ソードアート・オンライン ステルス・ウォーリアー 作:ddds
宣言より29日後
ゲーム開始より一ヶ月近く経過したが、誰も第一層を突破できていない。
その間に2000人が死んだ。
不慣れな内にモンスターにやられたのもあるが、
主な要因は自殺である。
『システムから死亡という形でシステムから切り離されれば戻れるはずである』という発想の男が始めた
その行為は、延々として進まないゲームへの絶望感から
未来に対する恐怖感によって行われる。
因みに、自分の意見としては、『どうでもいいそんなこと』である
茅場の意思として読み取れるのは、『本気で攻略して欲しい』が基本である
そしてそのオプションとして『死に対する恐怖を持った戦い』が付属している形になる
こう考えると、ゲームで死んだらあっちで目覚めるが、
もう二度と戻ってこれないし、ヘッドギアを外したりバッテリーを解体しようとすると
実際に死に至るというシステムでもその目標は達成可能と思える
中にいる人間にとっては同じことである。外部から見りゃだいぶ違うが。
まあ、何にせよその程度で死ぬ人間の精神の細さったら・・・
何も自分が攻略する必要はない
他人に任せて時を待てば出れるかもしれないのだ。
ああ、宗教ってこういう人達からお金集めていくのね・・・
しかし、現実に戻ったところで不幸しかない自分みたいな奴も居るわけで、
そういう奴が死を恐れない戦いを行うのかもしれない
「ま、どうでもいいか」
その独り言は誰も聞かず、誰も気にしなかった。
第一層、迷宮区直前のトールバーナという街を拠点に今日も狩りをするつもりだったが、
ボス攻略会議なるものが開催されると聞いて、とりあえず見るだけ見てみようと考えた。
敵の配置や状況、味方の内容などによっては銃が活躍する可能性は存在するからだ。
しかし、第一層とはいえ、弱点一撃即死なんてことはないだろう。
曲がりなりにもボスなのだ。
集合場所は・・・・何といえばいいのだろうコレは。
半円、そして階段上に並べられたイス、いや、
コンクリートで作られたような半円階段の中央に
これまた半円の平面が存在している。
自分はこれによく似たものを見たことがある。
かつてローマ帝国の娯楽のひとつであった劇場である。
劇場といえば、
自分がCivilizationというゲームにおいて、プレイ後半に都市を建設、または征服すると
まず自分が建設するのは、真っ先に劇場である。
・・・そう考えると、最初の街にグローブ座さえあれば、
不幸な市民、もとい不幸なプレイヤーは誰一人現れず、
完璧で幸福な市民、じゃなくてプレイヤーになっていたかと思うと
茅場を呪わざるをえない
お前はプレイヤーの自殺対策を怠ったのだぞ(-20)
これはガンジーでも核兵器片手に宣戦布告するレベル
そして、脳内に響くパパパウワードドンという不快なラッパ
何故あの野郎はグローブ座を立てなかった!
お陰で宿屋引きこもりプレイヤーが増えてしまったじゃないか!
不幸な赤服市民を大量生産して逃走しやがった
徴兵する余裕が無いよどうすんのさ・・・
完璧で幸福なプレイヤーを引き連れて総攻撃とかできないじゃないですか
デススタックを積み重ねりゃこのゲームも確実に攻略できるはずなんだがなぁ・・・
最も、完成された指揮系統と
陣形を崩すだけで勝ちが決まるような戦闘を前提とすれば、の話だが
そんなことがやりたいならTOTAL WARでもしとけって話になるが。
話がそれた。戻そう。
この劇場は、見た目的にはボスラ遺跡の劇場によく似ている。
ただし、規模が半分くらいの小さいものだが。
そんなこんな考えてるうちに、人が集まり始めた
周りにはよくみるごく普通のプレイヤー達。
一人全身をフード付きのローブで隠しているアヤシイ奴が居る以外は特に変わったことはない。
あと上げるとすればガタイのいい黒人がいるくらいか。
皆、軽量の鎧を装備し、武器の種類の比率は
長剣>槍系>斧系と言ったところか
壇上にいる人物が手を叩き、注目を集める
「はーい! それでは始めさせてもらいまーす!」
軽鎧と、片手剣盾の男。
身長は比較的高く、顔はそりゃ『美青年』というには申し分ない。
リア充爆発しろとかそういう発想に持っていく人も多いだろうが、
自分は最早そんなことどうでもよくなってくる。
年齢は17から22くらいだと見積もる。
そして、特徴的なのが現実では存在しないだろう黒みがかった深い青い色をした頭髪。
染めたらかなり髪が痛むだろうし、
ヘタしたら毛根ごと死滅しそうな
多分この世界にも髪の染色技術があるのだろう
無茶苦茶な色で染めても髪を傷めないという仕様なんだろう。
恐らく、今後も酷いのが出てくると思う。
そうして考えると、黒をベースとした彼の髪の色はかなり落ち着いている方なのだろう
「今日は俺の呼びかけに応じてくれて、ありがとう! 俺はディアベル。職業は、気持ち的にナイトやってます!」
ナイトと言えば某迷言集を思い出す。最も、迷言集しか知らんのだが。
「ジョブシステムなんかねーだろ」
「こんな時にギャグかよ」
観客席から笑いながらの野次が入る
真剣な場、人命も掛かっているはずなのに雰囲気は和やか。
それなりに馴染んでいるのか、それともやはり強者故の余裕か・・・?
壇上に立つ青年は、静粛にと、両手を下げるような合図を送ると
真剣な面持ちで
「今日、俺達のパーティが、あの塔の最上階でボスの部屋を発見した!」
「おお・・・」
「まじかよ」
さっきとは雰囲気の違うざわめきが聞こえる。
一ヶ月もかかってついに見つかったというボスの部屋。
自分はあの塔に入ったことがないのでなんとも言えないが、
『迷宮区』と名乗るからには発見は難しいのかもしれない
「俺たちはボスを倒し、第二層に到達してこのデスゲームをいつかきっとクリアできるって事を、はじまりの街で待ってる皆に伝えなきゃいけない! それが 今この場にいる俺たちの義務なんだ! そうだろ、皆!?」
演説が始まったのかと思った。
周りは顔を御見合わせたりして多少困惑したようだが、
基本的には同意見のようで、拍手と歓声が壇上に送られた。
自分はどうでもよかったのでとりあえず見るだけ。見るだけである
「OK。じゃあそれじゃあさっそくだけど、これから攻略会議を始めたいと思う。まずは、六人のパーティーを組んでみてくれ。」
は?
ぱーどぅん?
わっでぃっじゅーせい?
ええなにそれちょっとよくわかんなーい
何故か、いや理解できなかったゆえに
瞬間的にではあるが、
脳が10年単位で退化してしまったような気がした。
攻略会議って、編成決めてからやるのかよ
普通なら武器や装備、戦い方などの特徴や敵の情報などを照らしあわせて、
編成をつくり上げるもんじゃないのか?
軍事オタの自分には意味がわかりませんでした。
しかし、それを言うわけにも行かず悩んでるうちに周りが6人くらいで固まってしまっていた
「よーし 俺リーダーやっちゃうぞー」
「パーティって、当然俺ら一緒だよな」
パーティーが出来上がるのが早い。早すぎる。
既にお仲間同士で固まっていたと見るべきか
左に目を回すと
自分と同じ観客席の上の方に座って居たソロプレイヤーらしき二人がその場に座ったままで居る。
一人は青い服に軽装の中学生から高校生程度らしき男。
パーティーを組みそびれて焦っているのか左右を何度も見回している。
ぼっちここに極まり・・・か?
もう一人はローブを羽織った謎の人物。微動だにしない。不気味すぎる
しかし、彼らとパーティを組まないと埒が明かない。
彼らの方に行って見ることにする
俺が近づくと、
青い服の男が座ったままローブの人物の方へすごい速度で移動した。
どういう技なんだあれ
多少遠いが、聴音のお陰で会話は聞こえる
「あんたもあぶれたのか?」
青い服の男が尋ねる
多少の間を置き、ローブの人物は答えた。
「あぶれてない。周りが皆お仲間同士だったみだいだから遠慮しただけ」
なんか高い感じの声、これは女か?
「ソロプレイヤーか。なら、俺と組まないか?」
ローブの人物は何も言わず、男の方を向いた。
「ボスは一人じゃ攻略できないって言ってたろ。今回だけの暫定だ。」
ローブの人物が頷いた所に、自分は彼らのところに到着した。
「俺も入れてくれよ」
ローブの人物と反対側から、青い服の男に話しかける
勿論、背中にだが。
青い服の男はこちらを向いて
「あんたもソロプレイヤーなのか?」
「ああ、興味本位で来たはいいがまさか作戦会議前にパーティーを組むことになろうとは」
男はメニューを開き、自分とローブの人物に対してパーティに招待する。
自分の目の前にはパーティ招待のシステムメッセージ。
その下には○と✕のアイコン。
勿論、ローブの人物の前にも。
考える間もなく、俺は○を押した
ローブの人物も同じく、○を押した。
視界の左上に体力ゲージが追加された。
ゲージの左側にはKiritoと、Asunaと書かれている。
名前はわかるが、とりあえず自己紹介
「自分はハンス。よろしく頼む。」
現実の名前とは大きくかけ離れた名前を自己紹介する。
因みに、ハンスというのはドイツ語系の名前で
キリスト教における聖人ヨハネスの略称だそうだ。
最も、自分はそんなこと気にせず、突然の発想でこの名前にしたが。
青い服の男も自分の名前を語る。
「俺はキリトだ。」
「アスナ」
流れでローブの人物も名前を言った。
口数少なすぎだろこいつ・・・
ディアベルが頃合いを見て話を進めようとするが
「よーし、そろそろ組み終わったかな? じゃあ・・」
「ちょいまってんか!」
ディアベルの話を止め、観客席からジャンプを決めて壇上に上がった男は、頭髪が尖っていた
ちょっと笑いそうになってしまった
キバオウと名乗るその男は、
ベータテスターが知っている情報を利用して経験値や金、アイテムを独占していると主張した。
そのせいで一ヶ月で2,000人も死んだとも言った。
まあ要約するとこんな感じだった
俺にはどうでもいいので、聞き流すことにした。
そもそも死んだのは自殺が殆どだし、
経験値や金を少数で独占したほうが早くクリアできると思ったのは俺だけでないはず
恨むんだったらグローブ座の建設を忘れて不幸なプレイヤーを
出してしまった茅場を恨むんだな。
その中で、無料配布されているガイドブックの話が出てきた。
本能と自前の知恵だけで戦っていた自分はもらっていない。
そもそも街に戻ることが殆どなく、むしろ夜のほうが狩りはしやすい。
落下ダメージなどを利用すれば群れごと殲滅できる。
トラップが作れれば遥かに狩りやすくなるのだがなぁ・・・
まあ、ガイドブックは後で貰っておくことにしよう
さて、思考を目の前で動いている話に戻す。
「ついさっき、そのガイドブックの最新版が配布された!」
ディアベルは話を続ける
「それによると、ボスの名前はイルファング・ザ・コボルロード」
うっわ、なんだその名前長ったらし
まあ、覚える必要はないだろう。
「それに、ルイン・コボルド・センチネルという取り巻きがいる」
こちらも無意味に長ったらしい。勿論覚えない
「ボスの武器は斧とバックラー、4段あるHPゲージが最後の一段が赤くなると、
曲刀カテゴリのタルワールに武器を持ち替え、攻撃パターンも変わる。ということだ」
まあ、最後のほうが強くなるのは定番だな。
「今この場にいるのは6人パーティが5つ、そして3人のパーティがひとつだ。
6人パーティ3つがボスを攻撃、残りのパーティが取り巻きを攻撃する。
取り巻きを確実に防ぎ切れればそれだけボス攻撃側のパーティが攻撃しやすくなる。
華はないかもしれないが役割は重要だ。理解してくれ。」
異論を唱えるものは居なかった。
ディアベルはそれを確認して話を続ける
「最後に、アイテム分配についてだが
金は全員で自動均等割、経験値はモンスターを倒したパーティのもの
アイテムは、取得した人のものとする 依存はないかな?」
周りも問題ないようで、ざわめくものの大きく声を上げる者は居なかった
「よし、明日は朝10時に出発する。
では解散!」
と、いったところで解散となった・・・が
今更気づいたのだが、隣でキリトがずっとこちらを見ていた。
「な、なんだよ…」
「お前の武器、ちょっと変わってないか?」
隠すつもりはなかったが、バレたらしい。
「ああ、実を言うと、これな、銃なんだわ…」
「なんだって!?」
キリトが大声を上げたおかげで、各自解散していた周りの注目を集めてしまった
「い、いや なんでもない」
キリトも注目を集めたことに気づき、恥ずかしいようである
しかし、銃であることに気づいた者は居なかった…はずだった。
「ちょっと見せてもらっていいかな」
なんということか、ディアベルが気づいたらしい。
自分の疑問を、一応聞いてもらうことにする
「やはり、このゲームで銃なんてのは異端なんですかねぇ?」
ディアベルが答えた
「異端も何も、存在してはいけないはずなんだ。」
「だよなぁ…銃なんて…」
その後、詳細に銃について話した。
射手というスキルの専用武器であること。
そのスキルの達成条件は大体の予想はつくこと
弾薬に限りがあり、それがなくなったら困ること
制度がかなり低く遠距離狙撃には使えないこと
ヘッドショット即死属性があること。
「最も、ボスなんかにゃ即死攻撃なんて効かないでしょうがね」
「まあ、そうだろうが…」
ディアベルは納得したようだ
「とにかく、その銃の存在はあまり知られない方がいい。
と言っても、それを使う以上は最早止められないだろうけどな」
俺にはその意味と理由が理解できなかった
「なんで知られたらダメなんだ?」
今度はディアベルでなくキリトが答えた
「まず、情報屋がスキルの取得条件を調べに来る。
現実のマスコミを想像してもらえばわかりやすいだろう。」
「ああ、なるほど…」
「あと、ゲーマー連中は嫉妬深い。
場合によってはPKされることもある」
「PK?なんだそれ」
今度はディアベルが答える
「プレイヤーキルの事だ。
他のゲームでも好き好んでプレイヤーを殺している奴が居たから、
もしかしたらこのゲームでも出てくるかもしれない。
ただ、このゲームだと復活なんてしないから…」
なるほど、
「現実の殺人になるわけだな。精神的な作用はいかほどか。」
自分はその行為よりも殺人に対する精神的抵抗がどの程度のものか気になる。
「まだそんな話は聞いてないが、システム上は不可能ではない。気をつけた方がいいだろ」
殺人というのは案外精神的負担が大きいものだから、
かなり圧力がかからないと起こらないとは思うが・・・
自分そっちのけで、経験者二人が語り始める
「しかし、ユニークスキルってなんだろうな」
「分からないな。どういう意味だろうか…ユニーク?」
こうして、ボス攻略前日の日は暮れていくのだった
とりあえず書くこと無し。
追記の可能性は超高い。