心を閉ざした少年と少女   作:お風呂場の蓋

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第29話 半人半霊の少女剣士

夜見(ここが冥界...ねぇ)

 

夜見は異変の犯人がいるとされる空に浮いていた穴の中に入ると地面に降り立った。そして周りを見渡すと空は夜空のように綺麗な光景、目の前には数えたらきりがない石階段と等間隔に石階段の両脇に置かれている灯籠あった。

 

そして夜見は血の翼を空中に分解すると目の前にある石階段を徒歩で上り始めた。夜見は血の翼を使えば徒歩より速く上れることはちゃんと理解しているのだが、夜見は出来る限りなら能力の使用は避けたいため階段は徒歩で上っていった。

 

夜見(さてと、明らかに1000段は上ったが...先はまだまだあるな...)

 

しばらく夜見は徒歩で階段を上って明らかに1000段以上は上ったはずなのだが、目の前にはそれの倍以上の階段が続いていた。

すると夜見はその場で軽く屈伸をして少し腰を落としたかと思うと、階段を全力で走って上り始めた。そして夜見が階段を走って上り始めて5分程経ったが、夜見のスピードは一切落ちている様子はなかった。

 

夜見(たまには運動もしないとな それにしても、まだまだ体力も衰えてないもんだな)

 

そして夜見は階段を走り始めてから15分程経つと息が切れることなく階段の終わりを迎えた。すると夜見の目の前には1本の石畳の道、両脇に等間隔に置かれた灯籠と桜の木という光景が広がっていた。

桜の木はどれも満開で桜吹雪が舞っており、夜見はその光景に一瞬魅了されてしまった。

 

夜見(あぁ、見惚れてる場合じゃない さっさと先に進んで異変の犯人を説得させないとな)

 

そして夜見は石畳の道をゆっくりと進んで周りを見渡しながら今回の異変に関して考え始めた。

 

夜見(今回の異変、犯人は幻想郷の春を冥界に集めてたらしいが一体何のために?春を集めて何をしたいんだ?)

 

そして夜見は石畳の道の先の方を見ると、うっすらと何かが見えてきた。遠くからは夜空に紛れてて確認することが出来なかったが、それは近くにある桜の木と比べ物にならないほどの大きな木があり、周りに白い何かがふわふわと漂っていた。

その木をよく見てみると幻想郷から流れてきた桜の花びらがその木に集まっていって桜の(つぼみ)をつけていた。おそらく今回の異変の犯人はあの大きな木に桜の花を咲かせたくて異変を起こしたのだろう。

 

夜見(なるほどね、あれを咲かせるために異変をってところか 確かに桜が咲いたら綺麗になるんだろうが、こっちの事情を考えて欲しいもんだな)

 

そんなことを夜見は思っていると自分の背後からカチャっという音がすると同時に声が聞こえてきた。

 

?「人間、ここは冥界だ 人間の立ち入る場所では無い さっさと立ち去れ」

 

そして夜見は立ち止まり、ゆっくりと振り向くとそこには刀身が長い刀をこちらに向けた1人の少女がいた。

 

その少女は白髪のボブカットで頭に黒いリボンを付けていた。服装は白いシャツの上に緑色のベストに緑色のスカートを着ており胸元には黒い蝶ネクタイを、ベストの左胸の方には白い魂のようなマークが入っていた。

 

そしてその少女は柄に桜の模様が描かれ柄頭に白い房がついている刀身が白い刀をこちらに向けており、腰の後ろにはもう1本の持ち手が黒い短刀と1輪の花が先端に挿してある鞘を身に付けていた。おそらく鞘だけの方は今、少女が持っている刀の鞘なのだろう。

しかしそんな刀より目に真っ先に入るのはその少女の周りを飛んでいる白い魂のような物だった。

 

夜見(人間...じゃないな 冥界だから魂...って訳でもなさそうだ)

 

?「何をしている?さっさと立ち去れ」

 

そして夜見は腰に挿してある刀を右手を添えると同時にその少女は向けていた刀を両手で持って1歩踏み込んで縦に刀を振ってきた。しかし夜見は後ろへ跳んで刀を躱すと同時に刀を引き抜くと、少女は一瞬眉を細めた。

 

?「その刀...いや、ただの偽物か」

 

夜見(刀が偽物?何を言ってるんだ?)

 

夜見は少女の言葉に疑問を感じているとその少女はこちらに走ってきて刀を上から振り下ろして来たので夜見は刀の峰に左手を添えて刀で防いだが...

 

ガキィン

 

夜見(なっ!?重い!)

 

その少女の振り下ろしてきた刀の威力はその少女の腕の細さでは出せるとは思えない重さだったのだ。そして少女は更に力を込めてくるが夜見は左手で刀の峰を押して無理矢理少女を後ろに押し戻して距離を離すが、少女はすぐに距離を詰めてきて刀で再び上から斬りかかってきた。

 

ガキィン

 

そして夜見は再び左手を刀の峰に添えて防ぐとその少女は夜見にこんなことを言ってきた。

 

?「その刀、偽物の割には中々斬れないんだな」

 

夜見(なんなんだよ、偽物って どういうことだ?)

 

すると少女は持っている刀の刃を夜見の持っている刀の上で滑らせて刀を振り下ろしきるとすぐさま刀を下から振り上げてきた。それを夜見はバグ転で回避をしたが、刀が仮面に掠ってしまい当たった部分がポロリと少し欠けてしまった。

その仮面が欠ける様子を見て夜見はあることに気付き少女に問いかけた。

 

夜見「お前、俺を本気で斬り捨てるつもりだったな?」

 

?「あぁ、そうだ」

 

少女は素っ気なく返答をすると夜見は更に問いかけた。

 

夜見「...弾幕ごっこのルールを知らないのか?」

 

?「そんなもの、知っているに決まってるだろう!」

 

すると少女は返答をすると同時に距離を詰めて刀で斬りかかってきた。そして夜見は少女の振る刀を身を反らしたり、刀で受け流して攻撃に当たらないようにしながら少女にあることを言った。

 

夜見「じゃあわかっているはずだ 武器で殺傷能力があるまま攻撃するのはルール違反だと」

 

?「それがどうした!」 

 

そして少女は刀で突きを放ってくると夜見は刀の刃の側面で受け止めた。しかし衝撃が強すぎたせいか夜見は後ろに5m程ずり下がり刀の刃の側面が欠けてしまったが、その少女は欠けた刀を見て驚いた表情をしていた。

夜見は不思議に思って刀の欠けた部分を見てみるとあり得ないことが起きていた。

 

夜見(刀が...勝手に修復されている?)

 

夜見は刀の欠けた部分を見てみると刀の刃が勝手に修復され始めていたのだ。そして刀は10秒もしない内に元の状態に戻った。

 

夜見(この刀、前の異変の時にフランドールさんが折れないことを不思議に思ってたけど、まさかこんな刀だったとはな)

 

夜見はその刀に対して不思議には思っていると、少女は驚いた様子でこんなことを言ってきた。

 

?「な、何故!?何故お前が本物の[夜刀(やとう) 闇夜]を持っているんだ!?」

 

夜見(夜刀?闇夜?この刀のことか?)

 

夜見は少女の言っていることに不思議に思っていると、少女は続けてこんなことを言い始めた。

 

?「その刀は強大な(よこしま)な心を持っていないと刀を引き抜けないはず!お前は本当に人間なのか!?」

 

夜見(邪な心、ねぇ...)

 

夜見には邪な心ということに対して思い当たる節があったが、それより先は考えないようにすると夜見はゆっくりと口を開いた。

 

夜見「俺は黒夜夜見、れっきとした人間だ お前は?」

 

夜見は自己紹介をして少女に名前を聞くと少女はすぐに冷静になり、自己紹介を始めた。

 

?「私は魂魄(こんぱく)妖夢(ようむ)、半人半霊の剣士だ」

 

夜見「妖夢さんだな」

 

そしてお互いに自己紹介が済んだとことで夜見は刀を鞘に納めて敵意が無いことを形で表しながら妖夢にある話を持ちかけた。

 

夜見「妖夢さん、さっそくで悪いが1つ言っておきたいことがあるんだ」

 

妖夢「なんだ?」

 

夜見「俺は別に争い事をしたくてここにやって来た訳じゃないんだ 俺はただ異変を止めてくれないか説得しに来たんだ」

 

夜見がそう言うと妖夢は突然笑い出したかと思うと妖夢はこんなことを言ってきた。

 

妖夢「説得?随分と甘い考えをしてきたな 異変を止めて欲しいのなら力ずくで止めてみたらどうだ?」

 

夜見(やっぱり、争い事は避けられないのか)

 

夜見は争い事を避けられないことに対してため息をつくと、真っ直ぐ妖夢の方を見て刀の柄を右手で握って腰を落として居合の構えを取った。

 

妖夢「居合か さっきからどんなものかと思って見ていたが、刀の持ち方もまともに出来ない素人が果たしてどこまで出来るかな!」

 

そして夜見と妖夢が同時に走り出してお互いが刀で斬れる距離に入った瞬間、妖夢は刀を両手で左から斜めに振り下ろしてきた。それに対して夜見は居合で妖夢の刀に夜刀を当てると高い金属音がしてお互いの刀が止まった。

 

妖夢「剣術としては成り立ってはいないが、中々やるな」

 

夜見「あいにく、型に合わせるのは性に合わないんだ」

 

妖夢「なるほど、我流の剣術というわけか」

 

夜見「まぁ、そうだな」

 

そして夜見は夜刀を妖夢の刀の刃を滑らせながら後ろに跳ぶと空中で夜刀を両手で縦に降って斬撃の弾幕を放ったが、妖夢は刀を片手で右から水平に振って軽々と斬撃の弾幕を消した。

 

妖夢「弱い斬撃だな 斬撃というのはこういうものだ!」

 

そして妖夢は刀を腰の近くまで持っていくと居合のように構え、刀を一気に振り抜き夜見に向かって斬撃を飛ばしてきた。しかしその斬撃を夜見は避けようとせずにその場に立っていた。

そしてその斬撃は夜見の仮面の頬辺りを少し掠めたのだが、その掠めた部分はとても鋭利なもので切り裂かれたような傷がついていた。すると妖夢は夜見が斬撃を避けなかった行動に感心していた。

 

妖夢「ほぅ?わざと外したが、それをわかってて避けなかったな」

 

夜見「あぁ、俺を狙ってたなら俺に真っ直ぐ目が向いてるはずだからな」

 

妖夢「そこまで見抜いていたとは...素人と思って少し侮っていたが、随分と楽しめそうだ!」

 

そして妖夢は夜見との距離を詰めると勢いに乗った突きを放ってきたが夜見はそれを少し左に跳びながら体を回転させて躱すと、その回転を利用して夜刀で妖夢に斬りかかった。すると夜刀は妖夢の脇腹に入り衣服は斬れずとも体には斬られたような痛みを感じて少し怯んだ。

その一瞬の隙を夜見は見逃さず夜刀の斬り上げで追撃をする瞬間に妖夢はこちらの方を向いて刀で防ごうとしたが防御が間に合わず、夜見の追撃をまともに正面から受けてしまった。

 

妖夢「ぐっ!?」

 

すると夜見はそのまま流れるように両手で夜刀を振り下ろすと妖夢はそれを後ろに跳んで躱すが、夜見は躱されることを予測していたので斬撃の弾幕を飛ばしていた。そして妖夢は飛んできた斬撃の弾幕を刀で斬り落としたが、夜見が斬撃の弾幕の陰から飛び出てきて妖夢に突きを放った。

 

妖夢「なめるな!」

 

すると妖夢は夜見の突きを刀の刃を上を滑らせて軌道を逸らし夜見の腹に蹴りを入れると、夜見の体はくの字に曲がってしまった。そこに追撃で妖夢は夜見の下がった頭に回し蹴りを入れて、夜見が仰向けに地面に倒れ込むと妖夢は刀を夜見の首に突き刺すように刀を両手で逆手持ちにして振り下ろした。

しかし夜見は間一髪のところで横に転がって躱わして距離を取ると妖夢の刀は石畳に突き刺さっていた。

 

夜見(あ、危なかった 少しでも遅かったら死んでたぞ)

 

そして妖夢は刀を引き抜くと夜見に刀の先端を向けてこう言った。

 

妖夢「...次は外さない」

 

すると夜見は刀の峰を肩に乗せてやれやれといった様子で妖夢にこう返した。

 

夜見「そうか...まぁ、次があるといいな」

 

妖夢「なめるな!」

 

そして妖夢は夜見との距離を詰めて斬りかかるが容易くに躱わされ流れるように刀を振るって反撃の隙を与えないようにはするが、夜見は反撃をしないだけで妖夢の振るっている刀をすべて躱していたので妖夢は若干焦りを感じていた。

 

妖夢(くっ!何故だ!何故当たらない!?)

 

夜見「どうした?余裕が無いように見えるが、もう限界か?」

 

妖夢「そんな訳ないだろう!ここからだ!」

 

そして夜見がしばらく妖夢の刀を避けていると今度は夜刀で妖夢の刀を受け流し始めた。妖夢は必死に夜見を斬るために刀を振るうが、何故か夜見の夜刀で全て受け流されてしまった。

 

妖夢(何故!何故当たらないんだ!?こいつ...一体何を!?)

 

夜見「...表情から察するに、なんで当たらないか疑問に思ってるようだな」

 

妖夢「くっ!黙れ!」

 

夜見「そんなんじゃいつまで経っても終わんないぞ?」

 

妖夢(何故当たらない!?動きがすべて読まれてる?いや、そんなことをただの人間が出来るわけがない!)

 

そして妖夢は渾身の突きを放ったが夜見はそれを姿勢を低くして躱わすと妖夢のみぞおちに肘打ちをした。

 

妖夢「かはっ!?」

 

そして妖夢は反射的にみぞおちを両手で押さえて完全なる隙を作ったところに夜見は妖夢が手を重ねて押さえているみぞおちに目掛けて蹴りを入れた。しかし妖夢のみぞおちに蹴りの衝撃は入らなかったものの妖夢は後ろに3m程飛ばされた。

 

妖夢「ぐあっ!?ぐっ!?うぅ...」

 

そしてしばらくすると妖夢はみぞおちの痛みが引いたのか手で押さえるのを止めてゆっくりと立ち上がると夜見は妖夢にこんなことを言った。

 

夜見「挑発に随分軽く乗ったが、少しは冷静になったか?」

 

すると妖夢は歯を食いしばりながら夜見の言ったことについて考え始めた。

 

妖夢(...悔しいが、確かにあいつの言う通りだ 私は挑発に乗った上に攻撃が当たらなくて焦ったんだ)

 

そして妖夢は夜見の方を真っ直ぐ見て刀を構えてこう返した。

 

妖夢「あぁ、お陰でな」

 

夜見「そうか それじゃあ、今度はこっちから行かせてもらう」

 

すると夜見は妖夢に向かって走り出して距離を詰めて妖夢との距離が1m辺りの所で跳ぶと、夜刀を持った右手を全力で振りかぶって妖夢に斬りつけた。

 

妖夢「あまい!」

 

夜見「くっ!」

 

しかし妖夢は下から一閃して夜見の夜刀を上空へ弾き飛ばした。そして弾かれた夜刀は妖夢の後ろの方へ飛んでいき石畳に突き刺さった。

 

妖夢「隙あり!」

 

そして妖夢は宙にいる夜見に突きを放つが、夜見は刀の峰に手を置いて腕の力で無理矢理、妖夢の上から後ろへ回ると急いで石畳に突き刺さった夜刀を回収した。

そして夜見は振り向き様に夜刀で斬撃を放つと妖夢は斬撃を斬り下ろした。

 

夜見(埒が空かないな...さて、どうしたものか)

 

妖夢(あいつ、腕力で無理矢理後ろに回った!?しかし、何故攻撃はあんなに軽いんだ?)

 

すると夜見は刀を鞘にしまうと再び居合の構えを取ると刀を引き抜いて斬撃を飛ばした。そして妖夢は斬撃を斬り払おうとしたが妖夢の刀は斬撃の間から火花を散らしていた。

 

妖夢「なっ!?お、重い!?」

 

その斬撃は夜見が最初に放った斬撃とは段違いの威力で、その威力は妖夢の放った斬撃と同等、もしくはそれ以上の威力だった。そして妖夢は刀に力を込めると斬撃を斬り払えたが妖夢は疲れたように息切れをしていた。

 

妖夢「はぁ はぁ な、なんて威力...お前まさか、手加減していたのか?」

 

夜見「手加減?まぁ...そう言えばそうなる、違うと言えば違う」

 

妖夢「...どの道一筋縄ではいかないということか ならば!私も手加減はしないぞ!」

 

すると妖夢は刀を何度も振るって無数の斬撃を放ってきたので夜見はその斬撃を身のこなしで躱したり刀で受け流していたが、妖夢は夜見がやったように斬撃の陰から突然現れて顔に斬りかかってきた。

それを夜見は後ろへ跳んで避けたが、間に合わなかったのか夜見のフードと仮面に切り傷が出来てしまった。

 

妖夢「まだまだ!」

 

そして妖夢は夜見との距離を息つく暇もなく詰めると何回も夜見を斬ろうと刀を振った。しかし妖夢の刀を振るう速度は先程と比べると段違いに速く、身のこなしでは躱せないと判断した夜見は妖夢の刀をすべて夜刀で受け止めていた。

 

妖夢(くっ!全て防がれる、ならば!)

 

そして妖夢が攻撃を止めて後ろへ跳んで一旦離れたかと思うと懐からスペルカードを取り出した。

 

妖夢「[幽鬼剣 妖童餓鬼の断食]!」

 

妖夢がスペルカードを発動させると夜見に当たらない距離にも関わらず刀を何度も高速で振るいながら左に5m程の距離を一瞬で移動をした。夜見はそのスペルカードに対して疑問を浮かべていたが一応身構えていると、妖夢が通ったであろう場所からいきなり無数の斬撃が弧を描いて放たれた。

 

夜見「くっ!?まずい!」

 

そして夜見はその無数の斬撃を見て刀で斬撃を受け流し始めるが一撃一撃の斬撃が重く、しかも斬撃と斬撃の間は人が通れる程の隙間は一切無く避けることも出来ないので夜見にそのスペルカードを被弾しないで攻略するのは不可能だった。

 

夜見「ぐっ!?がはっ!」

 

そして結局斬撃が通り過ぎる頃には防いだ斬撃は数えられる程度の数だけで、夜見の格好は切り傷だらけで腕を伝って血がポタポタの流れていた。

すると妖夢は再び刀を高速で振って今度は右に5m程の距離を一瞬で移動をして、先程と同じように無数の斬撃が放たれた。

 

夜見(これ以上受けたらまずい!)

 

そう思った夜見は空気中にある血を集めると夜見を囲むように壁を作って妖夢の斬撃を全て防いだ。そして斬撃が過ぎ去ったところで血を空気中に分解すると妖夢は不思議そうな顔をしていた。

 

妖夢「能力持ち?それに、傷もすべて塞がっている...」

 

夜見(よ、良かった この訳のわからない体質のお陰で浅い傷程度ならすぐに塞がる)

 

妖夢「じゃあ、こっちの方が効率的だな [魂符 幽明の苦輪]」

 

そして妖夢が次のスペルカードを取り出して発動させると妖夢の近くにいた白い魂ような物が形を変えたかと思うと、その物体は妖夢と瓜二つの姿になった。

そして妖夢はその妖夢となった物体に腰に挿してあった短刀を渡すと2人で刀をこちらに構えた。

 

妖夢「さぁ、行くぞ!」

 

妖夢がそう言うと2人は同時に夜見に向かってきた。すると先に長い刀を持った方の妖夢が横に斬りかかって来たので夜見はそれを防いだが、その隙を狙って短刀を持った妖夢が夜見の脇腹に斬りかかろうとしていたので夜見は短刀の刃の側面を足で蹴り上げ軌道をずらすと夜見は後ろに跳んで距離を取った。

しかし夜見が後ろに跳ぶと長い刀を持った妖夢は刀をそのまま振りきって斬撃を飛ばしてきたので夜見は刀を斬撃に押し当てて腕で力で自分の体を飛ばし、更に距離を取った。

 

夜見(なるほど、スペルカードは弾幕だけじゃないのか 自立行動は少し難しいだろうけど、せめてこれくらいは出来るな)

 

そして夜見はポケットから霊夢から貰った白紙のスペルカードを取り出して気を送り込むと新たなスペルカードを作り出した。

 

夜見「[血作(けっさく) 血呪人(けつじゅにん)]」

 

夜見はスペルカードを発動させると夜見の隣に空気中の血が集まって夜見と同じ形をした赤黒い血の塊、血呪人が出来上がった。そしてその血呪人は腕や足、首をガクガクと不安定に動いてたかをしていたかと思うと、その血呪人の右手から刀が出てきて血の刀が握られた。

 

夜見「さて、これで2対2だ」

 

妖夢「随分と面白いことを考えるな!」

 

そう言って妖夢達が向かってくるが短刀を持った妖夢の方に夜見の作った血呪人があり得ないスピードで体当たりで突っ込んでいった。

 

ドカッ ズサァ

 

妖夢「なっ!?なんて早さ!」

 

そして短刀を持った妖夢が5m程後ろまで飛ばされて仰向けに倒れると、血呪人が上に乗って血の刀を振り下ろすと短刀で防ぐが、血呪人は狂ったように立て続けに何度も何度も反撃の隙を与えないように刀を振り下ろし続けた。

 

妖夢(くそ!あのままだといつかは体力が無くなってやられてしまう!)

 

夜見「よそ見をしている余裕なんてあるのか」

 

妖夢「なっ!?くそ!」

 

妖夢が振り返るとそこには今にも妖夢を斬り上げようとしている夜見がいたので妖夢は咄嗟に刀を横に構えて防ぐが、妖夢の手から刀は離れなかったものの刀が弾かれてしまい妖夢はそのまま斬り飛ばされてしまった。

 

妖夢「ぐあっ!」

 

夜見「[斬弾 弐斬撃]」

 

そして夜見はスペルカードを発動させて斬り飛ばされた妖夢に向かって斬撃を2発飛ばすとその斬撃は2発とも命中して妖夢は更に飛ばされた。

 

ドカッ

 

妖夢「ぐっ!?な、なんだ?」

 

そして妖夢は飛ばされると何かが背中に当たったので何が当たったのかを確認するために後ろを振り向くとそこには夜見が作った血呪人がうつ伏せに倒れていてピクリとも動いていなかった。

 

妖夢(今がチャンス!)

 

すると妖夢は急いで立ち上がって血呪人の所に走って血呪人の背中を片足で踏みつけると、妖夢は刀を両手で逆手持ちにして思いっきり血呪人の首に突き刺すと頭がポロリと取れた。

 

妖夢(よし、これで再び2対1!相手が不利な状態だ!)

 

そして妖夢は振り返って夜見の方に走っていくと何故か短刀を持った妖夢が立ち上がると妖夢の背中の方へ飛び込んだ。

 

妖夢「は!?何をして

 

ズシャア

 

妖夢「なっ!?馬鹿な!?」

 

妖夢が振り返るとそこには頭の無い血呪人が短刀を持った妖夢を肩から腰にかけて血の刀で斬っている光景があった。

そして斬られた短刀を持った妖夢はスペルカードの効果が切れたのか元の白い魂のような姿に戻ってしまった。

 

妖夢「まだ動くのか!この!」

 

妖夢は頭の無い血呪人を斬ろうとしたが次の瞬間に血呪人は液体の血となって地面にバシャッと音を立てて崩れ、血は空中に分解された。そして妖夢は短刀を拾い上げて鞘に納めると後ろで夜見はこんなことを言い出した。

 

夜見「あぁ、もう少し動かせると思ったんだがやっぱり無理だったか」

 

妖夢「なんなんだ、さっきのスペルカードは!?どういうことだ!」

 

そして妖夢は振り返りながらさっきの血呪人のスペルカードについて聞くと夜見は説明し始めた。

 

夜見「あれはただの血の人形だ 妖夢さんのスペルカードみたいに自立行動は出来ないから動きを自分でイメージしないといけないが、利点はどこかが壊されたとしても少しだけ動かせる」

 

妖夢(つまりは私が油断したところを狙って人形を動かして倒そうとしていたのか!? しかもあいつ、私の動きと人形の動き、2つの動きを考えながら自分でも動いて...)

 

妖夢は夜見の行動力について色々考えていたが、夜見は妖夢に向かってこんなことを言った。

 

夜見「さて、これでまた1対1だ それに刀を2本持ってるところを見ると、妖夢さんは2刀流なんだろ?出し惜しみをしている暇なんて無いが...どうする?」

 

夜見がそう言うと妖夢は右手でゆっくりと短刀を引き抜くと妖夢は目を瞑って大きく深呼吸を1回すると目を見開いて夜見を正面からしっかりと見て構えると夜見にこう言った。

 

妖夢「私の本当の剣術を見せてやる 死んでも後悔するんじゃないぞ?」

 

妖夢がそう言うと夜見は夜刀を右手で構えると妖夢に対してこう言った。

 

夜見「あいにく俺には死ねない理由があるんだ だから勝たせてもらう」

 

そして夜見と妖夢は互いにしっかりと見合って相手が出ると同時に出ようとしていると、妖夢は何かに気付いたかと思うと妖夢は刀を振って妖夢に飛んできたものを斬り落とした。

 

キィン カランカラン

 

妖夢「...これは?」

 

夜見「...ナイフ?」

 

妖夢が斬り落とした物を見てみるとそこには20cm程のナイフが2本落ちていた。そして夜見の後ろから聞き覚えのある声でこう聞こえてきた。

 

?「[空虚 インフレーションスクウェア]」

 

すると妖夢の周りに青いナイフの弾幕がまんべんなく飛び、妖夢を中心に赤いナイフの弾幕が迫ってくると妖夢は2本の刀で弾き落とし始めた。

 

?「大丈夫ですか?黒夜様」

 

夜見「...咲夜さんか」

 

夜見が振り返るとそこには咲夜が立っておりナイフを構えながら夜見にこんなことを言ってきた。

 

咲夜「手伝いますよ、黒夜様」

 

夜見「...いや、いい 俺1人でやる」

 

そう言って夜見は妖夢の方を向くが咲夜は笑顔でこう言った。

 

咲夜「いえいえ、手伝いますよ」

 

そう言って咲夜がナイフを妖夢に向かって投げたが夜見は夜刀を振って斬撃を飛ばすと、咲夜の投げたナイフはおろか、妖夢の周りに飛び回っているナイフも何十本か弾き落とした。

 

咲夜「...どういうつもりですか?黒夜様」

 

夜見「言っただろ 俺1人でやるって」

 

咲夜「でも、2人の方が手際よく[カチャ]

 

すると夜見は咲夜に夜刀の刃先を向けると夜見はドスの利いた声でこう言った。

 

夜見「俺1人でやるって言ってるんだ 邪魔すんじゃねえよ

 

ゾクッ

 

すると咲夜は夜見の様子に殺気を感じ、冷や汗をかいて指先すらまともに動かせない状況になった。

 

咲夜(な、何、この尋常ではない殺気は!?)

 

そして咲夜が動けない状況でいる内に妖夢はすべてのナイフの弾幕を弾き落とすと夜見に向かってあることを言ってきた。

 

妖夢「すまないな、弾き落とすのを手伝ってもらって」

 

夜見「あぁ、礼ならいい それと、少し待っててくれ」

 

妖夢は夜見にお礼を言うと夜見は軽い返事をして殺気を鎮めて刀を下ろした。すると咲夜は腰を抜かして膝から崩れ落ちると同時に階段の方から2人の人物が姿を現した。

 

霊夢「何!?さっきの尋常じゃない殺気は!?」

 

魔理沙「大丈夫か!?って、あれ?夜影?」

 

夜見「...霊夢さんと魔理沙さんか」

 

そして霊夢と魔理沙が夜見の方へ近付いてくると霊夢は咲夜の様子を不思議に思って夜見に質問をした。

 

霊夢「このメイド...随分冷や汗をかいてるけど、あの剣士がさっきの殺気を出したの?」

 

そして夜見は霊夢の質問に対して首を横に振ると霊夢は少し不思議そうに首を傾げたが、今度は魔理沙が質問をしてきた。

 

魔理沙「なぁ、夜影 あの剣士が今回の異変の犯人ってことでいいのか?」

 

夜見「...いや、あいつは違う あの奥の木が見えるか?」

 

そして夜見は奥に見えていた大きな木を刀で指して霊夢と魔理沙はその木を見ると霊夢は頷いてあることを言った。

 

霊夢「なるほど、あの木の近くに親玉がいるって訳ね」

 

夜見「あぁ、そうだ だからそいつは霊夢さん、魔理沙さん、咲夜さんに任せる」

 

魔理沙「え?じゃあ夜影はあの剣士と戦うのか?1人より私達も戦った方が早く終わるだろ」

 

夜見「いや、俺1人で十分だ それより、早く親玉を早く倒した方がいいだろ?」

 

夜見がそう言うと霊夢は納得したように頷くと魔理沙に向かってこう言った。

 

霊夢「それもそうね 行くわよ、魔理沙」

 

魔理沙「あ!ちょっと待ってくれよ、霊夢!」

 

そして霊夢と魔理沙が飛んで奥の大きな木の方へ向かっていくと、夜見は咲夜にさっきの声とは打って変わって優しい声でこう言った。

 

夜見「ほら、咲夜さんも早く向かってくれ 頼んだぞ」

 

咲夜「え?あ、ええ、わかりました そ、それでは」

 

そう言って咲夜は立ち上がると空を飛んで霊夢と魔理沙の後を追って行った。すると妖夢が夜見に対してあることを言ってきた。

 

妖夢「よくあそこに、この異変の本当の犯人がいると気付いたな」

 

夜見「あぁ、妖夢さんが1人で出来るような規模の異変じゃないからな もっと別の人物が起こしたって考えるのが自然だ」

 

妖夢「...それもそうか」

 

夜見「まぁ、そんなことより...わかってるだろ?」

 

妖夢「あぁ、もちろん」

 

そして再び2人は向かい合って刀を構えると片方の足を後ろに下げて力を込めた。

 

妖夢「...いざ」

 

夜見「...尋常に」

 

夜見・妖夢「...勝負!」

 

そう言って夜見と妖夢は互いに刀で決着を付けるために走り出した。




どうも皆さん、お風呂場の蓋です。
今回は冥界の半人半霊の庭師、剣士である魂魄妖夢が出て、夜見の持っている刀が[夜刀 闇夜]という名前が判明しました。
夜見が夜刀を引き抜くための邪な心、そして夜見が誰の力も借りずに戦おうとする意味とは。
よければ次回も見てください。

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