そして猫の日
秋になってから暖かくなってきてる。暖かいのは身体だけじゃない。手も暖かい。原因はリサが指を絡めてきてるからだ。はぁ、こいつは……。
「リサ、そろそろ離してくれないか?恥ずかしいんだが……あお、付き合ってるところバレるし」
「えーもう少し繋いでいい?この指の密着感がいいの!ハルもわかるでしょ?」
「まぁわかるけど……あと何か胸当たってんの気のせいか?」
当ててるんだよ、とリサは喜んで言った。リサが最近おかしいんだが……。いや、元からか。そう思っていると、公園に着いた。あれは友希那と紗夜に、あこと燐子。どうしたんだ?
「どうしたんだ皆、ここで集まって」
「あらハルにリサ。私達はここで猫と和解するために来たのよ」
「単に誘われただけですので、気になさらず」
誘われただけか。でも紗夜は楽しそうだ。犬好きの紗夜も犬と和解してるのかもしれない。しかし、あこは燐子に膝枕されてるな。幸せそうで何より。
「リサ、猫になるなよ」
「ならないよ!?もうなりたくないしあれは後免だよ!?」
「猫?今井さん……何か……あったんですか?」
あ、やべぇ。これはタブーだったんだ。俺は紗夜と燐子に聞かれたが、質問を逸らそうとした。しかし、友希那によって全てがバレた。ああもう友希那お前!何てことをしてくれたんだ!
ーーてかこれさぁ、俺が原因じゃん。
▼▼▼▼
アタシは全て白状した。夏に猫になったこと、猫になったことでハルに心配を掛けたこと、他諸々。あこからはリサ姉かわいいー、燐子からは今井さん、飼ってみたかったですと言われた。燐子怖い!?
「今井さんが猫ですか。こんなこともあるんですね。私も夢の中で猫になった日菜を飼ったのですが、可愛かったですよ?」
「誰もそんなこと聞いてないよ!?」
「猫と和解したら猫になれる気がするわ」
友希那はどさくさ紛れに何を言ってるのかな?はぁ、昨日アタシも変な夢を見た。その夢は絡み酒のような夢だ。ハルも同じだったらしいけど、あんな夢はもう見たくない。
「それにしてもなかなか猫来ませんねー」
「そうだな。どっかで昼寝でもしてるんじゃ……」
「いいえ、目の前にいるわ」
どこにいるのさぁ、アタシは友希那に聞いた。友希那の頭を見ると、猫が乗っていた。いつからいたのさ……。
猫が友希那の頭から降りてくる。黒い猫で友希那にそっくりだ。名前はすでに決まってるそうだ。名前はジョバンニ、どこの先生!?
「野良だよな?さすがに名前決めるのはまずくないか?」
「問題ないわ。拾われない限りね」
「湊さん、circleには入れないで下さいね?入れてきた場合は返してきて下さい」
「どうしてなの紗夜?別に連れてきても……」
「駄目ですよ」
紗夜が笑顔で言った。紗夜も本当は連れて行きたいけど、さすがに駄目だと言った。友希那もしかしてメンバー増やす気じゃないよね?これ以上増えたら手が付けられないよ。
こんなやり取りをしていると、一匹の猫が近づいて来た。オッドアイでハルにそっくりな猫だ。アタシを見つめている。ハル、近くにいるよね?
「ハルいるよね?」
「隣にいるから泣きそうになるな。俺はここにいるから」
危うく泣きそうになった。アタシって寂しがりなんだな。ハルがいないと不安になる。最近になってそんなことが多くなってきた。これだけハルのことが好きなんだ。
▼▼▼▼
この猫、俺と似てる。何か通じるものがある。これは猫と和解するべきなのか?いや、和解したら猫になるかもしれない。やめておこうか。
「友希那、これは宗教じゃないよな?」
「宗教ではないわ。にゃー、猫に悪いものはいないわ」
「友希那さん……今……にゃーって言おうと……しませんでしたか?」
「言ってないわ、空耳じゃないの?」
空耳じゃないだろ。完全に聞こえたからな?隠すの下手くそかよ。辺りを見ると、猫に囲まれていた。ん?いつからこんなにいたんだ?というか皆友希那をロックオンしてないか?
まさかまた猫カフェみたいなことが起きるのか?猫のことになるとトリップすることは多いが、ここでトリップしたらネタにされることを友希那は気づいていないのか?
俺を見つめているオッドアイの猫は今度は友希那を見ていた。こいつもロックオンしているのかもしれない。放置するべきなのか、止めるべきなのか、どうするか……。
「ねえハル、これ助けた方がいいんじゃないかな?」
「これはまずいだろ。友希那がおかしくなるし、こんかところ見られたら終わりだ。助けよう」
「待って下さい。今の湊さん、幸せそうですよ。ここで溜まりに貯まったストレスを発散させる、そう捉えてもいいんじゃないですか?」
ストレスを発散、それもいい考えだが、今の友希那はとても幸せそうな表情をしている。そう、友希那は猫に狙われてるにも関わらず、自分から猫の元に逝こうとしている。
うん、決めた。このまま放置して見守ろう。俺達はそう決め、このままにすることにした。友希那、今は幸せでいてくれ。俺達は見なかったことにするから……。
▼▼▼▼
このトリップは昼過ぎまで続き、終わった頃には友希那はそれはそれはとても満足そうにしていたそうな。ということになったけど、あれでよかったのかな?
「リサ、お前この写真……」
「この前友希那にアタシが猫になった時の写真撮られたお返しだよ。何かあったらこれだけ何とかなるからね!」
「リサ、お前は小悪魔どころか黒猫だよ」
「にゃー」
おっといけない、またやっちゃった。これやってるとまた猫になっちゃう。多分ならないと思うけどねぇ……。
アタシのスマホの写真フォルダはハルや友希那の寝顔や一緒に撮った写真がある。待ち受けは友希那の寝顔だ。ハルの寝顔にしたら消せーなんて言われるから、これはアタシのスマホに保存だ。
それにしてもあのオッドアイの猫何だったんだろ……。友希那が正気に戻った頃にはいなくなってたけど、どっから来たんだろ。
「ハル、そのカラコン何?」
「これか?これまぁあれだ。色々だよ」
「色々って何?余計気になるんですけどー」
秘密だ、とハルは教えてくれなかった。だったら徹底的に聞くまでだ。ハルの知ってることはアタシが大体知ってる。双子で秘密なんてそれはないでしょ、とアタシはハルの顔を見つめながら思った。
「ハルー教えてくれないとハルの秘密バラすよ?」
「ちょ、リサそれは卑怯だ!わかったよ、教えるからバラすのだけはやめてくれ!」
「ふっふっふ。じゃあ教えてもらうよー」
「これはだな……。目をリサと同じ色にしたいからだ。俺オッドアイだろ?だからさ、リサと何か一緒に出来そうな物ないかなと思ったんだ」
え?一緒に出来そうな物?楽器じゃなくて目の色?アタシは固まった。う、うーん。これはどういう反応したらいいんだろ……。とりあえず抱き着こうかな。
アタシはハルに抱き着くことにした。うん、抱き心地がいい。それどころかいい匂いだぁ。
「あのリサさーん?急に何をするんですかねー?」
「だってねぇ、嬉しいんだもん。ハルがアタシと共有なんてさー嬉しいに決まってるじゃん?」
「そ、そうか……。あと、どさくさ紛れに嗅ぐな。くすぐった」
ハルの匂いはアタシを惑わす。アタシは悪くない、ハルが悪いんだ。今日はいい夢が見れそうだ。酒のような夢は後免だよ。
陽希とリサが見た夢は絡み酒回の方です