10月が終わろうとしている。あと2ヵ月で一年が終わるのか、あっという間なのか、長かったのか、分からなくなって来たな。よく考えると俺とリサが付き合ってからもう半年になるのか。
半年というより4ヶ月か。俺は料理本とリサに頼まれた小説を買いに行くことにした。リサは今日は午前だけバイトだ。俺も午前中に買い物を済ませて、リサを労わないといけない。妹を癒すのは俺の役目なのだから。
レシピ本を探していると燐子に会った。本屋で燐子と会うなんて久しぶりだ。あの時はまだリサと付き合う前だったか、懐かしい。
「あれ、燐子。あことは一緒じゃないのか?」
「こんにちは……陽希さん。今日は……あこちゃんは……一緒じゃないんです」
「そっか。今日は何を買いに?」
ミステリー小説を買いに来ました、と燐子は言った。ミステリーか、今度読んでみるか。俺も買いに来た物を聞かれたので、答えることにした。燐子があこと一緒じゃない、それだけなのに違和感を感じた。
燐子とあこは姉妹のように見える。二人は当たり前のようにいる、だが、今日はいないという。この違和感は何て言えばいいんだ?いや、あまり考えない方がいいか。
俺は燐子にまた練習の時に会おうな、と別れた。買い物に行くか。今日は昼は何にするか。俺が昼ご飯を作る、母さん達がいる時はやっていないが、今日は俺が作ろうかな。リサを労いたい、それが理由だ。
▼▼▼▼
「ただいまー」
「おかえりリサ、お疲れ様」
バイトを終えて帰宅し、ハルにお疲れ様と言われる。ハルに言われるだけで疲れが吹き飛ぶ。いい匂いがする、アタシは台所を覗き、ご飯はハルが作っているということがわかった。
どうしてわかったのか、それはアタシにもわからない。わからないけれど、ハルがそこにいるからそうなんだなと確信したからだ。
「ハルが作るって珍しいね」
「まぁな、母さんからもそれ言われたよ。今日はリサを労いたくてな」
「アタシを?アタシ何かやった?」
ハルに聞くと、ハルはアタシの頭に手を置いた。いきなり撫でるなんて、何かあったに違いない。アタシはハルを見つめる。見つめていると、ハルの頬が赤くなってきた。
「な、何だリサ?」
「ハル、アタシに何か隠してない?」
「隠してない。俺が信じられないか?」
それを言われたら否定出来ない。アタシはこれ以上詮索しても意味がないと判断した。手伝おうか、と言ってもハルからはゆっくりしててくれと言われる。んー、ここは甘えることにしよう。
お昼ご飯を終え、アタシは自分の部屋でゆっくりすることにした。ハルが買ってきてくれた小説をベッドに
こんなジャンルにハマるなんて、アタシはどうかしている。これはハルに恋をしたのが原因だ。実の兄に恋をする、アタシはそんなこと全く予想してなかったけど、今では愛さえあれば関係ないと思っている。
「一旦読むの止めようかな。栞を挟んでと……」
アタシは本に栞を挟んだ。本、一応持っていこかな。部屋を出てハルの部屋のドアをノックする。あれ?反応がない。どしたんだろ?アタシはもう一度ドアをノックした。
「入っていいぞー」
「ハルー今暇ー?」
「本を読んでたところ。一応暇だが、どうかしたか?」
一応暇なんだ。ハルが読んでいたのは料理本だ。写真に映っている料理は酢の物や筑前煮だ。二つともアタシの好きな料理、何か期待しちゃうな。ハルは完全にアタシをダメにする気だ。
ハルを見ていて思った。ハルの顔に疲れが見える、ハルは隠してるつもりだけど、アタシにはわかる。ハルは無理をすることが多いから、少しは休んでほしい。うん、決めた。マッサージしてあげよう。
▼▼▼▼
「ハル、ベッドにうつ伏せになって」
「え、何故に?」
「いいから!」
いきなりリサにうつ伏せになれと言われたが、何が始まるんだ?何をする気なんだ?
リサが俺の上に股がった。両足が当たってる、まさか馬乗りになったのか!?ちょっと待て、実の妹に馬乗りされるなんて、誰が予想したか。ヤバい、無心になろう。ならないと何かに目覚める。下手したらリサを襲ってしまうかもしれない。
「リサ、一体何を……」
「何だと思う?当ててみて」
「ち、調教……?」
「そんなことしないよ!マ、マッサージだよ。ハル何か疲れてるように見えたからさ、してあげようかなって」
「そ、そうか。俺も後でやってやるから」
ああもう、心臓がドキドキする。リサにマッサージされるなんていつぶりだ?いや、そんなことより早く終わってくれ。俺の心臓が持たない。
リサに肩を揉まれる。ちょうど良い、俺は身体の力を抜いた。あ、寝そう。今はリサに全てを委ねよう。
肩、背中が終わり、今度は首。リサには言ってないが、最近首が弱くなっている。原因はリサに舐められたからだ。こいつ、俺の首を舐め回してるけど、弱くなってることに気づいてるのか?
「どうハル?」
「うん、ちょうど良い。そのままやってくれ。ん!?」
「どしたのハル?もしかして首弱い?」
「いや、弱くない!弱くないからな!」
ホントに、とリサは口元を緩ませながら言った。こいつ、楽しんでるな。覚えてろよリサ、あとで徹底的にやってやるからな。
▼▼▼▼
ハルのマッサージは終わった。終わったのはいいけど、ハル大丈夫かな?何か脆くなってきてるし、今にも倒れそうだ。心配だよ、ハル……。
「ねえハル」
「何?」
「これってマッサージ?」
「マッサージつーか、肩揉みだな」
肩揉みって、もしかしてハルあれかな?恥ずかしいのかな?何だかなぁ……。何て言ったらいいかな、ヘタレ?
アタシはハルがここまでヘタレだとは思わなかった。可愛いからいいけど、アタシ以外だったら嫌い、なんて言われてる。アタシは好きだからまだいい。
今回は肩揉みが気持ちいいから許そう。ハルだって頑張ってやってるんだ。ハルに甘えよう、今はゆっくりしていたいし。アタシはハルに感謝の言葉を贈った。
「ハル、いつもありがとうね」
「ん?どした急に」
「ハルさ、いつもアタシやRoseliaのために必死になるよね。ハルには感謝してるんだよ?バイトから帰ってきたら真っ先におかえりって言ってくれるし、練習には付き合ってくれるし、アタシが泣いてたら慰めてくれるし……」
「わかったからあまり言わないでくれ。恥ずかしくなる」
ハルは肩揉みをやめて後ろからアタシを抱き締めた。可愛い、ハルって兄なのに、恥ずかしくなることがある。攻められると弱くなる、攻めるとサドになる。そこはアタシも同じだけど、いつから似るようになったんだろ。
ハルがアタシの髪に顔を埋めた。くすぐったいけど、気持ちいい。ふう、とアタシは息を吐いた。しばらくこの体勢になるかもしれないけど、彼の好きにさせてあげよう。
「ハル、いつまでこれやるの?」
「あと20分くらい。恥ずかしいからこうさせてくれ……収まんない」
「アハハ、可愛いなぁハル」
「可愛い言うなぁ、馬鹿……」
ハルが乙女になってる。こんなハルは見たことない。ちょっと言い過ぎたかな。アタシはハルに笑いながらごめんごめん、と謝った。
アタシもハルにこうしててほしいな。髪どころかうなじもゾクリと来る。こんなところ、お母さんには見せられないな。見られたらネタにされるし、お父さんだとお楽しみだったなってニヤリとされそうだ。
けど、今はこうしていよう。あ、眠くなってきた。アタシは眠ってしまった。ハルに起こされるまでこの体勢、はぁ、今度はアタシが恥ずかしくなってきたよ。
褒め過ぎには要注意