夜見「...ふぅ」
夜見は月夜をやっと倒した達成感と戦闘での疲労が混ざったため息をつき、魔力切れの身体を無理矢理動かして夜刀を引き抜いて立ち上がった。
そして夜見は夜刀を横に振って汚れを払って鞘に収めると月夜の腰に差してある白刀の鞘を引き抜き、地面に突き刺さった白刀を引き抜くと鞘に収めて腰に差した。
夜見(マントと仮面は...あった)
次に夜見は周りを見回して自分の仮面とマントを見つけるとフラフラと歩いて近付き、マントと仮面を拾い上げると仮面を被ってマントを羽織った。
夜見(さて...と、早く帰らないとな)
そして帰る準備を終えた夜見はフラフラと歩きながら月夜のすぐ側を通って森に入ろうとしたのだが、夜見は後ろから声をかけられた。
月夜「...何でだい?」
それはなんと、倒れたままの月夜からだった。
しかし夜見は驚く事はなくその場に立ち止まったのだが、身体がグラっと揺れると近くの木に手を置いて身体を支えた。
夜見「...何がだ?」
そして夜見は振り返らずに月夜に質問が一体何のことを聞いているのかを聞き返すと、月夜は微笑んで質問の意味を答えた。
月夜「
そう言って月夜は顔を左に向けるとそこには、夜刀が突き刺さって出来た細長い穴が地面に出来ていた。
実は夜見が夜刀で突き刺したのは月夜ではなく月夜の頭のすぐ横の地面であり、夜見が夜刀を振って落とした汚れは月夜の血ではなく地面に突き刺した時に付いた土だったのだ。
そして夜見は月夜の質問の意味を理解するとしばらく黙っていたのだが、ようやく口を開いたかと思うとこんな答えを出した。
夜見「...さぁな?」
月夜「さぁな?って、自分の行動なのにわからないの?」
夜見「...あぁ、そうだ」
月夜「...そう、わかったよ」
こうして夜見と月夜の会話が終わると夜見は足を動かそうとしたのだが、その瞬間に月夜は思い出したように夜見にあることを言った。
月夜「あと言い忘れる所だった GAMEは君の勝ちだから約束通り、俺の賭けた攫った人達は明日には特別な力で無かった事にして返しておくよ」
夜見「...そうか」
そして今度こそ夜見と月夜の会話が終わると夜見は森の中へ一歩足を踏み入れたのだが、その瞬間に月夜は更にもう1度夜見に声を掛けた。
月夜「何度も呼び止めて悪いけど あと1つだけ、聞いてもいいかな?」
夜見「...あぁ」
すると夜見も再び足を止めて返事をしたのだが、月夜はこんな意味不明な質問をした。
月夜「君は、こっち側だよね?」
夜見「...あぁ」
しかし夜見は月夜の質問の意味がわかったのかすぐに返事をしたのだが、更に夜見は言葉を続けてこんなことを言った。
夜見「ただ、月夜さんの思っているようなそっち側とは少し違う もしかしたら俺はその向こう側か、はたまた別なのかもしれない」
そして夜見はそう言い終えるや否や、足を動かすと手を木に置いて身体を支えながらゆっくりと森の奥へと進んでいった。
しかし夜見は森の奥へと進んでいくにつれて意識がだんだんと薄れていき、更には身体の痛みが鈍くなると同時に力がどんどんと入らなくなっていった。
夜見(不味い...な 早く帰って...少しでもさとりさん達を、安心させなきゃ...いけねぇのに)
そして夜見は地霊殿にいるさとり達の事を思いながら森の奥へとゆっくりながらも進んでいたのだが、遂には身体に力が完全に入らなくなってしまった。
夜見(まじ...か...)
すると夜見は身体を支えるために置いていた手が木から離れて前に倒れてうつ伏せになる筈だったのだが、夜見の身体はそのまま前に回って仰向けに倒れた。
夜見「ぐっ!」
夜見は身体に痛みは感じなかったのだが仰向けに倒れたことに驚いて思わず声を出すと、夜見の視界には見覚えのある天井と裂け目が映った。
夜見(あぁ、そうか)
そして夜見は何故仰向けに倒れたのかを理解すると裂け目がゆっくりと閉じていき、裂け目が閉じきるとある人物が夜見の顔を覗き込んだ。
紫「お疲れ様...って、貴方に言おうと思っていたわ」
それは勿論、[境界を操る]能力を持つ八雲紫だった。
そして紫はその場に正座で座ると夜見の姿を見て真剣な口調とは裏腹に呑気なことを言った。
紫「随分と派手にやられたわね、あの覚妖怪達が心配するんじゃないかしら?」
夜見「あ...ぁ、そうだ...な」
紫「...まぁ、正直貴方の心配なんて何一つしていないわ 私が呼んだ理由は、貴方が異変を解決しに行く前に頼んだことについてよ」
しかし紫は夜見の状態に関しては本当は何も思っておらず、ただ夜見に話があって裂け目に落としたのが本当の理由だった。
そして紫は本当に夜見の状態を気にも留めないで話を進めた。
紫「私は貴方が異変を解決しに行く前に、確か私はこう言った筈よ [重罪を犯した百鬼夜行は皆殺しにしなさい、百鬼夜行の大将のぬらりひょんも含めて]って」
夜見「確か...に、そう...言ったな」
紫「私が下手に直接外の世界の人間に手を下す訳にはいかないから、同じ外の世界の人間である貴方にぬらりひょんの殺害を頼んだ それなのに、貴方はどうしてぬらりひょんを殺さなかったのかしら?」
どうやら紫は夜見が百鬼夜行の大将であるぬらりひょん、すなわち月夜を殺していないことを何故か知っている様子だった。
そして夜見は月夜を殺さなかった理由をこう答えた。
夜見「俺は...罪を、重ねすぎた」
紫「...意味がわからないわ ちゃんとわかるように説明してちょうだい」
すると紫は夜見の意味不明な理由をちゃんと理解できるように説明を求めたが、夜見は理由と言えるかどうか怪しいことを言い始めた。
夜見「その...ままの、意味だ 俺...は罪を重ね、すぎてるんだ これ以上、罪を...重ねる訳には、いか...ない」
紫「...その罪を重ねすぎたっていうのは、貴方が前に言ってた罪の清算と何か関係があるのかしら?」
夜見「...あぁ」
そして紫は夜見の言っている意味が夜見の過去に関係しているという予想を言い当ててしまうと、紫は詳しい理由を聞くのは無理だと悟った。
すると紫は立ち上がって夜見を見下ろすと軽く殺気を放ちながら夜見に言った。
紫「これ以上の詮索はしないであげるわ でもその代わり、ぬらりひょんの後始末は最後までしっかりしなさい」
夜見「...あぁ、わかった すまないな」
紫「別に構わないわ」
紫はそう言って夜見のいる場所に裂け目を作り出すと夜見はその中に落ちていき、夜見が今度はうつ伏せになって着いた場所は地霊殿の目の前だった。
しかし夜見は身体を動かせない状況でどうやって地霊殿に入ろうかと中々働かない頭で考えていると、地霊殿の玄関と扉が開いたかと思うとそこには燐が立っていた。
燐「...おかえり、黒夜さん」
夜見「あぁ、ただ...いま」
燐が夜見に「おかえり」と言うと夜見はいつも通り帰った時と同じように「ただいま」と返したのだが、燐は夜見のボロボロな姿を見下すように睨みながら腕を組んでいて明らかに怒っている様子だった。
そして燐は夜見の姿をしばらく見ていたのだが、心配の声を掛けることはなかった。
燐「何してるの?そんな所に
夜見「そうしたいのは...山々だが、
燐「へぇ、そうなんだ じゃあ聞くけど、さとり様とこいし様との約束は?」
夜見「それは...」
すると夜見は燐に痛いところを突かれて何も言えないでいると、燐は大きなため息をついて微笑むと夜見を起き上がらせて肩を貸した。
燐「...わかってる、無茶しなきゃいけなかったんでしょ?まったく、黒夜さんは何度言われても聞かないんだから」
夜見「すま...ないな」
燐「いいんだよ、今日はゆっくり休んでね さとり様には、あたいから言ってあげるから」
夜見「...わかった、ありがとう」
そして夜見は燐に肩を貸してもらいながら地霊殿の中へ入って自分の部屋に着くと、燐は夜見をベッドに横にさせて仮面やマント、刀を外すと机の上にそれらを置いた。
燐「じゃあね、黒夜さん おやすみ」
夜見「...あぁ、おやすみ」
そう言って燐は夜見の部屋を出て静かに扉を閉じると、夜見は燐には聞こえなかっただろうが「おやすみ」と返してゆっくりと目を閉じた。
そして夜見が寝てから数時間が経った頃、夜見の部屋にある人物が静かに扉を開けて部屋に入るとゆっくりとベッドまで歩み寄った。
すると夜見の部屋に入った人物は夜見の身体でも揺すって起こすのかと思いきや、その場で上に跳ぶとそのまま夜見の腹に落ちてきた。
?「どーん!」
夜見「ぶはっ!?な、なんだ!?」
夜見は突然の腹への衝撃に驚いて目を覚まして上体を起こすと、夜見の腹に落ちてきた人物は夜見の上からすぐに降りてベッドのすぐ側に立つと夜見にあいさつをした。
こいし「おはよう、お兄ちゃん♪」
夜見「な、なんだ、こいしさんか 起こすなら普通に起こしてくれ」
こいし「えへへ、ごめんなさ〜い」
夜見「はぁ、まったく」
夜見はこいしの豪快な起こし方に呆れながらもこいしの頭に手を伸ばして頭を撫でると、こいしはとても嬉しそうな様子だった。
こいし「えへへ♪ありがとう、お兄ちゃん」
夜見「あぁ、どういたしまして」
そして夜見はこいしの頭を撫でていた手をゆっくりと離すとこいしは少し後ろに下がったので、夜見はベッドから降りて立ち上がった。
するとこいしは夜見の姿を見た瞬間にこんなことを言った。
こいし「あ、お兄ちゃん 服がボロボロだよ」
夜見「ん?あぁ、そうだな このまま着ている訳にもいかないから、早く着替えないとな」
夜見はそう言って自分が着ているボロボロの制服の腕やズボンを見ているとこいしは夜見の部屋から出て扉を閉じたのだが、扉の向こう側からこいしの声が聞こえた。
こいし「着替え終わったら出てきてね、お兄ちゃん!」
夜見「あぁ、わかったよ」
そして夜見は返事をしながらクローゼットの中から黒い服を取り出すと一旦ベッドの上に置き、ボロボロの制服を脱ぎ始めると扉の向こう側から再びこいしの声が聞こえてきた。
こいし「お兄ちゃん、まだ〜?」
夜見「まだだ、もう少し待っててくれ」
こいし「は〜い」
すると夜見はこいしを少しでも待たせないように少し急いで制服を脱いだのだが、そこで夜見は月夜とのGAMEで負った傷がもう治っていることに気が付いた。
夜見(もう、治っていたのか 起きてから身体はちゃんと動くし、霊力は回復しているんだろうな)
夜見はそんなことを思いながら黒い服に着替え終えると、ボロボロの制服を片腕に干すように持って部屋の扉を開けた。
するとこいしは夜見の姿が見えた瞬間に腰辺りに腕を回して抱きついてきた。
こいし「もう!遅いよ、お兄ちゃん」
夜見「すまないな、こいしさん これでも急いで着替えたんだ」
こいし「あ!私、服持っていってあげる!」
そしてこいしはそう言うと夜見から離れて夜見の制服を手に取ると走って1階へと降りていった。
するとこいしの姿が見えなくなった瞬間に夜見の後ろから扉が開いた音が聞こえたので夜見は振り返ってみると、ちょうど真正面に見える扉の前にさとりの姿が見えた。
さとり「黒夜さん、やっと起きたんですか もうお昼過ぎですよ?」
夜見「え、そうなのか?それはすまないな」
さとり「でも、ちょうど良かったです さっき黒夜さんのご飯が出来たばかりですから、冷めない内に食べてください」
夜見「あぁ、わかったよ いつもありがとう」
そう言いながら夜見はさとりの目の前まで歩くと、さとりが夜見の為に扉を開けたので夜見はそのまま部屋の中へ入った。
そしてさとりの言った通り夜見の席には食事が置かれており、夜見は自分の席に着くと目の前の席にさとりが座った。
夜見「いただきます」
夜見は手を合わせて食事のあいさつをすると箸を手に取って目の前の料理を食べ始めたのだが、さとりは夜見が料理を食べている様子を黙ったままジッと見ていた。
夜見(...何でそんなに見てくるんだ?少し食べにくいな)
さとり「...美味しい、ですか?」
夜見「ん?あぁ、美味しいよ」
さとり「それは良かったです」
先程黙っていたさとりが口を開いたかと思ったらただ夜見に料理の感想を聞いただけで、夜見が正直に料理の感想を言うとさとりは一言だけ言ってまた黙ってしまった。
しかし、しばらくするとさとりは再び口を開いた。
さとり「お燐から黒夜さんが帰ってきた時の話を聞きました 酷い怪我をしていたそうじゃないですか」
夜見「...」
さとりが夜見が帰ってきた時のことを喋ると夜見は料理に伸ばしていた箸をピタリと止め、すぐに箸を置いてさとりに頭を下げた。
夜見「無茶をしないという約束を破って、すまなかった」
さとり「...黒夜さん、頭を上げてください」
さとりがそう言うと、夜見はさとりが怒っているのではないかと恐る恐る頭を上げた。
そして頭を上げた夜見はさとりを見てみると何故かさとりは笑みを浮かべていた。
さとり「別に、怒ってはいません 黒夜さんは何かをする為に自分を犠牲にするような人だというのは、みんなわかっていますから」
夜見「...そう、か」
さとり「...それに、お燐がこう言ってたんですよ?[黒夜さんは異変を止める為にどうしても今回は無茶をしなくちゃいけなかったから、どうか黒夜さんを怒るのはやめてください]って」
夜見(そうか、燐さんが... 後で、ちゃんとお礼を言わないとな)
夜見は心の中が燐への感謝の気持ちでいっぱいになっていると、さとりは箸を止めた夜見に向かって言った。
さとり「さぁ、もうこの話は終わりにしましょう 料理が冷めてしまっては、勿体無いですから」
夜見「...あぁ、そうだな」
そして夜見は再び箸を手に取ると先程より少し速く料理をどんどんと自分の口へと運んでいき、さとりはそんな光景を満足そうに見ていた。
すると夜見の目の前にあった料理はみるみるうちに無くなっていき、最終的には料理が乗っていた皿が残って夜見は手を合わせていた。
夜見「ごちそうさま」
さとり「ふふ そんなに自分が作った料理が美味しそうに食べられると、料理を作ったこちらはとても気持ちがいいですね」
さとりはそう言いながら夜見の目の前にある皿を片付けようと立ち上がったのだが、さとりが回り込む間に夜見は皿を重ねてキッチンに持っていこうとした。
しかしさとりは夜見の服の裾を掴んで夜見を止めると、夜見は振り返ってさとりの方を見た。
さとり「黒夜さん、私が片付けるから大丈夫ですよ?」
夜見「いや、俺が片付けておくよ いつもお世話になっているからな」
さとり「何を言っているんですか、お世話になっているのはこちらの方ですよ お皿は私が片付けておくので、黒夜さんはゆっくりしていてください」
夜見「いやいや、さとりさんは後で書類の整理とかしなきゃいけないだろ?それなのに俺がゆっくりしているわけにはいかないよ」
さとり「今日の分の書類は少ないので大丈夫です だから私が...
こうして夜見とさとりはお互いに自分が皿を片付けると言い合っていたのだが、最終的には2人で片付けるという話になってキッチンで肩を並べて皿を洗っていた。
そしてさとりはあることが気になると、その事について夜見に聞いた。
さとり「そういえば、黒夜さんは今日も出掛けるつもりでいるんですか?」
夜見「ん?あぁ、そうだな 少し用事があるから出掛けなくちゃいけないな」
すると夜見は今日も外へ出掛けることをさとりに言ったのだが、さとりは少し
さとり「...危ない、ことですか?」
夜見「...危なくない、とは言い切れないな でも、今度こそ無茶をするつもりは無いから大丈夫だ」
さとり「...今度こそ、約束...守ってくださいよ?」
夜見「あぁ、わかったよ」
そして夜見がそう言ったと同時に皿洗いを終えると手に付いている水をタオルで拭い、安心させるようにさとりの頭を優しく撫でた。
すると頭を優しく撫でられたさとりは撫でてくれている手を両手で包むように掴むと、少し力を入れて手を放さないようにギュッと握って夜見に笑顔を向けた。
さとり「行ってらっしゃい、黒夜さん 私、信じてますから」
夜見「...あぁ、行ってくる なるべく早く帰るようにするよ」
夜見がそう言って笑顔を返すとさとりは夜見の手を放したので、夜見はキッチンを出ると一旦自分の部屋に戻った。
すると夜見は自分の部屋で夜刀と白刀を腰のベルトに差し、マントを被って仮面を手に持つとエントランスへと向かった。
そして夜見はエントランスに着くと外に出るために玄関に手を掛けたのだが、まるでその時を待っていたかのようにいつもの声が後ろから聞こえてきた。
こいし「お兄ちゃーん!」
夜見「あぁ、こいしさっ!?」
夜見はこいしの声が聞こえると後ろに振り返ったのだが、こいしは夜見が振り返ったのと同時に首に手を回すように飛びついた。
しかし夜見はこいしを受け止める準備をしていなかったので後ろに仰け反ってしまい、夜見の後頭部が玄関の扉にぶつかってしまった。
夜見「あだっ!」
こいし「お兄ちゃーん、だ〜い好き♪」
そしてこいしは夜見に早く甘えたかったのか、夜見が頭を扉にぶつけたことには気付いていない様子だった。
すると夜見はこいしがいきなり飛びついてきたことを軽く怒ろうとしたのだが、こいしのとても嬉しそうな顔を見ると怒る気にはなれなかった。
夜見「...まったく、よしよし 俺も大好きだ、こいしさん」
夜見はそう言いながらこいしを抱きしめ返して頭を撫でていると、こいしはより一層嬉しそうな顔をして夜見の頬にキスをした。
チュッ
こいし「えへへ♪行ってらっしゃい、お兄ちゃん」
夜見「あぁ、行ってくるよ」
そう言って夜見はこいしを下ろすと手に持っていた仮面を被り、玄関の扉を開けて外に出ると旧地獄街道を通ってそのまま地上へと向かった。
そして夜見は用事の事を考えながら歩いているといつの間にか地上に出たのだが、何故か夜見は特に目的地を定めないで考え事をしたまま森の中へ歩いていった。
夜見(一体、どうすれば...)
しばらく夜見は森の中を歩いていたのだが、ふと微かに聞こえる何かの音が耳に入るとその音に意識が向いた。
すると夜見は考え事を一旦やめて微かに聞こえる音の方へと歩いていたのだが、音が徐々に鮮明に聞こえてくるとその音は幻想郷では聞くことは無い筈の音だということに気付いた。
夜見(...そこにいるのか)
夜見は音が聞こえる方へ歩いていると前にチルノ達と遊んだ開けた場所が見えてきたのだが、それと同時にその場所の中心にある人物が何かに座っている後ろ姿も見えてきた。
そして夜見が開けた場所に出た瞬間に中心にいる人物は夜見に気付いたようで、後ろを振り向くと夜見に話しかけた。
月夜「やぁ、昨日の怪我は全部治ったんだね」
夜見「...あぁ、そう言う月夜さんもな」
それは昨日の夜中に会った時と同じようにバイクに乗っているマントを身に着けた月夜であり、更には能力で直したのか服は元通りになって傷も治っていた。
すると月夜は先程から音を鳴らしているバイクのエンジンを切ってバイクから降りたかと思うと、何故かゆっくりと夜見に近付き始めたので夜見は警戒をした。
夜見「それで、月夜さんは何故こんなところに?」
月夜「いや、特に意味は無いよ それに、そういう君もどうなんだい?バイクのエンジン音が聞こえたから来たんだろうし、俺に何か用があるんでしょ?」
夜見「...あぁ」
月夜「やっぱりね」
そして月夜はそう言った直後には左腕の袖に仕込んでいたナイフを左手に持っていたので、夜見は白刀の柄を右手で持っていつでも引き抜けるように構えた。
すると月夜はその場で足を止めて左手でナイフを
月夜「アハハハハハ!冗談だよ、冗談!君に敵わないのは昨日でのGAMEで十分理解してるよ」
月夜はそう言うと左手に持っているナイフを左腕の袖に収めたのだが、夜見は警戒は緩めずに右手で掴んでいた白刀の柄をゆっくりと放した。
そして月夜は夜見が白刀から手を放したのを見ると、自分に一体何の用があるのかを聞いた。
月夜「それで?俺に用があるらしいけど、それは一体どんな用なんだい?」
夜見「...単刀直入に言う、月夜さんはこれから人里の人に手を出したという重罪を償ってもらう」
どうやら夜見の月夜への用とは、人里の人に手を出したという重罪を犯した月夜に罪の償いをさせることだったようだ。
しかし、月夜は罪を償うという話を聞くと夜見に聞き返した。
月夜「罪を償う...ねぇ?つまり俺は檻の中に入って、反省でもするってこと?」
夜見「いや、月夜さんが反省したところで重罪を犯したことは無かったことにならない だから月夜さんには重罪の分、何か人の役に立ってもらう」
月夜「要するに、人の役に立つ仕事をしろってことね それで、俺は一体何の仕事をすればいいんだい?」
夜見「別に難しい仕事ではない 案内する」
夜見はそう言って月夜のすぐ側を通って森に入ろうとしたのだが、月夜は夜見の肩に手を置いて夜見を止めるとバイクを指差して言った。
月夜「道案内するんでしょ?だったら、一緒にバイクに乗ってよ」
夜見「...確かに、その方が早いか」
夜見は月夜の提案に乗ると方向転換してバイクに近付くと何故か月夜が乗る前にハンドルを握って乗ったのだが、月夜は夜見の後ろに乗ったところで質問をした。
月夜「運転できるの?」
夜見「あぁ、一応な しっかり掴まってろよ」
夜見はそう言うとバイクのエンジンを入れ始めたので月夜は夜見の腰に腕を回すように掴まると、夜見はハンドルを捻ってバイクを発進させて森の中へと入っていった。
すると夜見は森の中でバイクの速度をどんどん上げていくと気付いた頃には時速は3桁を出していたのだが、木には一切当たることはなく森の中を縦横無尽に走っていた。
月夜「よくこのスピードで走れるね、本当はかなり乗り込んでたんじゃないのかい?」
夜見「...あまり喋ると、舌噛むぞ」
そしてしばらく夜見と月夜は森の中を走っていると森を抜けて霧がかかった湖に出たのだが、夜見はバイクの速度を緩めないでそのまま真っ直ぐ湖に向かっていった。
月夜「ねぇ、そのまま走っていると湖に落ちるよ?」
夜見「あぁ、わかってる」
すると夜見はバイクが湖まであと約3mという辺りで目の前に血の坂を作り出し、すぐに血の坂を登りきると夜見と月夜を乗せたバイクは宙に飛んで湖の上を通り過ぎた。
そして夜見と月夜は湖の向かい側に着地したのだが、夜見はバイクの速度を更に上げて走っていると紅魔館が徐々に見えてきた。
美鈴(...ん?何か来る)
一方、紅魔館の門の門番をしている美鈴は前からどんどん近付いてくる気配を察知すると構えを取ったのだが、近付いてくる気配である夜見の姿が見えると構えを解いた。
すると夜見は門まであと数mになるとバイクのハンドルを思いっきり横に切りながらブレーキをかけると、バイクは大きな音を鳴らして美鈴の前で止まった。
美鈴「こんにちは黒夜さん、えぇっと...そちらの方は?」
そして美鈴は[気を使う]能力で月夜の気でも感じ取ったのか月夜の姿がちゃんと見えている様子であり、夜見と月夜はバイクを降りると夜見がバイクを停めながら紅魔館に来た理由を話した。
夜見「こんにちは美鈴さん、実はこいつの事でレミリアさんに話があってな 2人で入るけど大丈夫か?」
美鈴「えぇ、大丈夫ですよ どうぞ」
夜見「ありがとう、美鈴さん」
すると美鈴が紅魔館の門を開けたので夜見は美鈴にお礼を言って門を通ると、月夜は美鈴に会釈をして夜見に続いて紅魔館の中へ入っていった。
そして夜見と月夜は紅魔館の廊下を歩いていてレミリアの部屋に向かっていたのだが、月夜は真っ赤な廊下をしばらく見回すと夜見にこんなことを聞いた。
月夜「ねぇ、この屋敷ちょっと悪趣味じゃないかい?こんな真っ赤な廊下なんて」
夜見「別に内装なんて住んでる人次第だろ 月夜さんがとやかく言う権利は無い」
月夜「いや、確かにそうだけど...明らかに目に優しくないでしょ」
夜見「見慣れれば問題ないだろ っと、もう着いたか」
こうして夜見は月夜と話しながら歩いているとすぐにレミリアの部屋の前に着いたようで、夜見が扉の前で足を止めると月夜も足を止めた。
しかし夜見はすぐにレミリアの部屋の扉をノックをせずに、振り返って月夜の方を向くとレミリアの部屋に入る時の事を話し始めた。
夜見「先に少し話をするから、月夜さんは一旦部屋の外で待っててくれ それと、部屋に入る時にはできるだけ気配を感じ取れるようにして欲しいんだが...できるか?」
月夜「まぁ、別にできないことはないよ ほら、早く話をしてきたらどうだい?」
夜見「あぁ、そうだな」
すると月夜は扉のすぐ横の壁に背中を向けてもたれかかり、夜見は扉を軽くノックをすると扉の向こうからレミリアの声が聞こえてきた。
レミリア「いいわよ、入りなさい」
そしてレミリアに入室許可を貰った夜見は扉を開けるとレミリアは部屋の中央にある紅い椅子に足を組んで座っており、レミリアは夜見の姿が見えた瞬間に顔に微笑みを浮かべた。
レミリア「あら、夜見だったのね 今日はどうしたのかしら?」
夜見「レミリアさん、俺に異変の後や宴会の時に紅魔館の執事にならないかって話をしただろ?」
すると夜見はいきなりレミリアが前に言っていた紅魔館の執事の件のことを話し始め、その件の話を出された瞬間にレミリアは顔を少し赤く染めて夜見から視線を逸らすと頬杖をついた。
レミリア「えぇ...言ったわね それが、どうしたっていうの?」
夜見「レミリアさんはメイド長の咲夜さん以外にも執事がいて欲しいのかと思って、今日は執事として雇って欲しい人を連れてきたんだ」
レミリア「え?あぁ...そうなのね それなら連れてきなさい」
夜見(ん?何を落ち込んでいるんだ?)
そして夜見はレミリアがいきなり落ち込んだような様子になった事に疑問を持ったが特に気にすることはなく、振り返って扉の方に向かうと廊下に顔を出して月夜を呼んだ。
夜見「月夜さん、入ってこい」
月夜「ん?思ったより早かったんだね」
月夜はそう言いながら壁にもたれかかりながら左手で左腕に仕込んであるナイフを玩んでいたが、月夜は夜見に部屋に入るように言われるとすぐにナイフを左腕の袖に収めてレミリアの部屋に入った。
レミリア「夜見、その人間が今日から私に付き従うというのかしら?」
しかしレミリアは月夜の姿を見るなり月夜の事を怪しんだのか夜見にそんなことを聞いてきたのだが、逆に夜見はレミリアに聞き返した。
夜見「あぁ、不満か?」
レミリア「...いえ、そういう訳ではないわ」
するとレミリアはそう言って視線を夜見から月夜へ向けると、レミリアは月夜とお互いに自己紹介を始めた。
レミリア「はじめまして 私の名前はレミリア・スカーレット、この紅魔館の主をしているわ」
月夜「これはご丁寧にどうも、俺の名前は白明月夜 とりあえずさっきの夜見くんとレミリアちゃんの会話から察するところ、俺はレミリアちゃんの下で働くってことでいいのかな?」
レミリア「えぇ、そうよ わかっているなら、私の呼び方には注意することね」
レミリアは先程月夜に[レミリアちゃん]と呼ばれたのが癪に障ったのか少し殺気を放ちながらそう言うと、月夜はレミリアの殺気を感じて改めてレミリアを呼び直した。
月夜「わかったよ、お嬢 これでいいだろ?」
レミリア「...まぁ、いいわ」
レミリアは月夜からの態度に不満があるのか少し不機嫌そうな様子だったが、とりあえず納得をして殺気を放つのを止めて指を鳴らすと正面に咲夜が現れた。
咲夜「お嬢様、どのようなご用件でしょうか?」
レミリア「咲夜、そこの白い格好をした人間が今日から私の執事となったわ だからあの人間を連れてって執事服を用意してあげなさい」
咲夜「承知しました」
月夜「え?ちょっと待
すると月夜は何かを言おうとしていたが咲夜の姿が消えると同時に、月夜も咲夜に連れて行かれたのか姿が消えてしまった。
そして夜見は昨日紫に言われた通りに月夜の処理を終わらせると、帰るために振り返ってレミリアの部屋を出ようとしたのだがレミリアに呼び止められた。
レミリア「待ちなさい、夜見」
夜見「ん?どうしたんだ、何か依頼でもあるのか?」
夜見はレミリアに呼び止められると何か依頼を頼まれるのかと思い、振り返りながらそう言ったのだがレミリアは夜見が振り返った瞬間にこう言った。
レミリア「...いえ、やっぱりなんでもないわ」
夜見「ん、そうか?別に遠慮しなくてもいいぞ」
レミリア「いえ、大丈夫よ 帰って構わないわ」
夜見「...そうか じゃあな、レミリアさん」
レミリア「えぇ、さようなら」
そして夜見はレミリアの部屋を出ると真っ直ぐ地霊殿へと戻って行ったのだが、レミリアはしばらくある事を考えていた。
レミリア(あの人間は恐らく...だったら、なんであの子は?)
どうも皆さん、お風呂場の蓋です。
今回は月夜とのGAMEが終わった後の月夜の話でした。
元々月夜も最初に思いついた時には紅魔館のメンバーに入れようと思っていたのですが、よく考えてみればオリジナルのキャラが異様に紅魔館に偏ってるなと思いました。
それと、今回は前回よりも早めに書き終えれて良かったと思いました。
よければまた次回も見てください。