ワオ!原作数ページしか進んでない...
という訳で第6話です!!どうぞ!!
時は進んで今は放課後。二組の生徒達は一同揃って中庭に集まり、競技祭へ向けて特訓に励んでいた。
「シン、お前は何の魔術なら使えるんだ?」
他の生徒達は各々自分の練習をするなか、シンシアはグレンに呼ばれグレンの元へと来ていた。
「えーと、【フィジカル・ブースト】と【グラビティ・コントロール】とあと錬金術が少しと...あと一つありますけど秘密です。俺の秘奥義なんで!」
「バカなこと言ってないで早く言え」
「ノリが悪いっすね...まいいや、多分見た方が早いっすよ。」
そう言うとシンシアはグレンから距離を離して、足を後ろに少し下げる。
「?なにするつもりだ?」
「まぁ見ててくださいよ。」
シンシアの行動に周りも興味を持ったのか、クラスメイトのほぼ全員がシンシアへと注目していた。
「ねぇシスティ、シン君の秘奥義ってあれかな?」
「でしょうね。確かにあれを使える奴なんてシンだけでしょうね。」
既にシンシアの秘奥義に目星がついているシスティーナとルミアは、簡単に予想をたてていた。
「システィ、シンさんは今から何をするのかしら?」
「見てればわかるわよウェンディ。きっと度肝抜かれるわよ。」
「え!?そこまでなのですの!?」
ウェンディが驚愕を顔に浮かべていると、もうシンシアが準備を終えていた。
「じゃあ先生に走って殴りかかるので、先生はそれをどんな手を使ってもいいから止めてください。」
「おうわかった。じゃあ来い!」
「行きます!」
シンシアはそれを掛け声に、一気に駆け出す。グレンはそれをファイティングポーズをとって待機する。
(やっぱこいつ鍛えてるだけあって早い!)
かなりのスピードで接近するシンシアに焦りながらも、グレンはそれに対応する最善手を考え出す。そしてシンシアがもうすぐ懐に入るというところで、グレンは右手を全力で放つ。
もちろん寸止めにするつもりだが、シンシアは近距離での【ライトニング・ピアス】さえも避けるのだ。グレンも全力で対応しなければ勝てない。
そのグレンの拳がシンシアの顔に当たると思われた瞬間ーーー
シンシアは消えた。
「な!?どこに...」
消えたシンシアにグレンは呆然としていると、後ろから急激に殺気が上昇するのを感じる。
「後ろか!」
「遅いッ!」
グレンはどうにかシンシアを視界に納めるがもう遅い。シンシアの拳は、もう既にグレンの目の前で止まっていた。
「ま、こんなもんです」
そこでシンシアは拳を下ろし、胸を張りながら自慢げにそう語る。
「マジかよ...今のは【タイム・アクセラレイト】だろ...お前本当に使える魔術偏り過ぎじゃね?」
グレンはただただシンシアが使う魔法に唖然とするしかなかったが、それ以上に唖然としていた生徒達が山のようにいる。
「あ、あの先生...いまシンは何をしたんすか?」
その人混みの中の一人の男子生徒、カッシュがグレンに尋ねた。グレンでさえ目で追えなかったのだ。ただの一般生徒に今のシンシアの動きを理解しろという方が無茶な話である。
「...今のは【タイム・アクセラレイト】って魔術だ。自身に流れる時間を加速させることによって、一定時間爆発的に加速することが出来るんだが、その加速した分後から自分は減速するんだよ。今シンシアはそれを使って加速して俺の後ろに回った。そうだろ?」
「大正解です先生。これが俺の切り札でありながら、俺の最強の魔術です。」
そのシンシアの魔術に、クラスの生徒から驚きの声があがるが、グレンにはそれよりも聞きたいことがあった。
「というかお前さ、いつのまに詠唱したんだよ。全くそんな素振り見えなかったぞ?」
「え?詠唱なんてしてませんよ?」
「「「「「「「は?」」」」」」」
その場の全員が、大きく口を揚げて閉まらなくなった。
本来魔術は、自分が詠唱しそれを自己暗示のようにする事で発動される物だ。それを無詠唱で発動出来るのは、一握りの超一流だけだ。
「え?し、シン?アンタいつの間にそんな事出来たのよ...」
「ああ一年前ぐらいかな?【タイム・アクセラレイト】はそれぐらい前から無詠唱で出来たぜ?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。今君は【タイム・アクセラレイト】
そのギイブルの発言に、全員がシンシアの方向へと向く。だがそのシンシアはいつも通り飄々としながら、
「おう。さっき言った二つは無詠唱で出来るぜ。ほら」
そう言ってシンシアはその場でジャンプし、無詠唱で【グラビティ・コントロール】を起動させる。そのままシンシアは高く飛び上がり、屋根へと飛び乗った。
「本当だわ...」
「まじかよ...」
シンシアが屋根の上から飛び降りる中、シンシアの特異性にそれぞれがそれぞれの反応をするが、全員の共通としては今まで一番下だと思っていた奴が、実は凄腕だったという驚きだけだった。
「でも、先生。俺その代わり【ショック・ボルト】もまともに撃てないんすよ。」
「は?【ショック・ボルト】も?そりゃねえだろ。俺でも撃てるんだから。まぁ試しに撃ってみろ」
「了解っす」
そしてシンシアは近くの木へと右手を向ける。
「《雷精よ・紫電の衝撃以て・撃ち倒せ》!!」
勢いよく唱えられたその式句に、通常ならば雷の一閃が木に向かって飛ぶはずだった。しかし、起こったのはシンシアの右手の手のひらで、バチっと音をたてながら一瞬輝いただけだった。
「ね?言った通りでしょ?」
シンシアは悲しげにグレンへと語る。
(なるほどな。こいつは相当
得意な魔術が分かれてくるのだ。
「よし、一番の不明要素のお前の底が見えたからOKだ。今からお前には特訓をしてもらう!」
「おお!!特訓!!なんかテンションあがるなぁ!!」
もうそろそろシンシアの扱いが解ってきたのか、グレンはすぐにシンシアのやる気を最大に引き出す。いくら身体強化の魔術の天才であろうと、いくら筆記の成績がよかろうと、シンシアの根本は単純なバカなのだ。
「ダメだわ...もうあいつにうまく扱われてる...」
「ははは...でもあの純粋さがシン君の良いところだと思うよ?」
「でもあれはいつか悪い人に騙されそうですわね...」
ウェンディの指摘に、その回りの女子が首を縦にうんうんと頷くように振る。
シンシアは明るく社交的で、無邪気で子供のような感じなのでクラスメイトの女子達からは手のかかる弟のように思われている節がある。それは常時システィーナがシンシアを叱っているのを、間近で見ているのも理由の一つなのだが...
「お前は今から『決闘戦』に出る奴等が放つ魔術を避けるんだ。これが完全に出来るなら十分試合でも貢献出来るだろ。」
「了解っす!!じゃあ早速やろーぜシス姉!!」
「わかったわかったから叫ぶな!うるさいのよ!!」
そう言いながらシンシアはグレンの元を離れ、クラスメイトの輪の中へと入っていった。それをグレンは静かに見ていた。
(全く人の気も知らないでのうのうと...こちとら今後の飯がかかってるってのによ...)
だがそんな事を思うグレンの心には、それほど彼らに苛立ち等は感じなかった。競技を決めるまで死んだような顔をしていた彼らは、今やいきいきと特訓に励んでいた。
その中でも一際目立つのは、やはりシンシアだろう。
下心ありとは言え、全員の心を動かすカリスマ性にそれをさらに加速させるリーダーシップ。まぁ恐らく彼自身は後先何も考えてないのだろうが...
「ちょ!?なんで当たらないのよ!!」
「ふははははははは!!その程度造作もないなシス姉!!あ、ちょっとまってギイブルもカッシュも加わるとか聞いてないって!!」
「『大乱闘』は三人なんて甘い人数の攻撃じゃないんだよ。」
「悪いなシン!そこでくたばれ!」
「卑怯ものぉぉぉぉぉおお!!」
三つの紫電がシンシアへと直撃する。それを見るグレンの顔は綻んでいた。
(あいつなら...もしかしたらなれるのかもな...正義の魔法使いってやつに)
それはグレンが一度夢見、そして破れた物。その時グレンは、現実にはそんな物は存在しないと痛感させられた。だが、今目の前のシンシアを見ていると、彼ならばと考えてしまう。
(なんてな。こんなのただの押し付けだ。あいつのその夢もすぐに終わるだろ...)
そしてグレンは負けたときのために、学院内にある食べれる木や葉を探しに、その場を離れていった。
「いってぇぇ。この...人でなし!」
「はいはい。そこまで叫べる元気があるなら大丈夫よ」
その頃シンシアは、【ショック・ボルト】を三発も食らったため、まだ体の痺れが残っておりその場に倒れていた。
「でもこれならなれそうだな。よし!続きと行こうぜ!」
「本当に回復が早いな...一体君の体はなにで出来ているんだい?」
「?骨と筋肉」
「...聞いた僕がバカだったよ」
ギイブルの皮肉の意味がわかっていないシンシアは的外れな答えを返す。その対応に、ギイブルは頭を抱えるしかなかった。
「さてどんどん行こうぜ!!時間はそんなねぇしな!!」
シンシアは体の痺れが完全に無くなった事を確認すると、すぐに再戦を促す。そしてシスティーナ、ギイブル、カッシュの三人がシンシアへと魔術を放とうとしたその時だった。
「さっきから勝手なことばかり言って、いい加減にしろよお前ら!!」
「ん?」
突然中庭の端からとんだ怒声に、その場にいた四人とも動きが止まる。
「なんだ?どうかしたのか?」
「ああシン...こいつらが練習するからここをどけって言い出したんだよ...」
さすがにシンシアも無視できなかったため、その場に駆け寄るとそこではシンシアのクラスメイトと一組の生徒が口論になっていた。
「どうしますーグレン先生ー」
「まぁ確かに俺らちょっと場所とりすぎか...全体的にもちっと端に寄らせるから、それで手打ちにしてくんね?」
「場所をあけてくれるなら...それで...」
シンシアの後からやって来たグレンによって、その場はうまくまとまるかに思えた。が、現実はそう甘くはなかった。
「何をしているクライス!さっさと場所を取っておけといっただろう!まだとれないのか!!」
そこで奥から眼鏡をかけた理知的な講師が、怒鳴りながらその輪の中に加わった。
「あ、ハーレス先生」
「ちげぇよシン。確かハーレム先生だよ。名前間違えるのは相手に失礼だろうが。」
「ハーレイだ!全く貴様ら私の名前をきちんと覚えろ!!」
シンシアとグレンの息のあった囃し立てに、ハーレイの怒声が飛ぶが、二人ともそんなもの全く痛くも痒くもないように話を続ける。
「グレン=レーダス、私は貴様のように最初からこの競技祭を捨てていないのだ。我々は貴様らのように遊んでいるわけではないのだ。それがわかったらさっさと場所を空けろ!!」
その一方的な発言に、誰もが顔をしかめるがグレンはそのまま道化を演じる。
「いやーすいませんね。場所はあの木ぐらいでいいですかね?」
そう言ってグレンは区切りとなりそうな木を指差しながら答える。だがーーー
「何を言っている。お前達二組のクラスは全員、とっととこの中庭から出ていけと言っているのだ。」
その言葉に、二組のクラスの全員が凍りついた。グレンでさえも、さすがに聞き流すことは出来なかった。
「ちょっと先輩、それはいくらなんでも横暴じゃないすかね...」
「そうだぜ。俺らは真剣にやってんだよ。そんな事を言われる筋合いはねぇはずだ。」
グレンの答えにシンシアも便乗して返す。その顔は分かりやすく怒りが浮かべられており、拳を固く握っていた。
「ふん!成績下位者という使えない雑魚同士群れるなど見ていて迷惑なのだ!!わかったらさっさと失せろ!!」
その言葉が終わるや否や、グレンの横にヒュンと風が吹く。そして気づけば、シンシアが両手をハーレイへと向け、そしてハーレイの目の前で両手を勢いよく合わせた。
「うわっ!?」
ハーレイはそんな間抜けな声をあげながらその場に腰をおろしてしまう。それを見下ろすようにシンシアが見ていた。
「あっれれー?おっかしいなー?成績優秀なクラスの講師が、実技成績最下位レベルの生徒に恐れて尻餅ついちゃったー?」
「な!?貴様!!」
シンシアは完全に相手の事をバカにしたような顔で、ハーレイにそう告げる。
「き、貴様!!それが教師にとる態度か?」
「あれ?アンタって教師だっけ?」
さらにシンシアは小バカにすることをやめることなく、嘲笑を浮かべながらハーレイの前に立ちはだかる。
「親の七光りが!貴様ごとき、競技祭で直ぐ様潰してやる!!」
「出来るならどーぞ?俺は強いぜ?ねぇ先生?」
そうシンシアはグレンに話の矛先を向けると、グレンも同じように不敵な笑みを浮かべていた。
「もちろんだシン!お言葉ですが先輩、うちのクラスはこれが最高の布陣なんですよ。精々寝首をかかれないよう気をつけてくださいね!?」
「く、口ではいくらでも法螺は吹け「給料三ヶ月分だ」なに?」
ハーレイの言葉を遮るように、グレンは語る。
「俺の生徒が勝つに、俺は給料三ヶ月分をかけるぜ?アンタにそれが出来るか?」
そのグレンの問いかけに、クラス一同騒ぎ始める。ハーレイはと言うと、豆鉄砲を食らったかのような顔になっていた。
「どうします?給料が三ヶ月分となると、先輩の研究はかなり滞っちゃいますけど?」
「...いいだろう、その勝負受けてたつ!」
ハーレイも引くに引けなかったのか、その勝負を受け入れた。
「今さら後悔してもしんねぐぼっ!!」
「アンタ少し騒ぎ過ぎ。そこまでですハーレイ先生、これ以上グレン先生を愚弄するなら私が許しません」
「ちょっとー?俺も馬鹿にされたんだけどー?」
シンシアの言葉は空しくも誰も聞こえなかったかのように無視され、会話はさらに進んでいく。
「今ここで低俗な争いをせずとも、グレン先生は逃げも隠れもしません。一週間後の競技祭で、正々堂々とハーレイ先生のクラスと戦うでしょう。ですよね?先生?」
「お、おう...」
何やら思い違いがあるようにも感じるが、グレンはそのシスティーナの笑みを見て、何も言えなくなってしまった。
「覚えていろグレン=レーダス!集団競技になれば、真っ先にお前のクラスを潰してやる。そしてシンシア=フィーベル!!貴様は私を怒らせた!!競技祭では恥をかかないよう努力するんだな!」
「おととい来やがれ」
「圧勝してその薄ら頭きれいに光らせてやるよ!」
システィーナに分厚い教科書の角で殴られたのにも関わらず、シンシアはすぐに復活しこの場を去るハーレイに向かってあげつらっていく。
「先生はやっぱり私達の事を信じてくれているんですね!私達は絶対に負けないんだから!ね、みんなそうでしょ!!」
そのシスティーナの一声に、クラス全員が力強く頷く。
(あれー?何かかっとなってあのハゲを馬鹿にしたら一致団結した...でもま、いっか♪)
終わりよければすべてよし、とそんな考えでシンシアはその場から離れ、特訓の続きを再開した。
次はもう一つの作品の投稿に取りかかるので、こっちは少し先になりそうです。それでは次回をお楽しみに!