高校3年の夏、俺はある人の誕生日に向けて編み物をしていた。ある人とはリサのことだ。俺とリサは双子で恋人だ。彼女に編み物を教えてもらってから結構経つ。今年はリサに恩返しをしたい。
「慣れたとはいえ、やっぱり難しいな」
「ハル、何編んでるの?」
「バッグだ。雑誌の通りに編んでるんだが、これが難しくてな」
「そりゃ難しいよ。あと気になるんだけど、誰にあげるの?」
彼女は俺の隣に座りながら言った。これは話した方がいいかもしれない。話を逸らしてもリサは何度も聞く。焦らしてもいいが、それをやったらリサが可哀そうだ。
俺は作業を止め、リサのために編んでると話した。ここは話そう、話せば納得する筈だ。リサの方を向くと、彼女は顔を赤くしていた。待て、話しただけなのに何で顔を赤くする。
「ア……アタシのため?それって本当?」
「本当だ。リサ以外に誰がいる?」
「それは……」
「まぁそういうことだ。リサに編み物教えてもらったから、恩返しをしたいんだ」
俺は頬を掻きながら言った。早くこの作業を終わらせよう。それで誕生日にプレゼントして、喜ばせるんだ。リサはどんな反応をしてくれるか、楽しみだ。
「ねえハル、隣で編む所見てていい?」
「いいけど、どうしたんだ?」
「どんな感じになるか、ハルと一緒に見てみたいんだ」
そんな事を言われたら駄目とは言えない。どんな感じになるかと言っても、雑誌の通りになる。それを言ったら台無しになる。だから、これは心の中に留めよう。俺はリサの頭を撫で、作業を再開した。
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次の日、アタシはハルの誕生日プレゼントを買いに向かった。去年は指輪のペアルックだったけど、今年は何にしよう。友希那に相談しようとしたけど、今日は用事があるからと言われ、断られた。紗夜や燐子、あこも同じだった。
「今回はアタシ一人か……。寂しいけど、仕方ないよね」
去年と違い、今年はアタシ一人だ。ハルが隣にいないせいか、アタシは泣きそうになった。ここで泣いたら情けない、こんな所を見られたらハルに合わせる顔が無い。
泣いちゃ駄目だ、アタシは涙を拭った。とりあえず、ハルに渡すプレゼントを決めないといけない。でも、決まらない。そういえば、ハルって欲しい物あるのかな?アタシは疑問に思いながら、ハルに電話を掛けた。
「もしもし、リサ何かあったのか?」
「何かっていうか……ハルに聞きたいことがあってね」
「聞きたいこと?」
「うん、ハル欲しい物って無い?」
ハルの欲しい物って何だろ、ハルに聞けば分かるかな?アタシはハルの言葉を待った。その沈黙は長いようで短い時間だった。
ーーハル、早く答えてよ!
「そうだな……アクセサリーが欲しいかな」
「アクセサリーが欲しいの?」
「ああ、センスはリサに任せてもいいか?」
「分かった、ありがとハル!楽しみにしててね!」
「楽しみにしてる、期待してるぞ」
ハルとの通話を終え、アタシはアクセサリーショップに向かった。ありがとうハル、アタシは心の中でお礼を言った。さっきまで迷っちゃったけど、ハルの欲しい物が分かったから、これで決められる。
ハルはアタシのセンスに任せるって言ったけど、それを言われると選び辛くなる。可愛い物とかにしちゃうとアレだから、ハルのスタイルに合わせよう。
ーー待っててねハル!
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時間はあっという間に経過した。リサに渡すバッグは完成した。初めてバッグを編んだが、凄く難しかった。大変な想いをしたが、リサのためと思えば苦しくはなかった。リサには内緒でプレゼントも買った。準備は万端だ。
「よし、あとはプレゼントを渡すだけだ」
「ハルー何してるのかな?」
「リサ!?いつからいたんだ?」
「今来たばかりだよ」
リサはそう言いながら抱き着いてきた。朝から刺激が強すぎる。こんなことをされたらリサを襲いたくなるが、今は我慢だ。ここで襲ったら時間が無くなる。
「リサ、気が早い」
「えーいいじゃん!抱き着くのが駄目なら何がいいの?」
「いや、駄目とは言ってないだろ。何というか……」
「んー?ハルは何を想像したのかな?」
リサが上目遣いをしながら聞いた。抱き着きと上目遣いやるとか悪魔的過ぎるだろ。俺はリサを引き離し、唇を重ねた。ここまでされたらキスで黙らせよう。これをやればリサは黙る筈だ。
「リサ、これは夜にやろう。朝からやったら時間がなくなるだろ」
「……そ、そうだね!せっかくの誕生日だよね!ああ、顔が熱いなー」
ーーこれでよし。話は逸らせたから大丈夫か。
友希那達が来るのは昼だ。皆が来るまで、俺とリサは家でクッキーを作ることにした。誕生日だけど、何もしないという訳にはいかなかった。せっかく祝ってくれるんだ。お礼はしないと気が済まない、だからクッキーでお礼をしよう。
そして昼の1時、友希那達が家に上がった。皆からおめでとうと言われ、リサは感極まってしまった。俺も泣きそうになったが、涙を堪えて皆にありがとうと言った。
「ハル、リサ、私達からプレゼントよ」
「これは……ぬいぐるみ?」
「ええ、今年は私達で決めたの。ハル、眼鏡にしたけどどうかしら?」
「ありがとう皆、眼鏡をプレゼントは予想外だったな」
リサが貰ったプレゼントは熊のぬいぐるみだった。今年は皆で決めた、とのことだった。まだ昼なのに、あこが泣きそうになってる。あこが泣いてる所を見てると、もらい泣きしそうだな。耐えよう、耐えるんだ。
「陽希さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。泣きそうになったりしてないからな」
「ハル兄、眼鏡掛けながら涙出てるよ」
「陽希さん……感極まっちゃいましたね」
ここまでされたら泣くに決まってる。去年は泣かなかったが、今年は泣いちまった。高校生で最後の誕生日のお祝いだからなのかもしれない。そう思いながら納得することにした。
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皆から誕生日プレゼントを貰った後、ハルが話し掛けてきた。渡す物があると言った。何だろう……。
「リサ、誕生日おめでとう。まずこれをプレゼントだ」
「あれ、これってハルが編んでたバッグだよね?」
「言っただろ?リサのために編んだって。この日のために作ってたんだ」
ヤバい、また泣きそうになってきた。しかもこれ、皆の前だよね?友希那と紗夜と燐子は暖かい目で見守ってるし、あこは目をキラキラさせてるし……ああもう!恥ずかしくなってきたよ!
アタシは緊張しながらハルにプレゼントの包みを渡した。早く渡そう、早くしないとアタシが死んじゃう。恥ずかし過ぎて死んじゃうよ!
「ハ、ハル……誕生日おめでとう……」
「ありがとうリサ。開けてもいいか?」
「う、うん。どうぞ……」
ハルは包みを開けた。ハルにプレゼントしたのはネックレスだ。青の薔薇を模したネックレス、それがハルのプレゼントだ。これを探したのは凄く大変だった。ハルに似合うからって思ってアタシはこれにした。
「リサ、着けてみたけど……似合ってるか?」
「凄く……似合ってるよ……」
「ありがと。じゃあ俺からもプレゼント」
ハルがアタシに包みを渡した。ハルに開けていいか聞き、ハルはいいぞと答えた。包みを開けるだけなのに、涙が出そうだ。プレゼントを開けたらアタシはまた泣く。そうなったらどうしよう。その時はその時だ。今は開けよう。
「ハル……これって……」
「そ、ペアルック。去年はリサからだったけど、今度は俺からペアルックにしたんだ。ブレスレットだけど、いいか?」
「ハル……ありがとう!」
アタシは涙を流した。多分、さっきより多い涙だ。アタシはすぐハルに抱き着いた。ハルはアタシを受け止め、抱き締めてくれた。ハルはアタシに編み物を教えてくれた恩返しとアタシと同じペアルックえプレゼントをしたかったと言った。ここまでされたらもう駄目だ。
ーーこんなことされたらアタシだって……ハルにお礼を言いたいよ。
「ハル……」
「リサ、いつもありがとう。そしておめでとう」
「ハルだっておめでとうだよ!」
お互いにおめでとうと言った後、友希那達からもおめでとうと言われた。ここまでされるなんて、アタシは幸せ者だ。Roseliaのメンバーになり、ハルと付き合ったり、本当にアタシは貰ってばっかりだ。
来年はハルに恩返しをしよう。貰ってばっかりじゃ駄目だ。だから今度はーー
ーーアタシがハルに幸せをあげよう!
陽だまりよ、双子をいつまでも見守っていて下さい