心を閉ざした少年と少女   作:お風呂場の蓋

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第41話 起きていたもう1つの異変

夜見は2度目の宴会があった日の翌日、そのまた翌日では人里に貼り出されている依頼をいつも通りこなしていたのだが、2度目の宴会の日から3日後の人里では依頼状が貼り出されていなかった。すると夜見は何を思ったのか博麗神社に行こうと思い付き、人里を出て博麗神社へ向かって歩いた。

 

そして夜見は博麗神社の前に着いて石の階段を登り鳥居をくぐって境内に入ると、霊夢が箒で境内の掃除をしていた。

 

霊夢「ん?夜見じゃない、どうしたのよ?妖怪退治の依頼かしら?」

 

霊夢は夜見がいることに気付くと箒を動かしている手を止めてそう言ってきたが、夜見は霊夢に近付いてあることを聞いた。

 

夜見「すまないが、何か報酬がある仕事は無いか?」

 

霊夢「...はぁ?何よ、金が欲しいって言ってるの?」

 

夜見「金が欲しいと言ってる訳ではなく、金を稼ぎたいと言っているんだ」

 

霊夢「そんなのどっちも一緒でしょ?」

 

霊夢が少し呆れたような様子でそう言った後に少し考えているような素振りをすると、夜見にこんなことを言ってきた。

 

霊夢「そうねぇ...生憎報酬がある仕事は無いけれど、少し人手が足りないから手伝ってくれないかしら?」

 

夜見「...別に構わないが、何をすればいいんだ?」

 

霊夢「簡単よ」

 

そう言って霊夢は神社の方を指差すと、霊夢は仕事の内容を説明した。

 

霊夢「台所に食材が用意されているから、宴会料理を作ってちょうだい それだけよ」

 

そして霊夢は仕事の内容を説明すると再び箒で境内の掃除を始めたのだが、夜見は霊夢の言ったあることに対して質問をした。

 

夜見「いや待て、宴会だって?今日もやるのか?」

 

夜見が霊夢に向かって質問をすると、霊夢は箒で境内の掃除をしながら夜見の質問に答えた。

 

霊夢「えぇ、そうよ 何か問題でもあるのかしら?」

 

夜見「いや、3日に1回も宴会をするって流石にやり過ぎじゃないか?それとも、いつもこんな風に異変の後は何回も宴会をするのか?」

 

霊夢「いえ、そんなことは無いわ でも何故か、誰かが宴会をやるって言ったわけでもないのに宴会をするのよね」

 

夜見(誰かが宴会をやるって言ってわけでもないのに、宴会をやっていたのか?流石におかしいだろ...)

 

夜見はそう思うと同時に、これは異変なのではと考えた。しかし仮に異変だったとしても何故異変の犯人は何回も宴会をするようにしているのか、そもそも異変の犯人はどうやって宴会をさせるようにしているのかがわからなかった。

 

夜見は考えても埒が開かなかったが、異変の犯人が宴会をさせるようにしているのならば宴会に紛れているのではないかと思い、今は宴会料理を作って宴会が始まるまで待つことにした。

 

夜見「...まぁ、取り敢えず俺は宴会料理を作ればいいんだな?」

 

霊夢「えぇ、そうよ て言うかさっさと作らないと、宴会に間に合わなくなるわよ?」

 

夜見「あぁ、そうだな」

 

そう返事をした夜見は神社の中に入ったのだが台所の場所がわからず、しらみ潰しに部屋を回っていると台所を見つけた。台所には霊夢の言った通りに食材が用意されてあり、宴会料理を作るのには十分な量だった。

 

夜見(さて、作るとするか)

 

そして夜見は台所にあった包丁を手に取ると食材を1つ1つ切りながら、同時進行で食材を焼いたり揚げたりして色々な宴会料理を作り始めた。しばらくして夜見が全部の食材を使って宴会料理を作り終えた頃には、表の方から賑やかな声が聞こえて来ていたかと思うと霊夢が台所に入ってきた。

 

霊夢「あら?そろそろ手伝おうと思ったのに、もう作り終えちゃったのね」

 

そう言って霊夢は宴会料理を1つ摘まんで口に運ぶと、霊夢は頷いて納得している様子だった。

 

霊夢「見た目も味付けも完璧ね ありがとうね、随分と助かったわ」

 

夜見「別に、ただ頼まれたことをやっただけだ」

 

霊夢「ふーん、まぁ貴方がそう思うならそれでいいわ じゃあ後は私が適当に運ぶから、貴方は紅魔館の連中といるなり魔理沙といるなり勝手にすればいいわ」

 

夜見「あぁ、わかった」

 

そう返事をして夜見は宴会料理を運ぼうとしている霊夢を台所に置いて外に出ると、前回の宴会と同じように博麗神社の裏側に回ると血の梯子を作って屋根に上に登った。そして夜見は今日も屋根の上に座って宴会の様子を見ていると、ある人物が日傘を差しながら右隣に飛んで来て夜見に話し掛けた。

 

レミリア「夜見、隣いいかしら?」

 

夜見「レミリアさんか あぁ、別に構わないぞ」

 

レミリア「そう、それじゃあ失礼するわ」

 

そう言ってレミリアは夜見の隣に座ったのだが、夜見の方をチラリと見ると夜見との距離を少し詰めてきた。そしてレミリアは夜見にあることを聞いた。

 

レミリア「実は咲夜が人里へおつかいに行った時に見たらしいのだけれど、黒夜は最近人里で何か調べているらしいわね 一体何を調べているのかしら?」

 

夜見「...行方不明者の事だ」

 

夜見はレミリアの方をチラリと見た後に一言だけ言うと、レミリアはまるで懐かしい話を聞いたような様子だった。

 

レミリア「そういえば、そんなことがあったわね それで、何か手掛かりは掴めたのかしら?」

 

夜見「...いや、特にこれといった手掛かりは無かった」

 

レミリア「あら、そうなの それは残念だったわね」

 

そしてレミリアはそう言って再び夜見の方をチラリと見ると、体を夜見に密着するまで詰め寄り頭を夜見の体に預けるように傾けた。夜見はレミリアのその行動に疑問を持ったが、取り敢えず夜見はレミリアの日傘を右手で取るとレミリアに日が当たらないように持った。

 

レミリア「あら、ありがとう 持っていてくれるのね」

 

夜見「まぁ、レミリアさんが持ってたら背丈的に日傘でレミリアさんの顔が見えなくなるからな それに俺が日傘を持ってた方がレミリアさんが何かあった時、何かと対処出来るだろ?」

 

夜見がレミリアに向かってそう言うとレミリアは片腕を夜見の日傘を持っている方の腕に絡ませて、こんなことを言ってきた。

 

レミリア「ふふ、夜見の気遣いはいつも素晴らしいわね やっぱり紅魔館の執事として働かないかしら?」

 

夜見「だからそれは無理だと前から言ってるだろ 俺には帰る場所と家族がいる」

 

レミリア「冗談よ、冗談 だけど、もし夜見が本当に執事になってくれれば色々と助かるわ」

 

そう言ってレミリアは絡ませている腕に少し力を込めて更に夜見に密着してきた。そこで夜見はレミリアが何故こんなにも体を密着させてくるのかを聞いた。

 

夜見「なぁ、レミリアさんは何を思ってそんなにピッタリと密着してくるんだ?」

 

するとレミリアは目を瞑って落ち着いた口調でこう返してきた。

 

レミリア「あら、何か困るのかしら?これは友人としてのスキンシップ、特に理由なんてないわよ」

 

夜見「...そうか」

 

夜見はレミリアのスキンシップだと真に受けて納得していたのだが、しばらくするとレミリアは急にビックリしたように「」と少し息を漏らした。

夜見は不思議に思ってレミリアの方を見てみると夜見は無意識の内にレミリアの頭を撫でており、レミリアは夜見が見ていることに気付くと夜見に向けて笑みを浮かべた。

 

レミリア「急に頭を撫でてくるなんて、小さい子どもでも相手にしてるつもりなのかしら?でもまぁ、悪い気はしないし寧ろ心地よいわ」

 

夜見「あぁ、急にすまないな いつもの癖でな」

 

夜見はこいしが抱き付いてきた時によく頭を撫でているので、その癖でレミリアの頭を撫でてしまったと思ってそう言った。しかしレミリアは夜見の[いつもの癖]という言葉に疑問を持った。

 

レミリア「いつもの癖?どういうことかしら?」

 

夜見「ん?あぁ、実は家族の中で甘えん坊が1人いて、その甘えん坊がいつも抱き付いてくるから抱き締めながら頭を撫でてやるんだ」

 

レミリア「へぇ、いつも...」

 

そしてレミリアは独り言を呟くように言って絡ませていた腕を離したかと思うと、レミリアは立ち上がって夜見の正面に立った。

夜見は腕を伸ばして日がレミリアに当たらないように日傘を差しながら何をしているのか疑問に思っていると、レミリアは少し足を前に出して夜見に少し近付くと同時にそのまま倒れるように夜見の首に腕を回して抱き付いて耳元で囁いた。

 

レミリア「その家族の甘えん坊さんは、こんな感じで抱き付いているのかしら?」

 

夜見「えっと...レミリアさん?一体な「どうなの?早く答えて頂戴」...まぁ、ほとんど同じだな 実際はレミリアさんが抱き付いてるから、力加減とかは若干違うが...」

 

レミリア「あら、そう?」

 

レミリアはそう一言言うと、夜見の首に回している腕に少し力を入れて更に夜見に密着してきた。そして夜見はこの状況をどうしようか考えていると、レミリアは不思議に思った様子でこんなことを言ってきた。

 

レミリア「どうしたのかしら?夜見も早く抱き締めなさい」

 

夜見「...え?いやいや、流石に友人だとしても女性を気安く抱き締めるのは抵抗があるんだが?」

 

レミリアに言われたことに夜見は一瞬理解が出来ずに反応が少し遅れたが、すぐにそう言って返すとレミリアは今度はこう言った。

 

レミリア「家族の甘えん坊さんには抱き締めながら頭を撫でてあげているのに、友人である私には出来ないのかしら?」

 

夜見「いやいや、家族にするのと友人にするのとでは話が違うだろ それと最初から少し気になっていたんだが、何故俺の呼び方が黒夜から夜見に変わってるんだ?」

 

夜見はレミリアに抱き締めない理由と気になっていたことを言うと、レミリアは少し機嫌を損ねたのかムッとしたような声で言った。

 

レミリア「いちいち五月蝿いわね、いいから夜見は私の言う通りに私のことを抱き締めなさい 貴方に拒否権なんてものは無いのよ」

 

レミリアはそう言って腕を放さないでいたのだが、夜見もレミリアのことを抱き締めないでいた。しかしレミリアは一向に腕を放す気配が無い様子だったので、夜見は諦めてレミリアの背中に左腕を回すと軽くレミリアのことを抱き締めた。

 

レミリア「...へぇ、こんな感じなのね」

 

レミリアは落ち着いた口調でそう言ったのだが、翼をパタパタと上機嫌に動かしていたので内心はとても嬉しいのがバレバレだった。そしてしばらくその状態のままでいると、レミリアは顔を上げて夜見の耳元で次はこう囁いた。

 

レミリア「夜見、次は膝枕をして頂戴 もちろん、貴方に拒否権は無いわよ」

 

夜見「...はぁ あぁ、ちょっと待ってろ」

 

夜見はレミリアの言うことを聞くために左腕で抱き抱えると、日の当たらない神社の裏手に降りて日傘を右手だけで器用に閉じた。そして夜見はその場にレミリアを降ろして夜見は神社の縁側に座ると、レミリアは縁側で横になって頭を夜見の(もも)に頭を乗せた。

 

レミリア「ふふ、膝枕は膝枕で心地よいわね」

 

レミリアは再び落ち着いた口調で翼を嬉しそうにパタパタさせながらそう言うと、夜見はそんなレミリアの様子を不思議に思った。

 

夜見「そうか?ただ足を枕にして横になるだけだろ?」

 

レミリア「夜見は膝枕をしている側だからそう思うのよ 膝枕をしてもらう側はまた違うのよ」

 

夜見「そうなのか?」

 

レミリア「えぇ、そういうものよ」

 

そう言ってレミリアはしばらく翼をパタパタさせていたのだが、レミリアがゆっくりと目を閉じると翼を動かさなくなった。どうやらレミリアは膝枕の心地よさと春の暖かさによって寝てしまったようだった。

そして夜見はレミリアの頭を優しく撫でながら、ある人物に声をかけた。

 

夜見「何の用だ、紫さん」

 

夜見がそう言うと目の前の空間に裂け目が現れて中から紫が出てきたのだが、紫は夜見とレミリアの様子を見てこんなことを言った。

 

紫「覚妖怪の時もだったけれど、貴方は小さい子に好かれる傾向にあるのかしら?」

 

夜見「さぁな、ただ相手がそうだっただけじゃないか?」

 

紫「...まぁ、そんなことはどうでもいいわ」

 

紫はそう言って夜見の隣に座ると、真剣な目をして夜見の方を向いた。すると夜見は大事な話があると察したのか、レミリアを撫でつつ紫にこう聞いた。

 

夜見「何かわかったのか?」

 

紫「えぇ、人里での異変の方についてよ」

 

紫がそう言うと夜見は人里の異変について話し始めるのかと思ったのだが、予想に反して紫は夜見にあることを聞いてきた。

 

紫「貴方は[百鬼夜行]って知ってるかしら?」

 

夜見「...確か深夜に徘徊する鬼や妖怪の群れ、または行進だろ?」

 

夜見がそう答えると紫は「えぇ、そうよ」と一言だけ言うと、次はこんなことを聞いてきた。

 

紫「じゃあ、次に[ぬらりひょん]は知ってるかしら?」

 

夜見「妖怪の総大将だろ?」

 

紫「えぇ、わかっているのなら説明の手間が省けるわ それじゃあ、本題に移りましょう」

 

紫はそう言って一呼吸すると、夜見に人里で起きている異変について話し始めた。

 

紫「どうやら百鬼夜行が人里の人間を連れ去っていったらしいわ ここ数日藍が深夜に人里を少し離れた場所から見ていたら、鬼が数匹で列を作って人里に入っていくのを見たらしいわ」

 

夜見「...それで?勿論その鬼を藍さんは追い掛けたんだろ?」

 

紫「えぇ、勘付かれないように少し距離を取って追い掛けたらしいわ けれど不思議なことに、人里から出て少ししたら姿をいきなり消したそうよ」

 

夜見「いきなり消えた?」

 

藍が追い掛けた鬼がいきなり姿を消したと聞くと、夜見はそう言って紫に聞き返した。すると紫はその時の状況をこう言い直した。

 

紫「いや、正確には妖気や気配もろとも姿を消したって言った方が正しいわね それと消えたのは自然とじゃなく、突然だったらしいわ」

 

夜見「...そんなこと、あり得るのか?」

 

紫「私も信じがたいけど藍が嘘を言うはずもないし、本当なのでしょうね もう少し近づくと鬼に勘付かれてしまうし、どうしようもなかったらしいわ」

 

紫の話を聞いた限りだと、どうやら百鬼夜行が人里の人間を連れ去ったのは間違いないが、そこから先は何もわからないようだった。それは仕方の無いことなのだが、夜見はそこである疑問を持った。

 

夜見「百鬼夜行が人里の人間を連れ去っているのはわかった だが、ぬらりひょんに何の関係があるんだ?」

 

それは紫の話に最初に聞かれた百鬼夜行の話はあったが、ぬらりひょんの話が無かったことだった。夜見はその事に疑問を持って紫に聞いてみると、紫はこんなことを言った。

 

紫「これは私の考えに過ぎないのだけれど、もしかしたら外来人はぬらりひょんとして、百鬼夜行に何か力を貸しているんじゃないかと私は考えているのよ」

 

夜見「...確かに、それなら鬼がいきなり消えたのにも説明が付く だが、その外来人が幻想郷に来た日に百鬼夜行を作り上げたとは考えにくいな」

 

紫「...まぁ、そうよね 本当に一体何が起きているのかしら?」

 

紫がそう言うと夜見と紫は百鬼夜行が何故人里の人間を連れ去っているのか、百鬼夜行が何故突然姿を消したのかを考え込み始めたのだが、紫は夜見の方を見ると夜見を睨み付けてこう言った。

 

紫「貴方、ちゃんと考えているのかしら?」

 

夜見「あぁ、ちゃんと考えてる」

 

紫「...全くそんな様子には見えないのだけれど?」

 

夜見はちゃんと何が起きているのか考えてはいるのだが、紫は夜見の様子を見てそうとは思えなかった。何故なら夜見はいつの間にか空気中の血を集めて耳かきの棒を作り、レミリアの耳を掃除していたからである。

 

夜見「そうか?別に何かしている状態でも、頭で何かを考えることは出来るだろ?」

 

紫「貴方はそうかもしれないけど、私の方は気が散って仕方無いわ さっさとやめなさい」

 

夜見「いや、中途半端に終わらせるのは気分が悪いからちょっとだけ待ってくれ もうすぐで終わる」

 

夜見はそう言ってもう少しだけレミリアの耳を掃除すると耳の中を軽く覗き込み、夜見は綺麗に出来たことに納得している様子だった。そして夜見は耳かきの棒を分解しようとした瞬間に夜見はあることを思い付き、耳かきの棒をじっと見つめた。

 

紫「夜見?どうしたのかしら?」

 

紫は急に夜見が静止して耳かきの棒を見つめていることを不思議に思って声をかけると、夜見は耳かきの棒を空気中に分解して紫にあることを聞いてきた。

 

夜見「なぁ、紫さん その百鬼夜行は人里に毎晩現れるのか?」

 

紫「毎晩かどうかはわからないけれど、藍が調べた数日は毎晩人里に入っていくのを見たらしいわ」

 

紫は夜見の先程の様子は何だったのか不思議に思いながらも夜見の質問に答えると、夜見は少し間を空けてこんなことを言い出した。

 

夜見「...それじゃあ、今夜は俺が人里に行こう」

 

すると夜見が何故か今夜は人里に行くことを言うと、紫はまさかと思ったことを夜見に聞いた。

 

紫「まさか、思い付いたっていうの?消える鬼を追い掛ける方法を」

 

夜見「あぁ」

 

夜見は軽く一言で返事をして消える鬼を追い掛ける方法を思い付いたことを伝えると、紫は一体どんな方法で鬼を追い掛けるのかが気になったが、そこは夜見の考えに任せて異変を解決してくれることを期待することにした。

 

紫「そう、それじゃあ頼んだわよ」

 

夜見「あぁ、必ず異変を解決させる」

 

紫「...でもその前に、今起きている異変を解決させましょうか」

 

しかし紫はいきなり夜見に向かって、今起きている異変を解決させようと言ってきた。すると夜見は紫に確認を取った。

 

夜見「...やっぱり、この頻繁に行われる宴会も異変か」

 

紫「えぇ、そうよ 一見何の害も無さそうな異変だけれど、異変であることに変わりはないわ」

 

夜見「それで?異変の犯人に検討はついているのか?」

 

紫「あら、貴方は既に異変の犯人を見ているわよ?今も近くにいる けれど、ただ見えていないだけよ」

 

夜見(見えていない?透明になっているってことか?)

 

夜見はそう思うと空気中の血を周りに拡げて異変の犯人がいないか確認したが、周りに異変の犯人がいるような様子を確認することが出来なかった。すると紫はそんな夜見の様子を見て、とあることを言った。

 

紫「私や霊夢なら普通に感じ取れるでしょうけど、どうやら貴方は能力の影響なのか、どうやら感じ取れないようね」

 

夜見「...どういうことだ?」

 

紫「貴方の能力は生を操るものでしょう?能力の意味をちゃんと理解すれば、答えは出てくるわよ」 

 

夜見(能力の...意味?)

 

紫にアドバイスを貰った夜見はアドバイスを元に自分の能力について考えてみると、ある考えが思い浮かび今度は血ではなく自分の霊力を拡げ始めた。そして夜見は目を瞑って自分の霊力に神経を集中させるとあるものを感じ取った。

 

夜見(神社の表に複数の霊力や妖力...そして隣の紫さんの妖力、レミリアさんの妖力を感じる)

 

それは神社の敷地内にいる人間や妖怪の霊力や妖力だった。そして夜見は1人1人の霊力や妖力が違うことや、その人間や妖怪のいる位置を把握していた。

 

紫「どうかしら?普段から私達は意識をしていなくても霊力や妖力を体から発しているのだけれど、それを感じ取ることが出来たかしら?」

 

夜見「...あぁ」

 

紫「それは良かったわね それで?何か不審な点には気付けたかしら?」

 

夜見「妖力が霧のように神社一帯に広がっている、つまりこの異変の犯人は...

 

そう言って夜見は手のひらを少し上の方に向けると、霊力を伝って辺り一帯に広がっている妖力の一部分を能力で乱した。すると辺り一帯に広がっていた妖力がどんどん集まっていき、1人の少女が姿を現して宙から落ちて尻餅をついた。

 

その少女は薄い茶色のロングヘアーで先の方を1つにまとめており、頭には赤い大きなリボンを着けていた。服装は白のノースリーブに紫のロングスカートを着ており、左手首からは黄色の球、右手首からは赤の三角錐、腰からは青の立方体の分銅を鎖で吊し、手には紫の瓢箪を持っていた。

しかしその少女の頭には少女の身長とは不釣り合いな長い捻れた角が2本生えており、左の角には青色のリボンを着けていた。

 

夜見「この妖怪だ」

 

紫「えぇ、正解よ」

 

?「いってて、あれぇ?一体何が起きたの?」

 

そして夜見が異変の犯人を見つけたことに紫が軽く拍手をしていると少女はゆっくりと立ち上がり、その少女は紫の姿を見ると紫に話し掛けた。

 

?「あ、紫じゃん 久しぶり」

 

紫「えぇ、久しぶり」

 

?「えっと?紫の隣にいる人間は紫の友達?」

 

紫「えぇ、そうよ」

 

?「へぇ、随分と変わった格好をした人間だね」

 

どうやら会話からすると少女と紫はどうやら知り合いらしく、少女は夜見のことを紫に聞くと夜見の目の前に来て手を伸ばして自己紹介をしてきた。

 

?「私は鬼の伊吹(いぶき)萃華(すいか) よろしくね」

 

夜見「...黒夜夜見だ」

 

こうして互いに軽く自己紹介をすると、夜見も手を伸ばして萃華と握手をした。そして夜見と萃華が握手を終えると、萃華は夜見に膝枕されているレミリアの姿を見て夜見にこう聞いてきた。

 

萃華「この吸血鬼は夜見の友達?それとも彼女さん?」

 

夜見「...友人だ」

 

萃華「へぇ、随分と仲がいい友達だね」

 

夜見「...あぁ、そうかもな」

 

そして萃華は夜見が自分に対して素っ気ない対応をすることを不思議に思っていると、萃華は話を盛り上げたいのか話の話題を変えた。

 

萃華「ところで話は変わるけどさ、さっきの私の能力を一時的に使えなくしたのって夜見の能力だよね?夜見が持ってる能力は一体何なの?」

 

夜見「...[生を操る]能力 生命に関する霊力や妖力に干渉できる」

 

そして夜見は萃華の質問に答えて軽く能力の説明をすると、萃華は頷いて理解をしている様子だった。

 

萃華「へぇ、だから私の能力を使えなくできたんだ 因みに私は[密と疎を操る]能力、さっきは密度を下げて霧になってたんだ」

 

夜見「...人を集めるのは、どうやったんだ?」

 

萃華「あぁそれはね、みんなの意識を集めて宴会を開かせてたんだ ほら、前の異変のせいで春が短くなったでしょ?だから私は能力を使って3日に1回、宴会を開かせてたんだ」

 

そして萃華は自分の能力をどう使って異変を起こしていたのかを説明すると、夜見は1回頷いて返事をして萃華にあることをお願いした。

 

夜見「...そうか でもな萃華さん、実は他にある異変が起きてるんだ 俺はその異変を早急に終わらせたいから、萃華さんは今の異変を止めてくれないか?」

 

萃華「え?そうだったんだ その異変って、紫も早く終らせたい異変なの?」

 

すると萃華は紫の方を向いてその異変は早く終らせたいのかと聞いて、紫がゆっくり頷くと萃華はとても重大な異変だと感じ取ったのか夜見と紫に向けてこう言った。

 

萃華「そっか、わかった 私はもう異変を終わらせるよ」

 

萃華はそう言って異変を終らせる宣言をして、能力で集めたみんなの意識を元に戻した。すると突然目の前に咲夜が現れたかと思ったら、咲夜は手首に日傘を引っ掛けたままレミリアをお姫様抱っこをしていて夜見に一礼をすると突然姿を消して何処かへ行ってしまった。

萃華はいきなり咲夜が現れたり消えたりしていたことに驚いていた様子だったが夜見と紫は咲夜の能力を知っているため、特に驚きもせずに夜見は血の翼を作り出し紫は空間に裂け目を作り出した。そして夜見が飛び立とうとした瞬間に紫は夜見を呼び止めた。

 

紫「夜見、ちょっと待ちなさい」

 

夜見「ん、どうしたんだ?紫さん」

 

紫に呼び止められた夜見は翼を動かすのを止めて紫の方を向くと、紫は夜見に向かってこう言った。

 

紫「深夜に人里へ行く前に少し話すことがあるから、深夜は玄関で少し待ってなさい わかったわね?」

 

夜見「...あぁ、わかった」

 

夜見がそう言って返事をすると、紫は夜見と萃華に向けて笑顔で手を振って裂け目の中へ入っていった。そして夜見は飛び立とうとする前に仮面を外すと、萃華に向かって別れを言った。

 

夜見「じゃあな、萃華さん またな」

 

萃華「え?あ、うん またね、夜見」

 

別れを言った夜見は仮面を被ると血の翼を羽ばたかせ飛び立ち、萃華は手を振って夜見を見送っていた。

 

夜見(どんな理由があろうと妖怪や外来人が、人里の人間に手を出すのは重罪だって紫さんは言ってたな それなら異変を起こした犯人には、しっかりと刑罰を受けてもらわないとな)




どうも皆さん、お風呂場の蓋です。
前回の投稿から1ヶ月以上経ってしまい、誠に申し訳ありません。
理由としてはゲームにはまってしまったのと定期テストが主な理由です。
後者の理由はともかく、前者の理由は完全に私のせいなのでなんとか改善していきたいです。
そして次回からは遂に、夜見が人里での異変の解決に向かっていきます。
よければ次回も見てください。

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