陽だまりの双子と恋のロードナイト   作:ネム狼

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ウェディングドレスに憧れる妹、これからのことに苦悩する兄


秋の婚礼、妹はブライドに憧れる

 俺が倒れるという事件から1週間が経過した。練習に来たときは友希那から説教を受け、紗夜からはありがたーい話を貰い、燐子とあこからも気をつけて、と釘を刺された。リサからも気をつけてよね、と言われた。それも強くだ。

 

 今日は11月22日、約束の日だ。オータムブライダル、ブライダルは6月にやるというのが定番だが、今回だといい夫婦の日という理由で行われる所もあるようだ。

 

 リサと約束した当日、俺が考えていたことについてはリサには話していなかった。怖くて話せない、またリサを泣かせてしまうんじゃないのかとビクビクして話せなかった。どうして俺はこんな肝心な時に言えないんだ。こんな状態が続くと手遅れになるだろ。

 

「ハル、準備出来た?行くよー」

「あぁわかった。今行くから待っててくれ」

 

 俺は支度をして部屋を出た。今はリサのことが大事だ。このことは手遅れになる前に話そう。遅くても来月、12月中には話をしないと駄目だ。

 

 ここから歩くと1時間くらいで着くようだ。前に沙綾と薫が写真を撮っていたらしく、そこに巴やあこ、りみが来ていたそうだ。来ていたというより、噂を聞き、勘違いした、というのが正しい。こういうことは初めてだが、上手くいけばいいのだが……。

 

「あぁハル、言い忘れてたけど、友希那達も来るからね」

「え?それ先に言ってくれよ」

「ごめんごめん、昨日皆がアタシ達の撮影見てみたいって言ったからさ」

 

 リサはウィンクしながら謝った。いや、ウィンクされても困るのだが……。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 歩くこと1時間、アタシとハルは撮影をする教会に到着した。アタシはウェディングドレスに憧れているってこの前ハルに言った。アタシとハルは結婚出来ないっていう避けられない事実がある。兄と妹が付き合うにおいての最大のデメリットだ。

 

 その事実はアタシの心に癒えることのない傷を刻んだ。ハルも同じかもしれない。ハルは隠しているけれど、アタシにはわかる。怖くて話せないかもしれない、そう思っているに違いない。

 

 ハルは無理をしてでもアタシのことを第一に、最優先に動いてくれている。ハルがいなければアタシやRoseliaは活動が出来なかった。それほどまでにハルは重要な……いや、Roseliaにとってもアタシにとっても掛け替えのない大切な人になっているんだ。

 

 

ーー今は……今だけはこの瞬間を大事にしたい。噛み締めよう、この時間を……。

 

 

「ハル、リサ来るの遅くないかしら?」

「友希那、それに皆!もう来てたんだ」

「マジで来たよこいつら……」

「こいつらとは酷いですね陽希さん。私達は楽しみにしているだけですよ?」

 

 紗夜は微笑みながら言った。これは楽しんでるなぁ。まぁドンマイハル。アタシとハルは受付を済まし、それぞれ着替えることにした。ハル、見ていてね。アタシ、ハルの前で輝いて見せるね。

 

「今井さん……とても綺麗ですよ……」

「リサ姉、まるで妖精みたい!キラキラしてるよ!」

 

 燐子とあこから綺麗だと言われた。ここまで言われるのなら、ハルにも色々言われるかもしれない。これじゃあ期待しちゃうな。期待してもいいよね、ハル?

 

 

▼▼▼▼

 

 

 控え室で俺はタキシードに着替えた。色は白、人生初のタキシードだ。まさか妹とこんなことをするなんて思わなかった。いや、リサが憧れているのならこういうことをするのもいいか。

 

 今回の撮影会は撮影だけではなく、結婚式の流れまでやってくれる。まさかリサはこれを知ってて来たのか?それなら言ったほしかったが、サプライズのつもりで言わなかったのかもしれない。

 

 自分の姿を鏡で見る、恐ろしいくらいに似合っている。自分で言うのも何だが、これは自惚れそうだな。髪はワックスを付け、リサとお揃いのハーフアップにした。こういう時はお揃いの髪型にしよう。そうすれば、リサはもっと喜ぶかもしれない。

 

「はぁ……ふぅ……落ち着け、落ち着くんだ。あぁ駄目だ、緊張する」

 

 深呼吸して落ち着かせても無駄だった。どうしても緊張してしまう。これは撮影会だ。結婚式じゃあないんだ。だから、撮影会のつもりで挑むんだ。

 

 ノックの音がした。俺は心の準備が出来ぬまま、控え室を出た。しょうがない、こうなったら行くしかない!きっと俺はリサに魅了去れるかもしれない。それも悪くないが、そうなってくると気まずくなる。

 

 礼拝堂に着いた。友希那達は私服からドレスに着替えたようだ。レンタルのようだが、皆似合っているな。ここまではまだいい、問題はここからだ。ここからが本番だ。

 

「ハル、似合ってるわ」

「陽希さん、輝いてますよ」

「陽希さん……カッコいいです」

「ハル兄、頑張ってね。あと、カッコいい!」

 

 皆が俺を似合っている、カッコいいと褒めてくれた。ありがとう、と俺は礼を言った。あとはリサだけだ。リサ、見せてくれ。お前はどんな姿で俺を魅了してくれるんだ?

 

 礼拝堂の入り口のドアが開いた。入ってきたのは俺の実の妹であり、恋人でもあるリサだ。それにしてもこれ撮影会だよな?まさかここまでやってくれるなんて、来て正解だったかもしれないな。

 

 俺はリサのウェディングドレスの姿を見つめた。とても綺麗で、ブーケを持つ姿が似合っていた。髪型もハーフアップにしている。俺はリサが目の前に来るまで見惚れた。目に焼き付けていたいくらいに見惚れ続けた。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 アタシはハルの前まで歩いた。そう、アタシの本当の狙いはこの結婚式の流れだ。撮影会もそうだけど、これが目的でハルに頼んだ。だから、アタシはハルにこの結婚式があるということを言わなかった。

 

「ねえハル、どう?似合ってる……かな?」

「あ、ああ!似合ってる!き、綺麗だよ」

「ありがとうハル。緊張しすぎだよ」

「リサだって……顔真っ赤になってる」

 

 それはハルもでしょ、アタシはハルに言い返し、タキシード似合ってるよ、と不意打ちにハルを褒めた。耳が赤くなった所をアタシは見逃さなかった。ハル、綺麗だな。アタシは顔を赤くしながら見つめた。

 

 髪型までお揃いにするなんてハルらしい。今回は指輪はレンタル、レンタルっていうだけなのに、結婚式をやっている感じになる。チラリと客席を見ると、皆涙を流していた。アタシは結婚は出来ない。それでもいい、それでもいいんだ。

 

 ハルと一緒にいれば結婚出来なくてもいいと思ってる自分がいる。大したことないと思ってしまう。どうしてアタシはここまで思うようになっちゃったんだろ。

 

「リサ、これが狙いだったんだな」

「うん、ごめんね黙ってて」

「いいよ。リサが幸せだったらそれでいいから」

 

 ハルはそれでも許してくれた。この人はどこまでアタシに甘いのやら、アタシはハルに呆れながら心の中で思った。そしてハルにこんなことを聞かれた。

 

「リサ、今幸せか?」

「うん」

 

 

 

 

 

ーーとっても幸せだよ、ハル。

 

 

 




いい最終回だった
あと3、4話くらいで物語は終わります

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