ハルが倒れた。アタシは料理研究部の部員から話を聞いた。アタシは部活を中断し、保健室に向かった。あこと一緒に走った。あのハルが倒れるなんて相当だ。嫌な予感しかしない。
「リサ姉、早くしないとハル兄が……」
「わかってる、わかってる!」
ハル、無事でいて!アタシは心の中でハルの無事を祈りながら急いだ。過呼吸を起こしそうだ、堪えよう、今は堪えないといけない。あこも泣きそうになってる。
――神様お願いします。どうかハルを助けて下さい!
走ること5分、短いようで長いような時間だった。アタシとあこは保健室に入った。先生は一人だけ、ハルはベッドに静かに寝ていた。
先生によると辛そうな表情をしていた、熱がある、とのことだった。ただの熱かな?ハルが起きたら聞いてみよう。アタシは友希那に連絡することにした。
「リサ嘘よね?ハルが倒れたって……」
「いや本当だよ。今あこと一緒に保健室にいるの。ハルは今は寝てる」
「そう……リサ大丈夫?泣きそうになってるけど……」
「ごめん友希那、今回ばっかりは大丈夫じゃない。あこも泣いちゃっててね。アタシは今は堪えるのに必死だよ」
ヤバい、また泣きそうだ。でも今ここで泣いちゃいけない。あこの頭を撫でながらアタシはハルが目覚めるのを待った。友希那からは今日はハルの面倒を見て上げて、あこもこの状態だと練習は出来そうにないから今日は休みなさい、と言われた。
ハルが目覚めるのは30分掛かった。意識は朦朧としてたけど、安定はしている。けど、熱を測ったら37.7℃だった。熱はあるとなれば、明日は付きっきりで看病だ。
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「倒れるなんて思わなかった」
「誰のせいでこうなったのさ。少しは休んでってこの前言ったよね?」
「ごめん、泣かせてホントにごめんなさい」
リサに睨まれながら言われた。まさか部活中に倒れるなんて、予想してなかったな。しかも熱だなんてな……。友希那と紗夜からも無理をしすぎと言われ、あこと燐子からは身体は大事にしてと言われた。まぁ自業自得か。
幸いなことに今日は祝日、今日学校あったら俺は確実に死んでた。リサが看病してくれると言われたから、今日は甘えるとしよう。今まではリサを甘やかしていたが、逆になるとは……。
「ハル、今からご飯作るけど、食べれそう?」
「大丈夫、食べれそうだよ。ホントにごめんな」
「謝りすぎ。治ってくれればいいからさ、今日はアタシに甘えてね」
リサに頭を撫でられながら言われた。今日はリサが頼もしく見える。頼もしくは失礼か。リサに看病されるなんて久しぶりだな。この前は付き合う前だったか、6月辺りに看病したばかりなのに、なんか情けないな。
今は治すことに専念しよう。それで治ったらリサにお礼を言おう。それにしても、もう11月になるのか。リサにと付き合って5ヵ月、とうとうここまで来たんだ。来月で半年になる、これからのことも考えないといけない。
兄と妹が付き合う、ここまではまだいい。だが、問題はそれだけじゃない。卒業して、リサと一緒に暮らしていく。とてもいいことだが……俺は何かを忘れているような気がする。
「いや、考えない方がいいかもしれない。だが、話し合った方がいい。何なんだこの胸騒ぎは……」
今度リサと話そうか……。俺は迷った。でも、凄く重要なことだ。治ってからだ、治ってから相談しよう。
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ハルは自分で食べられる、と頑なにあーんを拒否した。むぅ……これをやらないと何か看病してる感じがしない。ここまで拒否するならあれをやるしかない。
「ハル、もししてくれないのなら口移しするよ?」
「え!?何する気だよ、やめろそれだけはやめろ!」
「じゃあやってくれるね?」
ハルは承諾してくれた。口移しで熱が移る、それは洒落にならないって判断したんだ。アタシはお粥をスプーンで掬い、ハルの口に近づけた。
「はいハル、あーん」
「あ、あーん……」
ハルと付き合ってからようやく出来た。今までずっとしてくれなかったけど、やっとしてくれた。そう、これはアタシの願いだ。
ハルは美味しいと言ってくれた。よかった、アタシは安心した。さっきは嫌な予感がしたけど、今は大丈夫だ。ハルも大分表情が良くなってきてる。
お粥を食べ終え、アタシはハルと話をした。昨日泣いていたことについてだ。どれだけ心配したか、無理をしすぎだ、とハルに言った。ハルは謝ってばかりだけど、アタシは許した。
「ねえハル、今度さ時間空いてる?」
「今度?空いてるけど、いつだ?」
「今月の22日何だけどね、その日オータムブライダルっていうのがあるんだ。それで、ハルと一緒に写真撮りたいんだけど、いいかな?」
ハルはアタシの話を聞いた瞬間、動揺した。ビックリさせちゃったかな?もし断られたらどうしよう……。
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リサはオータムブライダルで写真を撮りたいと言った。ブライダル?リサはそこで何を……。
「アタシね、ウェディングドレスに憧れてるんだ」
「ウェディングドレスに……何でまた」
そう、俺が忘れていたこと。それは俺とリサが"兄妹である"が故に出来ないことであり、禁断の果実でもある。だが、それは俺とリサでは食することの出来ない物でもある。その闇とはーー
ーー俺とリサが、"結婚出来ない"という事実だ。
「アタシとハルさ、結婚出来ないじゃん。それでアタシ考えたんだ。出来なくてもいいから、ウェディングドレスだけでもいいかなって」
「ウェディングドレスだけでもか。わかった、一緒に行こう」
「ホント?ありがとうハル」
いや、例えそれが事実であってもいい。今はリサの願いを叶えてあげよう。リサを幸せにしたい、それは俺の決めたことなんだ。ここで断ったら駄目だ。
何が起こるかはわからない。だが、何があっても乗り越えよう。俺とリサなら乗り越えられる。俺とリサの思い出を増やしていこう。
双子の知らぬ間に、決断の時は迫っている