンシアへ向けて、
「君と僕は同じなんだから」
愛を囁くような優しささえ感じる声音で語った。
そこに、シンシアは謎の恐怖感を覚える。
状況は完全にシンシアが有利。万が一、今シンシアが突きつけている剣を弾かれてもシンシアにはさらにそこからジャティスを追い詰める策がある。
圧倒的にシンシアが有利、そのはずなのに・・・
(なんだ・・・なんでこいつはこんなに笑ってられるんだよっ!?)
刃先が、ほんの少しだけ震える。
その一瞬の動きをジャティスはしっかりと見ていたが、そこを話題には上げない。
代わりに言葉を投げたのはシンシアの方だった。
「・・・お前と俺が一緒?下らない冗談はやめろ、吐き気がする」
「冗談なんかじゃない。君にはある、僕と同じ、自分が信じる正義のためなら犠牲を厭わないというところがね」
「犠牲?俺はなにも━━━」
「我が身を削ることを、君は犠牲とは言わないのかい?」
「っ!?」
たった一言、言うのにほんの数秒とかからない言葉に、
シンシアは大きく動揺を見せてしまった。
「人間とは、必ず第一優先とするのは我が身だ。他人なんて二の次。それなのに、君はその二の次の他人が最優先事項だ」
「やめろ・・・」
「自己犠牲の精神、君のそれはそんな生易しい物じゃない。僕と同じ、ただひたすらに、正義を求める使徒の物だ」
「黙れ・・・」
「だから君と僕は似てるのさ。同じ正義という道標へと向かっていく信徒。正義のために、家族、友人、恩師、全てを欺き、切り捨てる事が出来る人間━━━」
「黙れって言ってるだろっ!!!!」
核心を抉ってくるジャティスの言葉に耐えきれず、シンシアは手に持つ剣をジャティスへ振りかざした。
その剣はしっかりとジャティスへ向けて風を切り、
ジャティスの顔の真横の壁に突き刺さった。
「けど、まだ甘い」
にたりと、嘗め回すような笑みを見せジャティスは言う。反面、シンシアはまるで全力疾走したかのように息を切らしていた。
「違うっ!俺はっ!皆を騙してなんていない!!皆が笑顔でいられるように!!俺はぁ!!」
「それが異常だと、僕は言ってるんだよ。けれど、まだ君は僕のところまで来れていない」
剣の刃がすぐそこまであると言うのに、ジャティスはその場を立ち上がるとすたすたと怯えるようなシンシアへと近づいてくる。
「一つ教えてあげるよ、君がなぜ、毎度毎度の戦いでぼろぼろにならなければいけないのか。それはとても簡単な事なんだよ」
一歩、また一歩と距離を詰め、そしてジャティスはシンシアの耳元まで近づくと、
「君には、人を殺す覚悟がないんだよ」
ぼそりとそう口にした。
「僕との戦いも、もっと火力は出せたはずだ。それなのに、君はそうしなかった。僕をどうにか生け捕りにしようとしたというならそうなんだろうけど、相手が殺しにかかっていたら?ここで君が倒れたら?そしたら、君の後ろにいる大切な人達はお仕舞いだ。なら・・・」
「なぜ、そんな甘い戦いをしてるんだい?」
手が震える、唇が震える。
どうにか避けてきた。なんとかして逃げていた事に、今ここで、敵であるジャティスからシンシアは突きつけられてしまった。
「俺は・・・俺は誰も殺したく・・・」
「けど、そんなエゴで皆を守れるのかい?君が助けた人間が、君の大切な人を殺すかもしれないんだよ?」
「そ、それは・・・」
否定できない。否定しきれない。
ジャティスが告げるのはすべてがこの冷たい現実に即した正論だ。対してシンシアが口にするのは、単純な願い、それこそ子供の駄々のような物でしかない。
殺すか殺されるか、戦いとは、必然的にそういうものなのだ。
「きっと、君もそうしなければいけない時がすぐ来る。それこそ本当にすぐに。その時、君にその決断が出来るかな?」
「うるさいっ!!」
堪えきれなくなったシンシアが、溢れきった感情に身を任せて剣を横凪ぎに振った。が、単調過ぎるその動きは簡単にジャティスの身のこなしの前に無力にも避けられてしまう。
「俺は誰も殺さない!!誰も死なせない!!皆が笑ってられるような、そんなハッピーエンドを俺が作り出すんだ!!誰かじゃない!俺が、俺がやらなきゃいけないんだ!!!」
歪み、脆い、そんなシンシアの幻想。
けれども、叫ばずにはいられなかった。
だって、ジャティスの言うことをそうだと肯定してしまえば、
きっと、シンシアは、
もう彼の目指す正義の魔法使いにはなれないと感じたから。
シンシアの独白をすべて聞き終えると、ジャティスはふーんと納得したような声を出すと、
「なるほど、なら、きっと体験した方が早いだろうね」
「なに?」
ジャティスの怪しげな一言に、シンシアは及び腰ながらも剣を構える。
「君も可笑しいとは思わないのかい?僕は君やグレンとは違い感情の赴くままに行動しない頭脳派な人間だ。であれば、屋敷に突入した時点で君が僕に襲いかかってくると、なぜ
「お前・・・一体何を言って・・・」
シンシアがジャティスへそう尋ねたその時、ガンっ!!という爆音が屋敷奥手から響き渡った。
「なっ!?お前何を━━っ!?」
いきなりの出来事に驚きつつまたジャティスを見ると、シンシアにさらなる驚きが襲いかかった。
ジャティスの姿が歪んだのだ。
さっきシンシアが出した超高速による残像ではない。ただ単純にジャティスの姿が歪んでいく。
そして現れたのは、
なんの変哲もない一体の
「なっ!?」
それがどういう事を示すのか、ジャティスが言った最後の言葉、そして屋敷奥手からの爆音。
「まさかっ!!くそっ!!」
それらの要素は、シンシアに最悪を連想させるには十分だった。
屋敷の中を駆ける、駆ける、駆ける。
(ヤバいっ!!お願いだから間に合ってくれ!!)
焦燥に刈られるように、必死に足を動かす。
そして裏口に出る扉を勢いのまま蹴り飛ばすと、
「はっ━━」
その光景は広がっていた。
血の海に倒れ伏すリィエル。
目を閉じ辺りに項垂れるシスティーナ。
そして、ルミアの手を引く、ジャティスの姿。
「これが、君の甘さの結果だよ。シンシア=フィーベル。これで、一体誰が守れたんだろうね?」
「お前・・・どこまで人をバカにすれば!!」
「バカに?そんな事はしていないさ。」
ジャティスのタルパが、ジャティスとルミアをつれていくように空へと運ぶ。
そんな彼らを、シンシアは見ることしかできない。今ジャティスに魔術を放とう物なら、確実にルミアにも当たってしまう。そこまでの精度での魔術の発動は、シンシアには無理だ。
いや、これはきっと、彼の言い訳に過ぎないのかもしれない。
「僕は導くだけだよ。君を、君達選ばれた人間を、僕が倒すためにね」
今のシンシアに、ジャティスの言葉は響かない。
「さぁ頑張りたまえ同志よ。まだ、すべては始まったばかりだよ」
ジャティスがそう告げると、ジャティスとルミアを連れて
そんな中、シンシアは、ただ呆然とするしかなかった。
自分の無力と、覚悟のなさをひたすらに、痛感しながら。
━━━
システィーナside
どこかからか射してきたオレンジの光が閉じた瞼の間から瞳を指し、私は目を覚ました。
「うっ・・・ここは・・・」
「シス姉!?起きたか!!」
小さく呟いた言葉に、誰かが反応して視界に入ってくる。それは見慣れた白髪に、バカそうな面の青年で。
「シン・・・私は・・・」
「痛い所とか、変な所とかないか?」
「私は大丈夫・・・っ!?」
弱々しくシンの問いに答えたその時、私はそんな事よりももっと重要な事を思い出した。
「シンっ!?ルミアは!?リィエルは!?二人は無事なの!?」
そうだ、私よりも二人の安否の方が心配だ。
シンが私達を逃がしてくれたあと、裏口から屋敷を出たとき、
その男、ジャティスはまるでこの流れを読んでいたかのように待ち構えていたのだ。
ジャティスは狙いはルミアだと言い、ルミアに自分に着いてくるように促してきたがそれをリィエルが大剣をジャティスへ振りかざす事で拒否。
そのままジャティスとリィエルの一騎討ちになったのだが、結末は一瞬でついてしまったのだ。
リィエルが、なにもないところで切られたように血を流して倒れてしまったのだ。
どこか抜けているといっても、彼女はあの特務分室のエース。そんな彼女を、ジャティスはいとも容易く倒したのだ。
怖かった。今すぐにでも逃げたかった。
けれど、私はどうにか抗った。そうしなきゃルミアが誰が守るのだと強く意思を持って。
それなのに、私は何をされたのかすらわからずに気を失ってしまったのだ。
早く知りたい。親友達の安否が早く知りたい。その一心でシンへと問いを投げると、シンは厳しそうな表情になり、その重たい口を開いた。
「ルミ姉は・・・ジャティスに誘拐された・・・リィエルはどうにか応急処置はしたけど、俺じゃ限界がある。今そこで寝てるよ」
そう言ってシンが指差す先には、苦しそうに息をしながら体の至るところに傷がつき、ベッドに寝込むリィエルの姿があった。
「ごめん・・・俺の責任だ・・・」
そこで、唐突にシンがそう言った。
「ジャティスの狙いに気がついてたのに、それに対して対処がきちんと出来なかった・・・あの時、あの時俺がっ!!」
「シンっ!!」
「っ!」
一人責任に押し潰されそうになる弟の名前を、私はしっかりと呼んだ。
「あなたは悪くないわ。あなたはしっかりやってくれた。きっとシンがいなかったら、私達全員死んでてもおかしくなかったもの。」
そうだ、策にはまってしまったといっても、シンがどうにか私達の所に来るのが間に合ったからこそ、ジャティスに殺されずにすんだのだ。
誰も彼を責めることなんて出来ない。むしろよくやったと言われるべきなのだ。
なのに・・・
「違う・・・違うんだ・・・俺が・・・俺がしっかり覚悟を決めとけば・・・」
泣きそうな顔になりながら、シンは一人呟き続ける。
駄目だ。このままじゃ、駄目だ。
そうわかっていても、どうしていいかわからない。
どうすることが正解なのか、なにをするのが最善なのか、まったくと言っていいほど頭に登ってこない。
(何か・・・何か声をかけてあげなさいよ私っ!?弟が悩んでるのよ!?)
何度助けられたかわからない。
何度助けられたところを助けられなかったかわからない。
だからこそ、今シンになにか言わなければと頭を巡らせてるうちに、
シンはおもむろに立ち上がった。
「ごめんシス姉、リィエルの治療を頼む」
それだけ言うと、シンは懐から小さななにかを出したかと思うと、それは大きく広がりダークブルーのコートとなった。
見覚えがある。特務分室所属の魔術師が着る対魔術戦用ローブだ。
「治療って・・・どこへ行く気よ・・・」
「決まってる。シス姉を取り戻す」
「無茶よ!?」
痛む体なんて気にせずに、私は今にもこの部屋を飛び出して行きそうなシンの肩を掴んだ。
「わかってるの!?相手はあのジャティスなのよ!?グレン先生や、他の特務分室の人達でも手を焼く程の実力者の!!」
「うるさいな・・・」
「ここはまずは先生に助けを求めましょう!?きっと先生もアルフォネア教授も力を貸して━━━」
「うるさいって言ってるだろ!!」
そう叫び、シンは私を押し飛ばした。
あまりに突然の事だった。けれど、私は見てしまった。
シンの、とても悲しそうな瞳を。
いつものシンじゃない。なにかを迷うような、絶望したような、そんな瞳。
ただ、一言言えるのは、
こんなシンの、シンシア=フィーベルの表情は、今まで最も長い時を共に過ごした姉の私でさえ、見たことのない物だと言うことだった。
「時間が・・・時間がないんだ・・・リィエルの治療が終わったら、シス姉はグレン先生のとこへ行って。とりあえずこの家の結界は魔術具で張り直してるからリィエルは寝かしてて大丈夫だ。」
早口で捲し立てるように言うシンに、私はぼけっと見るしか出来ない。
「それじゃ俺は行くから、あとは頼むよシス姉」
そう言って踵を返すシン。そんな彼を呼び止めようとしたその時、
「シン・・・」
私の後ろから、か細い声が聞こえた。シン共々振り返って見ると、リィエルが弱々しく目を開いて、シンを見ていた。
「どこ・・・行くの・・・嫌だ・・・また・・・私を・・・置いてかないで・・・」
リィエルが、懇願するように言う。それを聞いたシンは少しだけ動揺した。
理由はない。ただ、なんとなくわかってしまった。
けれどわかっただけ。私はなにも出来ない。
「ごめん・・・」
だから、そう言って部屋を出るシンを、もう呼び止める事すら出来なかった。
部屋に沈黙が溢れる。
「ねぇ、システィーナ・・・」
その沈黙を破るように、リィエルが私の名を呼ぶ。
「・・・なに?」
今は少し考えさせて欲しかった。頭の中で、自分自身が事態を整理しきれていない。
けれど、私は、リィエルの呼び声に反応してしまった。
「シンは・・・もどって・・・来るよね?」
だから、そんな問いを投げられてしまう。
「も、もちろん帰ってくるわよ!あのバカが、そんな簡単にやられるわけ・・・」
「でも」
リィエルは私の言葉を遮って、こう言った。
「今のシン・・・なんだか、システィーナが、結婚しそうになった時・・・みたいだった。」
その言葉に、私はガツンと殴られたような感覚に陥った。
まだ覚えている。というか、忘れるわけがない。
あの結婚騒動、その最中で起きた、シンの暴走。
その時とシンの雰囲気が似ていたと、リィエルは言う。
(それを前にして・・・私はなにもしなかった・・・なにも出来なかった・・・)
あの時からなにも成長していない。
なにも知らずにシンに強い言葉を投げ、
なにも出来ずに暴れるシンを見てて、
ただ捕らえられるシンに、なにも出来ずに終わってしまった。
「ねぇ・・・怖いよ。また、シンはいなくなるの?」
悲しげ瞳が、一心に私を貫く。
(私に何が出来るの・・・こんな、こんな非力な私に一体何が・・・)
諦めるように自問自答する。そんな時、
『後悔しないように、かな?』
ふと、ルミアがついさっき話していた言葉が頭に過った。
(後悔・・・後悔しない。私はいつも後悔ばかり・・・また、私は後悔して終わるの?)
嫌だ。
嫌だ。
嫌だ。
もう、後悔したくない。
なにも出来なかったと、一人嘆きたくない。
後悔するなら・・・
(私は・・・やれるだけやって後悔したい!!)
そうだ、いつも、あいつは諦めなかった。
魔術の才がないと告げられた時も、
魔術学院に入るのが絶望的だと言われた時も、
テロリストに相対した時も、
競技祭の時も、
遠征学習の時も、
社交舞踏会の時も、
シンは、どんな逆行でさえ諦めずに乗り越えて見せた。
なら、その姉である私が、そんな簡単に諦めるなんて、
あっちゃならないんだ。
「大丈夫」
だから私は言うんだ。
「あいつがどこかに行っちゃいそうなら、皆で繋ぎ止めましょう?いざとなったら、私が引っ張って戻してやるわよ!!」
強く、堂々と、
シンのように、
あの何にも折れないような、私達のヒーローのように。
弱さを蹴り飛ばして言ってやるんだ。
「だから、私達もやれることをやりましょう」
「ん、わかった」
そう答えるリィエルの瞳は、さっきとは違い少し不安が抜けたようにも感じた。
まずはリィエルの治療からだ。やることはまだまだごまんとある。
(シンには・・・一度ちゃんと礼を言わなくちゃね)
ここにはいない私達の英雄を頭に浮かべながらそう考える。
助けられてばっかりじゃいられない。
なぜなら、今度は私達が、シンを助ける番なのだから。
シス姉、奮起の時でした!
それに打って変わって、弱さをジャティスに悉く撃ち抜かれたシンシア。はてさてどうなるのやら。
次回をお楽しみに。
出来れば感想!感想送ってください更新ペースがきっと上がりますお願いします!!
露骨な感想稼ぎでした・・・