夜見は地霊殿の玄関を開けたが、エントランスには誰もいなかった。その光景に夜見は違和感を感じた。
夜見(あれ?今日はこいしさん待ってないのか...)
ここ最近、夜見が地霊殿に帰るとこいしが玄関で待っていてよく抱き付いてきていたのだが、今日は珍しくこいしがエントランスにいなかったのだ。
夜見(なんでだ?...まぁ、今日はそういう気分じゃなかったんだろうな)
そして夜見は仮面を外して自分の部屋に向かい、部屋に入ろうとした瞬間にある音が聞こえた。
チリチリチリチリン
夜見(ん?なんだ?)
その音はベルが連続で鳴るような音だった。しかもその音は夜見の背後から聞こえたため、おそらくこいしの部屋からその音はなったのだろう。
そして夜見は気になってこいしの部屋の扉をノックした。
コンコン
しかし少し待っても返事などは返って来なかった。すると、またこいしの部屋からベルの音が聞こえてきた。
チリチリチリチリン
夜見(なんなんだ一体?)
そして夜見はゆっくりと扉を開けると、そこにはベッドに起き上がって汗をかいているこいしがいた。
こいし「ふぇ?お兄ちゃん?」
夜見「...何してるんだ?こいしさん」
すると夜見はこいしに近付こうとしたが、こいしは何故か慌てている様子だった。
こいし「だ、駄目だよ!お兄ちゃん、近付いたら!」
夜見「駄目って...どうして?」
こいし「なんでって、ケホッケホッ」
夜見「こいしさん?」
するとこいしは急に渇いた咳をした。よく見るとこいしの枕元には先ほどの音の元であろうベルと
夜見「あぁ、風邪で熱が出たのか」
すると夜見はそのまま咳をしているこいしに近付いて行った。
こいし「ケホッケホッ だから駄目だってケホッ お兄ちゃん」
そしてこいしのすぐそばまで来た夜見はこいしの額にゆっくりと手を当てた。
こいし「お、お兄ちゃん?聞いてる?」
夜見「あぁ、ずいぶん熱があるな 寝てないと、こいしさん」
そして夜見は上体を起こしているこいしをゆっくりと寝かせて、布団をかけた。そしてこいしの額に枕元にあった氷嚢をゆっくりと乗せた。
こいし「あ、ありがとう、お兄ちゃん」
夜見「どういたしまして ところでこいしさん、何か持ってきてほしい物とかあるか?」
こいし「え?じゃ、じゃあ、お水を持ってきてほしいな」
夜見「わかった 持ってくるよ」
そして夜見はこいしの部屋を出てキッチンに入ると、そこでは昼食の準備をしているさとりがいた。しかしさとりは昼食の準備に意識を集中させているのか、こちらに気付く素振りはまったくなかった。
そして夜見は食器棚からコップを1つ取り出すと、そこでようやくさとりは夜見がいることに気が付いた。
さとり「黒夜さん、帰ってたんですか 帰ってきたのなら一言ぐらい声をかけてください」
夜見「あぁ、ただいま 準備の邪魔をしちゃいけないと思って黙ってたんだけど...すまないな」
さとり「それより、黒夜さん コップなんか取り出してどうしたんですか?」
夜見「こいしさんが喉が渇いたらしいから、水を持っていくんだよ」
するとさとりは驚いた様子だった。
さとり「え!?こいしの部屋に入ったんですか!?」
夜見「あぁ、入ったけど...何をそんな驚いてるんだ?」
するとさとりは夜見に向かって怒鳴り始めた。
さとり「な、何をしてるんですか!こいしはただの風邪じゃないんですよ!」
夜見「ただの風邪じゃないのか?だったら何の病気なんだ?」
さとり「こいしが今
さとりの話に対して夜見は自分の言っていることを理解しているのか?と少し疑問に思ったが、とりあえず夜見はその病気に罹るとどんな症状が出るのかを聞くことにした。
夜見「そうだったのか それで、その病気に罹るとどうなるんだ?」
さとり「一般的には風邪とほとんど変わりはないんですが、異常に高い熱が出るのが特徴です!1日で治るからいいものの、あの病気に罹ったらとても辛いんですよ!」
夜見「へぇ、そんな病気だったのか ところでさとりさん、何をそんなに怒ってるんだ?」
さとり「あの病気が黒夜さんに罹らないか心配してるんですよ!万が一あの病気に罹ってたらどうするんですか!」
すると夜見は少し申し訳なさそうに、さとりにあることを言った。
夜見「そうだったのか さとりさん、心配してくれてるのはありがたいんだけどさ...俺、妖怪じゃないぞ?」
夜見がそう言うとさとりはハッとして頭を下げて謝ってきた。
さとり「ご、ごめんなさい、黒夜さん 私てっきり家族全員に感染しちゃうと思ってて」
夜見「いや、そんな頭を下げて謝んなくたっていいよ さとりさんはずっと妖怪のみんなと暮らしてたんだから勘違いするのも仕方ないよ」
さとり「そ、そうですか?」
夜見「慣れとか癖って直すのは難しいしな ゆっくり慣れていけばいいんだよ」
さとり「そうですか、ありがとうございます」
夜見「さてと、俺は早くこいしさんに水を持っていかないとな」
そして夜見は冷蔵庫の中から水の入ったピッチャーを取り出してコップに水を注ぐと、夜見はキッチンを出てこいしの部屋へ入っていった。
夜見「こいしさん、水を持ってきたよ」
こいし「ケホッ ありがとう、お兄ちゃん」
夜見「大丈夫か?少し手伝うか?」
こいし「大丈夫だよ、お兄ちゃん 水を飲むくらい」
するとこいしは上体を起こして夜見の持ってきた水の入ったコップを受け取ると、こいしはコップに入っている水をゆっくりと飲み始めた。そしてこいしがコップの水を飲み干すと、夜見はそのコップをこいしから受け取った。
するとこいしは笑顔で夜見に話しかけてきた。
こいし「ありがとう、お兄ちゃん 少し楽になった気がする♪」
夜見「どういたしまして、こいしさん ほら、布団をかけてちゃんと寝ないと」
そして夜見は再びこいしを寝かせて布団をかけて氷嚢を額に乗せると、こいしは夜見に今日の出来事を聞いてきた。
こいし「ねぇ、お兄ちゃんは今日はどんなお仕事をしてきたの?また紅魔館に行ってきたの?」
すると夜見はこいしの部屋にある椅子をこいしの寝ているベッドの近くまで持ってくると、その椅子に座ってこいしの質問に答えた。
夜見「あぁ、そうだよ まぁ、仕事が無かったからちょっと聞きたいことを聞いてきただけなんだけどな」
こいし「へぇ、そっか そうなんだ...楽しかった?」
夜見「ん~、まぁ、楽しかったかな?」
夜見がそう言った途端、こいしは何故か少し寂しそうな顔をした。すると夜見はこいしの手のひらに優しく自分の手を乗せて、そっと握った。
夜見「どうしたんだ、こいしさん?そんな寂しそうな顔をして 何か嫌なことでもあったか?」
こいし「...ねぇ、お兄ちゃん その紅魔館の人達のこと、好きなの?」
夜見「ん?そうだな...いつももてなしてくれるからありがたいって気持ちはあるけど、好きって気持ちとはまた違う感じかな」
夜見が正直に思ったことを言うと、何故かこいしは少し元気になった。
こいし「そっか、そうなんだ ...良かった」
夜見「ん?こいしさん、なんか言ったか?」
こいし「え!?な、何も言ってないよ!」
こいしは明らかに慌てた様子だったので何かを言ったのだろうが、夜見はとりあえず気にしないでおくことにした。
夜見「...まぁ、いいけどさ」
こいし「そういえば、お兄ちゃん さっきからポケットからはみ出してるその紙ってなんなの?」
そう言ってこいしは夜見のポケットからはみ出してるライブの入場券をじっと見ていた。すると夜見はライブの入場券を取り出してこいしに見えるように広げて見せた。
こいし「...人里でライブ?いつやるの?」
夜見「一応、今日やるらしいんだけど...」
こいし「そ、そうなの?だ、だったら一緒に行こうよ、お兄ちゃん」
夜見「こいしさん、駄目だよ こいしさんは体調が悪いんだから、ちゃんと寝てないと」
こいし「やだやだ、お兄ちゃんと行きたい!お兄ちゃんと一緒にライブ見たい!」
夜見「こいしさん、そもそもすごい熱も出てるんだから出歩くことも出来ないだろ?」
こいし「で、出歩けるもん!」
こいしはそう言うとベッドから下りて夜見の目の前で立って見せたが、こいしの体はフラフラと揺れていて今にも倒れてしまいそうだった。
こいし「ほ、ほらね?だ、大丈夫だよ?」
夜見「...こいしさん、そんなにフラフラしてて出歩けるわけないだろ 今日は大人しく寝ておいたほうがいいぞ」
こいし「だ、大丈...夫 うぅ」
するとこいしは急に容態が悪化して夜見の方に向かって倒れてきた。そして夜見は倒れてきたこいしをそっと抱きしめるように受け止めた。
夜見「こいしさん、わかっただろ?こんな状態じゃ出歩けないんだから、大人しく寝ておくんだ」
こいし「うぅ...やだ、嫌だ お兄ちゃんと、ライブ見に行きたいの...」
夜見「...はぁ、なんでそんなにライブを見に行きたいんだか」
すると夜見はこいしをお姫様だっこで持ち上げると、ベッドに下ろして布団をかけた。そしてこいしの氷嚢を額に乗せると、夜見は椅子に座った。
こいし「お兄ちゃんと...ライブ、見に行くの 一緒にライブ行きたい...」
夜見「こいしさん、あまり無茶して心配させないでくれ」
するとこいしの部屋の扉から、コンコンっとノックの音が聞こえてきた。しかし何故か夜見が返事をした。
夜見「なんだ?さとりさんか?」
燐「ち、違うよ、あたいだよ て言うか黒夜さんがなんで中にいるの?」
夜見「あぁ、さとりさんが言ってたんだが、この病気は妖怪だけに罹るらしい だから俺がそばにいてあげようと思ってな」
燐「そうなんだ それより、こいし様の昼食を持ってきたから早く開けてくれないかい?」
夜見「少し待っててくれ、すぐ開ける」
そう言って夜見は立ち上がり扉を開けると燐はおぼんを持っていて、その上にはお粥が入っている小さな鍋とれんげ、水の入ったコップがあった。
そして夜見は燐からおぼんを受け取ると、夜見は燐にお礼を言った。
夜見「すまないな、わざわざ運んできてもらって」
燐「いいんだよ それより、こいし様の様子は?」
夜見「それが実は今日の夜に人里でライブがあって、そのライブに行く約束をしてるんだけど、こいしさんが行きたいって言ってるんだ」
燐「あぁ、確かにこいし様なら行きたいって思うだろうね でも、こいし様は体調が悪いんだし1人で行けばいいんじゃない?」
夜見「確かにそうしたいんだけど、あいにく2人用の入場券を受け取ったもんだから2人で行かないといけないんだ」
燐「あぁ、それは困ったね 誰か誘える人に心当たりは無いのかい?」
夜見「残念ながら、まったく心当たりが無いんだ」
すると燐は少し考え込むと、夜見にこう言ってきた。
燐「そうだね...それなら、あたいがさとり様と何か良い案がないか考えてみるよ」
夜見「そうか、期待してるぞ」
そして夜見はこいしの元に戻ろうとすると、燐がある質問をしてきた。
燐「そういえば、黒夜さんは昼食はいつ食べるつもりなんだい?一応さとり様は何か作ろうとしてるけど?」
夜見「あぁ、別に用意はしなくていい 自分で何か作って食べるから」
燐「わかったよ じゃあ、先に食べてるからね」
そう言って燐はいつもご飯を食べている部屋へ入っていった。そして夜見はおぼんを持ってこいしの元に戻った。
夜見「こいしさん、昼食だけど...食欲は大丈夫か?」
こいし「お兄ちゃん、一緒にライブ行きたいよ 一緒に行こうよ...」
夜見「...こいしさん、いつまで言ってるんだ 燐さんがお粥持ってきてくれたから、体を起こして」
こいし「...ん?ご飯?」
夜見「あぁ、そうだ だから体を起こして、じゃないと食べられないだろ?」
するとこいしはゆっくりと動いて上体を起こしたが、こいしは先ほどより少しボーッとしている様子だった。
その様子を見て夜見はこいしの額に手を当てると、先ほど触れた時よりも熱がある様子だった。
夜見(異常に高い熱が出るとはさとりさんは言ってたけど、まさかここまで出るなんて...)
こいし「...お兄ちゃん?ご飯じゃないの?」
夜見「ん?あぁ、そうだったな 自分で食べられそうか?」
こいし「...ふぇ?何か言った?」
夜見「...いや、なんでもない」
どうやらこいしは少し意識がぼやけているようで、容態は明らかに悪化している様子だった。
とりあえず何かしら食べないと容態は悪くなる一方なので、夜見は自分でれんげでお粥を
夜見「ほら、こいしさん 口を開けて」
こいし「ん?お兄ちゃん、あーん?」
夜見「あぁ、そうだ だから口を開けて」
そしてこいしは素直に口を開けたので、夜見はお粥を口の中に入れた。するとこいしはゆっくりとお粥を噛んで飲み込んだ。
夜見「ほら、もう1回」
こいし「ん、あーん」
そして夜見はしばらくこいしにお粥を食べさせていると、こいしはお粥を全部食べ終えた。そして最後にこいしが水を飲み干すと、夜見は鍋などが乗ったおぼんを一旦椅子の上に置いてこいしをベッドに寝かせた。
夜見(少しは顔色も良くなったかな 後は氷嚢の中もそろそろ取り替えた方がいいだろうな)
そして夜見はおぼんに氷嚢も乗せてこいしの部屋を出てキッチンへ入っていった。するとキッチンでは空が鼻歌を歌いながら流し台で食器を洗っていた。
空「♪~ ♪~♪♪~」
そして夜見は空の隣に来ておぼんを置くと、そこで空は夜見がいることに気付いた。
空「うにゅ?いたんだ、黒夜さん」
夜見「あぁ、食器を洗いにな ちょっとだけ横にずれてくれないか?」
すると空は少し右側にずれてくれたので夜見は流し台の左側で空と肩を並べて食器を洗っていると、空が夜見に話しかけてきた。
空「こいし様の様子はどうだった?元気になった?」
夜見「いや、まだ少し体調は悪い様子だったから大人しく寝かせてる」
空「ふ~ん、そうなんだ 早く良くなるといいね」
夜見「あぁ、そうだな」
すると空は食事中にある話をしていたことを話してきた。
空「そういえばさ、ご飯を食べてる時にさとり様とお燐がライブがどうのこうの言ってたんだけど、黒夜さんは何か知ってる?」
その話に関しては、夜見が1番良く知っているので簡単に説明した。
夜見「あぁ 実は今日の夜に人里でライブがあるんだ だけど2人用の入場券を貰ったから誰か1人誘わないといけないんだ」
空「へぇ、そうなんだ それで、誰を誘うの?」
夜見「それが、誘える人に心当たりが無いんだ」
夜見がそう言うと、空が意外なことを言い出した。
空「そうなんだ それなら、私が一緒に行こうか?」
夜見「え?でも、仕事とかがあるんじゃないのか?」
空「うーん まぁ、大丈夫じゃない?たまにはさとり様も許してくれるよ、きっと」
夜見「...まぁ、詳しいことはさとりさんと話し合ってくれ 俺の判断で決めるわけにはいかないからな」
そして夜見は食器を洗い終えると氷嚢の中にある水を流し台に少し捨て、冷蔵庫から氷を何個か取り出して氷嚢の中に入れた。
そして夜見はこいしの部屋に戻ると、こいしは静かに寝息を立てて寝ていた。そして夜見はこいしの額にそっと氷嚢の乗せてこいしの部屋を出て再びキッチンへ戻ると、空はまだ流し台で食器を洗っていた。
空「あれ?こいし様はどうしたの?」
夜見「こいしさんなら静かに寝てたよ さてと、俺も昼食を食べないと」
そして夜見は冷蔵庫を開けると、いろんな食材が入っていた。すると夜見は空にあることを聞いた。
夜見「なぁ、空さん この中に入ってる食材って好きに使っていいのか?」
空「あぁ...ええっと?確かさとり様はどれを使ってもいいって言ってたような...言ってなかったような...」
夜見「...覚えてないのか?」
空「うん...覚えてないや」
夜見「はぁ、仕方ない さとりさんに聞きに行くか」
空「そうだ、ついでに私もライブに行っていいか聞いていこうっと」
そして夜見と空はキッチンを出ると、2人はさとりの仕事部屋へと向かった。2人は仕事部屋の前に着くと、夜見が部屋の扉を軽くノックした。
コンコン
さとり「入っていいですよ」
さとりから入室の許可を得られたので夜見が扉を開けると、さとりは椅子に座って書類に何か書き込んでいた。
さとり「どうしたんですか?黒夜さん それにお空まで」
夜見「あぁ、少し聞きたいことがあってな 昼食を食べようとしたんだけど、冷蔵庫の中にある食材はどれでも使っていいのか?」
さとり「あぁ、それならどれを使っても構いませんよ というか、その話はお空に言っておいた筈なんですが...お空、また忘れたのね」
空「えへへ 私、忘れぽっくて」
さとり「お空、褒めてないわよ それで、なんでお空まで来たの?」
空「そうだった、ええっと?なんだっけ?黒夜さん」
夜見「空さん、ライブの件だろ?」
さとり「ライブの件、ですか?」
空「そうそう それでさとり様、今日のライブに私が行ってもいいかな?」
空がそう言うとさとりは少し考え込み始めた。しばらく待っていると、さとりは夜見にあることを聞いてきた。
さとり「黒夜さん、ちゃんとお空の面倒を見れますか?」
すると夜見は、さとりにそう言われて軽くショックを受けた。
夜見「面倒を見れるかって...そんなに俺って信用無いか?」
するとさとりは慌てて訳を説明した。
さとり「い、いえ、そういう訳じゃなくて、お空が目を離した隙にどっかにいかないか心配で...」
空「大丈夫だよ、さとり様 とりあえず、ずっと黒夜さんと一緒にいればいいんでしょ?」
さとり「お空、そんなこと言ってすぐ忘れちゃうから心配してるの」
すると夜見はさとりに確認を取った。
夜見「...ええっと要するに、俺が空さんの面倒を見ておけばライブに行ってもいいってことか」
さとり「はい、そういうことです」
夜見「あぁ、そういうことか でも、空さんの仕事とかは大丈夫なのか?」
さとり「大丈夫ですよ ある程度はお燐と協力して頑張りますから」
夜見「そうか、なんかすまないな」
さとり「いえいえ、気にしないでください」
すると空は何故か喜んでいる様子だった。
空「やったね、黒夜さん これで問題が解決したよ」
夜見「あぁ、そうだな さてと、俺は昼食を作って食べるとするか 仕事の邪魔をしてすまなかった、さとりさん」
さとり「大丈夫ですよ、少し息抜きしたかったところだったので」
夜見「そうか、それは良かった じゃあな、さとりさん」
そして夜見と空は仕事部屋を出ると、夜見はキッチンへと入っていった。すると夜見は冷蔵庫の中の食材を見て何を作ろうか考え始めた。
夜見(さてと、何を作ろう まぁ、簡単に野菜炒めでも作るか)
そして夜見は野菜炒めを作るために食材を必要な分だけ取り出してその食材をまな板の上で切っていった。そうしているとキッチンの扉が開いて燐が入ってきた。
燐「あ、黒夜さん 何を作ってるの?」
夜見「燐さんか まぁ、簡単に野菜炒めでも作ろうと思ってな ところで燐さんは何しに来たんだ?」
燐「あたいは水切りし終わったお皿を片付けに来ただけ」
そう言って燐は水切りかごに置いてあった乾いた皿を重ねて次々に食器棚に戻していたが、燐は皿を片付けている途中に夜見が料理している様子をチラチラ見ていた。
夜見「...なんだよ 俺が料理してるのがそんなに不思議か?」
燐「え?いやぁ、黒夜さんってなんでそんなに料理が上手なのかなぁって思ってね」
夜見「そんなに上手なんてもんじゃないだろ これくらい普通だ」
燐「それが普通って、あたいも数十年料理してるけどそんなに上手に作れないよ?」
夜見「別に長い間料理してた方が上手に出来るって訳でもないだろ」
燐「まぁ、そりゃそうだろうけど...ところで黒夜さんはいつから料理とか作るようになったんだい?」
夜見「そうだな...いつ頃だったけかなぁ?」
そして夜見は食材をフライパンの中に入れて炒めながら、1番古い料理をした記憶を掘り起こした。その記憶は夜見がとても小さい頃の記憶だった。
夜見「確か...3歳頃だったな」
夜見がそう言うと、燐は驚きを隠せなかった。
燐「え!?さ、3歳から!?」
夜見「ん?何かおかしいか?」
燐「そ、そんなに小さい頃から料理なんか作ってたのかい!?一体どうして!?」
夜見「どうしてって言われても...1番昔の覚えてる記憶だと俺は施設にいたからな」
燐「え?し、施設?」
燐は夜見の施設という言葉に疑問を感じていたので、夜見はその時の事情を説明をした。
夜見「俺の両親は俺が小さい頃に死んで、親戚は世話が面倒だからって身寄りの無い子供の世話をする施設に入れたらしい その施設の人が教えてくれたよ」
燐「そ、そんな...そんなのあんまりじゃないかい!?そんなに幼い子供を、世話が面倒だから施設に入れるってそんな酷いこと...」
夜見「まぁ、なんだかんだ施設の大人は親切だったから小さい頃の俺には気にならなかったけどな ただ、小さい頃からいろんな体験をさせるって理由でいろんな事はやらされたけどな 料理もその内の1つだった」
燐「ま、まさかとは思うけど、その施設の人は料理の様子はそば見てたんだよね!?」
夜見「当たり前だろ 子供だけで料理させる大人が施設で子供の世話なんか出来るわけないだろ」
燐「そ、そうだよね、ならいいんだけど...それにしても、黒夜さんにはそんな辛い過去があったんだね」
燐は夜見に同情していたが、夜見は同情については特に気にする様子も無かった。
夜見「どんなに辛かろうが所詮過去は過去、今更何をしても過去は変えられない それに、そんな過去なんかよりもっと辛い過去があるからな」
燐「そ、それより辛い過去?」
すると夜見は少し顔をしかめてこう言った。
夜見「...少し喋り過ぎたな すまないが、さっきの話は忘れてくれ それと醤油取ってくれないか?もう少しで出来るから」
燐「え?わ、わかったよ」
そして燐は夜見の言う通りに棚から醤油を探し始めた。
燐「え~とっ...あった はい、黒夜さん」
夜見「あぁ、ありがとう」
そして夜見は燐から醤油を受け取ると、フライパンの中に醤油を入れて再び炒め始めた。しかし燐は夜見の言った言葉にさっきから疑問を感じていた。
燐(両親が死んで施設に入れられるより辛い過去って、黒夜さんは一体どんなに酷い生活を送って...)
夜見「...言っておくが、俺の過去の事は考えるなよ もし過去が知られるようなことがあったら、俺はここを出ていくからな」
燐「え!?そ、そんなことないよ!知られたくない過去なんてあたいにも山ほどあるしね!」
夜見「...まぁ、知られることなんてそうそう無いだろうけどな さてと」
すると夜見は水切りかごに置いてあった手頃な大きさの皿を取ると、炒め終わった野菜炒めを盛り付けた。そして夜見はフライパンを置くとその皿と自分の箸を持って隣の部屋に移動するが、何故か燐も続いて隣の部屋に移動してきた。
そして夜見が皿を置いて椅子に座ると、燐は夜見の正面に座り始めた。
夜見「燐さん、なんで付いてきた?」
燐「え?いや、なんとなく...」
夜見「...まぁ、別にいいか いただきます」
そして夜見は自分で作った野菜炒めを食べ始めた。一方燐は夜見が野菜炒めを食べている様子をじっと見ていた。
夜見「...燐さん、食べにくいんだが」
燐「あぁ、ごめんごめん そういえば、さっきお空から聞いたよ 一緒にライブに行くんだってね」
夜見「あぁ、まさかさとりさんが許可を出してくれるとは思っていなかったがな」
燐「さとり様はきっと、お空に気分転換して欲しかったんだと思うよ?お空って全然地上に出ることなんてないからさ」
夜見「そうか、じゃあ空さんは楽しみにしてるんだろうな」
燐「そうだろうね」
夜見「ごちそうさま さてと、片付けるか」
そんな会話をしている内に夜見は野菜炒めをすぐに食べ終えてしまった。そして夜見が立ち上がると、燐が皿と箸を持ち始めた。
燐「これはあたいが片付けておくから、黒夜さんはこいし様の様子を見ておいてくれないかな?こいし様のこと心配だからさ」
夜見「そうか?すまないな じゃあ、こいしさんの様子を見てくるよ」
そう言って夜見は部屋を出てこいしの部屋に入ると、こいしはまだ寝ている様子だった。そして夜見はベッドの近くにある椅子に座ると、こいしは何か言っている様子だった。
こいし「んん...お兄ちゃん...どこ行くの?」
どうやらこいしは夜見の夢を見ている様子だったが、急にこいしの目から涙が流れ始めた。
こいし「お兄ちゃん、行かないで 嫌だよ、行かないでよ」
すると夜見が寝ているこいしの手を優しく握ると、こいしは手を握り返して、目から流れていた涙がスッと止まった。
こいし「ん、お兄ちゃん、ありがとう 好き、大好き」
夜見はその様子を見ているとゆっくりと目を瞑り始めた。そして夜見はしばらくしてから目を開けると顔色が随分良くなったこいしが起きていて、夜見の顔を覗き込んでいた。
こいし「あ、お兄ちゃん、やっと起きた こんばんは」
夜見「ん?こいしさん、起きたのか」
こいし「ビックリしちゃった、お兄ちゃん だって私が目を覚ましたら、お兄ちゃんが私の手を握って眠ってるんだもん」
夜見「え?俺、寝てたのか?」
こいし「うん、幸せそうな顔しながらね♪」
どうやら夜見は目を少し瞑ってた気が、いつの間にかそのまま眠ってしまったらしい。すると扉の方から声が聞こえてきた。
さとり「黒夜さん、そろそろ時間ですよ!早く出てきてください!」
夜見「なんだ、時間?とりあえず、行ってみるか」
部屋の外からさとりが呼んでいたので夜見は立ち上がろうとしたが、こいしは手を放そうとしなかった。するとこいしは夜見にこう言ってきた。
こいし「ふふ、お兄ちゃん 寝顔可愛かったよ」
こいしはそう言って夜見の手を放したので夜見はこいしにこう言った。
夜見「何言ってるんだ、こいしさんの寝顔の方が可愛いだろ」
そう言うとこいしは顔を真っ赤にして布団で顔を半分隠した。
こいし「も、もう!お兄ちゃんったら...あ、ありがとう」
夜見「どういたしまして それじゃ、行ってくるよ」
こいし「行ってらっしゃい、お兄ちゃん」
そして夜見がこいしの部屋から出て扉を閉めると、さとりが話しかけてきた。
さとり「何をしてたんですか、黒夜さん?」
夜見「あぁ、どうやらいつの間にか少し寝てたらしい」
さとり「とりあえず、もうお空は待ってるんで早く出発してください 一応お金は渡しておきますので」
そう言ってさとりはお金を渡してきたが、夜見はさっぱり状況が理解できていなかった。
夜見「え?なんでお金なんか?」
さとり「黒夜さん、もう6時半頃ですよ?そろそろ出発しないと駄目なんじゃないですか?」
夜見「あぁ、そんなに寝てたのか?じゃあそろそろ出発しないとな」
さとり「お空は玄関で待ってますから、早く行ってあげてください」
夜見「そうか、じゃあ行ってくるよ さとりさん」
さとり「行ってらっしゃい、黒夜さん」
そして夜見は仮面を取り出して被り、玄関に着くと準備万端の空がいた。
空「黒夜さん、早く早く!ライブが始まっちゃうよ!」
夜見「わかったから落ち着け 歩いてても間に合うから」
そして夜見と空はライブが始まる人里へと向かって行った。
どうも、お風呂場の蓋です。
今回の話ではなんと、夜見は空と一緒にライブに行くことになってしまいました。
果たして忘れっぽい空と行くライブはどうなるのでしょうか?
よかったら次回も見てください。