とある師弟の成層圏   作:カツヲ武士

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臨海学校前!

水着回?そんなものはねぇ!

それぞれが色々下準備をしているもよう。


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オリ展開

嫌いな人は読み飛ばし。



第37話

「いやー選抜タッグマッチは茶番でしたね」

 

元々茶番にしか成り得ないイベントでした

けど、アレは酷い。

 

単独ですらまともな戦闘行動を取れない上に、

訓練機を借りても連携訓練なんか出来ない

一年の生徒を、普段から専用機を使って連携

訓練してるヤツ等が蹂躙するだけの試合でし

たからねぇ。

 

明らかに八百長で、男らしさも何も無いですが。

 

何も考えずに「抜群のチームワークだね!」

とか言いながら満面の笑みを浮かべる阿呆に

対して、織斑一夏は終始渋面。

 

アレは状況を正しく理解したうえで、自分が

弱いもの虐めをしているって自覚して殺って

ましたねぇ。

 

「まぁ今回のアレは元々男性操縦者のお披露目

のようなモノでしたからね。

特尉も少尉も准尉も出ないとなればあの

結果は必然です」

 

「少佐殿の言う通りですね。ただ私としては

シャルロット・デュノアが当たり前のように

出場することに驚きましたが」

 

だよねぇ。普通ならそうだけど、連中は

普通じゃないからね。

少しでも織斑一夏の側に居れる機会がある

ならソレを逃したくないんだよ。

 

ソレを、どうラウラさんに伝えたら良いかな?

 

「ラウラさん。シャルロット・デュノアは

織斑一夏に妄執の域で依存してるんだよ。

だからタッグのペアを誰かに組ませるよう

な真似はしたくないんだね。

それに優勝したら織斑一夏と付き合えるって

アホな情報を本気で信じてるから、尚更

パートナーを誰かに譲ろうとはしなかった

んだと思うよ」

 

アレはねぇ。端から見ても異常だよね。

 

「そうですね。アレの普段の行動を見れば特尉

の予想に間違いはないでしょう。

その上で学園の思惑も有ります。この場で

隔離や特別扱いをしないことで、アレを

一人の生徒として扱っていると言うことを

内外に見せたかったのでしょう」

 

ですよねー。阿呆の執着と学園の思惑が

奇跡的に一致したんですよねー。

 

「なるほど。そもそも学園の思惑は織斑一夏

を優勝させることでしたね。

ソレにシャルロット・デュノアの宣伝をプラス

しただけと言うことですか」

 

こう考えれば学園的には万々歳なのかも

しれないけど、ソレは織斑一夏の内面を

無視した場合だよ。

 

「織斑一夏は自分が見せ物であり、周りが

自分を優勝させるように動いていることに

気付いてました・・・アレはリンちゃんが

教えたんでしょうか?」

 

もしそうなら情報漏洩の罪がプラスされ

ちゃうんだけど。

 

「いえ、凰准尉は無関係ですよ。今はリハビリ

中ですしその前の会話にもソレらしい

情報は含まれていませんでした」

 

ほほぅ。そうなると織斑千冬かな?

 

「准尉が現実を見るように諭し、教官がその

為の情報を与えたと考えるべきだろうな」

 

なるほど、愛の合作ってところかな?

 

「ま、なんにせよ織斑一夏が現状に気付き

連中やクラスメイトと距離を取りたがって

いるのは事実のようですねぇ」

 

自分が種馬だって気付いたみたいだけど、

誰が繁殖牝馬なのかわからないからね。

 

いっそ全員と距離を取るって言うのは

間違いでは無いよ。

 

「そのようですね。少尉に対して接触して

くるかと思いましたが、流石にあの三人が

付きまとっている状態での接触は不味い

と考える程度の頭は有るようですし」

 

ですよねー。まぁもしもラウラさんに接触

してきたら『私を巻き込むな!』って言って

逃げるように言ってますからね。

 

4組まで逃げてきたら勝ちですよー。

 

「正直騒がしくて困ります。休み時間もずっと

アレですし。あの分では簪特尉から貰った

資料のように『トイレの中が唯一の安息地』

と言うのが冗談では無くなるでしょうね」

 

便所メシじゃないよー。育児ママとか中年の

お父さんの話だよー。

 

「・・・今まで思考停止をしていた報いと

言えば良いのでしょうが、中々に惨めですね。

それと貴女方にも伝えておきますが、師は

『織斑一夏が現実を見て自分で物事を考える

ことが出来るようになったのなら、それは

周囲に踊らされる人形ではなく庇護すべき子供

になる』とお考えのようです」

 

あぁ。前に大佐殿に『アレは適性が有るからと

言って無理矢理徴兵された学兵であって、

本来なら大人によって庇護されるべき子供だ』

って言われたもんねぇ。

 

思考停止して周りの意見に流されるのは

ただのお人形さん。

 

ベルトコンベアの上に乗って移動するお人形

さんには興味がなくても、自分の意思で前に

進もうとする子供は大人として応援するって

言う大佐殿の理屈はわからないでもないです。

 

「私が言えたことでは有りませんが、確かに

今の織斑一夏は以前とは違い現実を見据えて

鍛練をしているように見受けられますよ」

 

あんまり織斑一夏を知らないラウラさんから

見ても、変わったってわかるんだねぇ。

 

まぁ前があまりにも酷かったからね。自分が

崖っぷちに立ってるって気付いたのに何も

しないんじゃただの人形以下だし。

 

「何でも織斑千冬にトレーニングメニューの

作成を依頼したとか。とりあえず最低限の

動きとしてIS操縦者としての自分の価値を

高めようとしていると見るべきですかね?」

 

そんなこと頼まれたら弟魂としては全力で

取り組むよねぇ。

 

「その方向で見て問題は無いでしょうね。

今の織斑一夏には邪魔者を邪魔者と切り捨てる

だけの強さは有りません。

ですが敵も味方もわからず、後ろ楯も何も無い

状況ではソレもシカタナイと言えるでしょう。

よってこちらで明確な味方を用意します」

 

「明確な味方ですか?」

 

あぁ。ラウラさんはこっちの事情はあんまり

詳しくないからね。

確かに今の織斑一夏からしてみたらリンちゃん

は数少ない明確な味方です。

 

「えぇ。准尉が戻り次第織斑一夏のトレーニング

に合流させ、映像を確認しながら私と特尉で

准尉と織斑一夏のトレーニングメニューを

作成することとなります。

コレは師からの正式な命令となりますので、

特尉にも拒否は許しません」

 

「はっ!了解しました!」

 

正直織斑一夏は嫌いだけど、いつまでも

好き嫌い言ってることを許されるような

立場でも無いのはわかってる。

 

つまりコレはいつまでも拘ってないで

いい加減吹っ切れろって言う司馬少佐と

大佐殿からのメッセージ。

 

まぁそうじゃなくても元々大佐殿からの命令に

反対する気もないし、いつまでもウジウジして

られないもん。

・・・それにこの辺でしっかり区切りをつけ

なきゃ私も『成長しろ』って言われて新血愁・

心霊台を受けることになるよね?

 

「え?簪特尉はともかく、少佐殿が直々に

トレーニングメニューを組まれるのですか?」

 

「・・・何か問題でも?」

 

大佐殿から司馬少佐に出された命令に

疑問を抱くなんて・・・ラウラさん君も

バカだったな。

 

「あ、いや、違います!教頭殿からの命令と

あらば異論は有りませんが、教官がすでに

織斑一夏の為のカリキュラムを組んでると

思われます。

二重になればヤツは教官の作ったメニューを

優先するのでは無いかと考えまして・・・」

 

あ~なるほど。わからないでもないけど、その

心配はちょっと方向性が違うかな?

 

「ラウラさん。織斑千冬はリンちゃんの強さを

正しく把握出来てないから、織斑一夏が一人

で鍛練するためのメニューは組めても二人で

訓練するときのメニューは組めないんだよ」

 

色々隠したり制限させたりする必要もあるし

手加減とかも有るからね。

 

「あぁなるほど。それに准尉の機体はまだ

第3世代型だが今回のオーバーホールで

イメージインターフェースの性能を落として

出力の向上に充てると言っていたな。

そうなれば以前とは全く別物の機体になるから

教官もカリキュラムの組みようが無いか」 

 

わざわざ学園に機体の新スペック情報を

教える必要も無いし。

開示を要求されても『信用出来ない』って

言って断れるし、ラウラさんや私の機体も

メインコアだけ稼働するようにしてれば

外見はただの第3世代型と変わらないからね。

 

「そう言うことです。そもそも准尉の為の

トレーニングメニューが主題です。それに

我々が織斑一夏に対しても手を差し伸べるのは

あくまで我々の都合です。故に織斑一夏が

その手を払い除けても構いませんよ。

ソレが彼の選択と言うだけの話ですからね」

 

ですよねー。今の段階で私たちが頼まれた

わけじゃないですし。

 

まぁリンちゃんとトレーニングをするように

なれば、向こうから頼んでくると思います

けどね。

 

「では次の話題ですね。来月の臨海学校に

ついてなのですが・・・」

 

あぁありましたね臨海学校。

 

「私と司馬少佐が学校に残り、ラウラさんと

リンちゃんが向こうに参加ですよね?」

 

「なにぃ?!き、聞いてないぞ!」

 

言ってないもーん(  ̄▽ ̄)

 

大体さ~ナニが悲しくて連中と海なんかに

行かなきゃダメなんだって話だよね。

機動実験なら冬林技研のラボとか宇宙で

出来るし?むしろ連中の前でわざわざ専用機を

開示する理由がわかんないよ。

 

て言うか気分転換するほど授業の密度って

無いよね?

しかもようやく歩行訓練が一段落した程度

の連中が外で訓練機使うって馬鹿じゃない?

 

学園もなんか「機密があるから~」とか言って

臨海学校の場所の情報を隠したり、ダミー

を出したりしてるけど、螺旋頭とか

リンちゃんが国許から装備品を受けとる

為に座標を報告してるから意味ないよね?

 

更に毎年同じ場所だから、他の国もすでに

わかってるし。

 

アレかな?マスゴミ対策かな?それなら

場所もちゃんと変えろよって思った私は

悪くないはず。

 

ま、どちらにせよ関係ないけどね。

 

「私たちは学校休んで大佐殿と旅行に

行くんですよね~♪」

 

「な、なにぃ?!」

 

ふはははははは!これぞ正妻と側室の特権!

ラウラさんは諦めてリンちゃんの面倒を

見てれば良いのだー。

 

「・・・その予定でしたが、兎の横槍が入り

ましてね。私たちも現地入りすることに

なりました」

 

「えぇ~?!」

 

マジですか!Σ( ̄□ ̄;)

 

「横槍って確かモップの誕生日に第4世代型を

渡すって話ですよね?」

 

「えぇ。その上で茶番も予定しているようで

したね。兎から『ゆっくり見ていってね!』

とか言われましたよ」

 

そんで臨海学校の日程は・・・あぁしっかり

7月7日に被ってますね。

 

くそう。普通の臨海学校ならリンちゃんと

ラウラさんに監査をお願いすれば良いだろう

けど、第4世代型を渡されたモップに対して

の学園のリアクションとかとなるとなぁ。

 

でもって茶番?なんだろう?

織斑一夏を巡っての痴情の縺れとか?

 

「さ、流石に心臓に悪いですよ。私一人が

あの連中の中に放り込まれたら無意識の内に

武装を展開してしまいそうですから・・・」

 

うん。気持ちはスゴク・良くわかるけど、

リンちゃんを向こう側にやるのは少し可哀想

じゃないかな?

 

いや、恋する乙女だから良いのか?

 

「未熟者。と言えれば良いのでしょうが、

私とてソレについては否定は出来ません。

とりあえず海に入る必要は無いので私は

暗殺防止を理由に室内に篭ります。

専用機の機動実験にも当然参加はしません。

故に私たちからしたら完全に休暇扱いです。

二人が泳ぎたいなら止めませんから、まぁ

好きに過ごすと良いでしょう」

 

暗殺防止もあるだろうけど、基本的に司馬少佐

は大佐殿以外に肌を見せる気が無いからねぇ。

 

私も室内で待機が許されるなら室内で待機

してる方が良いかな?

 

「私も別に泳ぎたいとは思いませんから

室内で良いですね」

 

それに本音とかに接触されても困るからね。

 

私に疚しいことが無くても何かしらを

仕込んでくる可能性があるから、ここは

避難一択だよ!

 

「私は少佐殿の護衛ですし、何より海に

行ってまで連中の近くに居たくありません。

何卒室内でお願いします」

 

うわぁ。連中は普段から相当騒がしいん

だろうなぁ。

 

「そうですか。まぁ好きに過ごすと良いと

言ったのは私ですからね。部屋割りに

ついては我々が纏まることが出来るように

手配をしましょうか」

 

「ですね。機密の関係も有りますから無理な

要求と言うほどのモノでは無いですし」

 

て言うか他の生徒と一緒にされても、他の

人達も困るよね。

 

「・・・助かります」

 

あぁ。普通に助かったって感じだよね。

ラウラさんの場合だと同じ日に転入してきた

阿呆と一緒にされる可能性が高いし、海外組

ってことで螺旋頭も混ざるかも知れないから、

確実に安眠は出来ないもんね。

 

それに加えて鍛練の邪魔されたり機密を覗かれ

たりする可能性を考えれば、コッチに来た方が

絶対良いって。

 

あとは茶番に関する情報だけど・・・兎さんも

副所長さんもネタバレは嫌う方だから基本的に

秘密だよね。

被害が出る類いのモノって可能性も有るから

とりあえず纏まってた方が安全かな?

 

「ふむ話のついでに伝えておきますか」

 

「ほぇ?なんか「話のついで」とかって言い方

は珍しいですよね?」

 

司馬少佐は必要と判断したことは伝えるし、

必要ないと判断したら伝えない人だからさ。

 

この言い方は微妙に違和感が・・・

 

「まぁついでとしか言いようがありません

からね。とりあえず聞きなさい。

まず兎が篠ノ之箒に用意する予定の第4世代型

の性能は貴女方が使う機体の半分近い性能を

誇ります」

 

はぁ?

 

「・・・いや、第4世代型ですよね?」

 

ソレなのに複合コアシステム搭載型の

半分って・・・コアの容量を増やした?

もしくは他の何かを切り捨てたのかな?

 

「それはつまり、完全に燃費を捨てて出力に

舵を切った機体と言うことなのでしょうか?」

 

そうだよね。ラウラさんが言うように、

燃費とかを捨てて出力に特化しないと

第4世代型で私たちの半分なんて不可能だよ。

 

それに宇宙開発とかじゃなく、モンドグロッソ

を見据えた超短期決戦型なら燃費を気にする

必要も・・・無いってわけじゃないけど、

まぁ納得できるコンセプトではあるよね。

 

「そうだとも言えるし、そうではないとも

言えますね。とりあえず機体性能は現行の

ISと比べて極めて高いと言える機体です。

当然篠ノ之箒に取り扱いが出来るような機体

ではありません。

兎が用意する茶番にも関わってくるでしょう。

故に必ず事故があるので、連中の近くには行か

ないようにしてください」

 

「「はっ!」」

 

確かに他人の事故に関しては私たちが

注意してもどうにもならないからね。

 

『近寄るな』って言うだけのことなんだから

話のついでにしかならないよ。

 

しかし素人に第4世代型なんてなに考えて

るんだって思ったけど、わざと燃費を悪くする

ことで暴走したときの時間を短縮する狙い

とかはあるかも知れないか。

 

兎さんは何だかんだで妹大好きな変態

だからねぇ。

 

暴走しても司馬少佐に問答無用で撃墜されない

ように色々と仕込んでる筈だよね。

 

前の自爆システム搭載機と言い、兎さんは

中々にロマンを知る科学者であり技術者だし。

 

ふふふ、コレは技術者としてしっかり観察

せねばなりませぬなぁ~。

 

リンちゃんには・・・後から司馬少佐から

伝えるよね?

 

「しかし、なぜ兎殿は篠ノ之箒に第4世代型

を用意したのでしょう?その気になれば

第五世代型とて渡せたのでは?」

 

あ~それはそうだよね。兎さんはISコアの

製造と宇宙開発に必要な観測機の作製や宇宙

空間や星に関する様々な計測が主な職務だけど、

そのために必要と判断されたら、試作機を造る

権限だって有るんだもんね。

クロエさんがいればテストも出来るんだし

大佐殿を誤魔化すのは不可能だろうけど、

ソレでも交渉すれば第五世代型を造ること

だって難しくは無いはず。

 

妹ダイスキーな変態が型落ちを提供するって

言うのは確かに違和感があるかな?

 

「アレも多少は人の社会と言うものを理解

したと言うことですよ」

 

マジですか?!

 

「あのISを世に広める為にミサイル原潜の

システムにハッキングして日本に打ち込んだ

破綻者に社会が理解出来るんですか?」

 

いや、そういえば以前無人機をIS学園に

放ってきたときも、司馬少佐の暗殺の為に

学生や世論って言う社会性を利用してきた

から無くは無いのかな?

 

「えぇ、あの破綻者がです。まぁそれも偏に

あの技術特化のアホ兎に正しく教育を施した

師の実力あってのモノですが」

 

「さ、流石は兎殿だけでなくキサラギ殿や

アリサワ殿を従える教頭殿ですね・・・」

 

うん。凄い説得力だ!

 

アリサワさんはともかくとして、兎さんですら

キサラギさんには関わろうとしないのに、

副所長さんは真っ正面から向き合って意見交換

してるからね。

 

火星の大地に特殊苔と恐怖公が根付いて、

ソレを捕食するAMI○Aが増殖する日は

決して遠くないぞっ!

 

「えぇ。私ですらアノHENTAI共を従える

自信はありません。流石我が師です」

 

ですよねー。大佐殿がいなければ間違いなく

連中は衝突して、お互いが損耗して終わって

ますよねー。

 

「ちなみに師に似たようなことを聞かれた

兎はこんな回答をしたとか」

 

 

――ほわんほわんほわんしばしば~――

 

 

「妹から専用機が欲しいと頼まれたから

専用機の製造許可が欲しい?」

 

普通なら「アホか」で済む話なんだが、

わざわざ束が許可を取りに来たと言う

ことを評価すべきだろうな。

 

今までなら好き勝手に造ってただろうに、

やはり会社の金が宇宙開発に使われてる

から、束としても横領やら着服をして

会社の足を引っ張りたく無いのだろうよ。

 

「そうなんだよ~。正直箒ちゃんにはまだ

早いと思うんだけど、自衛の力は必要

だろうし~」

 

ふむ・・・まぁ言ってることは間違っては

いないよな。

各種依存は少なくなってるが、束にとって

妹が急所で有ることは変わらぬ事実だ。

 

いずれ自立するにしても、それまで束の

威光頼りと言うのはいただけん。

 

「とは言え専用機を渡しても使えんだろ?」

 

ウチで開発してる機体はラウラみたいに

遺伝子強化されてたり簪みたいに専用の

訓練を積み重ねた結果、最低限の基礎が

出来上がっていることが必須条件だからな。

 

他のACだって基礎的な軍事訓練と宇宙での

特殊訓練をこなしてる事が最低条件だし。

 

素人が使うような汎用性を高める機体は

まだ出来てないんだぞ?

 

「う~ん、ど~せなら最新鋭の機体を

あげたいんだけど・・・リー君が言うように

扱いきれないだろうし、他のヤツらにも

目をつけられちゃうよねぇ~?」

 

流石に妹スキーでも素人に最新鋭機は使え

ないことくらいは理解してるか。

 

まぁ研究者は基本的にロマン主義者ではあるが

現実主義者でもあるからなぁ。

出来ることと出来ないことの境界線はハッキリ

してるんだ。

 

若葉マークの、いや、教習所で学び始めた

ばかりで仮免以下の妹にF1の車なんか

使える訳がない。

 

普通ならシミュレーターと座学の時間だし。

マニュアル車どころかオートマ車だって

ダメだろ?

 

しかし、それ以上に特筆すべきは束が他の

奴等の思惑を予想したことだ。

 

『馬鹿の考えることなんか知らないよ!』を

地で行く束が、そんな配慮が出来るように

なっていたなんてなぁ・・・

 

うむ。とりあえず頭を撫でてやろう。

 

「うわっ!き、急に頭を撫でられても困るん

だよ!毎回毎回前置きも何もないから束さん

もビックリするんだよ!」

 

「ふははははは。たまには驚かないと人生

つまらんだろ?」

 

人の成長には予想外が付き物。だからこそ

面白い!

 

「・・・束さんはリー君たちのお陰で沢山

驚いてるし、毎日が楽しいんだよ。

だからリー君たちには迷惑をかけたくないん

だけど・・・」

 

「構わんよ。姉は妹を守り、愛でるモノだ。

最初に電話で話したときにも似たような事を

言ったと思うが、夢を追うには現実を生きね

ばならん。束が前に進むためには妹が無事で

あることが大事なのだろう?ならばソレを

邪魔する気はないさ」

 

前進するには後顧の憂いを無くすのが当然の

ことだからな。

 

「うん・・・うん!そうだよね!リー君なら

わかってくれるって信じてたんだよ!」

 

俺だって弟子たちに自衛するだけの力が

あるからこそ、こうして別行動を取ってる

わけだし。

 

これも束の拘束を解く為には必要な出費だ。

 

「それで、様々な要因で妹に第五世代型を

渡せないのがわかってるならどうする?

今さら第三世代型を造っても、今の状態では

妹が未熟すぎてイメージインターフェースの

容量が酷いことになるんじゃないか?」

 

当たり前に使えるようにするだけでかなりの

容量を喰うよな。

 

成長の度合いに併せてリミッター解除って

方法も有るが、妹の性格じゃあ初期段階で

不良品とか言い出しそうだし。

 

「そうなんだよ~。だから今の箒ちゃんが

ちゃんと使えるようにするためには、

高性能の学習型のAIを搭載させて箒ちゃん

のイメージを先読みしたうえで、動きを

最適化するような機構も必要になるね~」

 

・・・一歩間違えれば完全にAIに操られる

人形に成り下がるが、使いこなせばそれなり

の機体にはなりそうではある。

 

「全体的な最適化が必要になるから第三世代型

じゃ厳しいな。第五世代型は無理なんだから

第四世代型にするのか?」

 

第三世代型の場合装甲やら武装が動きの

邪魔をして『思い通りに動かない!』とか

言って癇癪起こしそうだからなぁ。

 

普通なら武装や装甲が有ることを前提に

動かねばならんが、そんな訓練をしてる

時間もなければ己の未熟を自覚出来ない

アレにソレを理解しろと言っても無意味に

終わるだろうよ。

 

「そうなるね。展開装甲が箒ちゃんの考える

通りに形を変えれば、いずれは箒ちゃんの

専用機として相応しい形になるだろうし。

それに各種アシスト機能だって、箒ちゃんが

成長すれば少しずつ容量を減らして燃費に

回せるからね!」

 

妹の安全と成長を考えた機体か。まぁソレ

なら単純な甘やかしでもないから問題ないな。

 

「なるほど。機体製造に関しては特に問題

はない。

素人を使った展開装甲と自動アシスト機能の

データ収集を目的とした実験機の製作と言う

ことで許可しよう」

 

ウチと関係がない素人をテスターにするのは

難しかったからな。これなら今回の特別扱い

も十分な理由になるだろうさ。

 

「なるほどなー。箒ちゃんを束さんの妹と

して特別扱いするんじゃなく、素人の

テスターとして扱うんだね!」

 

そのテスターとして選ばれたのは紛れもなく

コネだが、そのくらいなら便宜を図っても

誰も文句は言わんだろうよ。

 

「そう言うことだな。言うまでもないことだが

造るからには手を抜くなよ?それと、妹には

試練を与えるように」

 

「うぇ?!箒ちゃんに試練?!」

 

何を驚いているのやら。

 

「いきなり姉から最新鋭機を渡されたら周り

から嫉妬だのなんだのを受けるし、妹だって

増長するだろう?」

 

国だのIS委員会を黙らせる事はできても

そーゆーのはどうしようもないからな。

 

「むぅ。馬鹿な学生どもなんかどーでも良い

けど、箒ちゃんが事故を起こすのは避けたい

んだよ・・・」

 

「だろ?だから増長する前にキッチリ

鼻っ柱を折って地道にトレーニングを

させる必要があるんだよ」

 

そうして最新鋭機を持つに相応しい実力が

有るんだってことを周りに理解させないと、

今のままじゃ姉の威光を振りかざして気分で

木刀を振りかざす性格破綻者だ。

 

「確かに・・・束さん達が予想しないところ

で事故を起こすくらいなら、最初からしっかり

監督出来る方が箒ちゃんも安全だよね!」

 

そう言うことだな。第四世代型をもらって

調子に乗って弟子や簪やラウラに舐めた真似

したら束が介入する前に殺されるし。

 

「納得したところで試練の内容だが・・・」

 

「ふむふむ・・・ほほぅ。コレはコレは。

うん。確かに丁度良いね!」

 

 

 

――ほわんほわんほわんしばしば~――

 

 

 

 

「と、言った感じですね」

 

何をするつもりかまではネタバレになる

らしいから聞きませんでしたが、間違いなく

面倒ごとですよ。

 

なんで兎の妹の茶番に私が関わらなきゃ

いけないんですかねぇ。

 

「いや。普通に大佐殿が黒幕じゃないですか」

 

そりゃそうでしょ。師が黒幕じゃなかったら

逆に驚きます。

 

世の中で引き起こされる大規模な事件事故の

うち、少なくとも八割には師が絡んでると

思いますよ。

 

「・・・ですね。何をするつもりかは知り

ませんが臨海学校中は篠ノ之箒には絶対に

近づかないようにします」

 

うむ。漠然とした予測による警告ではなく

約束された事故ですからね。

 

注意を怠らないようにするのは当然です。

 

 

私としてもこんな事で万が一にも師の側室や

妾を失うわけにはいきませんからね。

 

 

この仕事も奥を差配する正妻としての

仕事の一環と割りきりましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凰准尉には・・・黙っておきましょうか。

対応力と判断力、それとどれだけ成長した

のかを周囲に見せる良い機会ですからね。

 

 

海に汚い花火が上がるのかはたまた

線香花火が堕ちるのか。

 

師が用意した試練と茶番が無聊の慰めに

なれば良いのですがねぇ。

 

 




常識フィルター搭載組に共通する
茶番看破システムが姉魂にも搭載
されたもよう。

兎さん。色々考えて妥協したらしい。

弟子たちはいい迷惑(ラウラにとっては救済)
であるってお話

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