心を閉ざした少年と少女   作:お風呂場の蓋

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第37話 剣術の達人と地霊殿の家計

夜見は地霊殿に帰るために血の翼で冥界の空を飛んでいたのだが、階段が見えてきた辺りで石畳の上に降りると血の翼を空気中に分解した。

そして夜見は石畳の上を歩いていると階段から1人の年老いた男性が上がってきた。

 

その男性は長い白髪を全て後ろで1本に結んでおり、長い白い髭が生えていた。服装は緑色の紋付袴(もんつきはかま)を着て腰に2本の刀を挿し、傍には妖夢と同じように白い魂のようなものが浮かんでいた。

 

そして、その男性は夜見に気付くと声をかけてあることを聞いてきた。

 

?「ん?お主、どうやって冥界に?」

 

夜見「...」

 

しかし夜見は何も答えずにそのまま歩いていると、男性は夜見の腰に携えている夜刀を目にした瞬間に目付きが変わった。そして夜見は男性が静かに殺気を放っていることに即座に気付き足を止めると、その男性は刀をいつでも引き抜けるように構えた。

 

?「貴様、何故ここにいる!」

 

男性は鋭い目付きで夜見に問いかけたのだが、夜見はあることを考えていた。

 

夜見(...えっと、何処かで会ったっけ?いや、会ってないよな...人違いか?)

 

?「...はっ!貴様、まさか白玉楼に行ったんじゃないだろうな!?」

 

夜見(え、何で知ってるんだ?えっと...取り敢えずどうしようか)

 

夜見はいきなりの展開に少し戸惑いながらもどうすればいいかを考えていたのだが、男性が刀を引き抜くと夜見に向かって斬りかかってきた。

 

?「せいやぁ!」

 

夜見「くっ!」

 

そして夜見は刀が当たる寸前に後ろに跳んでギリギリ回避をしたのだが、マントのフードの端の部分に刀が当たったらしく1cm程の切れ込みが入った。

 

夜見(急に何だよ!?普通、見ず知らずの人に刀を振るか!?)

 

?「むっ!せい!」

 

夜見(くっ!避けるしかない!)

 

夜見は男性が敵意を向けているか全くわからないまま、男性が振ってくる刀を躱わし続けているとある事に気付いた。

 

夜見(あれ?この太刀筋少し似て...いや、妖夢さんと同じ太刀筋?)

 

夜見は男性の刀の太刀筋が妖夢と同じ太刀筋だと気付いたのだ。そして夜見は男性の振ってくる刀を夜刀で受け止めるとその男性にあることを聞いた。

 

夜見「もしかして、魂魄妖忌さん?」

 

?「何を忘れたように言ってるんだ貴様!忘れたとは言わせんぞ!」

 

男性の言ったことを聞く限り、どうやら夜見に刀を振っている男性は魂魄妖忌だった。そして夜見は夜刀で刀を受け止めたまま妖忌に話しかけた。

 

夜見「妖忌さん、聞いてくれ 俺は妖忌さんが昔に戦った人物とは違う人だ」

 

妖忌「何を馬鹿なことを言っている!その刀を使っているのは貴様しかいないだろう!」

 

夜見「...じゃあ聞くが、もう1本の刀はどうしたと思う?」

 

妖忌「そんなの、私を油断させる罠だろう!」

 

そう言って妖忌はもう1本の刀を引き抜いたのだが、その瞬間に夜見は夜刀に更に力を込めて無理矢理妖忌を押して強引に距離を空けた。

 

夜見(確か妖忌さんは妖夢さんでも足元に及ばない程強い剣士、このままじゃ勝ち目は無い それに攻撃してきているのはただの誤解だから、傷付けるわけにはいかないな...)

 

妖忌「くっ!今回は負けるものか!」

 

そして妖忌が夜見に向かって走ってくるのだが、夜見は夜刀を納めると深呼吸をして神経を研ぎ澄ました。すると妖忌が夜見に向かって刀を振ったのだが、夜見はその刀を最小限の動きで躱した。

 

妖忌「くっ!せい!」

 

攻撃を躱わされた妖忌は立て続けに夜見に刀を振り続けたが、一向に夜見に刀が当たる気配が無かった。

 

夜見(よく考えれば妖忌さんと妖夢さんの刀の扱い方は同じもの それなら刀の振り方は大体予想が着く)

 

そして夜見はしばらく刀を躱わしていたのだが、急に妖忌が刀を振るのを止めると後ろに下がって距離を取った。

その様子を夜見が不思議に思っていると妖忌は少し口元を緩めて少し笑った。

 

妖忌「...ふっ、随分と腕が落ちたようだな」

 

夜見(...何を言ってるんだ?)

 

夜見は妖忌の言っている意味が理解出来なかったのだが、すぐに夜見はその意味を知ることになった。

 

ザシュッ

 

夜見「がっ!?」

 

夜見は何かが斬られたような音がしたかと思うと急に左腕の前腕に激痛が走った。そして夜見は激痛が走った部分を右手で押さえると生暖かい液体の感触を感じた。

夜見は妖忌の刀を全て躱わしていたと思っていたが、どうやら一撃だけ刀で斬られたようだった。

 

夜見(このままだと殺される、かといって傷付けるわけにもいかない...けど、今回は駄目か)

 

そして夜見は能力で左腕を一瞬で治すと、左手でゆっくりと夜刀を引き抜いて右手に血の刀を作り出した。すると夜見は血の刀の刃先を妖忌に向け、こう宣言した。

 

夜見「これから罪を犯す(幻想郷の運命を狂わす) ここで妖忌さんを倒させてもらう」

 

夜見がそう宣言すると妖忌は再び目付きが変わり、刀を強く握って更に殺気を放った。

 

妖忌「幻想郷の運命を狂わすだと...そんなことをさせてたまるか!」

 

そして妖忌が走り出すと同時に夜見は2本の刀を振るって1つの大きな斬撃を妖忌に向かって放った。しかし妖忌はその斬撃を軽々と斬り落とすと夜見に突きを放ったが、夜見は夜刀の刃の上で滑らせて軌道を逸らすと血の刀で斬り上げようとしたが妖忌はもう1本の刀で防いだ。

 

妖忌(こいつ、昔とは違う動きを!)

 

夜見(この様子だと、まだ妖忌さんは本気じゃないな)

 

そして妖忌は素早く夜見の腹に蹴りを入れて蹴り飛ばすと2本の刀で2つの斬撃を放った。

 

夜見「ぐっ!?」

 

しかし夜見は1つ目の斬撃を地面に最初バウンドする瞬間に腕で地面を押して上に宙返りをするように躱し、2つ目の斬撃は上から足で踏み抜いた。

 

妖忌「...中々変わった動きをするな、前の剣術はどうした?」

 

夜見「...剣術じゃねえよ、状況に合わせて動いてるだけだ」

 

妖忌「っ!?剣士が剣術を捨てるとは、随分とふざけた真似をするようになったんだな!」

 

すると今度は妖忌が斬撃を飛ばしながら夜見に近付いて来るのに対して、夜見は斬撃を全て刀の刃の上で滑らせて軌道を変えて妖忌に向かって走った。

そしてお互いの刀が届く範囲に近付くと夜見が夜刀で突きを放つが、妖忌は夜見の横に回り込むように跳んで躱して刀を振るった。しかし夜見はその刀を横に転がって避け、後ろに跳んで距離を取ろうとしたが妖忌はピッタリと付いてきた。

 

夜見「なっ!?」

 

妖忌「逃がすわけないだろう!」

 

そして妖忌は夜見に何度も刀を振るうが夜見はそれを何度も防ぎ、金属音が鳴り響き続けた。

 

妖忌「どうしたんだ?防ぐだけでは私には勝てないぞ!」

 

夜見「それは全て防がれている妖忌さんにも言えることだがな!」

 

そして夜見は防いでいる途中で妖忌の刀を1本横に回って蹴り飛ばすとそのまま回って横に刀で妖忌に斬りつけようとしたが、妖忌は2本の刀を後ろにずり下がりながらも刀1本で受け止めた。

 

妖忌「...ふむ、剣術を捨てた分だけ柔軟に対応出来るようにしたのか それなら私は、そろそろ本気を出すとするか」

 

妖忌はそう言って刀を鞘に納めて居合の構えを取ると、それに対して夜見は血の刀を空気中に分解して夜刀を右手で構えた。

 

妖忌「腕が落ちたお前が、私に刀1本で勝てるとでも?」

 

夜見「...さぁな、どのみちこれで決着を付けるつもりなんだろ?」

 

妖忌「あぁ、そうだ さぁ、終わりにしよう」

 

妖忌がそう言い、夜見は目と閉じて夜刀と一体化するような感覚を感じるとゆっくりと目を開けた。すると妖忌は夜見が刀と一体化している感覚を感じていることに気付いた。

 

妖忌(...剣術を捨てたものの、刀の扱い方は昔より上達している 油断ならないな)

 

そして夜見が走り出すと妖忌は目を閉じてじっと夜見が来るのを待ち、夜見が刀を振るう瞬間に妖忌が抜刀をした。すると高い金属音が鳴り響いて夜見の持っていた夜刀が宙を舞った。

 

夜見「なっ!?」

 

妖忌「残念だったな これで終わりだ!」

 

そして妖忌は抜刀をして上に持ち上がっている刀を両手で持つと、夜刀を飛ばされて仰け反っている夜見に向かって刀を振り下ろした...が、

 

紫「はい、ストップー」

 

いきなり夜見と妖忌の間に裂け目が出来て紫が出てきたのだ。そして紫は妖忌の腕を掴んで刀を止めると妖忌は驚いている様子だった。

 

夜見「...紫さん?」

 

妖忌「なっ!?紫さん!?」

 

紫「まったく、夜見がそろそろ帰る頃だと思って様子を見に来たら...一体何をしているの?とりあえず、妖忌さんは刀を仕舞いなさい」

 

そう言って紫は妖忌の腕を掴んでいた手を放すと、妖忌は警戒をしながら数歩下がって刀を鞘に納めた。すると紫は夜見の方を向いてこの状況について聞いてきた。

 

紫「えっと?とりあえずどういう状況か聞いていいかしら?」

 

夜見「あぁ、実は...

 

そして夜見が先程までの状況を発端から説明すると紫は少し呆れていた様子だった。すると紫は妖忌の方を向いて何かを説明していると妖忌は勘違いに気付いたようで、夜見に謝ってきたが夜見はお互い悪かったということにしてお互いに許しあった。

そして夜見と妖忌がお互いに自分の刀を拾って鞘に納めると紫は夜見にあることを聞いてきた。

 

紫「それで?夜見 帰るのでしょう?」

 

紫が振り返って夜見に帰るかの確認を取ると夜見はこう返事をした。

 

夜見「いや、少し妖忌さんに聞きたいことがある」

 

妖忌「私にか?」

 

そして夜見は妖忌の前に行くと妖忌に冥界に帰ってきた理由を聞いた。

 

夜見「妖忌さん、いきなり帰ってきてどうしたんだ?妖夢さんと幽々子さんに会いにでも行くのか?」

 

妖忌「いや、違う 久しぶりに西行妖を拝みに来たのだ」

 

しかし妖忌は白玉楼に顔を出す気は無く、ただ西行妖を拝みに来ただけだったらしい。すると夜見は妖忌さんにあることを聞いてみた。

 

夜見「そうか...俺も付いていって構わないか?」

 

妖忌「あぁ、構わないぞ よかったら、紫さんも一緒に来ますか?」

 

そして妖忌は紫も誘ってみると紫は笑顔で頷いた。

 

紫「そうね、せっかくだから私も拝んでいこうかしら」

 

妖忌「それじゃあ、行くとするか」

 

そして3人で西行妖を拝みに行くことにすると、紫は3人の足元に大きな裂け目を1つ作り、その裂け目に落ちると一瞬で西行妖の前に着いた。

 

妖忌「...久しぶりだな、西行妖よ」

 

そう言って妖忌が一歩前に出て手を合わせて拝むと夜見と紫も後に続いて西行妖を拝んだ。そしてしばらく拝んでいると妖忌が夜見にあることを聞いてきた。

 

妖忌「黒夜殿、西行妖が何故花を咲かせないのかを知っているか?」

 

夜見「いや、知らないが...」

 

妖忌「実はだな、この西行妖の根の中心に幽々子様が封印されているのだ」

 

妖忌がそう言うと夜見は異変の時に聞いた紫の話を思い出した。そして夜見が紫の方をチラリと見ると紫が説明をした。

 

紫「幽々子は生前、[死霊を操る]能力と[人を死に誘う]能力を持っていたわ けれど西行妖が満開になった時に幽々子は人間を1人でも多く守るためと言って、自分自身の能力で西行妖と共に死んで封印されたのよ」

 

妖忌「そしてしばらくして幽々子様が幽霊として再び目の前に現れたのだが、どうやら生前の記憶を失ってしまったらしい」

 

夜見「そんなことが...幽々子さんは自分1人を犠牲にすることで、多く人を守ったんだな 死ぬとわかってても、多くの人のために...」

 

そして3人が西行妖を拝み終えると、妖忌は一歩下がって夜見と紫に別れを告げて何処かへ行ってしまった。その姿を夜見と紫は見送ると、紫が夜見に話しかけてきた。

 

紫「さて、そろそろ私達も帰りましょうか」

 

そう言って紫は夜見の目の前に裂け目を作ると向こう側には地霊殿が見えていた。そして夜見は紫にお礼を言った。

 

夜見「紫さん、ありがとう 送り迎えをしてくれて」

 

紫「ふふ、いいのよ 私の気まぐれだから気にしないで」

 

夜見「それじゃあ、先に失礼する」

 

紫「えぇ、さようなら」

 

そして夜見は裂け目に入って地霊殿の前に着くと、仮面を外して地霊殿の玄関を開けた。しかしその先の光景は先程のしんみりとした気分をぶち壊すような光景だった。

 

夜見「...は?」

 

夜見はその先にあった光景にまず最初に自分の目を疑った。何故ならいつものエントランスの光景に沢山の動物が溢れかえっていたからだ。

 

夜見「...いつから地霊殿は動物園になったんだよ」

 

そして夜見は思わず思ったことを口に出すと、右側の廊下から左側の廊下にヒョウが通ったと思ったらその後をさとりが走って追いかけていた。

 

さとり「こら!待ちなさい!」

 

夜見「...」

 

すると夜見はその場で落ち着いて、まずは目の前の状況を冷静に整理し始めた。しかし夜見は何度も目の前の状況を整理してもまったく理解が出来ずにいると、2階から自分を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

こいし「あ、お兄ちゃん!」

 

それはこいしの声だったのだが、こいしは何故かメスライオンの背中に乗って階段を降りてきていた。そして夜見の目の前まで来るとこいしはメスライオンの頭をポンポンと叩いた。

 

こいし「ほら、止まって!」

 

こいしがメスライオンに止まるように命令するとメスライオンは大人しくその場に座り込んで止まり、こいしがメスライオンから降りると夜見の腰辺りに抱き付いてきた。

 

こいし「お帰り、お兄ちゃん」

 

夜見「...あぁ、ただいま」

 

こいし「お兄ちゃん、ぎゅーして」

 

こいしが夜見から離れると夜見に両手を伸ばしてそう言ったので、夜見がこいしを抱き上げるとこいしは夜見の首に腕を回して抱き付いた。

 

こいし「えへへ、お帰りなさいのチュー♪」

 

そしてこいしが夜見の頬にキスをしたのだが、夜見が驚かないでいるとこいしは不思議に思って夜見に声をかけた。

 

こいし「お兄ちゃん、どうしたの?」

 

夜見「こいしさん、何故地霊殿がこんな状況に?」

 

こいし「ん?ペットのこと?」

 

夜見「え、ペットって...どれが?」

 

こいし「え、全部だけど?」

 

夜見「え?」

 

こいし「え?」

 

夜見とこいしがお互いに状況を理解出来ないでいると、左側の廊下からヒョウの頭を撫でて誘導しているさとりが出てきた。そしてさとりがこちらに気付くと、夜見に声をかけてきた。

 

さとり「あぁ、帰ってきてたんですか お帰りなさい」

 

夜見「あぁ、ただいま さとりさん、取り敢えず状況を説明してくれないか?」

 

さとり「え?...あ!そういえば黒夜さんにペットのことを説明していませんでしたね」

 

さとりは一瞬不思議に思ったが何かを思い出したかのような声を出すと、夜見にこの状況について説明し始めた。

 

さとり「実は地霊殿で色んなペットを飼っているんですが、ペット達が一斉に部屋から出てきてしまったので今集めているところなんです」

 

夜見「今まで何処にいたんだ?」

 

さとり「あっち側の部屋です」

 

そう言ってさとりが指を指したのは右側の廊下の方だった。実は夜見は地霊殿に住んではいたのだが特に全部の部屋の確認はしていなかったので、こんなにペットがいることは知らなかったのだ。

するとさとりは夜見にあることをお願いしてきた。

 

さとり「黒夜さん、帰ってきて早速で悪いんですがペット達を集めて来てくれませんか?私は1階のペット達を集めますので黒夜さんは2階をお願いします」

 

夜見「あぁ、わかった」

 

そしてさとりのお願いを受けた夜見はこいしを降ろすと、こいしは夜見の手を掴んできたので夜見はこいしと手を繋いだまま2階へと上がった。すると2階の廊下にも1階と同等の数の動物がいた。

 

こいし「お兄ちゃん、どうするの?」

 

夜見「そうだな...取り敢えず最初は鳥でも集めてみるか」

 

そう言った夜見は能力を使って血を操って手元に小さな筒のようなものを作り出すと、こいしは夜見に筒のようなものについて聞いてきた。

 

こいし「お兄ちゃん、何それ?」

 

夜見「あぁ、これは鳥笛だ 鳥の鳴き声に似た音が鳴って鳥が寄ってくるんだ」

 

そして夜見は鳥笛を口に咥えて吹くと、鳥笛から鳥の鳴き声に似た音が鳴り響いた。すると夜見とこいしの周りに大量の鳥が群がってきた。

 

こいし「わわ!な、何!?」

 

夜見「くっ!予想以上に多いっていうか1階の鳥まで来たな」

 

夜見は群がってきた鳥達を手で少し払いながら頭を抱えてしゃがみ込んでいるこいしを庇うように抱き締めると、夜見は霊力を放って鳥を囲むように鳥籠を作り出して鳥を捕まえた。

 

夜見「こいしさん、大丈夫か?」

 

そう言って夜見はこいしを放すと、こいしは顔をあげて夜見に無事だったことを伝えた。

 

こいし「う、うん 少しびっくりしただけ、大丈夫」

 

夜見「そうか、良かった」

 

夜見はこいしが無事だったことに安堵すると、こいしの手を取って一緒に立ち上がった。そして夜見とこいしは捕まえた鳥の方を見ると、鳥達が霊力の鳥籠の中で暴れるようにジタバタと翼を動かしている様子にこいしは疑問を感じた。

 

こいし「うーん、どうしたんだろう?」

 

夜見「ん、どうかしたのか?」

 

こいし「いつも鳥さん達は大人しいんだけど、今日は随分と暴れてるからどうしたんだろうって思ったの」

 

夜見「あー、えっと...多分俺のせい...だな」

 

こいしの発言を聞いた夜見が少し申し訳なさそうにそう言うと、こいしはどういうことかを夜見に聞くことにした。

 

こいし「お兄ちゃん、どういうこと?」

 

夜見「あぁ、何故か知らないけど俺って動物に全然好かれないんだ 多分そのせいだと思う」

 

夜見は動物達には好かれないことを言ったのだが、その発言に対してこいしは疑問を持った。

 

こいし「そうなの?でも、お燐とお空はお兄ちゃんと普通にお喋りするよ?」

 

夜見「多分それは、燐さんと空さんは動物より妖怪に近いから関係ないんだと思う」

 

こいし「そっか、つまりお兄ちゃんは普通の動物さん達には嫌われてるんだね」

 

夜見「まぁ、そうとも言えるな さてと、次に行くか」

 

そして夜見とこいしはその場に鳥達を残して次の動物を捕まえるために左側の廊下へと向かっていった。すると左側の廊下には沢山の犬と猫などがいたのだが、夜見の姿を見た瞬間に威嚇で吠えてきたり奥へ逃げていってしまった。

 

こいし「...お兄ちゃん、本当に嫌われてるんだね」

 

夜見「...あぁ、そうだな」

 

そして夜見は手前にいた猫の前にしゃがみ込んでゆっくりと手を下から差し出したが、猫は前足で夜見の手を軽く叩くと奥へと逃げていってしまった。

 

こいし「お兄ちゃん、どうする?」

 

夜見「...さぁな、嫌われるものは仕方ないしなぁ」

 

そして夜見はその場で本気でどうしようか悩んでいると、こいしは1匹の犬の目の前に座って頭を優しく撫で始めた。すると周りにいた犬と猫がこいしの周りにどんどんと集まってきた。

 

こいし「よ~しよ~し、みんないい子いい子~ みんないい子だから、お兄ちゃんとも仲良くしてあげてね~?」

 

そしてこいしは集まってきた犬と猫の中で小さな白い子犬を抱えると、夜見に近付いてその子犬を差し出してきた。

 

こいし「はい、お兄ちゃん ちゃんと触れ合ってあげれば、ちゃんと仲良くなれるよ♪」

 

夜見「...そうなのか?まぁ、頑張ってみるか」

 

そして夜見はこいしの差し出してきた子犬の前足の下に手を入れて恐る恐る持ち上げると、その子犬は吠えずに舌を出して尻尾を小刻みに振っていた。どうやらその子犬は夜見を嫌っていない様子だった。

 

こいし「良かったね、お兄ちゃん その子犬ちゃんはお兄ちゃんのこと嫌ってないみたいだね」

 

夜見「...こうして、よく見てみると可愛いんだな」

 

そして夜見は子犬をそっと降ろして座って頭を撫でていると、こいしの周りにいた犬と猫が少しだけゆっくりと夜見の元に集まってきた。すると夜見は集まってきた犬と猫の頭を順番に撫で始めた。

 

夜見「よしよし、いい子だな」

 

こいし「...」

 

しばらく夜見は犬と猫を撫でていたのだが、こいしがその場で膝を床に付けて四つん這いになるとこちらに近付いてきた。

 

夜見「ん?こいしさん、どうしたんだ?」

 

こいし「...にゃー」

 

そしてこいしは猫の鳴き声を真似するとそのまま四つん這いで夜見の元に来たと思ったら、こいしは猫のように夜見に頭を擦り付けてきた。夜見はその様子に戸惑っていると、こいしは再び猫の鳴き声を真似した。

 

こいし「にゃー にゃー」

 

夜見「えっと...こいしさん、何を?」

 

こいし「にゃあん」

 

夜見「あぁ、えっと...いい子いい子?」

 

こいし「にゃー♪」

 

そして夜見はこいしの帽子を取って頭を撫でるとこいしは満足そうな声で猫の鳴き声を真似した。どうやらこいしは夜見に撫でられる犬と猫を見ていると自分も撫でられたくなったようだった。

 

夜見「さてと、こいしさん そろそろ反対側にいる動物を捕まえにいこうか」

 

こいし「にゃあん♪」

 

しばらくこいしの頭を撫でていた夜見がそう言うと、こいしは夜見の首に腕を回して抱き付いてきた。すると夜見は立ち上がりながら、こいしを抱き上げて反対側の廊下に向かうと犬と猫達が付いてきていた。

 

そして夜見とこいしが階段の前まで来ると、犬と猫達は階段を降りていった。夜見は不思議に思って階段の下の方を見てみると、そこには霊力で出来た鳥籠を持ったさとりが犬と猫達を誘導していた。

 

夜見「さとりさんは俺と違って動物に好かれてるんだな...少し、羨ましいな」

 

こいし「にゃあん?」

 

夜見がふと思ったことを声に出すと、こいしは猫の鳴き声をまだ真似しながら心配したような声を出して首をかしげた。すると夜見はこいしに笑顔を向けた。

 

夜見「大丈夫だ、心配しなくて」

 

そう言って夜見はこいしの背中を軽くポンポンと叩くと、こいしは笑顔になって更に力を入れて抱き締めてきた。

 

こいし「にゃー♪」

 

夜見「じゃあ、早く反対側にいるペット達も捕まえに行こうか」

 

こいし「にゃーん♪」

 

そして夜見とこいしは反対側の廊下に着くと、そこには沢山のモルモットがいた。しかしモルモット達が夜見の姿を見た瞬間にモルモット達は廊下の奥へと一斉に逃げてしまった。

 

夜見(...まぁ、だろうな)

 

そして夜見はモルモットを追いかけるために廊下の奥へと行こうとした瞬間に後ろから声をかけられた。

 

さとり「黒夜さん、ちょっと待ってください」

 

後ろからさとりにそう言われた夜見は、後ろを振り向くとそこにはさとりが立っていた。するとさとりは夜見にあることを聞いてきた。

 

さとり「黒夜さん、もしかして動物に避けられていませんか?」

 

夜見「ん?確かに好かれないが、何でわかっ...あぁ、動物の心を読んだのか」

 

さとりはどうやら夜見が動物に好かれない理由をペット達の心を読んでわかったらしく、そしてさとりはどうして夜見が動物に好かれないのかを説明した。

 

さとり「えぇ、そうですよ そして鳥達や犬と猫達も、どうやらペット達は黒夜さんから殺気を感じたらしいです」

 

夜見「殺気?いや、別に殺気を出してるつもりはないんだが?」

 

さとりから理由を聞いた夜見は自分は殺気は出していないと返答したが、さとりは少し考えるとこう言い直した。

 

さとり「殺気というか、雰囲気に近いんじゃないでしょうか 動物は人より雰囲気を敏感に感じますから、黒夜さんがもっと優しい雰囲気を出せばペット達も自分から寄ってくると思いますよ」

 

夜見(優しい雰囲気って言われてもねぇ、そんなのどうやって出せばいいんだ?)

 

夜見はさとりの言っていることには納得はしていた。しかしどうやって優しい雰囲気を出そうか考えていると、こいしが急に夜見に頬擦りをしてきた。

 

夜見「ん、こいしさん?」

 

こいし「にゃあん、にゃー」

 

さとり「...こいし?何で猫の鳴き声なんかしてるの?」

 

さとりはこいしが猫の鳴き声を真似して夜見に甘えているのを疑問に思って口に出したのだが、こいしはそのまま夜見に甘えていた。

 

こいし「にゃー、にゃー」

 

夜見「よしよし、いい子いい子」

 

すると夜見はその場に座ってこいしの帽子を取って頭を撫でると、こいしは頬擦りを止めて満足している様子だった。

 

こいし「にゃおん♪」

 

夜見「よしよし、いい子だ」

 

そして夜見がしばらくこいしのことを撫でていると廊下の奥にいるモルモットが顔を出したかと思うと、ゆっくりと夜見達に近づいてきた。

 

さとり「黒夜さん、モルモット達が近付いてきましたよ よしよし、いい子~」

 

夜見「ん、お前達もいい子だな」

 

モルモット達が近付いてきたところで夜見とさとりがモルモットを撫でると、こいしも体を横に傾けてモルモットを撫で始めた。そしてしばらく夜見達はモルモットを撫でていたが、夜見はあることが気になってさとりに聞いた。

 

夜見「なぁ、さとりさん そういえばペット達の食費ってどのくらいなんだ?あんなにいれば相当だろ?」

 

さとり「えぇ、そうですね 大体、家計のほとんどがペット達の食費で持っていかれてますね」

 

夜見「...えっと?ほとんどってことは、もしかして俺達の食費は?」

 

夜見はもしかしてと思って一応自分達の食費について聞くと、さとりは夜見に満面の笑みを向けてこう答えた。

 

さとり「ギリギリ生きられる程度はあります でも、黒夜さんが働いてくれてるお陰で前より満足な食事が出来るようになりました いつもお仕事をしてくれて、ありがとうございます」

 

さとりは夜見に対して日頃のお礼も言うと、モルモットを撫でるのを止めてモルモット達を1階へと誘導し始めた。そしてしばらくしてその場に夜見とこいしが残ると、こいしは夜見に声をかけた。

 

こいし「お兄ちゃん、いつもお仕事お疲れ様♪」

 

夜見「...あぁ、どういたしまして」

 

夜見はさとりに自分達の食費がギリギリだったことを聞いた瞬間に、仕事が出来るありがたさとお金の大切さを本気で実感したという。




どうも皆さん、お風呂場の蓋です。
今回は本作には出ない魂魄妖忌が出てくる話でした。
ちなみに少しだけ設定を言うと紫との知り合いで、紫は妖忌が今はどうしているかを知っているということになっています。
そして今回は少し投稿が遅れてしまって申し訳ありませんでした。
よければまた次回も見てください。
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