心を閉ざした少年と少女   作:お風呂場の蓋

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第27話 寂しがり屋な妖怪

夜見と空は地底を進んでいき旧地獄街道を歩いていたが夜遅いからか周りには誰もおらず、宙に怨霊がふわふわと浮いているだけだった。

そして夜見は少し暇だったので空に話しかけた。

 

夜見「空さん、少し聞いていいか?」

 

空「ん?いいよ、どうしたの?」

 

夜見「まぁ、言いたくなければ言わなくていいんだけど、空さんはどうして地底に住んでるんだ?空さんが地上で嫌われる要素なんて1つも無い気がするんだが...」

 

すると空は少し悩んだような様子で答えた。

 

空「ん~、どうしてって言われても、別に私はここで生まれてずっと育ってきたからここにいるだけだよ?」

 

夜見「そうなのか、ちなみにここに住んで何年くらい経つんだ?」

 

空「ん~、それは覚えてないけど、悪いことを沢山した魂がなんかいろいろされてたのは生まれたときからお燐とずっと見てたよ」

 

夜見「そうか、結構前から住んでるんだな」

 

空の話から察するにおそらく空と燐は、ここがまだ地獄として使われていた時代に生まれたのだろう。その事を夜見は理解すると空はこんなことを言い始めた。

 

空「そういえばあの時は私もお燐もまだ動物の姿のままだったな~」

 

すると夜見は空の言った言葉に興味を示した。

 

夜見「...え、どういうことだ?空さん」

 

空「ん?何が?」

 

夜見「さっきの動物の姿だったって話」

 

夜見がそう言うと空は思い出したようにその時のことを説明した。

 

空「あぁ、その話ね 私とお燐は生まれたときは動物の姿だったんだよ 私は鴉、お燐は猫だったんだけど、さとり様とこいし様が来て一緒に住んでたらいつの間にか、こんな人間に近い姿になったんだ」

 

夜見「へぇ、そんなこともあるんだな ちなみに動物の姿に戻れたりとかはしないのか?」

 

空「私はこの姿になってからは戻ってないからわかんないや でも確かお燐なら出来た筈だよ」

 

夜見「燐さんが猫の姿ねぇ 確かに燐さんは猫みたいな耳と尾が生えてるけどあんまり猫の姿とか想像出来ないな」

 

夜見がそう言うと空は夜見にあることを聞いてきた。

 

空「そういう黒夜さんは昔はどうだったの?外の世界にいたときはどんな暮らしをしてたの?」

 

空が聞いた瞬間、夜見は少し俯いて急に黙ってしまった。空はその様子を不思議に思っていたが、しばらくするとハッとして謝り始めた。

 

空「あ、ご、ごめんね 黒夜さんは昔のことは話したくなかったんだよね 私、すっかり忘れちゃってて...」

 

夜見「...いや、大丈夫だ 空さんは何も悪くない」

 

空「そ、そろそろ自分で歩くよ ありがとうね、ここまで運んでくれて」

 

夜見「そうか?じゃあ、降ろすぞ」

 

すると夜見はしゃがむと空は夜見の背中からゆっくりと降りた。そして夜見が歩くと空は隣に並んで歩き始めたが、さっきのことを気にしているのか申し訳なさそうな様子だった。

 

夜見「...」

 

空「...ね、ねぇ、黒夜さん、怒ってる?」

 

空が怒っているか聞いてみると夜見は素っ気ない様子で返事をした。

 

夜見「...別に?」

 

空「...本当に怒ってない?」

 

夜見「...あぁ、怒ってない」

 

空「...い、いいんだよ?怒ってるなら、正直に言って」

 

夜見「...怒ってないって」

 

空「...やっぱり、本当は「だから怒ってないって」...うん」

 

夜見は空がしつこく怒ってるか聞いてくるので空が話してる途中に割り込むと、空は返事をしてそのまま黙ってしまった。

そして夜見がため息をつくと足を止めて空の方を向き、貸したマントのフードを下げると空の頭を軽く撫で始めた。

 

空「ひゃ!?く、黒夜さん!?」

 

空は急に頭を撫でられると小さな悲鳴を出したが、夜見は気にすることなくそのまま空の頭を撫で続けた。すると空は夜見に話しかけてきた。

 

空「く、黒夜さん?」

 

夜見「ん、どうした?」

 

空「な、なんで私の頭を撫でるの?」

 

夜見「なんでって、空さんが落ち込んでるから少しでも元気が出ればって思ったんだが...嫌ならやめるか?」

 

空「い、いや、別に嫌じゃないけど、急に撫でてきたからビックリして...」

 

夜見「そうか」

 

そして夜見はしばらく空を撫でていると、空は誰にも見られてはいないが、恥ずかしいのか顔が少しずつ赤くなっていった。すると夜見は空に話しかけた。

 

夜見「もう大丈夫か?」

 

空「う、うん、大丈夫...ありがとう」

 

夜見「どういたしまして ほら、帰るぞ」

 

空「うん、そうだね♪」

 

夜見は空を撫でるのをやめると、2人は地霊殿へと向かった。そして夜見と空は地霊殿に着き、夜見が玄関を開けて地霊殿に入るとエントランスではピンクのパジャマを着たさとりが待っていた。

 

夜見「ただいま、さとりさん」

 

空「ただいまー、さとり様」

 

さとり「黒夜さん、お空、お帰りなさい お風呂が沸いてるからお空は入ってきなさい」

 

空「はーい」

 

そして空は夜見にマントを返すとさとりの言う通りにお風呂へと向かって行った。するとさとりは夜見に話しかけてきた。

 

さとり「どうでしたかライブは?楽しめましたか?」

 

夜見「あぁ、楽しめたよ それに空さんもとても楽しんでたしな」

 

さとり「そのようですね お空から楽しかったという心の声が沢山聞こえてきましたから」

 

夜見「そうか、なら良かった」

 

そして夜見はあることを思い出すと、さとりに聞いてみた。

 

夜見「そういえば、こいしさんの様子はどうだ?悪化とかはしてないよな?」

 

さとり「えぇ、大丈夫ですよ 夕飯の時には咳もしなくなって熱も下がっていたので、きっと治ってますよ」

 

夜見「でも、一応今日中はこいしさんにあまり近付かないようにな?治ったと思って近付いたら自分が(かか)ったなんてことがあったら面倒だからな」

 

さとり「わかっていますよ ところで黒夜さん、その袋は一体なんですか?」

 

するとさとりは夜見の持っていた袋を指差したので、夜見はその袋を開けて中身をさとりに見せた。

 

夜見「あぁ、なんかライブのイベントで貰ったんだ ...あれ?これって同じ服入ってないか?」

 

さとり「え?本当ですか?」

 

そして夜見とさとりが袋の中身を取り出してみると、中からルナサ、メルラン、リリカの服がそれぞれ3着も出てきた。しかしその服はそれぞれサイズが違っていた。

 

さとり「へぇ、こんなに沢山貰ったんですか」

 

夜見「これって間違えて入れたりとかしてないよな?もし間違えて入れてたとしたら困るぞ?」

 

さとり「まぁ、もしそうだったとしても洗って返しましょう それならきっと大丈夫でしょうし」

 

夜見「まぁ、そうだな ところでさとりさん、どれか着るか?」

 

夜見がそう言うとさとりは服を手にとってどの服を貰おうか選び始めた。

 

さとり「そうですね...それじゃあ、私はこの薄いピンク色のを貰いますね」

 

そう言ってさとりは小さいサイズのメルランと同じ服を手に取った。するとさとりは夜見に逆に聞いてきた。

 

さとり「それで、黒夜さんはどれを着たいんですか?」

 

さとりがそう聞いた瞬間、夜見は一瞬固まった。しかし夜見はすぐに手を横に振った。

 

夜見「え?いやいや、俺は着ないぞ?」

 

するとさとりは口に手を当ててクスクスと笑い始めた。

 

さとり「ふふ、冗談ですよ でも黒夜さんの顔はきれいですし、ウィッグでも被れば似合うんじゃないんですか?」

 

夜見「ウィッグとかそういう問題じゃない ていうか着ないってさっき言っただろ」

 

さとり「わかってますよ それじゃあ、片付けましょうか」

 

そして夜見とさとりは袋から取り出した服を1つ1つ丁寧に畳んで袋の中に入れると、さとりはその袋を持って自分の部屋へと持っていった。すると夜見もマントと仮面を置いてくるために自分の部屋へと向かった。

 

夜見(今日はいろいろと疲れたな さっさとベッドに横になって休憩でもするか)

 

夜見は自分の部屋の前まで着くと扉を開けて入っていった。そして夜見はベッドへと横になろうとしたが、横になることが出来なかった。その理由はベッドの上にあった。

 

こいし「ん、んん...」

 

夜見(...何故こいしさんがここにいるんだ?)

 

なんと夜見のベッドの中央には黄色のパジャマを着たサードアイを閉ざしたこいしが横になってぐっすりと寝ていた。そして夜見は仮面とマントを机の上に置くとこいしを起こさないようにゆっくりと近付いた。

そして夜見はベッドに座ると、こいしの顔付近の所が異様に濡れているとこに気がついた。

 

夜見(なんでこんなに濡れてるんだ?こいしさんが俺の部屋に間違えて入って水でもこぼしたか?)

 

こいし「ん、んん...うぇ、ひっぐ」

 

夜見はこいしを見ているとこいしは何故か急に涙を流して泣き始めた。こいしの目からは涙が止まらず、布団がどんどん涙によって濡れていった。

 

夜見(あぁ、布団が濡れてるのはそういうことか でもなんでこいしさんは泣いてるんだ?)

 

そして夜見はこいしの手を握るとこいしも手を握り返してきたが涙が止まる様子はなく、まだこいしの目から涙がぼろぼろと流れていた。

 

こいし「うぐっ ひっぐ お兄ちゃん...お兄ちゃん...」

 

夜見はこいしに呼ばれると小声でこいしに向かって声をかけた。

 

夜見「...どうしたんだよ、こいしさん」

 

そして夜見はこいしを持ち上げて抱き締めると、こいしの頭を撫で始めた。しかしそれでもこいしは泣き止まないでずっと涙を流していた。

そしてこいしは夜見に抱き締められたまま何度も何度も夜見のことを呼んでいた。

 

こいし「お兄ちゃん...お兄ちゃん...お兄ちゃん...お兄ちゃん...」

 

すると夜見は再び小声でこいしに声をかけた。

 

夜見「どうしたんだよ、こいしさん なんで泣いてるんだ?泣かないでくれ、こいしさん」

 

こいし「お兄ちゃん...お兄ちゃん...お兄ちゃん...お兄ちゃん...」

 

夜見「こいしさん、俺はここにいるぞ」

 

こいし「お兄ちゃん...お兄ちゃん...お兄ちゃん...お兄ちゃん...」

 

夜見(泣き止んでくれないな...どうすればいいんだ?)

 

すると夜見はこいしを抱き締めたまま立ち上がると、自分の部屋を出て廊下に出た。そして夜見は地霊殿内をひたすらぐるぐると歩き回ったのだが、その間こいしはずっと泣いているままだった。

 

夜見(本当にどうしたんだよ、こいしさん 何が心配なんだ?何が不安なんだよ?)

 

そして夜見がこいしを抱き締めたままエントランスに行くと、ちょうど風呂から上がった黒いパジャマを着た空とばったりと合った。すると空は不思議そうに今の状況を夜見に聞いてきた。

 

空「何をしてるの、黒夜さん?」

 

夜見「あぁ、なんかこいしさんがずっと泣いたままで中々泣き止んでくれないんだ」

 

空「そうなんだ こいし様、どうしたの?なんで泣いてるの?」

 

空はこいしに近付いて小声でこいしに泣いている理由を聞くと、こいしは急に手足をバタバタとさせて暴れ始めた。すると夜見はこいしの振り回している手が空に当たらないように距離を取るが、夜見には何回か手と足が体に当たっていた。

 

こいし「嫌、嫌!嫌だ!」

 

夜見「痛っ 痛いって、こいしさん」

 

こいし「やだやだ、やだ!やだ!」

 

こいしの振り回している手と足が夜見に何回も当たってる様子を見て空は心配そうに声をかけてきた。

 

空「あ、えっと...黒夜さん、大丈夫?」

 

夜見「あぁ、大丈、痛っ だ、大丈夫大丈夫」

 

空「ど、どうする?さとり様を呼んできた方がいいかな?」

 

夜見「なんとか落ち着かせるから呼ばなくていい こいしさん、俺はそばにいるから、な?」

 

そして夜見は自分の部屋に戻るとこいしは疲れたのか手と足の動きを止めて、再び夜見のことを呼びながら泣き続けた。すると夜見はこいしを自分のベッドの上に降ろすとこいしの頭を撫でて小声で声をかけた。

 

夜見「こいしさん、俺はお風呂に行ってくるから大人しく待っててくれ」

 

こいし「お兄ちゃん...お兄ちゃん...お兄ちゃん...お兄ちゃん...」

 

夜見「すぐに戻ってくるからな」

 

そして夜見は自分の部屋を出て脱衣場へ入り服を脱ぐと奥の部屋にある風呂に入った。夜見は風呂に入りながらこいしが泣いている理由をいろいろと考え始めた。

 

夜見(こいしさんはなんで泣いてるんだ?ライブを一緒に行きたいって言ってたけど結局はいってらっしゃいって言ってくれたし、別にこいしさんのことを無視しただなんてことも特になかったはず...わからないな)

 

そして夜見は風呂を出て脱衣場にあった紺色のパジャマを着ると風呂を掃除して自分の部屋へと戻っていった。夜見は自分の部屋の扉を開けるとベッドの上のこいしは起きていて、座りながらこちらの方をじっと見ていた。

すると夜見はこいしに近付いてベッドに座るとこいしに声をかけた。

 

夜見「こいしさん、起きたのか こいしさんは何故かずっと俺のことを呼びながら泣いてたんだが...なんか嫌な夢でも見たか?」

 

こいし「...お兄ちゃん」

 

夜見「どうした?」

 

こいし「ん」

 

するとこいしは夜見の首に腕を回して抱きついてきた。そして夜見は抱きついてきたこいしを抱き締めて頭を撫でていたが、こいしは何故か夜見のことを押すように何度も体を押し付けてきた。しかし夜見はこいしが何故自分のことを押しているかが全く理解することが出来なかった。

 

夜見「こいしさん、どうしたんだよ?」

 

こいし「ん、ん、ん」

 

夜見「...」

 

すると夜見はこいしを抱き締めたまま体を移動させてベッドに自分が仰向けになるように倒れ込んだ。しかしこいしは夜見に抱きついたままだったが、自分の体を押し付けるようにはしてこなくなった。

するとこいしは夜見の顔の横で話しかけてきた。

 

こいし「ねぇ、お兄ちゃん 今日のライブ、楽しかった?」

 

そして夜見は正直にライブの感想を述べた。

 

夜見「あぁ、楽しかった」

 

こいし「...誰かと行ったの?」

 

夜見「空さんと行った 空さん随分とはしゃいでたから相当楽しかったんだろうな」

 

こいし「...人里で誰かと会ったりとか、した?」

 

夜見「そうだな...前に依頼をして知り合った人、それに紅魔館の主人とその妹にも会ったな みんなもライブに来てて、席も近かったから色々と話もしたな」

 

夜見がそう言うとこいしは少し暗い雰囲気になり始めた。

 

こいし「へぇ、そう...なんだ...」

 

夜見「...こいしさん?」

 

夜見はその様子を不思議に思いこいしのことを心配したが、こいしは夜見にこんなことを言った。

 

こいし「ねぇ、お兄ちゃん 目、瞑って」

 

夜見「ん、目を瞑ればいいのか?」

 

こいし「うん、そうだよ だから、早く」

 

夜見「わかったよ、これでいいか?」

 

そして夜見はこいしの言う通りに目を瞑った。するとこいしは次は、こう言ってきた。

 

こいし「お兄ちゃん、私がいいよって言うまで目を開けちゃ駄目だよ わかった?」

 

夜見「あぁ、わかったよ」

 

こいし「何があっても絶対に目を開けちゃ駄目だからね?」

 

夜見「あぁ、こいしさんがいいよって言うまで絶対に目を開けない」

 

するとこいしは頭を少し上げると夜見の顔の少し横の方に自分の顔を近付けた。そして次の瞬間...

 

チュッ

 

夜見(え!?なっ!?は!?こ、こいしさん!?)

 

こいしは夜見の頬にキスをしてきた。しかし夜見はこいしにキスをされたことに驚いたが、こいしの言う通りに目はずっと瞑っていた。

するとこいしはいいよとは言わずに夜見の顔の横の方に何度も自分の顔を近付けた。

 

チュッ チュッ チュッチュッ チュッ

 

そしてこいしは夜見の頬に何度もキスをしてきた。しかし夜見はこいしの言う通りにいいよと言われていないので抵抗をせずにずっとキスをされ続けた。

 

夜見「こ、こいしさん?急にどうした?」

 

こいし「...」チュッ チュッ

 

夜見「こ、こいしさん?」

 

こいしは夜見の声が聞こえていないのか、ずっと何も喋らずに頬にキスをしてくる。そしてこいしは夜見にキスをしてくるたびに何故か少しずつ過呼吸になっていくので、夜見は心配になってもう一度声をかけた。

 

こいし「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」チュッチュッ チュッ

 

夜見「...こいしさん、大丈夫か?少し落ち着いた方が「何言ってるのお兄ちゃん、私は落ち着いてるよ?」

 

しかしこいしは夜見が心配して声をかけたのだが、それを遮ってキスをし続けてきた。するとこいしがキスをやっとやめてきたと思ったら、こいしは微かに聞こえる声でこんなことを言った。

 

こいし「はぁ、はぁ もう我慢できない、お兄ちゃんならきっと許してくれるよね?

 

こいしがそう言った後、夜見は自分の顔にある感触を感じたのでその瞬間に夜見はこいしの顔の位置を予測して両手でそっと頬に触れた。するとこいしは夜見にこう言ってきた。

 

こいし「お兄ちゃん、なんで約束守ってくれないの?」

 

夜見「何言ってるんだ?目はちゃんと瞑ってるだろ」

 

こいし「...嘘でしょ?だったらなんで私の顔を止められるの?」

 

夜見「誰だって顔に吐息がかかってきたらどこに顔があるかなんてわかるだろ」

 

そう、こいしは自分の顔を夜見の顔に重ねるように近付けて来ていたのだ。そして夜見が両手でこいしの顔に触れていなかったら今頃は確実にお互いの唇が触れ合っていただろう。

するとこいしは少し悲しげな声で夜見に言った。

 

こいし「...いいよ、目、開けて」

 

夜見「...いいのか?本当に」

 

こいし「うん、大丈夫だから 目、開けていいよ」

 

夜見「...」

 

夜見が目をゆっくり開けるとこいしの顔はお互いの鼻先が触れるか触れないかの距離まで近づいており、こいしの吐息が夜見の口に何度も当たっていた。すると夜見はこいしの頭に手を回し、こいしの頭が自分の横に来るように抱き締めて頭を撫でた。そして夜見はこいしにどうしてこんなことをしてきたか質問をした。

 

夜見「こいしさん、なんで急にあんなことをしたんだ?やっぱり嫌な夢でも見たか?」

 

するとこいしは首を横に小さく振った。

 

こいし「...見てない」

 

夜見「...さとりさんに何か怒られたからか?」

 

するとこいしは再び首を横に小さく振った。

 

こいし「...怒られてない たまに様子を見に来て大丈夫?って言ってくれた」

 

夜見「そうか...甘えたかったのか?」

 

こいし「...よくわかんない」

 

夜見「...そっか、わかんないなら仕方ないな」

 

夜見はそう言ってこいしの頭を撫でながら少し強く抱き締めると、こいしも少し強く抱き締めてきた。そして夜見の視界の端にこいしのサードアイがチラリと見えたので、なんとなく見てみるとサードアイが開き始めた。

しかしその瞳は濁っているのはいつもと変わらないのだが、今の瞳は白目の部分がほとんど真っ赤に染まって充血していた。だが夜見はそのサードアイにそっと触れ始めた。

 

夜見「こいしさん、大丈夫か?この目、痛くないのか?」

 

こいし「はぁ、はぁ、はぁ」

 

夜見「...こいしさん?」

 

するとこいしが再び過呼吸になり始めたので夜見は心配して頭を撫でていたのだが、こいしの過呼吸の間隔は短くなる一方で胸が苦しいのか胸を押さえ始めた。そこで夜見はただ事ではないと察して急いでこいしを起き上がらせ、自分も起き上がるとこいしの背中を擦りながら落ち着かせようとした。

 

夜見「こ、こいしさん!?大丈夫か!?」

 

こいし「寒い...痛い...苦しいよ...お兄ちゃん...」

 

夜見「なっ!?ちょっと待ってろ!今さとりさんを連れてくる!」

 

そして夜見はベッドから立ち上がろうとしたが、その前に何故か苦しんでいるこいしが夜見の首に腕を回して抱きついてきた。

 

夜見「は!?何してるんだ、こいしさん!?」

 

こいし「嫌だ、行かないで...お兄ちゃん、苦しいの」

 

夜見「苦しいからさとりさんを呼んでこようとしてるんだろ!なのに行かないでっておかしいだろ!」

 

こいし「お兄ちゃんとこうしてた方が苦しいのが和らぐの お兄ちゃんが癒してくれるの」

 

夜見「だから何を言っ[チュッ]なっ!?何してるんだ!」

 

するとこいしは再び夜見の頬にキスをしてきた。そしてこいしは夜見にこんなことを言ってきた。

 

こいし「足りない...お兄ちゃん、足りないの」

 

夜見「何を言って[チュッ]...こいしさん?」

 

こいし「ぐすっ 足りない ひぐっ 足りない、お兄ちゃん」

 

するとこいしは急に涙を流し始め、そのまま夜見の頬に何度もキスをしてきた。そして夜見はこいしの体が震えていることに気が付いた。

 

こいし「ぐすっ ひぐっ 足りない、お兄ちゃん ぐすっ 足りないよ、お兄ちゃん」

 

夜見(そうか、こいしさん...)

 

そして夜見はこいしが苦しんでいる原因を理解すると、夜見はそっとこいしのことを抱き締めた。

 

夜見「こいしさん、寂しかったんだな 時間があればいつも一緒にいたのに、今日は急に空さんと人里に行っちゃったから一緒にいる時間が少なくて寂しかったんだな」

 

こいし「うん、寂しかった ずっとお兄ちゃんに会いたいって、お話ししたいって思ってた でも、今日お兄ちゃんは私を残してお空と...お空と...お出掛け...して...」

 

こいしは再び過呼吸になり始めたと同時にバタンッと部屋の扉が開かれた。するとそこには何故か怒りの表情をしたさとりがいた。

 

夜見「...さとりさん、どうした?」

 

さとり「こいし...あなた...」

 

こいし「...お姉ちゃん」

 

するとさとりは夜見とこいしに近付いていくと、こいしの腕を掴んで夜見から無理矢理引き剥がそうとしてどこかへ連れていこうとした。

 

さとり「こいし!来なさい!」

 

夜見「お、おい?さとりさん?」

 

しかしこいしは両腕で夜見をしっかり抱き締めて抵抗した。

 

こいし「嫌だ!お兄ちゃんといたい!」

 

さとり「ふざけないで!早く来なさい!」

 

夜見「おい、さとりさん?急にどうしたんだよ?」

 

さとり「黒夜さんには関係ありません こいし!さっさと来なさい!」

 

そしてさとりが力を込めてこいしの腕を引っ張ると夜見から引き剥がされて、こいしはさとりに連れていかれようとしていた。しかしこいしは抵抗して夜見に助けを求めて片腕を伸ばしていた。

 

こいし「やだ!お兄ちゃん!」

 

夜見「さとりさん、待ってくれ」

 

そして夜見はベッドから降りるとさとりが扉を開けた瞬間に肩を掴んで止めた。するとこいしは一瞬の隙をついてさとりの掴んでいた手を振りほどくと夜見に抱き付いてきた。

そしてさとりが振り返ると真剣な顔で夜見に向かってこう質問をしてきた。

 

さとり「こいしが今どんな状態かわかってるんですか?」

 

夜見「わかってる わかってるから止めてるんだ」

 

夜見がそう言うとさとりはこんなことを聞いてきた。

 

さとり「...じゃあ聞きますが、こいしは今どんな状態なのですか?」

 

夜見「そんなの、寂しかったから俺に甘えてきてるんだろ?」

 

するとさとりは何故か呆れたようにため息をついた。

 

さとり「やっぱり、わかってないんですね 前々からそうだとは思っていましたが」

 

そして夜見は呆れているさとりに質問をした。

 

夜見「...じゃあ、何が違うんだよ」

 

さとり「じゃあ逆に聞きますが、何故黒夜さんに甘えてきてるんですか?」

 

夜見「そんなの...決まっ

 

すると夜見はそこであることに気が付いた。

 

夜見(...あれ?なんで俺なんだ?寂しかったなら別にさとりさんに甘えたっていいはず...なのに、なんで俺じゃないと駄目なんだ?)

 

するとさとりは夜見が気付いたことを察してこう言ってきた。

 

さとり「わかりましたか?こいしの気持ちは黒夜さんの思っている感情じゃないんです そして私はそのこいしの気持ちを和らげようとしてるんです」

 

しかしさとりがそう言っても夜見は食い下がった。

 

夜見「...だとしても、こいしさんは嫌がってただろ こいしさんが嫌がるなら、俺は他の方法でこいしさんの気持ちを和らげてやりたい」

 

さとり「...何か考えがあって言ってるんですよね?」

 

夜見「あぁ、考え無しに俺がそんなことを言うとでも思うか?」

 

さとり「ちなみに、それはどんな考えなんですか?」

 

さとりが夜見の言っている考えを聞いてみることにすると、夜見は少し目を反らして動揺していた。

 

夜見「え、あ~、それはちょっと...こいしさん、ちょっとベッドで待っててな」

 

すると夜見はこいしを抱き上げるとこいしをベッドの上に座らせ、さとりの方へ近付くとさとりに耳打ちをして自分の考えを話すとさとりは夜見にこう言ってきた。

 

さとり「...わかりました、その方法は今回だけ許しましょう でも、間違えてでも変なことをした場合...わかってますよね?」

 

夜見「わかってるよ ていうかそもそも俺がそんなことをする人じゃないことは知ってるだろ?」

 

さとり「一応ですよ それじゃあ、私は寝ますのであまり夜更かししないでくださいよ」

 

そう言ってさとりは扉を閉めて自分の部屋へと戻っていった。そして夜見は振り返ってベッドに入ると、少し横に寄って人が1人余裕で入れそうなスペースを作るとこいしにこう言った。

 

夜見「ほら、こいしさん 今日は一緒に寝よう」

 

こいし「え...本当?」

 

夜見「本当だ ほら、早く入って」

 

こいし「...うん」

 

そしてこいしは夜見の布団に入ると夜見に抱き付いてきたので夜見もこいしのことを軽く抱き締めた。しかしこいしの体はまだ震えているので、夜見はこいしの頭をゆっくりと撫でるとこいしが話しかけてきた。

 

こいし「...ねぇ、お兄ちゃん」

 

夜見「どうした?こいしさん」

 

こいし「大好き」

 

そう言ってこいしは急に顔を近付けてきたが夜見は再び、鼻先が触れるか触れないかのギリギリの距離でこいしの頬に手を添えて止めた。

 

夜見「おっと こいしさん、駄目だろ?そんなことしたら」

 

夜見がそう注意してこいしの顔を少し下げさせると、こいしは目に少し涙を浮かべとても悲しそうな顔をして夜見にこう言った。

 

こいし「...お兄ちゃんは嫌なの?私とキスするの」

 

すると夜見は首を横に振った。

 

夜見「...違う、嫌とかそういうのじゃなくて、そういうのは大切な人が出来たときに取っておくもんだ そんなやたらめったらにしたら駄目だ、わかったか?」

 

こいし「...でも!私にとってはお兄ちゃんは大切で、大好きな人だよ!?」

 

夜見「...そうか、ありがとうな」

 

すると夜見は頬に触れていた片手を動かしてそっとこいしの目を覆った。そして夜見はこいしにこう言った。

 

夜見「じゃあ、今回だけ特別にいいことをしてやる」

 

こいし「え...お兄ちゃん?何も見えないよ?」

 

夜見「じっとして」

 

こいし「う、うん」

 

そしてこいしは夜見に目を覆われていたが目を瞑ってしばらく待つと、こいしの唇に何かが触れた。すると夜見はこいしの目を覆った手をどかしたのでこいしが目を開けると、こいしが目にしたのは自分の唇に手の甲を当てている夜見だった。

 

こいし「ぷはっ...お兄ちゃん、これがいいこと?」

 

夜見「あぁ、そうだが...不満か?」

 

こいし「...これの、何がいいことなの?」

 

夜見「あぁ、実は俺、こいしさんに触れさせる前に自分の口で触れたんだ これでわかるだろ?何をしたか」

 

夜見がそう言ったがこいしは一瞬何がなんだかわからなかった。しかしこいしは自分の指で唇に触れると夜見の言っていることを理解した。

 

こいし「間接...キス?」

 

夜見「あぁ、俺はこれぐらいしかしてやれないけどな」

 

するとこいしは満面の笑みを浮かべて嬉しそうな様子だった。

 

こいし「え、えへへ♪お兄ちゃんの間接、キス えへへ」

 

するとこいしは夜見の手を両手で掴んで再び、唇が触れていた場所に自分の唇を当て始めた。

 

こいし「ん、ぷはっ はぁ、はぁ...ん!」

 

そしてこいしは何回か夜見の手の甲に自分の唇を当てていると、満足そうな表情を浮かべて夜見の手を放して話しかけてきた。

 

こいし「ぷはっ えへ、えへへ♪お兄ちゃんの間接キス、美味しかった」

 

すると夜見はこいしの目を真っ直ぐ見て優しい笑みを浮かべ、こいしの頭を撫でながらこう言った。

 

夜見「それじゃあこいしさん、夜遅い時間だから早く寝ようか」

 

こいし「うん!ねぇねぇ、お兄ちゃん 手、こうして繋いだままでいい?」

 

こいしはそう言って夜見の手を繋いできたが、その繋ぎ方はよくカップルなどがする恋人繋ぎだった。そして夜見はこいしの繋いできた手をぎゅっと握るとこいしに向かってこう言った。

 

夜見「あぁ、いいぞ おやすみ、こいしさん」

 

こいし「うん、おやすみ、お兄ちゃん」

 

すると夜見はもう片腕をこいしの背に回して抱き寄せると、こいしは空いてる片手で夜見の胸元辺りをしっかり掴んで目を瞑った。

しばらくするとこいしはゆっくりと寝息をたて始めて、完全に寝てしまった。そしてその様子を見ていた夜見はこいしの頭を軽く撫でた。

 

夜見(よし、ちゃんと寝たな さてと俺もそろそろ寝るかな)

 

そして夜見も眠ろうとするとこいしのサードアイが視界に入ってきた。しかしそのサードアイの充血は直っており、元の濁ったサードアイになっていた。

その様子を見て夜見は良かったと思うと同時に、夜見はずっと疑問に感じて考えていたことがあった。

 

夜見(それにしても、どうしてこいしさんは俺に甘えたがるんだ?それにさとりさんは思ってる感情とは違うとも言ってたし...一体なんなんだ?)

 

そんなことを夜見はずっと考えていたが、夜遅い時間だからか眠気が来てしまい夜見はそのまま眠りについてしまった。




どうも、お風呂場の蓋です。
今回は寂しがり屋なこいしが夜見にいつも以上に甘えてくるお話でした。
小さな子が甘えてきたりする行動って傍から見たら可愛い行動ですが、実際甘えられるのってどうなんでしょうか?やっぱり面倒な事が多いんでしょうかね?
よければ、また次回も見てください。
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