リサから編み物を教えてもらったが、いざ編むとなるととても難しい。リサは友希那に何個か編み物を渡していたようだが、その様は世話焼き、悪く言うとお節介そのものだ。だが、そこはリサの良いところでもあるから悪く言うつもりはないが……。
とりあえずマフラーでも作ってみるか。本を参考にする。リサに教えてもらうというのも手だが、それは最終手段だ。
「んーここまで詰まるなんて、どうしたものか」
「なーに編んでるのハル」
「今マフラーを編んでるんだ……ん?リサ、いつからいた?」
「いつからって、最初からいたよ。気づかなかったの?」
ごめん、俺はリサに謝った。集中しすぎたな。俺が編もうとした時、リサが隣に近寄って来た。最終手段もう使っちゃったよ。はぁ、仕方ないか。リサがやりたいから何も言わなくていいか。
ーーまぁ、彼女の好きにさせるか。
「ハル、本参考に編もうとしてたの?言ってくれたらアタシが教えてたのに……」
「最初は自分で編もうと思ったんだ。リサ、ここまで来たら俺に教えるんだろ?」
「ご名答!教えるに決まってるでしょ!」
やっぱりな。リサがこうなったら引き下がらない。途中で躓くよりは増しだ。今回ばっかりはリサの手を借りよう。今度リサに何かお礼をするか。
▼▼▼▼
ハルが作るマフラー、毛糸の色は赤、誰にあげるんだろ?そこはやってる途中か編み終わってから聞こうかな。
ハルって手先器用だし、失敗することはないと思うけど、少し心配だ。アタシはハルに編み方を教えながらハルの隣にいることにした。いることにしたのはいいけど、ハルからいい匂いがする。しかも、肩が触れあうし、さっきから顔が熱いし……。
「リサ?何かあったか?」
「へ?何でもないよ。あ、ここは同じ編み方でいいよ!」
「そ、そうか。難しいんだな、編み物って」
「ま、まあね……」
もしかしてハル気づいてないのかな。アタシは気づかれないように彼の顔をチラッと覗いた。あ、耳が赤くなってる。アタシにバレないように隠してるんだ。てことは同じか。
アタシだけこんな状態だったら恥ずかしい。ハルも同じ気持ちだとわかった瞬間、顔の熱が少し冷めた。冷めたけれど、逆にドキドキしてきた。ああもう、収まってよ心臓!
編むこと2時間、マフラーは半分まで完成した。途中で苦戦したけれど、ハルは頑張って編んだ。凄い、アタシでさえも苦戦したのに、彼は普通に編めてる。
「凄いねハル、やっぱ手先器用だね」
「いや、そんなことはない。出来そうか不安だったが、リサのお陰で出来たんだ。本当にありがとな」
ハルに頭を撫でられた。嬉しいけど、アタシの心臓は未だにドキドキしていた。そう、2時間経ってもなお、ドキドキは続いていたのだ。こんなに続くなんて、今日のアタシはどうかしてる。多分、疲れてるのかもしれない。ハルにベタベタしすぎたんだ。
アタシも悪いけど、元を辿ればハルが悪い。アタシをダメにするハルが悪いんだ。アタシはハルをジト目で見つめた。恨みをたっぷりと込めてだ。こんなに恥ずかしい思いをしたんだ。あとでハルにも同じ目に合わせてやろう。
30分後、作業は再開された。アタシはハルの隣に座り直した。やっぱりハルの隣にいたい。ドキドキするとか言っといてこれだ。アタシはハルに毒されてる、ハルはアタシに毒されてる。互いにこんな状態じゃ離れられないなぁ。
それにしてもハルの指綺麗だなぁ。咥えたい……てアタシは何を言ってるの!?ああもう!早く終わって!早く解放されたいよ!
▼▼▼▼
リサの様子がおかしい。俺のことをジロジロと見ているし、そわそわしてるし、何があったんだ?俺はリサが隣にいるにも関わらず、作業に集中していた。これはあれか?リサが隣にいるおかげなのか?
そうならリサには感謝しよう。まるでリサは安定剤みたいだな。そんなことは本人の前では言えないが、実際に安定剤なんだ。俺は作業に集中した。ただ、ひたすらにだ。リサがそわそわしていることを聞かず進めた。
編み終わったらリサにあげよう。俺はそのために編んだんだ。あげたらビックリするだろうな。リサの笑顔が頭に浮かび上がる、そう思うと作業が捗る。妹を喜ばせるのは兄の役目だ。そのためなら俺はどんなこともやってやる。
完成までに更に2時間掛かった。よし、出来た。完成したことをリサに言おうとしたが、肩に何か感触がした。隣を見ると、リサが寝ていた。疲れてたのかもしれない。
「お疲れ様、それとありがとうリサ」
俺はリサの肩を抱き寄せ、お礼を言った。聞いていなくても俺は言う。リサのおかげで出来たんだ。リサは寝ている、今はゆっくりさせてあげよう。外を見れば夕方、時間は4時。こんな時間まで隣にいてくれた。
しかし、ここまで集中出来たのは不思議だ。それに、リサからいい匂いもしてた。俺はとにかく無心になって編み物をした。もし無心になってなかったら2日掛かってたかもしれない。そこまで掛かったら続かないし、完成もしない。
うん、決めた。膝枕をしてあげるか。今度耳掻きもしてやろう。今更だが、俺はリサを甘やかしすぎてるな。ここまで来たらとことん甘やかそうか。そもそもリサが可愛いのがいけないんだ。
「毛布も掛けるか。風邪引かれちゃうとまずいしな」
俺はリサに毛布を掛け、彼女の頭を膝に乗せた。リサの寝顔を見てるとするか……いや、やめておくか。バレたらまた胸に顔を埋められちまう。あれくすぐったいからあまりやられるのは嫌なんだよなぁ。
ーーでも、またやられるかもしれないな。
起きるまでは本を読んでよう。それまでは、おやすみリサ。
▼▼▼▼
あれ、寝ちゃったかな?しかも横になってるし、頭に何か乗ってる……。アタシは目を瞑っていた。ああ、そうか。途中で寝ちゃったんだ。
目を少しずつ開く。すると、目の前にはハルの顔があった。ハルがアタシが起きたことに気づく。うわぁ、また恥ずかしくなってきた。またドキドキしてきた。
「おはようリサ」
「お……おはようハル。今何時なの?」
「今5時半、結構寝てたな」
ハルが微笑みながら言った。待って、これあれだよね?膝枕だよね?何回かされてたけど、今だけは恥ずかしい。
アタシは起き上がることにした。もう少し寝ていたかったけど、寝てるとアタシの心臓が持たない。ハルのせいだ。ハルのせいで恥ずかしい想いしちゃったよ!
「リサ」
「な、何かな?」
「リサに渡したい物があるんだが、今いいか?」
「渡したい物?何を……」
差し出されたのは赤いマフラーだった。これって、さっきハルが編んでたマフラーだよね?何でアタシに……。
「リサに渡したかったんだ。このマフラーはリサのために編んだんだ。喜んでくれるかなって思ってな」
「アタシに?いいの、貰っちゃって?」
「いいに決まってる。リサ、寒がってただろ?それで思ったんだ。マフラー編んでやれないかなって」
それを聞いた時、アタシはハルに抱き着いた。もう馬鹿!そんなこと言われたら貰わない訳にいかないじゃん!ズルいよハル!
アタシはハルの胸に顔を埋めた。安心する、けど今は顔を見られたくない。
「リサ、くすぐったいんだが……」
「今はこうさせて。あと、ありがとう」
「どういたしまして。喜んでくれたなら何よりだ」
ハルが優しげに言った。アタシの心臓の高鳴りは収まった。ハルってホントに優しいな。優しすぎるよ。
次の日、アタシはハルが編んでくれた赤のマフラーを巻くことにした。ああ、暖かい。ハルの温もりを感じる。なんかあれだね、ハルに包まれてるような感じだね。
ーーこのマフラーは大事にしよう。掛け替えのない宝物だ。
そのマフラーは双子の絆の結晶でもある