五等分のルルーシュさん。 作:ろーるしゃっは
(確か、このマンションで良いんだったな)
転入生を生温かく迎えた日の翌日、16時30分。
一旦帰宅して夕食の下拵えをしたルルーシュは現在、都内某所に位置する高層マンションへと赴いていた。本日指定された家庭教師としての赴任先だ。
(対象者は日本人の女子高生で、現在17歳。給与は相場の5倍……とあるが、家計代わりの仕送りは今後も継続されるから必要ない。後で断りを入れておくか。会話と筆記に関しては日本語でいいだろう)
なぜ
ちなみに、ルルーシュの日本語はネイティブと遜色ない程流暢である。アッシュフォード学園は在日ブリタニア人の子弟も多く通う学校のため、入試では外国人の場合は日本語を、日本人の場合は英語(ブリタニアの公用語)を必ず受験する事になっている。
尚校内では基本的に日本語を用いるのが慣例だ。
閑話休題。マーライオンみたいなオブジェを横目に、ロビー備え付けの電子キーに(便箋に書いてあった)部屋番号を打ち込む。通信がアクティブになった事を確認して通話を開始。
「失礼します。私、本日付で御息女の家庭教師を拝命する事となりました、ルルーシュ・ランペルージと申しますが……」
『はい、どうぞ上がっ……えっ、ルルーシュさん!?』
「!……その声……!?」
インターホン越しの声の主は、驚くべきか聞き覚えのあるものだった。なんといってもその声、昨日の午後一番で耳に入ってきたばかりだったのだから。
『……あの、私です。五月です。転入生の』
転入生。裕福な医者の娘。引っ越してきたばかり。真新しい造りのマンション。これらのキーワードの意味するところ、即ち。
「……大体分かった、そういうことか」
話しかけられて隣の席になった子が、今度は件の家庭教師の生徒とは。世の中とは思ったより狭いものだ。
すぐに通達したい言伝でもあるのか、いやに急いているようで何か言いたげな彼女だった。が、「取り敢えず上がってから話そうか」と彼の方から提案、一旦会話を打ち切った。他に特段気になる点はないが、強いて言えば。
(……通話に少し別の女性の声が混じっていたな。恐らくはテレビの音声、それか母親か姉妹だろう。もし誰か在宅していたら、挨拶ついでに名刺でも渡しておくか)
思案しつつ、マンションの30階までエレベーターで程なく移動。「NAKANO」と銘打たれた部屋のチャイムを押す。どうぞ、との声に促され、扉を開けるとそこには。
「いらっしゃいませ、ルルーシュさん!」
スリッパをパタパタと鳴らしながら、此方へと駆け寄ってくる五月がいた。それはいい。いいんだけど。
(……部屋の住人、
友人でも呼んでいたのか?それともルームシェアでもやってるのか?疑念を抱いた困惑の状況下で。
「おー、君が五月の言ってた副会長さん?」
右耳にピアスをつけたショートヘアの女の子から、軽い調子で話しかけられた。尚、五月と顔が
「……はじめ、まして……?」
お次はヘッドホンを首から下げたメカクレ少女。彼女も
「へーえ、あんたが五月のランチ相手?」
更には、蝶を模した髪紐を揺らすロングヘアの娘。これまた顔立ちが
「ランペルージさんでしたっけ?先生が同級生だなんて楽しそうです!」
最後に頭にリボンを巻いた、溌剌とした印象の女子。
つまるところ部屋の中には、合わせて
「……はっ?」
目を二、三度瞬かせる。なんだこれは。五月は影分身の心得でもあるのか?
言外に「どういうことだこれは」との彼の意を察したのか、少々気まずそうな顔で五月が切り出した。
「い、いえ、その、申し上げていなかったんですが……」
…………私達、姉妹なんです。
突然のカミングアウトに、謎がまた一つ解けた。相場の
(今分かった。要するに
なるほど五つ子の姉妹、というのは非常に珍しい。が、確かに言われてみれば5人皆、身長も顔立ちも同じだ。髪型や私服こそ別だが、スタイルだってほとんど変わらない。しかし。
(余程のバカでもなんとか卒業させられるプランは練ってきた。大方、医者の道楽娘と踏んでいたからな。が……)
計画の大幅修正をせねばならない事実に際し、思わず額を手で覆う。初回は手間のかかる数学と英語から教えようかと思ったが、今日はそれどころではないだろう。
気を取り直せ。自分に問い掛け己を鼓舞する。
「じゃあ……自己紹介から、お互いやろうか?」
とりあえず、はじめましてからもう一度。
☆
中野さんだと紛らわしいので、全員名前で呼んで下さい。五月のフランクな提案を受け入れたはいいものの。
「一花、二乃、三玖、四葉、そして五月、か。俺の呼び方はルルーシュで構わない。いきなりで混乱もあるかと思うが、これから宜しく頼む」
「はい。いや丁度良かったです。昨日思いついたんですよ、せっかく同じクラスなんだから勉強教えてもらいましょう、って」
にこにこと喋る五月に関しては順調。浅いとは言え知己であるし、心象も悪くないからだろうか。同級生が教師、というイレギュラーにもそれなりに納得してくれてるようだ。問題は…………。
「待ちなさいっての。乗り気なのは五月だけなんだけど?」
…………残りの4人だ。
「わ、わたしは別に嫌ってわけでは」
「四葉、無理しなくて良い。……私からもひとつ、質問」
三玖と名乗った物静かな三女が、淡々と誰何を口にする。
「なんでプロの家庭教師ではなくて、同級生の貴方なの?」
「そうよ、この街ってまともな家庭教師もいないわけ?」
「ま、まあまあ二人とも…………」
次女の二乃まで被せてきたのを見兼ねた五月がフォローに入るも。
「いや、当然の疑問だ。俺だって逆の立場ならそう言うだろう」
疑われるのは無理もない。世間的にはルルーシュは一介の高校生。そこら辺の教師なぞ歯牙にも掛けない、悪魔的頭脳の持ち主などと広く知られてはいないのだ。というわけで説得フェイズ。
「講師の資格程度なら取得済だ。教鞭を取る事に関して多少の心得はある。会話と筆記には日本語を用いるから心配するな。何なら全部英語でも構わんが」
ついでにこれが証拠、とばかりライセンスも見せておく。ブリタニアの資格であって日本の教員免許とは異なるが、ないよりはマシだろう。
と、後半の「英語」というフレーズに一花が反応した。
「えー無理無理、私英語苦手だし。キミこそ自信あったりするの?」
「ブリタニア人だぞ俺は?むしろ一番の得意科目だ」
というかこの見た目で分かれ、どうみても白人だろう。それからルルーシュに苦手な座学科目はない。全てが一番の得意科目である。
「……確かに、日本語がペラペラなのは話してて分かる。でも英語以外の科目は?一人で全部教えるとしたら、何か証拠くらい示して欲しい」
「全国模試なら常に1位だ。それで不足と言うのなら……」
「なら?」
「CiNii Booksあたりに『Lelouch Lamperouge』とでも入力すれば、俺の書いた学術論文が幾つか出てくる。頭の程度を判断する参考にはなる筈だ」
論文自体は既に20本近く上辞している。アカデミーでルルーシュの名に一角の知名度があることは、知る人ぞ知る事実だったりするのだけど。
「はい!名前のスペルがわかりません!」
「スマホを貸せ、俺が直接打つ」
「……出てきたけど全部英文。これは流石に読めない」
「和文でも出している、そっちを読めば良いだろう?」
「あ、ホントだ!……何々、『サクラダイトの平和有効利用に適う実践的研究と今後の展望』……?うわ、難しそー」
「いや、翻訳にあたっては簡潔な日本語表現を心がけたんだが……」
「こっちは共著みたいね。ええっと……『ドルイドシステム構築のための基礎理論』?何よコレ?」
「相対性理論が分かれば解せる、別段難しくはない」
「文字数がどれも軽く10万字を超えてますね。お忙しいでしょうに立派です」
「五月、それは褒めるところじゃないぞ……?」
五人それぞれ好き勝手に喋るので逐一受け答え。この分だと彼女らの親は相当に大変だろう。勝手に邪推していたら、二乃が再び口を開いた。
「……あんたが賢いってのはよく分かったわ、それも相当。でも私、ぶっちゃけ家庭教師とか要らないんだけど?」
ならなぜ頼んだんだ、という言葉は飲み込んだ。代わりに。
「違うな、間違っているぞ。要る要らないを決めるのは
滅茶苦茶な理屈だが、この男が言うと皇族補正もあってかそれっぽく聞こえてしまう。
「……っ、だったら何よ!大体あんたこそ、家庭教師未経験のくせにどうして受けたワケ?高給目当て?」
「金など要らん。俺が欲しいのは『結果』のみだ」
「はあ?」
そこで唐突に、ルルーシュは一度席から立ち上がる。二乃だけでなく全員に向け指示を発布せんとする、突然のアクションの裏には。
(……此奴ら、もしかして「俺が教えるに足る理由」を聞きたいのではなく、単に「勉強する気がない」だけか?ならばこんな茶番に付き合う道理は無い。イニシアチブを握り続けて意地でも机に向かわせる)
このまま此処にいて質問という名の
「今から学力の確認がてら抜き打ちテストだ。私用で一旦退室するが、30分後に戻るからそれまでに全員解いておけ。いいな?」
☆
(……さて、そろそろ頃合いか)
ナナリーに「ごめん、予定より遅くなるから先に咲世子と食べていてくれ」と今しがたまで連絡していたルルーシュ。ガヤガヤしていた電話口の向こうの声から察するに、今日はC.C.も来ていたらしい。
住んでるマンションが同じだからか分からないが、あの教師は気付いたら我が家に入り浸っていた。それもごく自然に。
(帰宅したら自宅にC.C.がいても既に違和感を感じないあたり、俺も相当に感覚が狂っているかもしれんな)
それはさておき中野家五姉妹。この5人いっぺんに見なければならない事に、若干の頭痛を覚えるがそこはそれ。
想定外に弱いルルーシュではあるが、この長電話の最中に修正案を脳内で作成済みだ。並行作業は彼の得意技の一つである。
部屋へと戻った彼は程なく、五女へ一斉に声を掛けた。
「配ったテスト用紙を間も無く回収する。終了予定時刻まであと1分だから頃合いだろう?」
元々家庭教師を依頼してきたのだから、一見反抗的でも根本では勉学の意志はあるはずだ。発破もかけたことだし当然、彼女達からは色好い返事が返ってくるかと思いきや。
「る、ルルーシュさんてすっごい美白ですよね。今メイクとかされてるんですか〜?」
「ていうかまつ毛長いねー、つけま?」
「フツーにしてればもっとイケメンなのに惜しいわね、眉間にシワ寄ってるわよ?」
「余計なお世話だ話を聞け。それから化粧の類は一切しとらん」
ちなみに上から四、一、二、ルル。テスト中だというのに急に3人して好き勝手振ってくるマイペースぶりに、ここにまともな奴はいないのか……と心の中で小さく嘆息。質問にはきっちり答えてるあたり無駄に真面目だが。だが。
(……下手にも程があるだろう。俺を
「……もしかして、まだ終わっていないとか言うんじゃないだろうな?」
やけに白い答案4つを、冷たく見つめて言い放つ。質問自体が白々しかったから、直ぐに気付いていたというのに。
「え、えっと、名前は書けてます!」
「じ、実は仕事で疲れてて、五人になった後にうたた寝しちゃって……」
「……私、勉強するとは言ってない」
「汗掻いちゃったからシャワー浴びてきたのよ、悪かったかしら?」
「追試扱いにしておく、今から解け」
目を泳がす者、白状した者、開き直る者に悪びれない者。4名へ有無を言わさずやれと促す。出来なかった
尚解答時間は短縮させる。そうでなければ真面目にやっていた人間に示しがつかない。しかし、幾ら何でも反応が鈍すぎる。
(これでは暖簾に腕押しだ。「やる気がない」以前の問題、そもそも勉強自体が嫌いで苦手意識がある、というレベルか?)
あ、そういえば残り一人はどうしたんだろう。いやに静かだな、と思ったら。
「……あの、ルルーシュさん?テスト、今終わりました」
横合いから静かな残り一人こと、五女の声が耳に届く。みれば差し出された答案に、きちんと名前と答えが書いてあった。
今の騒ぎの中でも、一人黙々と解いてくれていたのか。ごく普通のことなのに、彼女がなにか物凄い偉業を達成した聖人に見えてきた。
「……五月…………君が一番まともだ、この中で……」
なんか感動。柄にもなく思わず両手で彼女の手を握ってしまう。
「えっ、ちょ、あの」とか、アメジストに真正面から至近距離で見つめられ、眼鏡越しに一瞬で頬が赤くなった末っ子が何事か呟いてるが気にしない。割とこの場で一番の心のオアシスだった。この子いなかったら帰ってたかも。
というかもう帰って早くナナリーに会いたい。ナナリー分がこの空間には足りていない。ただでさえ大事な妹との団欒タイムを削ってるというのに。
「ちょっと、ウチの妹口説かないでくれる?」
「どこをどう見たら口説いてるんだ、え?」
前途多難だった。
☆
馬鹿ではないと俺の前で証明して見せろ。仮に全員赤点を回避していれば視界から消えてやる。
姦しい女子達は、流石にそこまで言うと大人しくテストを受け始めた。あまり焚きつけるような表現を使いたくはなかったが仕方ないと割り切った、約30分後。
「…………なあ、一つ聞くぞ」
夕刻の中野家に、局地的なブリザードが吹き荒れていた。発生源は、絶対遵守ならぬ絶対零度の視線で5人を見つめるルルーシュ。
初めてお邪魔した家の応接間の椅子に当然とばかり踏ん反り返り、嫌味な程に長い脚を組むその様は、何故か妙に板に付いていた。
五人はというととりあえず、大人しく椅子に座っている。こんな状況、普段なら間違いなく二乃あたりが文句を垂れるのだがこの場は沈黙。
先程まで単に線の細い優男、と思っていた彼から立ち昇るオーラが、余りに禍々しすぎるからだ。様子見モードの五つ子は、さながら王の下命を待つ家臣のようだった。
「五人
全25問、一問4点のテストの採点自体は一分かかっていない。問題はそこからだ。あまりに惨憺たる点数、かける五であったのが彼の疑念に火を付けた。
マークシートとは言え、五択選択式で100問ある編入試験の答案。このレベルなら普通に受けたらまず不合格だ。当てずっぽうでも限界がある。
早い話、ひょっとして入試の時は不正行為でもしたのか?と疑っていた。
ついでに言えば、先程から聞かん坊共のせいでフラストレーションが溜まりに溜まっていたのもある。本気で激怒した彼に理知的に抗弁できるのは、おそらくシュナイゼルくらいだろう。五月はとばっちりなので可哀想だけど。
「ええと、編入の時に面接もしたんだけど、ね……」
姉妹を代表して一花が答え出す。こういうところで一歩先んじるあたりは姉御肌だ。
「その時面接官だった理事長さんが『可愛いからオッケー、全員合格ね!』って……あはは……」
「んなッ…………」
驚く。いや、驚いた
結果は…………嘘に非ず。つまり、実質的な裏口入学。
(莫迦な、あの聡明な理事長が?何故そんなことを……)
かつて自分も妹含めた
(……何かがおかしい。「可愛いからOK」だと?そんなもの適当な方便に決まっている。彼女達を受け入れるに足る、もっと決定的な理由が隠されている気がしてならん……!)
ルルーシュの勘はよく当たる。明日この件について理事長へ直談判するか、と決めたところで、再び意識を現実へと切り替える。不正をしたのは彼女達ではなく学園側。この件で間違っていたのは自分だった。となれば。
「……事情は分かった。急に怒って悪かったな、すまん」
怒りを霧散させ、意識していつもの調子で話しはじめる。それだけでなく、座ったまま頭を垂れた。静観を保っていた五月が、目に見えて慌て始めたのが分かった。
「あ、頭を上げて下さい、ルルーシュさん!」
「いいや、これは俺なりのケジメだ」
入学の経緯が経緯だ、自分達の学力に内心思うところがあったのだろう。五月が昨日「不安」と言っていたのは、純粋に本心からだったのだ。
一転した態度に4人が小さく息を呑んでいるのを感じたところで、ルルーシュは頭を上げた。何だかんだでこの五つ子、根は皆良い子達である。
証拠に一応、この場に全員座っている。本当にやる気が無ければ部屋に籠るなりしているだろう。この調子なら態度の軟化は、時間経過と今後の交流で十分見込める。
……さて、後は五人分の学習計画を、更に修正する作業だ。想定より相当低かろうが、面倒をみるのが一人ならまだいける。しかしそれが一度に5人となるとやはり話は別だ。
「残り時間があまりないから、勝手だが話を戻させてもらうぞ。当面は基礎から地道にやっていこう、それでいいな?」
テスト結果を分析していくと傾向が見えてきた。5人とも、得意科目がそれぞれあるのはよく分かった。科目ごとに個別指導の際、応用も絡めて教えていけばいい。
ただ苦手科目については酷い出来だ。おそらく基礎が出来ていないのが原因だろう。
「……謝られてそこまで言われたら、おねーさんスルーってワケにいかないかな。てゆーかキミって落として上げるタイプ?」
やはり一花がフォローに回る。姉として気を張っている部分があるのか、周りに気を配る性質なのか。
「……タイプは知らんが感謝する、有難う。了承の意と見做していいな?」
「やーいいけどね?でもねー、一度しかない学生生活だよ?勉強以外も力入れて青春を彩るべきじゃない?ほら、例えば恋愛とか?」
「出来ればテストを正解で彩ってからにしてくれ」
「むー。そー言うキミはどうなのさ?枯れた生活送ってたりしてないのー?」
「生徒会で間に合っている、心配いらん」
一花は終始こんな感じで、気付けば会話が横道に逸れていく。先程の発言を聞くに、彼女は仕事をやってるらしい。ならば勉強と両立させられるよう、時短ノウハウを叩き込んでいこう。
「あの、ランペルージさん、私はどうですか〜?」
「四葉か、……端的に言ってマズイな。この点数、具体的にはスザク以下だ。ああ、スザクは俺の友人の名でな」
今回の抜き打ちテストでワーストワンだった四葉。成績的には彼女が一番手がかかるとみている。個別で最も多く時間を割かねばならないだろう。
「はいはーい!指標がイマイチ分かりません!」
「大脳が筋肉に侵されてる奴くらいヤバい」
「ホントに友達?その評価」
「辛辣…………」
次いで二乃と三玖。この2人はまず意識改革からだろう。ルルーシュへの当たりが強い次女と、イマイチ学習意欲の低くみえる三女。別ベクトルでどちらも変えていかねばならない。
「それで私達、今後はどうすればよろしいんですか?ルルーシュさん」
最後に五月。食い気最優先の気があるのは何ともいえない。ただ彼女やシャーリーのような真っ直ぐな気質の人間は彼にとり好ましい部類に入る。やる気があれば尚更だ。
「……そうだな、今後の方針を此処で通達しておこう。正直言ってかなり厳しい状況だ」
(5人いっぺんに教える上で、一番大きな問題は「時限性」だ。俺基準の処理速度を他人に求めるべきではない。皆ある程度の時間確保が必要だろう)
相手が一人と想定していた時は、それはそれは丁寧に教えるつもりだった。(ナナリーに勉強を教えてる時の半分くらいは)優しく教えてやっても良かった。
なんだったら5人同時でも、一年生の初めからならハートフルコースで対応出来た。
けれど、現在は自分も含めて2年生。ルルーシュが生徒会業務を遅滞なく行い、
スパルタ方針以外、到底間に合いそうになかった。
(心を鬼にしなければ。反抗的なら屈服させる、友好的なら懐柔する。それくらいの気負いでやらねば成し遂げられん)
王道ではなく覇道を歩もう。たとえそれが茨の道であろうとも。心に修羅を宿さんとする男は、新たな方針を宣告する。
「やり方は全て教える。否やは認めん。過程は問わん。結果を出せればそれで良い。全員、揃って卒業出来るように────」
「────
※「英語」……本来なら「ブリタニア語」とするべきですが、表記する上で短く収まり、また(我々にとり)馴染みある表現でもある「英語」と記します。作中のキャラクターは実際には「ブリタニア語」と喋っている、という設定です。