心を閉ざした少年と少女   作:お風呂場の蓋

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第48話 確かに言った

今から帰ろうとしている夜見の前に現れた月夜は白いマントを身に着けた姿では無く、白い執事服を着こなして手提げ袋を持っていた。

 

月夜「それで、君は一体何をしているんだい?」

 

夜見「依頼を終わらせて、帰ろうとしている最中だ」

 

夜見が月夜の質問に答えると月夜は口元を緩めてニヤリと笑い、夜見にある提案した。

 

月夜「それじゃあ、少し付き合ってくれないかな メイド長に買い出しを頼まれたんだけど、あいにく店の場所がわからなくてね」

 

夜見「...あぁ、別に構わないぞ」

 

月夜「良かった、助かるよ それじゃあ早速、八百屋に案内してくれないかな」

 

夜見「あぁ、わかった」

 

夜見は地霊殿に帰っても特にやることも無いので、月夜が出した御使いに付き合うという提案に乗ることにした。

そして夜見は振り返って再び人里の奥に向かって歩き出すと、月夜は夜見の横に並んで歩き始めた。

 

月夜「いやぁ、偶然とはいえ君に会えて良かったよ あのメイド長、まさか店の場所を言わないなんてね」

 

しばらく歩いていると月夜は買い出しを頼んだ咲夜の愚痴をこぼし、夜見は咲夜が何故そんなことをしたのかを予想して言った。

 

夜見「おそらく咲夜さんは、何処に何があるかを把握させたかったんじゃないか?」

 

月夜「あ〜、なるほどね これからも買い出しをさせるなら、何処に何があるか覚えさせた方がいいもんね」

 

夜見「それで、ちゃんと覚えているのか?」

 

月夜「まぁ、軽くは覚えてるよ お、八百屋発見」

 

夜見と月夜は話していると思ったより早く八百屋の前に着き、月夜は八百屋の店頭にいる男性に近付いて声を掛けて何か話し始めた。

そして月夜は男性にお金を渡して店頭に並ぶ野菜を手提げ袋の中に入れると、上機嫌な様子で夜見のもとへ戻った。

 

月夜「いやぁ、中々いい品揃えだね こんなに良い野菜は久々に見たよ」 

 

夜見「そうか、それは良かったな それで、他には何を?」 

 

月夜「いや、頼まれたのはもう買い終えたよ 野菜の少し不足してた分を買うように頼まれただけだから」

 

夜見「そうか、じゃあ帰らせてもらうぞ」

 

どうやら月夜の御使いはすぐに終わるようなものだったらしく、買い物に付き合い終えた夜見は(きびす)を返すと月夜に肩を掴まれた。

 

夜見「...なんだ?買い物には付き合い終えたぞ」

 

月夜「いやいや、何を言ってるの?」

 

月夜は夜見の言ったことを不思議に思った様子で首を傾げ、夜見の肩から手を離すと夜見に向けてこう言った。

 

月夜「付き合ってもらったのは頼まれた買い出しだよ?つまりは御使いなんだから、君に付き合ってもらうのは[家に帰るまで]だよ」

 

夜見「...つまり、最初から帰るまでの話し相手になってもらおうと?」

 

月夜「アハハ、察しがいいね その通りだよ」

 

夜見は月夜の言ってることは少し無理矢理な気がするが、月夜が確かに言ったのは御使いの事で、しぶしぶといった様子で月夜に言った。

 

夜見「...わかった、約束は約束だからな」

 

月夜「良かった、納得してくれて じゃあ帰ろうかって言いたい所だけど、何処に何があるかを把握するために、少し歩き回ろうか」

 

夜見「あぁ、今後も月夜さんは御使いを頼まれるだろうしな」

 

そして夜見と月夜は人里の中を歩き回り、ある程度回り終えて紅魔館に戻ろうとすると、夜見は月夜にあることを聞いた。

 

夜見「月夜さん、紅魔館での初日はどうだった?」

 

月夜「ん、初日かい?初日は最初から結構大変だったよ まず執事服に着替えると何百枚のも窓拭き その後はお嬢の好みの紅茶の作り方、お嬢妹の遊び相手、仕事をサボった子どもメイドの捜索とか 最初は普通、見学させるもんでしょ」

 

夜見「まぁ、習うより慣れろってことだろう 紅魔館での仕事量は多いだろうからな」

 

月夜「いやいや、多いって量じゃないよ てか何でメイド長は...

 

すると月夜は口から紅魔館での初日の生活の愚痴を大量に出し始め、夜見は月夜から出続ける愚痴をしっかりと聞いて相槌を打っていた。

そして月夜は愚痴をひたすら出し続けている中で、ある愚痴が夜見を反応させた。

 

月夜「しかも何故か男装させられるし、妖精メイドは使えないどころか邪魔をする方が多いし...」

 

夜見「...ん?月夜さん、さっき何て言った?」

 

月夜「え?だから、妖精メイドが仕事の邪魔を...

 

夜見「違う、その1つ前 男装って言わなかったか?」

 

月夜「ん?いや、執事服なんだから男装になるでしょ」

 

月夜は当たり前かのように執事服を着ていることを男装と言い、それを聞いた夜見はまさかと思って月夜にある確認をした。

 

夜見「まさか、月夜さんは女性なのか?」

 

月夜「...いや、今更何を言ってるの?どう見たって女でしょ」

 

夜見(いや、どう見たって...)

 

そして夜見は月夜をよく見てみると月夜の睫毛(まつげ)は少し長く、指は男性と違って細く綺麗で女性によく当てはまるような特徴が見られた。

 

月夜「...まさかとは思うけど、俺のことを男だと思ってた?」

 

どうやら月夜は普通に女性として見られていたと思っていたらしく、夜見に男性として見ていたのかどうかを少女の声で聞いた。

そして夜見は女性かと聞いてしまった以上、嘘をついてもばれてしまうので首を縦に振って正直に答えた。

 

夜見「すまない、正直男性だと思っていた」

 

月夜「...ぷっ、アハハ!やっぱり!?いつも男みたいな言動してるし、勘違いするのは仕方ないよ!」

 

だが月夜は別に男性と勘違いされたことを気にしている様子は無く、寧ろ笑いながら勘違いをするのは仕方がないと言い始めた。

しかし夜見の方は勘違いをしたことを気にしているようで、誠意を込めた謝罪の言葉を月夜に送った。

 

夜見「...本当に、すまない」

 

月夜「いやいや、別にいいって 俺も勘違いさせちゃってたし、お詫びとして女って証拠を見せてあげようか?」

 

月夜はニヤニヤと笑いながらそう言うとネクタイを緩めて襟元を指で引っ張り、胸元に空間を作ると反対の手でその空間を指差した。

すると夜見は月夜のそんな行動に呆れ、ため息をついて立ち止まると月夜も同様に立ち止まった。

 

夜見「...公衆の面前でそんなことをするな、恥ずかしくないのか?」

 

月夜「君の前だったら、別に?」

 

夜見「...はぁ、何を馬鹿なことを」

 

夜見は月夜の返答にも呆れてしまって再びため息をつき、月夜へ手を伸ばすと月夜の手を掴んで襟元を引っ張っている指を外した。

更に夜見は丁寧に月夜が緩めたネクタイを締め直してあげると、月夜は一瞬驚いた顔をするがニヤニヤと笑い直した。

 

月夜「ふふっ、いいのかな〜?折角のチャンスだったのに〜」

 

夜見「何がチャンスだ、そもそも興味なんか無い」

 

月夜「ふ〜ん、紳士なんだね」

 

夜見「別に、そうでも無い」

 

そして夜見は素っ気無い返事をすると門の方向へ向き直って歩を進め、月夜も一瞬遅れて夜見と同じように歩き出すと夜見の横に並んだ。

しばらくして夜見と月夜が門に着いて人里から出ると、夜見は紅魔館がある方向へ進もうとしたのだが月夜に腕を掴まれた。

 

夜見「紅魔館に戻るんじゃないのか?」

 

夜見は腕を掴まれると振り向いて月夜に確認を取ったのだが、月夜は紅魔館がある方向とは違う方向に指を差しながら言った。

 

月夜「そこにバイク置いたんだ、一緒に乗ろうよ」

 

夜見「...あったのか」

 

夜見は月夜が指差した方向を見てみると本当に月夜のバイクが置いてあり、夜見は歩く方向を月夜のバイクに変えると月夜は腕を放した。

すると月夜は夜見より先にバイクの元へ向かって鍵でエンジンを掛け、バイクから少し離れると夜見にバイクに乗るように(うなが)した。

 

月夜「さぁ、どうぞ」

 

夜見「...あぁ」

 

そして夜見は月夜に促されるままバイクに乗ると月夜は後ろに乗り、夜見は月夜が身体に腕を回してきた所でバイクを発進させた。

 

それからしばらく経つと夜見と月夜は既に湖を通り過ぎており、あと少しで紅魔館の門に着く所まで来ていた。

そこで夜見は、紅魔館の門の前で美鈴以外にもう1人ある人物がいることに気付いた。

 

夜見(あれは...咲夜さん?)

 

その人物とは紅魔館のメイド長を務めている咲夜であり、手に懐中時計を持って時間を確認しているようだった。

そして美鈴はバイクに乗っている人が夜見と月夜だということに気付くと、懐中時計を見ている咲夜に声をかけた。

 

美鈴「咲夜さん、帰ってきましたよ」

 

咲夜「えぇ、わかってるわ」

 

美鈴「でも、何故か黒夜さんも一緒なんですよ」

 

咲夜「黒夜様が?」

 

すると咲夜は顔を上げたがバイクは既に数m辺りまで来ており、夜見がブレーキをかけると後ろに乗っていた月夜が降りた。

 

月夜「やぁ、メイド長 ちゃんと買ってきたよ」

 

そして月夜はそう言いながら咲夜に手提げ袋を差し出したのだが、咲夜がその手提げ袋を受け取った瞬間に何かを叩く音が鳴った。

すると咲夜の手には手提げ袋ではなく金属製の丸いおぼんを持っており、月夜はその場でうずくまって手で頭を抑えていた。

 

月夜「いっ!つつ... なんで、いきなり叩くんだい?」

 

咲夜「叩かれる理由は、貴方が一番わかってるでしょう?」

 

月夜「え、理由?...夜見くんを連れて来るのは駄目だったとか?」

 

月夜はそう言いながら頭からゆっくり手を離して立ち上がったのだが、また何かを叩く音が鳴ると再びうずくまって頭を抑えた。

そして咲夜は月夜を怒りの眼差しで見下ろしながら、月夜の頭を叩いた理由を言った。

 

咲夜「正解は、黒夜様に苦労をかけさせたからよ」

 

月夜「...え?いやいや、別に苦労ってほどじゃないでしょ」

 

月夜がそう言って顔を上げると咲夜は能力で時を止めておぼんを振り下ろすが、おぼんは月夜に当たる寸前に夜見に腕を掴まれて止まった。

 

咲夜「なっ!?く、黒夜様!?」

 

夜見「咲夜さん、流石に「な、何故!?どうして黒夜様が動いているのですか!?」

 

咲夜は時が止まっている中で黒夜が動いていることに驚くと、思わず夜見の言葉を遮ってどうやって動いているのかを聞いた。

すると夜見は咲夜に言葉を遮られたことに対してため息をついたが、咲夜の腕を放すと何故動けているのかを簡潔に言った。

 

夜見「俺の能力だ」

 

咲夜「の、能力ですか?でも確か黒夜様の能力は...まさか!?」

 

夜見「あぁ、前の宴会で見せた能力の無効化だ 霊力で自身を覆って咲夜さんの拡げた霊力を乱せば、咲夜さんの能力の影響を受けない」

 

咲夜「なるほど、そういうことだったのですか」

 

そして咲夜は夜見が止めた時の中で動ける理由に納得して頷いていると、夜見は先程咲夜に遮られてしまった言葉を言った。

 

夜見「それに咲夜さん、流石に何度も叩くのはやりすぎだと思う」

 

咲夜「いえ、苦労をかけさせたのは事実です それも、お嬢様の友人である黒夜様にですし...これくらいは当然です」

 

しかし生真面目な性格の咲夜は先程のことを当然だと言い、夜見は咲夜を納得させるために人里のことを簡潔に話した。

 

夜見「別に俺自身苦労は感じてない、そもそも御使いは自分の意思で付き合ったんだ」

 

咲夜「...え、ご自身の意思でですか?」

 

夜見「あぁ、そうだ」

 

すると夜見は御使いは自分の意思で付き合ったと言ったのだが、もちろん咲夜は御使いに付き合った経緯などは知らない。

なので夜見と咲夜の自分の意思で付き合ったの捉え方が合う訳が無く、夜見と咲夜の思っていることがズレてしまった。

 

夜見(御使いに付き合ってと言われて、俺は[自分の意思]で了解したからな)

 

咲夜(まさか黒夜様が[自分の意思]で御使いを手伝ってくださるなんて...  まったく、咲希は見習って欲しいわ)

 

こうして夜見の思った通りでは無いが咲夜は夜見の言葉に納得すると、能力を解除して止めていた時の流れを元に戻した。

すると月夜と美鈴は夜見が一瞬で移動したように見えて驚いていたが、咲夜は月夜の前に再び立つと月夜を見下ろしながら言った。

 

咲夜「今回は黒夜様の厚意に免じて許してあげるわ、次はないわよ」

 

そして咲夜は姿を消したが月夜と美鈴は一体何の事かよくわかららず、そもそも夜見が一瞬で移動した理由も気になっていた。

けれど月夜と美鈴はなんとなく夜見が何かをしてくれたのだろうと察し、月夜は立ち上がると夜見にお礼を言った。

 

月夜「えっと...君が何かしてくれたんでしょ?ありがとうね」

 

夜見「別に、大したことはしてない それと長居は無用だから、そろそろ帰らせてもらうぞ」

 

美鈴「あっ!ちょっと待ってください!」

 

夜見「ん、どうした?」

 

夜見は帰ろうとしたのだが美鈴に声を掛けられて引き止められると、美鈴はとある人物から預かっていた伝言の内容を話し始めた。

 

美鈴「実はお嬢様から伝言を預かっていまして、[紅魔館に来たら私の部屋に来るように]と」

 

夜見「あぁ、わかったが...何故帰り際に言うんだ?別にバイクを止めている時に言えたと思うんだが?」

 

夜見はそう言って門の近くに止めたバイクの方をチラリと見ると、美鈴は少し申し訳なさそうな様子で答えた。

 

美鈴「あはは じ、実は、咲夜さんの怒っている様子に釘付けになってしまって、つい...す、すみません」

 

夜見「...まぁ、別に伝われば構わないがな」

 

すると夜見は美鈴に近付いて美鈴の帽子を取ると頭を撫で始め、美鈴は突然撫でられたことに驚いて小さな悲鳴を上げた。

 

美鈴「きゃ!く、黒夜さん!?一体何を...」

 

夜見「ん、嫌だったか?」

 

美鈴「い、いえ、別に嫌ではないですけど」

 

夜見「そうか」

 

そして夜見は美鈴をしばらく撫でた後に取った帽子を被せると、美鈴は(うつ)いて顔を耳まで赤くなるほど真っ赤にしていた。

 

夜見「じゃあ、そろそろレミリアさんに会ってくるよ」

 

美鈴「あ...は、はい 行ってらっしゃい、黒夜さん」

 

しかし夜見はその事に何故か気付かないで門を開けると、紅魔館の中に入りレミリアの部屋へと真っ直ぐに向かった。

ちなみに月夜は美鈴が夜見に声を掛けた時には姿を消しており、恐らくは紅魔館の中へ能力を使って戻っていったのだろう。

 

しばらくして夜見はレミリアの部屋に着くと扉をノックしようとした瞬間、扉の向こうから何やら誰かの騒がしい声が聞こえてきた。

だが、その騒がしい声は何か楽しんでいるような声であり、夜見は不思議に思いながら扉をノックしてから扉を開けた。

 

夜見「レミリアさ「やった〜!また私の勝ち〜♪」

 

レミリア「...おかしいわね、なんで全然勝てないのかしら」

 

パチュリー「レミィは昔から、こういうのには運が無いわね」

 

どうやら騒がしい声の正体はフランドールだったらしく、レミリア、パチュリー、フランドールは白いテーブルを囲う様に座っていた。

そして3人はどうやら夜見が来ている事には気付いていないようで、夜見は仮面を外すと3人の元に近付いて声を掛けた。

 

夜見「...何やってるんだ?」

 

レミリア「えっ!?や、夜見!?」

 

フランドール「あ、黒夜だ!遊びに来たの?」

 

パチュリー「あら、来ていたのね」

 

すると3人は一斉に夜見の方を向いて各々反応をしていたが、夜見はテーブルの上に見覚えのあるカードが置かれていた。

 

夜見「トランプか...」

 

フランドール「あ、黒夜も一緒にやる?楽しいよ?」

 

フランドールはそう言うとテーブルに置かれたカードを集め始めたが、夜見は首を横に振って断ってここに来た理由を言った。

 

夜見「いや、俺はレミリアさんに会いに来ただけだ」

 

フランドール「も〜!いつもお姉様の事ばっかり!」

 

パチュリー「レミィ、邪魔なら席を外すわよ?」

 

レミリア「わ、私に...会いに!?」

 

するとフランドールは少し怒ってふくれっ面で文句を言い、パチュリーは気を使ってレミリアに席を外すかどうかを聞いた。

しかし美鈴に伝言を預けていた筈のレミリアは驚いており、その様子を夜見は不思議に思ってレミリアに聞いた。

 

夜見「レミリアさん、美鈴さんに伝言を預けただろ?」

 

レミリア「...え、美鈴に?そんなことした覚えは無いわよ?」

 

夜見「[紅魔館に来たら私の部屋に来るように]と、伝言を預かったらしいが?」

 

レミリア「えっ?」

 

そしてレミリアは夜見の聞いた伝言の内容を聞くと顔を徐々に赤くして、夜見に対して素早く背を向けると両手で顔を覆った。

 

レミリア(夜見が私に会いたいと思ったから来たって、勘違いしちゃったじゃないの!は、恥ずかしいわ!しかも、なんで私が今日言った内容をそのまま伝えてるのよー!)

 

夜見(...急にどうしたんだ?)

 

夜見は不思議に思いながらフランドールとパチュリーの方を見たのだが、2人も同じことを思っているらしく3人は顔を見合わせて首を傾げた。

 

レミリア(と、とりあえず、落ち着かないと!このままだと勘違いしてたって、バレる可能性があるわ!)

 

しばらくするとレミリアは勘違いがバレるのを恐れ、顔を上げて深呼吸をすると赤くなった顔は少しずつ戻り始めた。

そしてレミリアは完全に顔が元に戻ると再度深呼吸をして夜見の方を向き、伝言についてパッと思い付いた嘘で答えた。

 

レミリア「え、えぇ、確かに言ったわね でも、言ったのは随分前だったから忘れてたわ」

 

夜見(随分前?昨日も来たのに?...いや、来る時には毎度用があったから言わなかっただけか)

 

すると夜見は伝言のことを自己解釈するとレミリアの嘘をあっさりと信じ、レミリアは夜見を騙す事に成功することは出来た。

 

夜見「そうか、そうだったんだな それで、何の用で俺を呼んだんだ?」

 

しかし夜見には一体何の用で呼ばれたのかという疑問は残り、それについて訊かれたレミリアはしどろもどろになりながら答えた。

 

レミリア「えっ!?あ、用は、あぁ、えっと...その...あ、そう!たまには遊びましょうって思ってたのよ!」

 

夜見「遊び?...あぁ、だからトランプで遊んでたのか」

 

レミリア「そ、そうよ、夜見が来る前に練習をしてたのよ」

 

フランドール「え?いや、私が遊ぼって誘「フラン!夜見も入れてトランプで遊びましょうか あ、それなら椅子が必要ね」

 

フランドールは遊びについて何か言いかけたのだが、レミリアはそれを早口で遮るといつもより高い音で指を鳴らした。

するとレミリアの横にすぐ咲夜は現れず、少し遅れてから面倒くさそうに立っている月夜が現れた。

 

月夜「お嬢、一体何の用だい?」

 

レミリア「月夜、夜見用に椅子をもう1 つ用意しなさい」

 

月夜「え、あれ?帰ってなかったんだ?」

 

月夜は夜見の姿を見ると不思議に思ったようにそう言ったかと思うと、テーブルの空いてる所に月夜と椅子が2つ現れて片方に月夜が座った。

 

月夜「まぁ、いいか さぁ、どうぞ」

 

夜見「あぁ、すまないな」

 

そして夜見は月夜が用意してくれたもう片方の椅子へ回っていると、月夜は手の甲に顔を乗せるように頬杖をついてレミリアに尋ねた。

 

月夜「あ、お嬢 仕事終わってるから、俺もGAMEに参加していいよね?」

 

レミリア「えぇ、構わないわ」

 

夜見「それで、一体何をするんだ?」

 

すると椅子に座った夜見はレミリアに一体何を遊ぶのかを聞いたのだが、トランプを持っているフランドールが手を挙げた。

 

フランドール「はいは〜い、ババぬきがやりたーい!それかジジぬき!」

 

パチュリー「フラン、ババぬきはさっきやったじゃない 私は神経衰弱か七並べがいいわ」

 

フランドール「え〜!頭使うのはやりたくなーい」

 

パチュリー「ババぬきかジジぬきは簡単すぎるわ もっと難しいのでいいじゃない」

 

レミリア「...夜見と月夜は、何かやりたいのはあるかしら?」

 

レミリアはフランドールとパチュリーが言い合っているのをよそに、夜見と月夜にやりたい遊びを尋ねるとそれぞれこう答えた。

 

夜見「特には無い 何でも構わないぞ」

 

月夜「う〜ん、俺はPOKERがやりたいかな」

 

夜見は特にやりたいものは無く、月夜はポーカーがやりたいと言ったのだが、夜見以外の3人はポーカーという言葉に反応した。

 

レミリア「...ぽーかー?」

 

パチュリー「知らない遊びね」

 

フランドール「ぽーかー?楽しいの?」

 

月夜「...え、知らないの?」

 

レミリア「えぇ、知らないわね 一体どんな遊びなのかしら?」

 

どうやらレミリア達はポーカーという遊びを知らないらしく、レミリアが月夜に説明を求めると月夜はフランドールに手を差し出した。

 

月夜「お嬢妹、ちょっとトランプを貸してくれないかな」

 

フランドール「うん、いいよ」

 

月夜「ありがとう、お嬢妹 それじゃあ、ルールは...

 

そして月夜は実際にトランプを使ってポーカーのルールを説明すると、レミリア達はポーカーの大体のルールや流れを理解した。

 

レミリア「なるほど、中々面白そうな遊びじゃない パチェとフランはどうかしら?」

 

パチュリー「そうね、ルールが単純でやりやすそうだわ やったことのない遊びだし、ポーカーでいいんじゃないかしら」

 

フラン「私もポーカーがいい!あんまり頭を使わなくていいし!」

 

レミリア「夜見はどう?ポーカーで構わないかしら?」

 

夜見「あぁ、別に構わない それに、多数決的に考えてポーカーになるだろうしな」

 

月夜「じゃあ、やるのはPOKERで決まりだね POKERは種類ごとにルールがあるけど、今日は俺の考えた簡単なルールでやろうか」

 

こうしてトランプでの遊びはポーカーに決まり、ルールは月夜の考えたオリジナルのルールになった。

そして月夜の考えたオリジナルのルールは

 

1,全員にカードが5枚配られるので各自、他の人に見られないように手札を確認する。

 

2,手札から要らないカードを選んで裏向きに捨てて、中央に置かれた山札から捨てた枚数分カードを引く。なお、捨てられたカードは次の人の番になると山札に混ぜられる。

 

3,手札を確認して要らないカードがあれば、もう一度先程と同じ手順でカードを交換することが可能。

 

4,手札を全員で公開し、役が1番強い者が勝ち。先に5回勝った者が優勝。

 

といった実に単純なルールとなった。

 

月夜「それじゃあ、カードを配るよ」

 

そして月夜は全員に5枚ずつカードを配ると残りのカードを中央に置き、夜見達は配られた5枚の手札を確認すると月夜が口を開いた。

 

月夜「じゃあ、手札を捨てる順番はお嬢、お嬢妹、図書館長、俺、夜見くんで進めようか」

 

レミリア「私からね まぁ、普通に考えたらこうかしら」

 

するとレミリアから順番に1人ずつ手札を交換していき、全員が2回目の交換を終えると月夜が手札を明かす合図を出した。

 

月夜「それじゃあ、全員手札を公開しようか せーのっ」

 

月夜の合図で全員が手札を公開すると各自の役は

 

レミリア:ツーペア

フランドール:スリーカード

パチュリー:ワンペア

月夜:フラッシュ

夜見:ハイカード

 

という結果になっており、第1ゲームは結果は月夜の勝ちとなった。

 

フランドール「あ〜、勝ったと思ったのに」

 

パチュリー「...月夜、随分と運が良いわね」

 

月夜「ふふ、GAMEの運はいいんだ」

 

夜見「...」

 

レミリア「夜見、大丈夫かしら?」

 

夜見は第1ゲームが終わると怪訝な顔で自分の手札を見ており、その様子をレミリアは心配して声を掛けると夜見は顔を上げた。

 

夜見「ん?別に大丈夫だが、どうしたんだ?」

 

レミリア「随分と怪訝そうにしてたから、少し気になって...」

 

夜見「あぁ、そうだったのか すまないな、心配をかけて」

 

月夜「よし、それじゃあ第2GAMEを始めようか」

 

そしてポーカーは順調に続いたのだが、月夜があと1回勝てば優勝という所で全員の勝利回数は

 

レミリア:3回

フランドール:3回

パチュリー:2回

月夜:4回

夜見:0回

 

上記の通り、夜見が全く勝っていない状況になっていた。

 

夜見「...」

 

フランドール「...ねぇ、黒夜?」

 

パチュリー「黒夜?えっと...」

 

レミリア「...夜見、本当に大丈夫?」

 

月夜「いや、流石にここまで連続でハイカードって...運悪過ぎない?」

 

レミリア達は夜見の異常な連敗を可哀想に思って各々声をかけたのだが、夜見はこんな不利な状況で月夜にある提案をした。

 

夜見「月夜さん、1つルールを追加していいか?」

 

月夜「え?う、うん、いいよ」

 

夜見「じゃあ、ルール追加だ」

 

そして夜見の出した追加ルールとは

 

5,優勝者は最下位の者に、何か1つ命令できる権利を得る。

 

というものだった。

 

レミリア・フランドール・パチュリー・月夜「...え?」

 

夜見「...何か問題か?」

 

するとレミリア達はこのルール追加にはもちろん目を点にしていたが、何故か夜見はこの不利な状況に対して平然としていた。

 

月夜「いや、問題っていうか...」

 

フランドール「黒夜、今の状況わかってるよね?」

 

パチュリー「黒夜、自分で自分の首を締めているようなものよ?」

 

レミリア「夜見、全然勝ってないけどいいの?」

 

そしてレミリア達は心配そうに本当にいいのか夜見に聞いたのだが、夜見は一拍置いてからレミリア達にこう言った。

 

夜見「別に勝ってないだけで、勝てないわけじゃない さぁ、始めよう」

 

夜見がそう言うとレミリア達は夜見の言う通りにポーカーを再開したが、レミリア達は一切手加減をするつもりはなかった。

しかし夜見は先程の連敗を巻き返すかのような勢いで、いきなり3連勝を果たし始めた。

 

レミリア「さ、3連勝!?」

 

フランドール「す、凄い凄い!もうお姉様と私に追いついたよ!」

 

パチュリー「本当に凄いわね、まるでさっきまでの負けが嘘みたいだわ」

 

月夜(この手札って...いや、そういえば最初に... あぁ、そういうことだったのか)

 

そしてレミリア達が驚いている中、月夜だけがある事に気付くと椅子を後ろに傾け、2本の脚でバランスを保ちながらこう言った。

 

月夜「これは勝てる気がしないや 悪いけど、俺はGAMEを降りさせてもらうよ」

 

フランドール「え、やめちゃうの?」

 

パチュリー「あと1歩なのに、棄権?」

 

レミリア「あら、棄権するのね その場合貴女はどうなるのかしら?」

 

月夜「え?あぁ...じゃあ俺は最下位でいいよ あと待ってても暇だから、俺がディーラーになるよ」

 

月夜は急に勝てる気がしないと言うとゲームを降り、自ら最下位になる代わりにディーラーとして参加し始めた。

すると月夜は山札を手にして4人に手札を配っている途中で、配られた手札を見ている夜見に声を掛けられた。

 

夜見「...本当に降りて良かったのか?」

 

月夜「いやいや、君がいる時点で勝つのは無理なんだよ さぁ、始めるよ」

 

そして月夜が手札を配り終えて4人は順番に手札交換を済ませると、この回も夜見は当たり前であるかのように勝利した。

 

フランドール「凄ーい!あと1回で優勝だね、黒夜!」

 

夜見「あぁ、そうだな」

 

パチュリー「...ねぇ、レミィ」

 

レミリア「...えぇ、流石にこれは可笑しいわ でも夜見は、イカサマなんて真似はしないわ」

 

パチュリー「えぇ、それは私もわかってるわ だから不思議なのよ」

 

夜見が4連勝をするとフランドールは興奮してはしゃいでいたが、レミリアとパチュリーは流石に可笑しいと感じていた。

しかし夜見の真面目な性格からイカサマをしてるとは思えず、連勝をする夜見がただ不思議で仕方がなかった。

 

夜見「よし、次が最後だろうな」

 

フランドール「黒夜、このまま連勝で勝たせないよ!次は私が勝つんだから!」

 

レミリア・パチュリー(この調子だと、夜見(黒夜)が勝つんでしょうね)

 

月夜「それじゃあ、さっさと終わらせますか」

 

夜見が次が最後だと言うのに対してフランドールは絶対に勝たせないと意気込むが、レミリアとパチュリーは結果が予想できていた。

そして結果は読者様もわかっているだろうが、もちろん夜見が勝って5連勝を果たすと同時に優勝者となった。

 

夜見「残念だったな、フランドールさん」

 

フランドール「う〜、負けた〜!」

 

フランドールは負けると机に突っ伏して悔しがっていたのだが、突っ伏したまま顔だけを上げると夜見にある事を聞いた。

 

フランドール「ねぇ、なんでいきなり運が良くなったの?」

 

ある事とは夜見がいきなり5連勝をし始めた事で、それはレミリアとパチュリーも気になっていた事だった。

 

パチュリー「まぁ、普通はあり得ないわよね」

 

レミリア「明らかに不自然だわ 夜見、一体何をしたの?」

 

夜見「あぁ、それは「簡単な話だよ、元々夜見くんは勝ててたんだよ」

 

レミリア「...どういうことかしら?」

 

すると夜見は急に勝ち始めた理由を聞かれた説明をしようとしたが、その瞬間に月夜が口を開いて割り込んできた。

そしてレミリアは月夜にどういうことかと聞くと、月夜は説明を続けた。

 

月夜「そもそも夜見くんは、運が良すぎるんだよ だから最初から誰にも負けない役が揃ってたけど、そのままだと直ぐにGAMEが終わっちゃうでしょ?だからあえて役を崩してたんだよ」

 

レミリア「...夜見、月夜の言う通りなのかしら?」

 

レミリアはただ運が良かっただけという信憑性の無い説明を受けると、夜見にその信憑性の無い説明が本当かどうかを聞いた。

 

夜見「...あぁ、全部月夜さんの言う通りだ それに、確かに言った筈だ[別に勝ってないだけで、勝てないわけじゃない]って」

 

レミリア「...確かにそうね、そうでなければそんなことは言えないわ」

 

パチュリー「思い返してみれば、これがあのカードだったら負けてたって組み合わせのハイカードばかりだったわね」

 

フランドール「じゃあ、それに気付いたから月夜は途中でやめたの?」

 

月夜「そうだよ、続けても意味が無いって思ったんだ」

 

月夜はそう言いながら手元ではトランプで(もてあそ)んでいたのだが、フランドールは身体を起こすと月夜に言った。

 

フランドール「でも、途中で抜けちゃったから最下位だよね?だったら、黒夜の命令を1つ聞かなくちゃいけないね」

 

パチュリー「...そういえば、そんなルールを追加してたわね 黒夜の5連勝の事で、すっかり忘れていたわ」

 

レミリア「夜見、何か命令は思い付いたかしら?」

 

夜見「あぁ、もう決まっている まぁ、誰が最下位でも同じ命令をしようとはしていたけどな」

 

月夜「それで?俺に一体どんな命令を下すんだい?」

 

そして月夜はトランプを玩びながら一体どんな命令をさせるのかを聞くと、夜見はベランダへ出るガラスの扉を指差した。

 

夜見「あれを開けてくれるだけでいい」

 

月夜「え、それだけ?」

 

夜見「あぁ、それだけだ」

 

レミリア達は夜見のそんな簡単な命令を疑問に思ったが月夜は言われた通り、椅子から立ち上がるとガラスの扉を開けた。

 

月夜「これでいいの?」

 

夜見「すまないな、月夜さん」

 

すると夜見は立ち上がってベランダに出ると手すりに手を掛けて、今にもベランダから飛び降りようとしているように見えた。

 

月夜「えっと...夜見くん?一体何をしようとしてるんだい?」

 

夜見「あぁ、そろそろいいかなって思ってな」

 

夜見はそう言って振り返ると空気中に散らばっている血を集めて、背中に真っ赤で大きな血の翼を作り出した。

 

レミリア「え?まさか...」

 

夜見「じゃあな、とても楽しかったよ」

 

レミリア「え!?ちょっと待...

 

そしてレミリアは夜見を呼び止めようと立ち上がったのだが、それと同時に夜見は手すりを乗り越えて翼を羽ばたかせ帰ってしまった。

しかしフランドールは立ち上がったままのレミリアに向かって、こんなことを言い出した。

 

フランドール「あ〜残念だったね、お姉様 だーい好きな黒夜が帰っちゃって」

 

レミリア「ちょっ!?フ、フラン!?貴女何を言って!?」

 

月夜「え?お嬢って夜見くんのことが好きなの?」

 

レミリア「なっ!?そんな訳「そうだよ!黒夜が帰っちゃうと、お姉様はしばらくため息ばっかりついてるの!」フ、フラン!」

 

パチュリー「確かにそうね よく黒夜が飛んでいった空を見てるわ」

 

レミリア「パチェ!?貴女まで何を言って...

 

 

 

 

 

夜見(そういや、地霊殿に帰っても特にやることないな... まぁ、こいしさんに手伝って貰って動物と触れ合う練習でもするか)




お久しぶりです皆さん、お風呂場の蓋です。
前回は最後にアンケートを取ったのですが結果は
読みやすかった:4票
読みにくかった:0票
そんなことより早く投稿をしてほしい:3票
となりました。
思ったより早く投稿をしてほしいと思っている方もいるみたいなので、私はできるだけ早く小説を書こうとしていました。
しかし、前回の投稿をしてすぐに進路の事があって中々小説を書く時間が取れず、こんなにも投稿が遅れてしまいました。
申し訳ありません。
この時期は色々と進路の事を決めたりすることが増えるので、できれば小説の投稿は気長に待っていてください。
よければ、また次回も見てください。
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