夜見は旧地獄街道を通り抜けると、地霊殿が目の前に見えてきた。
夜見(やっと帰ってこられた)
夜見は居酒屋の壁を修理していたため、思っていた時間より大幅に遅れて地霊殿に着いた。そして夜見は地霊殿に入り、仮面を外して自分の部屋へと向かった。
夜見(さてと、まだ4時あたりだし、どうするかな)
そして夜見が廊下に差し掛かると、ある部屋の扉が開いた。その部屋からは、さとりが出てきた。するとさとりは夜見に気付いて、声をかけた。
さとり「あ、黒夜さん お帰りなさい」
夜見「さとりさん、もう大丈夫なのか?」
さとり「えぇ、大丈夫です すいません、心配をかけてしまって」
夜見「いや、気にしなくていい そもそも、俺があんなことを経験したのが原因なんだからな」
するとさとりは首を横に振った。
さとり「そんなことありませんよ、誰にだって間違いや失敗はあります それを悔やむのでは無く、その経験をどう活かすのかが大切なんですから」
すると夜見は少し暗い雰囲気で言った。
夜見「...それが、最初から駄目だってことを知っててもか?」
そう夜見が言うとさとりは言葉を一瞬詰まらせたが、すぐにさとりは答えた。
さとり「黒夜さんがどんなことを経験したかは知りませんけど、何かそうしなければいけないことがあったのでしょう?」
夜見「...さぁな、あの時の俺にはわからない」
するとさとりは夜見に問いかけた。
さとり「...そんなに、悔やむようなことなんですか?」
夜見「あぁ、悔やんでも悔やみきれない 呪縛みたいなものだ」
さとり「そう...ですか...」
そんな会話をしていると、さとりと夜見の間に嫌な空気が流れた。すると夜見がその空気を断ち切るようにさとりに質問をした。
夜見「そういえばさとりさんは心を読む能力なのに、人の過去が見れるのか?」
さとり「え?えぇ、そうですよ トラウマというのは心的外傷のことなので、心に刻まれているものなんです だから、見ることができます」
夜見「あぁ、どうりで見れるわけだ」
さとり「それはそうと、黒夜さん またお土産を持って帰って来てくれたんですか?」
さとりもこの嫌な空気を変えたいのか、夜見の持っている団子が入っている笹の葉の包みに話を逸らした。
夜見「あぁ、これか 人里で美味しい団子屋を見つけてな、せっかくだからお土産に持って帰って来たんだ」
さとり「あぁ、そうなんですか そんなに美味しいんですか?」
すると夜見は包みを開けて、団子を2本取り出した。
夜見「食べるか?一応、みんなの為に8本買ってきたんだが」
するとさとりは手を振って答えた。
さとり「いえ、後で食べますからキッチンに置いといてください」
夜見「そうか、わかった」
そして夜見はキッチンに向かうと、さとりも一緒に付いてきた。夜見はキッチンに団子を置くと、さとりは夜見に今日のことについて問いかけた。
さとり「今日は、一体どんな仕事をしたんですか?人助け?それとも、妖怪退治ですか?」
夜見「あぁ、一応依頼は受けたには受けたんだがな...」
すると夜見は依頼状を取り出して、さとりに見せた。そしてさとりはその依頼状の内容を見ると、その依頼状を不思議に思った。
さとり「行方不明者、ですか... 確かに人間からすれば探して欲しい筈ですが、何故依頼状として出したのでしょう?」
夜見「やっぱり、さとりさんもそう思ったか」
さとり「私も、ということは...やっぱり、黒夜さんも?」
さとりがそう聞くと、夜見は首を横に振った。
夜見「いや、俺だけじゃない 前に言った異変の犯人にも見せてみると、そいつもさとりさんと同じようなことを言ってたよ」
するとさとりは依頼状とは全く関係の無い、別の質問をした。
さとり「黒夜さん、前から気になっていたんですけど、その異変の犯人って一体どんな人なんですか?」
急にさとりが話の方向を変えた為、夜見は少し戸惑ったがすぐに答えた。
夜見「人というか、吸血鬼だな 名前はレミリア・スカーレットさん、紅魔館っていう屋敷の主だ」
さとり「吸血鬼なんですか 屋敷ということは、他にもいろんな方が住んでるんですね?」
夜見「そうだな レミリアさんの妹、フランドール・スカーレットさん レミリアさんの従者、十六夜咲夜さん 紅魔館の門番、紅美鈴さん 図書館の本を管理している、パチュリー・ノーレッジさん その図書館の管理を手伝っているパチュリーさんの使い魔、小悪魔さん 後は、妖精のメイドがたくさんいたな」
夜見が紅魔館にいる人物をあげると、さとりはとても驚いた様子だった。
さとり「へぇ、すごいですね そんなにたくさんの方が住んでるんですか それに妹がいるだなんて私と同じじゃないですか」
夜見「あぁ、そうだな 話してみると、意外に話が合うかもな」
夜見がそう言うと、さとりは少し暗い雰囲気で言った。
さとり「確かにそうかもしれませんが、覚妖怪の私に会っても嫌わないでくれるでしょうか?」
すると夜見は異変の時に言っていた、レミリアの言葉を思い出した。
[確か地底には心を読む妖怪がいるって話らしいわ そんな妖怪なんか会いたく無いわ、気持ち悪い そんな妖怪に家族がいるとしたら消えて欲しいわ]
すると夜見は笑顔でさとりに言った。
夜見「きっと大丈夫だ むしろレミリアさんは珍しがって、色々な話をしてくれるかも知れないぞ?」
さとり「そう...ですか それなら、いつか話してみたいです」
そう言ってさとりは笑顔を夜見に向けた。しかし、夜見の心は少し痛みを感じていた。
夜見(ごめん、さとりさん 地霊殿のみんなは、どんな些細なことであっても傷つけたくないんだ...)
そう夜見が思っていると、さとりが夜見に声をかけた。
さとり「...どうしたんですか?黒夜さん そんな深刻そうな顔をして?」
声をかけられた夜見は、ハッとしてさとりに言った。
夜見「あぁ、なんでもない 少し考え事をな」
さとり「そうですか?言いにくいことじゃなければ、私が相談に乗りますよ?」
夜見「いや、大丈夫だ 大したことじゃないから、さとりさんは気にしなくていいよ」
さとり「なら、いいんですが... でも、1人でなにもかも抱え込まないでくださいよ?家族なんですから」
夜見「あぁ、ありがとう さとりさん」
夜見とさとりが会話をしていると、キッチンの扉がガチャリと開いた。
燐「ん?黒夜さん、帰ってたんだ って!さとり様!?もう大丈夫なんですか!?」
すると燐はすぐにさとりへ駆け寄ったが、さとりは平気であることを答えた。
さとり「大丈夫よ、お燐 ありがとうね」
燐「い、いえ、あたいはただ黒夜さんの指示に従っただけで、あたいは何も...」
すると夜見が燐にこう言った。
夜見「燐さん こういう時は、素直にどういたしましてって言うもんだ」
燐「え?じゃ、じゃあ、どういたしまして...」
燐がそう言うと、さとりは笑顔を向けた。
すると燐は、置いてある笹の葉の包みに気付いた。
燐「ん?黒夜さん、その包みってお土産?中身は食べ物か何か?」
夜見「よくわかったな、中身は団子だ 人里で美味しい団子屋を見つけたからな」
すると燐は夜見に確認をとった。
燐「それって、今食べたりしてもいいのかい?」
夜見「あぁ、出来れば今日中に」
夜見がそう言うと、燐は嬉しそうに言った。
燐「ちょうど良かった!実は、こいし様がお腹空いたって言ってたんだ それで、1人何本だい?」
夜見「1人につき2本 計8本買ってきた」
すると燐はその包みを開けて団子を4本持つと、燐はキッチンを出てどこかに行ってしまった。
夜見(...燐さんもお腹減ってたのか?)
さとり「さてと、もう調子は良くなりましたし、そろそろ仕事に戻らないと」
そう言ってさとりはキッチンを出ようとしたが、夜見はさとりの腕を掴んで止めた。
さとり「黒夜さん?」
夜見「なぁ、さとりさん 今日はゆっくりしていてくれ 自分で言ってただろ?たまには休まないと、体がもたないって」
するとさとりは夜見にこう返した。
さとり「それは、黒夜さんが人間だからですよ 私は妖怪なんですよ?妖怪の体は、人間よりも遥かに丈夫です だから、大丈夫です」
しかし夜見は、さとりにこう言った。
夜見「でも、それは体が丈夫ってだけだ 精神的なことだったら、さすがにかなわないだろ?だから、今日は休んでくれ」
夜見がそう言うと、さとりは納得した様子で頷いた。
さとり「そうですね 私が急に倒れたりでもしたら、みんなが困ってしまいますもんね」
夜見「あぁ、だから今日はゆっくりしておいてくれ」
そして夜見はキッチンを出ると、さとりの仕事部屋に向かった。仕事部屋に入ると、そこには椅子に座っているサードアイが閉じたこいしと、机を挟んで正面に立っている燐がいた。
こいしは首を傾けて夜見を見ると、椅子から降りて夜見に近付いてきた。
こいし「お兄ちゃん、おかえり!お団子美味しかったよ」
夜見「あぁ、ただいま ちゃんと仕事してたか?」
こいし「うん!ちゃんと出来たよ」
夜見「そうか えらいな、こいしさん」
こいし「えへへ♪お兄ちゃん、なでなでして?」
夜見「あぁ、わかったよ」
そしてこいしが帽子を取ると、夜見はこいしの頭を優しく撫でた。するとこいしは、夜見に抱きついてきた。
こいし「ん~♪大好き、お兄ちゃん」
夜見「そうか ありがとうな、こいしさん」
すると燐は書類を見ながら、こいしに向かって言った。
燐「こいし様、書類は全部記入し終わったので後はまとめるだけです 早く終わらせちゃいましょう」
こいし「え~、もう疲れたよ~ 後はお燐がやっといて~」
燐「え!?こいし様!?」
しかしこいしは書類を全くまとめる気は無かった。おそらく、慣れないことをしていたせいで、さとり以上に疲れたのだろう。
すると夜見はこいし抱き上げて、先ほどこいしが座っていた席に座った。そして夜見は書類をまとめ始めた。
燐「え?黒夜さん、これはこいし様の仕事だよ?」
夜見「まぁ、慣れないことをしてたからな 疲れるのも仕方ないだろ」
燐「で、でも...」
夜見「よし、終わった」
燐「え!?う、嘘!?」
夜見は燐とほんの少しだけ会話をしているうちに、書類をすべてまとめ終わった。燐がパラパラとまとめた書類を見ると、驚いた様子だった。
燐「ほ、本当に全部まとめ終わってる」
夜見「終わったというより、最初っからほとんどまとめてあっただけだ ま、どうせこいしさんが無意識に書類をまとめながら書類を書いてたんだろ」
夜見がそう言うと燐はそのことが本当かどうか、こいしに問いかけた。
燐「そ、そうなんですか?こいし様」
そしてこいしは燐の方を向くと、首を傾げて答えた。
こいし「え?わかんない、私はただ書類を書いてただけだよ?」
夜見「まぁ、無意識だから自分で気付けないのは仕方ないな ところで燐さん、他にも何か仕事はあるのか?」
燐「え、確か何も無いはずだよ さとり様は基本、仕事はすぐに済ませるからね」
すると、何故かこいしが異常に反応した。
こいし「本当!?お燐!」
燐「は、はい そのはずですよ、こいし様」
するとこいしはとても喜び始めた。
こいし「やった!これでお兄ちゃんと一緒にいられる!」
夜見(え?仕事が終わったのが嬉しいんじゃないのか...)
夜見がそんなことを思っていると、燐は部屋の扉を開けた。
燐「じゃあ、あたいは部屋に戻ってるね それじゃ」
そう言って燐は自分の部屋に戻っていった。するとこいしは夜見に向かって今日のことを聞いてきた。
こいし「ねぇ、お兄ちゃん 今日はどんなお仕事をしたの?また紅魔館って所でお仕事したの?」
夜見「う~ん、まぁ、そう言えばそうなるのかな?」
こいし「ん?どういうこと?」
夜見「あぁ、実はな...
そして夜見はこいしに今日取った依頼状の内容、紅魔館で咲希とフランドールと遊んだことを話した。するとこいしは、少し拗ねている様子だった。
こいし「ずるいよ、お兄ちゃん 私は地霊殿で頑張ってお仕事してたのに、お兄ちゃんは遊んでたなんて」
夜見「いや、俺は遊びたくて遊んだ訳じゃ無いぞ?あくまでも紅魔館の主から仕事を受けただけだ」
こいし「もう、お兄ちゃんなんて知らないもん」
そう言ってこいしは夜見のことを本気で抱き締め始めた。すると夜見の体から嫌な音が聞こえてきた。
夜見「ちょっ!?こいしさん! 骨が折れるから!」
こいし「知りませーん 私は抱き締めてるだけでーす」
すると夜見の脇腹に激しい痛みが走った。その瞬間、夜見は口を手で押さえて咳き込むと、夜見の手には血が付いていた。
夜見が旧地獄街道で勇儀と戦った時の傷は、まだ癒えていなかったのだ。すると夜見は、能力を使って血を空中に分解し始めた。
夜見「こ、こいしさん、本当に痛いから 俺が悪かったから」
こいし「んー?何も聞こえなーい」
すると夜見は再び口を押さえて咳き込んだ。そして血を予想以上に吐いてしまったのか、血が指の間から垂れてきた。
するとこいしは夜見の血を見たまま固まり、体が震え始めた。
こいし「お、お兄ちゃん?なんで血が...」
夜見「だ、大丈...ごほっごほっ」
こいし「あ、あぁ、嫌、嫌だよ、お兄ちゃん」
夜見「こ、こいしさん大丈「嫌ーーーー!!!」
するとこいしは急に叫んだ。そして廊下の方からドタドタと足音が聞こえてくると、部屋の扉が勢いよく開けられた。するとそこには、部屋にいるはずのさとりがいた。
さとり「こいし!?急に叫んでどうしたの!?」
するとこいしは夜見から離れて、転がるようにさとりの方に近付いていった。
こいし「お、お姉ちゃん、わ、私のせいで、お兄ちゃんが...お兄ちゃんが...」
さとり「黒夜さんがどうし...きゃあ!?く、黒夜さん!?どうしたんですか!?」
夜見は先ほどより血を吐いていて、血が指の間から机にポタポタと滴っていた。しかし夜見は滴った血をすぐに空中へ分解し続けていた。そしてさとりが夜見に近付いたが、夜見は手を横に振った。
夜見「だ、大丈夫だ 気にしなくていい」
さとり「な、何を言ってるんですか!とりあえず一旦部屋に戻って、じゃなくてキッチンで血を、いや、まずは安静にした方が」
さとりはパニックになっているのか、まず最初に何をしたらいいのかわからない状況になっていた。そしてこいしは、その場でへたれこんでずっと泣いていた。
そんなことをしていると、燐が騒ぎを聞いて部屋にやって来た。
燐「何を騒いでるんですか?さとり様」
さとり「お燐!黒夜さんを部屋のベッドに寝かせてきて、早く!」
燐「え?なんで黒夜さんをって!?だ、大丈夫かい!?」
すると燐は夜見に近付いたが、どうしたら良いかわからず夜見の背中を優しく擦った。そして燐は夜見とゆっくり仕事部屋を出て、夜見の部屋に入った。
燐「大丈夫かい?黒夜さん まだ血は止まらないのかい?」
夜見「い、いや、もう大丈夫だ 1人で歩ける」
燐「そ、そうかい?」
そう言って燐は夜見から手を離すと、夜見はゆっくりとベッドに座った。すると部屋の扉が開き、さとりが部屋に入ってきた。
さとり「黒夜さん!大丈夫ですか!?」
夜見「あぁ、大丈夫だ それより、こいしさんは?」
さとり「お燐、ちょっとこいしの様子を見てきてちょうだい」
燐「わかった、ちょっと見てくるよ」
そう言って燐は夜見の部屋を出て、こいしのもとへ向かった。そしてさとりは夜見に近付き、ベッドに横にさせた。
さとり「大丈夫ですか?もしかして、持病か何かあったんですか?」
夜見「いや、そうじゃない 少し怪我に響いただけだ」
するとさとりは夜見に向かって怒鳴った。
さとり「け、怪我って、なんで言ってくれないんですか!」
夜見「...いや、怪我は痛みがひいてたから、大丈夫だと思ったんだが... すまない」
さとり「怪我をしたのなら、すぐに言ってくださいよ! 別に気を使う必要なんて無いんですから!」
夜見「...そうか、ありがとう さとりさん」
さとり「でも、黒夜さんが大丈夫そうで良かったです ところで怪我って、どこを怪我したんですか?一見どこも怪我をしたようには見えませんが」
そしてさとりは夜見のことをじろじろ見始めた。すると夜見は上体を起こしてさとりに言った。
夜見「実は、少し訳があって 勇儀さんにあばらを2、3本折られたんだ」
さとり「こ、骨折してるんですか!?て言うか、なんで骨折して平気でいられるんですか!?」
夜見「いや、平気なのは俺もよくわからない まぁ、痛みはもうほとんど無いし、大丈夫だろ」
さとり「そ、そんな適当な...」
さとりは夜見の適当な様子に呆れると、夜見にあることを言った。
さとり「黒夜さん、とりあえず骨折が治るまでは、外には出歩くのは禁止します」
すると夜見は不思議そうな様子で、さとりに質問した。
夜見「え?そうしたら、俺が仕事できないぞ?」
さとり「仕事もしばらく禁止します 黒夜さんは少し、自分のことを大切にすることを覚えてください わかりましたか?」
夜見はそう言われると少し考えたが、さとりがこちらを凝視してくるので従うことにした。
夜見「...わかったよ でも、治ったらすぐに復帰するぞ?」
さとり「ちゃんと完全に治ってからですよ?じゃないと、仕事をするのは認めませんから」
夜見「あぁ、わかってる」
そして夜見は怪我が治るまでの間、外出することを禁止された。
すると夜見は、さとりに少し気になったことを聞いた。
夜見「それより、燐さん遅くないか?何をしてるんだ?」
さとり「いえ、そろそろ戻って来ますよ」
さとりがそう言った瞬間、燐が部屋に戻って来た。そして燐はこいしの様子を報告した。
燐「さとり様、こいし様の様子を見てきたんですが、少し様子がおかしいんです」
さとり「一体、何があったの?」
燐「それが、ずっと[私のせいだ]ってぶつぶつ言ってるんですよ」
夜見「...どういうことだ?」
燐「さぁ?あたいには、何かなんだか...」
さとり「とりあえず、私も様子を見に行きます 一応、黒夜さんも付いてきてください あと、お燐はもう部屋に戻ってていいわよ」
夜見「あぁ、わかった」
燐「じゃあ、あたいはこれで...」
そして夜見はベッドから立ち上がって、さとりと一緒に仕事部屋に向かい、燐は自分の部屋へと戻った。仕事部屋では、こいしがさっきと同じ位置でへたれこんで泣いていた。
そしてさとりは、ゆっくりとこいしに声をかけた。
さとり「...こいし?どうしたの?」
こいし「ぐすっ お、お姉ちゃん...」
そしてこいしが振り返ると、こいしはビクッとしてさとりの後ろに隠れた。
さとり「こ、こいし?どうしたの一体」
こいし「わ、私のせいで、お、お兄ちゃんが はぁ、はぁ」
するとこいしは急に過呼吸になり始めた。そして夜見は心配してこいしに声をかけた。
夜見「こいしさん?大丈夫か?」
こいし「ひっ」
そしてこいしは、怯えた声を口から漏らした。どうやらこいしは何故か夜見に対して何か怯えている様子だった。しかし、その理由は夜見にもさとりにもさっぱりわからなかった。
さとり「こいし、どうしたの?何を怖がってるの?」
こいし「はぁ、はぁ、私のせいで、私のせいでお兄ちゃんが はぁ、はぁ」
さとり「こいし、黒夜さんは何も怒ったりしてないわよ?」
こいし「ち、違っ はぁ、はぁ」
さとり「...すいませんが、黒夜さんは少し部屋に戻っていてください 私がこいしにゆっくり聞いてみます」
夜見「...そうか、わかった」
さとりに部屋に戻るように言われた夜見は、仕事部屋を出て自分の部屋に戻った。そして夜見はベッドに横になって、こいしの怯えている理由を考えた。
夜見(こいしさんは何を怯えているんだ?[私のせい]って別にこいしさんは何もしてないし... 吐血したのを自分のせいだと勘違いしたのか?)
どんな理由があろうと、夜見が今の状態のこいしに会うのはとても難しい話であった。そしてしばらく考えていると、さとりが部屋に入ってきたので夜見は上体を起こした。
夜見「さとりさん、何かわかったか?」
さとり「それが...ずっと同じことを言ってばかりで、何も話してくれないんです」
夜見「そうか...一体何が原因なんだ?」
しばらく夜見とさとりは原因を考えたが、さとりは夜見にその時の様子を聞いた。
さとり「そういえば、こいしがあんな様子になった時って一体どんな状況だったんですか?」
夜見「ん?あの時は確か...仕事の話をしたらこいしさんが拗ねて、俺のことを全力で抱き締めてきて、それで吐血をしたんだ」
さとり「やっぱり、黒夜さんが吐血したのが原因なんでしょうか?」
夜見「でも、吐血だけであんな様子になるのか?」
さとり「そうですよね...本当になんなんでしょう?」
夜見(吐血がやっぱり原因なのか?だとしても、なんで吐血で?)
夜見はしばらく考えていると、ふとあることを思い出した。
夜見(そういえば、あの時こいしさんは確か... あれがそうだとしたら、つじつまは合うけど本当にこれで良いのか?でも、あそこまでになるってことは...)
そして夜見は立ち上がって部屋を出ようとした。しかし、それをさとりに腕を掴まれて止められた。
さとり「どこに行くつもりですか?黒夜さん」
夜見「こいしさんのところだ 大体の見当はついた」
するとさとりは夜見にあることを聞いた。
さとり「何を言ってるんですか?まさか、こいしの今の状態を理解してないとか言いませんよね?」
夜見「十分にわかってる その上で行くんだよ」
さとり「...なんでわかってて、こいしを苦しませるようなまねを?」
さとりがそう言うと、夜見は少し黙った。しかし夜見はさとりにこう言った。
夜見「...もう、苦しませたくないから行くんだよ」
さとり「...何か、考えはあるんですか?」
夜見「あぁ、だからお願いだ 手を離してくれないか?」
夜見がそう言うと、さとりはあっさりと手を離した。そしてさとりは夜見に言った。
さとり「もし、駄目だったら 恨みますよ?」
夜見「あぁ、好きなだけ恨め もう恨まれることなんか、とっくに慣れてるんだからよ」
そして夜見は部屋を出てこいし部屋に入ると、こいしはベッドの上で布団を被っていた。するとこいしは夜見の姿を見るとビクッとして、怯えているような様子で震え始めた。
こいし「あ、あぁ、嫌 嫌、来ないで」
そして夜見はこいしの言葉に反して、ゆっくりと近付いた。
こいし「こ、来ないで!来ないでよ!お兄ちゃん!」
そしてこいしはベッドの上で後ずさるが、夜見はどんどんこいしとの距離を詰めていった。
こいし「うぅ、来ないで!お兄ちゃん!来ちゃ駄目!」
すると、後ずさりしていたこいしの背中は壁に着いて、こいしは部屋の角でガタガタと震えていた。そして夜見はベッドの上に上り、こいしにゆっくりと近付いた。
こいし「なんで来るの!?もう来ないでよ!」
そして夜見はこいしの目の前まで来ると、その場でこいしのことをじっと見つめた。するとこいしは祈るように目を瞑った。
こいし(やめて、もう嫌なの だから、お願い!)
夜見「...なぁ、こいしさん」
すると夜見はこいしに優しく話しかけたが、こいしは返事をしなかった。しかし夜見は気にすることなく話を進めた。
夜見「本当はそばにいてほしいんだろ?」
するとこいしは叫んだ。
こいし「そ、そばになんかいてほしくない!」
夜見「...こいしさんは俺に怪我をさせたくないから、そう嘘をつくんだろ?」
こいし「嘘なんかじゃない!本当の気持ちだもん!」
夜見「...じゃあ、本当にそうなら ほら」
すると夜見は刀をこいしの前に置き、こう言った。
夜見「この刀で俺を殺せ そばにいてほしくないんだろ?」
こいし「...え?」
夜見「もちろん、俺は抵抗は一切しない さぁ、殺せ」
するとこいしは震える手でゆっくりと刀を引き抜いて立ち上がった。そしてこいしは震えている両手でカチャカチャと音を鳴らしながら刀を構えると、過呼吸になり始めた。
こいし「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
夜見「...ほら、早く」
こいし「...よ」
夜見「どうした?ほら、そばにいてほしくないんだろ?」
こいし「出来ない...嫌だよ 死なないでよ、死んでほしくないよ!お兄ちゃん!」
するとこいしは刀を構えたまま、夜見にしゃべり始めた。
こいし「嫌だよ!さっきのは全部嘘!本当は、ずっとそばにいてほしい!一緒にいてほしいけど、私はお兄ちゃんを傷つけちゃう!もしかしたら、いつかお兄ちゃんをあんな風に殺しちゃうかもしれない!」
夜見「...」
こいし「だから私は、お兄ちゃんを苦しませたくないから!私はもうお兄ちゃんと関わっちゃいけないの!」
こいしの考えを聞いた夜見は、ため息をついたあとにこう言った。
夜見「...何言ってるんだよ、こいしさん」
こいし「わ、私は、お兄ちゃんを「苦しませたくない?何言ってんだよ」
すると夜見はこいしの言葉を遮ってこう言った。
夜見「誰かを苦しませたくない?だから関わらないようにする?そう言って離れて、1人ぼっちになろうとしてるこいしさんが1番苦しんでるだろ」
すると夜見はこいし持っている刀を優しく取って鞘に戻した。そしてベッドの上に立っているこいしを抱き寄せた。
夜見「怖かったんだろ?俺が吐血で死ぬ夢が、正夢になるのが しかも、原因が自分だとしたらって」
こいし「...うん、怖かった 怖かったよぉ!お兄ちゃ~ん!」
そう言ったこいしは、夜見に抱き締められながら泣き始めてしまった。そして夜見はこいしを泣き止ませようと頭を撫でた。
夜見「お、おい...泣くなよ、こいしさん」
こいし「ぐすっ お兄ちゃん!好き!大好き!だからお願い!ずっと、そばにいて!」
夜見「...わかった ずっとそばにいて、愛してやるよ」
そう言うとこいしは泣き止むどころか、むしろ更に泣き始めた。そして夜見は頑張って泣き止ませようと色々と話すが、むしろさらに泣いてしまい、夜見は困惑していた。
こいし「お兄ちゃん!好き!好き!好き!!!大好き!!!」
夜見「な、泣き止んでくれって、こいしさん」
そしてその部屋の外では、扉に寄りかかって安心している人物が1人いた。それはさとりだった。
さとり(また、黒夜さんに助けてもらっちゃいましたね ありがとうございます、黒夜さん)
さとりは心の中で感謝をしていると同時に、不思議に感じていることもあった。
さとり(黒夜さんのあの時の言葉...)
そしてさとりは夜見の言った言葉を思い出していた。それは夜見がこいしの部屋に行くために、自分の部屋を出る直前に言った言葉だった。
[もう恨まれることなんか、とっくに慣れてるんだからよ]
さとり(...黒夜さんのトラウマ、あの言葉 黒夜さんの過去には一体何が...何があったの?)
どうも、お風呂場の蓋です。
この時期には中学、高校では定期テストが多いのではないでしょうか?
そんな私もテストは近いのですが、空いてる時間にちょくちょくと小説を楽しく書いております。
それでは、良ければまた次回も見てください。