心を閉ざした少年と少女   作:お風呂場の蓋

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第51話 夜散歩

夜見はさとりに過去の事を少し見せた後、さとりとこいしに協力を仰いで動物に触れ合う練習をしていた。

だが、結局夜見は動物に警戒され続けてまともに触れ合う事はできずに時が過ぎていった。

 

夜見(今夜は少し肌寒いな)

 

そして、今は誰もが寝静まる深夜の時間、そんな時間に夜見は仮面を被り身体をマントに包み込みこんで月明かりに照らされた地上を散歩していた。

 

夜見(やっぱり、懐かしく感じるな)

 

しばらく歩いた夜見はその場で立ち止まると、夜空に浮かんでいる月を眺めながら懐かしさを感じていた。

その懐かしさはミスティアと出会った夜に感じたもの同じであり、やはり謎の違和感も同時に感じていた。

 

夜見(何故、懐かしいんだ?俺の記憶に、こんな夜空なんかは…)

 

夜見は夜空を見上げたまま何度も記憶を辿ってみるが、外の世界で窓から夜空をチラッと見たような記憶くらいしか思い出せなかった。

 

夜見(やっぱり、思い出せる記憶には無いか だとしたら、懐かしさを感じるのは…)

 

そして、夜見が懐かしさを感じる原因に察しがついた瞬間、夜見の背後から微かに物音がした。

だが、夜見は特に驚きもせずに後ろに振り向いて最初から付いて来ていた人物の名前を呼んだ。

 

夜見「何をしてるんだ、こいしさん?ちゃんと寝なきゃ駄目だろ」

 

こいし「お兄ちゃんだって…こんな時間に何をしてるの?」

 

その人物とは以前の夜にも付いて来ていたこいしであり、今度は何故かパジャマではなく普段着を身に着けていた。

 

夜見「別に、ただ散歩をしてただけだ」

 

こいし「…だったら、私も付いて行く」

 

夜見「何でだ?」

 

こいし「…お兄ちゃんと同じ理由」

 

夜見「そうか、なら勝手にしてくれ」

 

すると、夜見はこいしを雑にあしらってから歩き出し始めて、その後をこいしは距離を保ちながら付いて行った。

 

しばらくして、こいしは距離を少しずつ縮めると夜見の隣で夜見を見上げていたが、夜見はこいしの方を見ることなく口を開いた。

 

夜見「…なんだ?」

 

こいし「えっ!?いや、別に…なんでも、ない…

 

こいしは急に声を掛けられたことに驚き反射的にそう答えたが、夜見のマントを掴んでクイッと引っ張ると夜見は立ち止まった。

 

夜見「…どうした?」

 

こいし「手…繋いでも、いい?」

 

夜見「…別に、勝手にすればいい」

 

夜見はそう言ってマントを背中に回して手をこいしの方へ伸ばすと、こいしは夜見の人差し指だけを握って手を繋いだ。

そして、夜見が歩き出すとこいしは一瞬だけ遅れて歩き始めた。

 

夜見「…」

 

こいし「…」

 

しばらく2人は何も喋らずに歩いていたのだが、こいしは夜見の無愛想な態度と気まずい雰囲気をだんだんと苦痛に感じていた。

 

こいし「…うぅ」

 

そして、こいしは(うつむ)いて無意識に苦痛の声を漏らすと、急に夜見がこいしの掴んでいる手を払い除けた。

 

こいし「きゃあ!お、お兄…ちゃん?」

 

夜見「…」

 

急な事にこいしは訳がわからず唖然として夜見を見ていると、夜見はこいしに冷たい目線を向けて口を開いた。

 

夜見「…嫌なら、付いて来るな」

 

こいし「えっ?な、何で?私、嫌なんかじゃ…」

 

夜見「じゃあ何故、嫌そうな声を出した?」

 

こいし「な、何でって…」

 

こいしはそこで初めて苦痛の声を漏らしていたことに気付いたが、流石に原因は自分ではないと感じて不満を口に出した。

 

こいし「お兄ちゃんが…無愛想な態度をしてるのが悪いんじゃん!私は何も悪くないもん!」

 

夜見「…無愛想?」

 

こいし「本当に何なの、お兄ちゃんが帰ってきた時にとった私の態度に対する仕返し!?確かにあれは私が悪かったかもしれないけど、だからってお兄ちゃんが無愛想な態度をとらなくなっていいじゃん!」

 

こいしは怒りに任せて思った事を全て口に出したのだが、こいしは怒りがまだ収まっておらずイライラしていると、夜見はため息をついた。

 

夜見「…あぁ、そういうことか」

 

すると、夜見は腰に挿していた夜刀を引き抜いて逆手持ちにすると、左腕に思いっきり持っている夜刀を突き刺した。

 

夜見「ぐっ!あぁ…!」

 

こいし「えっ?お、お兄ちゃん…?」

 

こいしは夜見の突然の行動に驚き固まっていたのだが、夜見は突き刺した夜刀を引き抜くと能力を使って即座に傷口を塞いだ。

 

夜見「…ふぅ、目が冴えた」

 

こいし「お兄ちゃん、大丈夫!?急にどうしちゃったの!?」

 

そして、夜見は夜刀を納めながら呑気な事を言っていたが、流石にイライラしていたこいしも突然の自傷行為には心配の声を掛けた。

だが、夜見は何事もなかったかのように普段の様子に戻ると、屈んでこいしと目線の高さを合わせた。

 

夜見「どうしたんだ?こいしさん」

 

こいし「大丈夫!?刺したとこ、痛くない!?」

 

夜見「別に大丈夫だ それより、無愛想な態度をとってすまなかったな」

 

すると、夜見はこいしの頭を撫で始めたのだが、こいしはまだ心配している様子で恐る恐る夜見に尋ねた。

 

こいし「ほ、本当に…大丈夫?」

 

夜見「あぁ、大丈夫だ ほら、ちゃんと動くだろ?」

 

そう言った夜見は左腕を適当に動かして見せると、こいしは本当に大丈夫であると信じることができた。

 

こいし「よ、良かった 本当に、大丈夫なんだね」

 

夜見(もっと別の方法にしたほうが良かったか?余計な心配をかけさせたな…)

 

こいしは胸を撫で下ろすと夜見の首に腕を回して抱き付き、夜見は抱き締め返しながら心配をかけさせたことに反省をしていた。

 

しばらくして、こいしは満足したのか腕を離したので夜見は立ち上がったのだが、今度は夜見の手をこいしは握った。

不思議に思って夜見はこいしを見てみると、こいしは恥ずかしそうにしながら尋ねた。

 

こいし「ねぇ、お兄ちゃん まだ、お散歩…する?」

 

夜見「こいしさんは、どうしたいんだ?」

 

こいし「わ、私?私はまだ、お散歩したい…かな」

 

夜見「…そうか それじゃあ、もう少しだけ散歩するか」

 

そして、夜見はこいしの手を引いて歩き出すと、こいしは静かに夜見の隣を共に歩き始めた。

だが、夜見は隣にいるこいしがいつも元気なのに対し、今現在は大人しくして静かに付いて来ていることを疑問に感じていた。

 

夜見(どうしたんだ?やっぱり、別の方法で目を冴えさせたほうが…)

 

こいし「…ねぇ、お兄ちゃん?」

 

夜見「ん、何だ?」

 

夜見は考え事をしていたのだが、こいしに声を掛けられて咄嗟に返事をすると、こいしは先程の事を尋ねた。

 

こいし「さっき、何で急に自分の腕を刺すような真似をしたの?」

 

夜見「何でって、ただ目を冴えさせたかったからだ」

 

こいし「…本当?無愛想な態度の事は関係ない?」

 

夜見「こいしさん、もしかして怒ってるのか?」

 

すると、夜見はこいしが無愛想な態度に対してまだ怒ってるのかと思い聞いたのだが、こいしは首を横に振って否定した。

 

こいし「ううん、怒ってないよ ただ…何で無愛想な態度だったんだろうなって、少し気になったんだけど聞きにくくて…ごめんね?」

 

夜見「理由…聞くか?」

 

こいしは無愛想な態度の理由が気になると言うので、夜見は若干躊躇(ちゅうちょ)しながら理由を聞きたいか尋ねると、こいしは首を縦に振った。

 

こいし「えっ?う、うん、聞きたい」

 

夜見「…そうか、わかった」

 

そして、夜見はこいしに無愛想な態度をとった理由を話し始めた。

 

夜見「俺が無愛想な態度をとったのは、ただ本当に少し眠かったのが1つだ」

 

こいし「じゃあ、腕を刺したのは本当に目を冴えさせるため?」

 

夜見「あぁ、そして主な理由はさとりさんに俺の過去を見せた事が気掛かりだったからだ」

 

こいし「…過去を見せた?お姉ちゃんに?」

 

こいしは[過去を見せた]という言葉に訳がわからず首を傾げたが、夜見が過去を見せた時の詳細を話すとこいしは少し(うつむ)きつつも納得はしていたようだった。

 

こいし「そっか、お姉ちゃんはお兄ちゃんの過去を見たんだ…」

 

しかし、こいしは夜見が過去の記憶が一部欠けていることは特に気にしておらず、何故か過去を見せた事の方を気に留めており夜見は不思議に思った。

 

夜見(あれ?記憶が欠けていることを心配されると思ったが…)

 

夜見は不思議に思ったものの、これは逆に過去の詮索等をされる心配は無い事に繋がっており少しだけ安堵もしていた。

 

夜見(唯一心を読めるこいしさんが詮索しないなら、俺の過去を知られる可能性はかなり低くなるな…)

 

こいし「お兄ちゃん、私には見せてくれないの?」

 

夜見「…え?」

 

だが、夜見が安堵できたのも束の間で、こいしは自分には見せてくれないのかを聞いてきた。

 

夜見「い、いや、見せられないことはないが、今は少し都合が悪くてな…」

 

こいし「…都合が悪いの?本当に?」

 

こいしは少し動揺している夜見の様子を不審に思って本当か聞きつつ、サードアイから伸びる管のような部分を夜見の腕に絡ませた。

そして、こいしは夜見の心を読んで先程の発言が嘘だと知ってジッと夜見を見つめて言った。

 

こいし「…嘘つき」

 

夜見「す、すまない…」

 

すると、こいしは握っていた手を離してそっぽを向き、頬を膨らませて怒ってしまった。

 

こいし「も〜、見せたくないなら見せたくないって言ってくれればいいのに!お兄ちゃんが過去を知られたくないのは知ってるよ!」

 

夜見「…あぁ、そうだよな 本当に悪かった」

 

こいし「…許して欲しい?」

 

夜見「できるのなら、許して欲しい」

 

こいし「わかった、それじゃあ…」

 

そう言ってこいしは仕方ないといった様子で夜見の方を向くと、目を閉じて軽く唇を突き出した。

 

こいし「…ん」

 

夜見「…えっと?こいしさん、一体何を?」

 

こいし「…キス」

 

夜見「は?」

 

こいし「キスしてくれたら、許してあげる」

 

なんと、こいしは夜見の立場が悪いことを利用して唇にキスを要求してきたのだ。

しかし、夜見は素直にキスをする訳にもいかないので、こいしの機嫌を損ねない様に言葉を選んで妥協を求めることにした。

 

夜見「こいしさん、流石に口にはできないから…頬で許してくれないか?」

 

こいし「…わかった、今回は頬で許してあげる どうせ嫌だって言っても、してくれないんでしょ?」

 

夜見「本当にすまない こいしさん、ありがとう」

 

こいし「…早くしてよ」

 

こいしはとても不満そうだったがなんとか妥協してくれて夜見へ頬を向けたので、夜見は片膝を突いて仮面をズラすとこいしの頬に優しくキスをした。

すると、こいしは再び夜見の手を繋いでまだ不満そうにはしているが、頬は少し赤みを帯びていて嬉しい気持ちが表れていた。

 

こいし「ほら!早く散歩の続きをするよ!」

 

夜見「うわっ!?こ、こいしさん!?」

 

そして、こいしは夜見の手を引いて突然歩き始めると、夜見はよろけて危うく転けそうなったが持ち直してこいしの後に続いた。

 

しばらく歩いていると2人は森の中を進んでおり、奥へ行けば行くほど辺りは暗くなって黒色に染まっていた。

 

夜見「こいしさん、そろそろ帰らないか?あまり長時間出歩くと寝る時間が無くなるぞ?」

 

こいし「ヤダ、まだお散歩するの!」

 

夜見「さとりさんにバレたら怒られるぞ、それでもいいのか?」

 

こいし「お姉ちゃんに言わなければいいじゃん、そうすればバレないもん!」

 

夜見「いや、そういう問「きゃあ!」おっと!?」

 

こいしは夜見の手を引っ張って前を歩いていたが何かに驚き、夜見へ向かって急に抱き付き始めた。

夜見は急に抱き付いてきたこいしに一瞬戸惑ったが少し震えていることに気付くと、背中に腕を回してそのまま屈んで抱き寄せた。

 

夜見「こいしさん、どうしたんだ?」

 

こいし「な、何かが…目の前に飛んで来た」

 

夜見「飛んで来た?」

 

夜見はこいしの言葉を不思議に思って周りをグルッと見渡してみたが、暗いとはいえ特に何かが飛んでいる様子も音も無かった。

 

夜見「こいしさん、周りには何もいないぞ?」

 

こいし「い、いたよ!すごく小さい、虫みたいなのが…」

 

夜見「虫?虫、か…」

 

再度、夜見は周りを見渡してみると確かに小さな虫が大量に飛んでいたが、その虫達は何度も暗闇に姿を現したり隠したりしていた。

 

夜見(周りが暗いから見にくいが、確かに虫がいるな… だが、何故こんなにもここに虫が集まるんだ?)

 

夜見「こいしさん、そろそろ帰ろう 散歩はもういいだろ?」

 

こいし「う、うん、早くここから離れ…ひっ!?」

 

夜見「多いな…しっしっ!離れろ」

 

夜見は周囲に虫が来たら手で払い除けつつこいしの手をとって立ち上がると、何故か周囲から更に虫が湧き出てきた。

 

夜見「くっ!何で湧いてくるんだよ こいしさん、さっさと出るぞ!」

 

こいし「えっ?きゃっ!?

 

夜見「よし、しっかり捕まってろよ」

 

すると、夜見はこいしを抱き上げて道を引き返そうと踵を返したのだが、前方から急に大量の虫の塊が迫ってきた。

 

夜見(うっ!何だよ!)

 

虫を避けるために夜見は横へ跳んで避けたのだが、避けた先でも虫の塊が迫ってきた。

 

夜見(クソ!どうなってやがる!?)

 

夜見は再び虫の塊を跳んで避けるが、その後も何回も虫の塊が迫ってくるので避け続け足止めを食らっていた。

 

夜見(明らかにおかしい 妖精…いや、妖怪か何かの仕業か?)

 

虫が出てくる暖かい季節と言えど流石におかしいと感じた夜見は妖精か妖怪の仕業かと考えていると、大量の虫は夜見とこいしの周囲を囲うように飛び回り始めた。

 

こいし「お、お兄ちゃん?何が起きてるの?」

 

夜見「大丈夫だ、こいしさん 虫を蹴散らす方法を思いついた」

 

そう言って夜見はまた虫の塊が迫ってきても防げるようにドーム状の霊力の壁を作ると、夜見は手のひらに霊力を集めてそれを圧縮し続けた。

 

夜見「こいしさん、俺が合図をしたら少しの間だけ耳を塞いでおいてくれ」

 

こいし「耳?何をするつもりなの?」

 

夜見「心配するな、別に危険な事じゃないから」

 

こいし「…うん、わかった」

 

そして夜見は手のひらに高密度に圧縮された霊力の塊を作り出すと、霊力のドームを消すと同時に合図を出した。

 

夜見「こいしさん、今だ!」

 

夜見が合図を出すとこいしは言われた通りに耳を塞ぎ、夜見は霊力の塊を上に飛ばそうとしたのだが、その瞬間に誰かの声が聞こえた。

 

?「何者だ!私達の遊び場に入ったのは!」

 

夜見「なっ!?誰だ!…あ」

 

?「へ?」

 

誰かの声が聞こえた瞬間に夜見は反射的に声が聞こえた方向に弾幕を放ったのだが、その放った弾幕は先程上に飛ばそうとした高密度の弾幕だった。

すると、その弾幕は声を出した何者かに直撃したと同時に、その弾幕は爆発を巻き起こして周囲の虫を蹴散らした。

 

夜見「しまった!お、おい!大丈夫か!」

 

夜見は爆風が通り過ぎると急いで声がした方向へ安否を確認するために向かったのだが、その弾幕に直撃した誰かはその場で倒れて気絶していた。 

 

夜見(よかった、気絶しているだけか でもこの格好、人間じゃないよな…)

 

その何者かは緑色のショートヘアからは2本の虫の触角のようなものを生やしていた。

服装は白のシャツに紺の長いキュロットパンツを着ており、表が黒で裏が赤の(つばめ)の尾のように分かれた燕尾状(えんびじょう)のマントを身に着けていた。

 

夜見「おい、しっかりしろ!大丈夫か!」

 

そして、夜見は虫が迫ってきた原因の有無に関わらず心配して声をかけながら身体を揺するが、気絶している者は起きる気配がなかった。

 

夜見(一体どうすれば、特に外傷は見当たらないから治療は…)

 

こいし「…お兄ちゃん、まだ塞いでなきゃ駄目?」

 

夜見「ん?あぁ、すまない もう塞がなくても大丈夫だ」

 

こいし「うん、わかった 離すよ?」

 

すると、こいしは耳から手を離して周りを見渡そうとして、気絶している者を見た瞬間に口を開いた。

 

こいし「あれ、リグちゃん?」

 

夜見「えっ…こいしさん、知り合いか?」

 

こいし「うん、私のお友達 リグちゃん、こんな所で寝てたら風邪ひいちゃうよ?」

 

こいしは夜見の腕から抜け出すとリグちゃん?を揺すっていると、小さなうめき声を出しながら目をゆっくり開いた。

 

こいし「あ、起きた!」

 

?「ぅ…ん、こいしちゃん?何でここに?」

 

こいし「リグちゃんこそ、何でこんな所で寝てるの?」

 

?「あれ?確か私、誰かが近付いてきたのを…」

 

リグちゃん?はうまく働かない頭を動かしながら身体を起こして夜見を見た瞬間、驚きの声を上げて後退りをして指を指した。

 

?「だ、誰だ!?この、怪しい奴め!」

 

こいし「ちょっと、リグちゃん!お兄ちゃんは怪しい人じゃないよ!」

 

?「…え、お兄ちゃん?こいしちゃんがいつも話してる、あの?」

 

こいし「うん、いつも話してる私のお兄ちゃん」

 

?「えっ!?でもこいしちゃんは妖怪なのに人間が兄…?一体どうなって…あれ?」

 

どうやら、こいしが詳しく関係を話していなかったようでリグちゃん?は混乱しており、夜見はため息をつきながら仮面を外してこいしとの関係を話した。

 

夜見「俺はこいしさんの兄ではない、こいしさんがそう呼んでるだけだ」

 

?「え、でも家族って言ってて…」

 

夜見「居候している俺をそう呼んでくれているだけだ」

 

こうして夜見はこいしとの関係を話して手を伸ばすと手を握ったリグちゃん?を立ち上がらせ、こいしから聞いている筈だが念の為自己紹介をすることにした。

 

夜見「こいしさんから聞いてるだろうが、俺の名前は黒夜夜見 覚妖怪とは関係ないただの人間だ」

 

?「あ…ありがとう、黒夜さん 私の名前はリグル・ナイトバグ、こう見えても女の子だからね?」

 

夜見「あぁ、わかってるよ 一人称が俺って言う奴よりは立派な女の子に見える」

 

リグル「えっと…誰のことを言ってるの?」

 

夜見「いや、別に気にしなくていい ただの独り言だと思ってくれ」

 

夜見は一人称が俺である月夜の事を愚痴のように吐き出したのだが、もちろんこいしとリグルは知らないので顔を合わせて一緒に首を傾げていた。

だが、夜見はそんな事はお構いなしにリグルにある事について尋ねた。

 

夜見「それで?リグルさんはどうして、虫を操って俺達を襲ったんだ?」

 

リグル「えっ!?襲ったって、もしかしてあの2人ってこいしちゃんと黒夜さんだったの!?」

 

夜見「…知らなかったのか?」

 

リグル「知らないも何も、私は虫達が怪しい奴が近付いてきたって聞いただけで…ご、ごめんなさい!」

 

どうやら虫を操って夜見とこいしを襲っていたのはリグルだったようで、更にリグルは2人だとは知らずに虫で襲っていたようだった。

しかし、夜見は特に怒っている様子はなく、こいしも怒らずにリグルの頭を撫で始めた。

 

こいし「大丈夫だよ、誰にだって間違いはあるから」

 

リグル「で、でも…私、毒を持ってる虫も使ってたんだよ!?死んじゃうかもしれなかったんだよ!?」

 

夜見「死ぬも何も、そもそも殺す気はなかっただろ」

 

リグル「えっ…?き、気付いてたの?」

 

夜見の言葉にリグルは驚いて夜見のことを見上げていると、夜見ではなく何故かこいしが話し始めた。

 

こいし「だって『毒虫を使ってるなら避けられるような襲い方はしない筈』って思ったもんね、お兄ちゃん?」

 

夜見「あぁ、その通りだ どうせ妖怪の怖さを思い知らせてやるとかいった、そんなこと思ってたんだろ?」

 

リグル「そ、そこまで知ってたの?」

 

夜見「知ってたというか、前にも同じような状況に巻き込まれたことがあったからな」

 

夜見はそう言って初めてチルノと会ったときの事を思い出すと、リグルの背後の方から3人の人物が姿を見せた。

 

チルノ「お〜い、リグル 何か大きな音がしたけど、大丈夫か?」

 

大妖精「あ!こいしちゃんに黒夜さん、こんばんは」

 

ルーミア「こんばんはなのだー」

 

こいし「チルノちゃんに大妖精ちゃん、ルーミアちゃんも!みんなでどうしたの?」

 

すると、こいしは3人の元へ行って色々な事を話し始めて盛り上がっており、夜見は屈んで視線の高さをリグルに合わせた。

 

夜見「まぁ、そんな事をする為に毒虫を使ったのは感心しないが…別にリグルさんは謝る必要は無いぞ?」

 

リグル「えっ?謝る必要が無いって、私は黒夜さんとこいしちゃんに「ドカーン」…え?」

 

リグルは夜見のいきなり「ドカーン」と言って額に銃を撃つジェスチャーに戸惑っていると、夜見は手を下ろして先程のジェスチャーの意図を話した。

 

夜見「覚えてないか?俺がリグルさんに弾幕を放って、その弾幕が爆発したこと」

 

リグル「…あぁ!そういえば確かに、弾幕を私に向けて放ってきた!あの時はわからなかったけど、気絶した原因って…」

 

夜見「そう、虫を追い払おうと爆発させるつもりの弾幕をリグルさんに誤って放ったからだ リグルさんは別に害を与えるつもりは無かったんだから、謝るなら俺の方だ」

 

リグル「い、いやいや!そもそもの発端は私なんだからお互い様だよ!」

 

そしてリグルは両手を横に振って悪かったのはお互い様だと伝えると、夜見はリグルの頭に優しく手を置いてゆっくりと撫で始めた。

 

夜見「そうか、悪かったのは俺なんだが…リグルさんは優しいんだな」

 

リグル「ベ、別に優しくないよ 黒夜さんが悪くないとは言ってないんだし…」

 

夜見「まぁ、それは俺も同じだ お互い様…だからな」

 

夜見はそう言って立ち上がると、その場で3人と楽しそうに話をしているこいしに声を掛けた。

 

夜見「こいしさん、もう帰るぞ!」

 

こいし「うん、わかったよお兄ちゃん!みんなじゃあね、また遊ぼうね♪」

 

すると、こいしは返事をしてチルノ達に別れの挨拶を言い夜見の下へ向かうと、チルノ達も別れの挨拶をしながら手を振って夜見とこいしを見送った。

 

そして、夜見とこいしは手を繋ぎながらしばらく歩いていると、こいしが夜見にある事を尋ねた。

 

こいし「ねぇ、お兄ちゃん 私がチルノちゃん達と話し合ってた時、リグちゃんと何の話をしてたの?」

 

夜見「別に、ただ毒虫は危ないぞって話をしてただけだ」

 

こいし「本当に…それだけ?」

 

夜見「こいしさん?」

 

こいしは夜見の返答を聞くと寂しそうな声で聞き返し、夜見はこいしの寂しそうな雰囲気を察し足を止めた。

 

夜見「どうした?何か気になることでもあったか?」

 

こいし「…お兄ちゃん、リグちゃんの頭撫でてなかった?」

 

夜見「ん?あぁ、確かに撫でたけど…それがどうした?」

 

こいし「…ううん、やっぱりなんでもない」

 

夜見はこいしにどうしたのかと聞いてみるが、こいしは視線を下げて首を横に振るとサードアイをゆっくりと閉ざそうとしていた。

だが、その瞬間に夜見は片膝をついてこいしの頬に両手を添えると顔を上げさせた。

 

こいし「何、お兄ちゃん?」

 

夜見「はぁ…いい加減に学習しろよ、いつになったら覚えるんだ?」

 

こいし「…お兄ちゃん?」

 

夜見「ん?あぁ、気にしないでくれ」

 

こいしは夜見の言葉に不思議そうな顔を浮かべていたが、夜見はそれに気付くと微笑んでこいしを優しく抱き締めた。

そして、しばらくすると夜見は顔を上げていたこいしの頬にそっとキスをした。

 

こいし「んっ、お兄ちゃん」

 

夜見「こいしさん、俺はこいしさん以外にこんなことはしないぞ?」

 

こいし「…私も、お兄ちゃんにしかしない」

 

すると、こいしは腕を伸ばして夜見の首に回して抱き付き、こいしも夜見の頬にキスをするとサードアイが開き始めた。

 

こいし「ふふっ お兄ちゃん、だーい好きだよ」

 

夜見「俺も大好きだ、こいしさん」

 

夜見がそう言うとこいしは嬉しそうに再度キスをし、サードアイから伸びる管のような部分を夜見に巻き付けながら言った。

 

こいし「お兄ちゃん、早く帰ろう?」

 

夜見「あぁ、そうだな」

 

そして、夜見はこいしを抱きかかえて立ち上がると、少し明るくなっている遠くの空を見ながら地霊殿へと向かった。

 

夜見(そういや、何か忘れてるような… まぁ、気のせいか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さとり「黒夜さん、こいし?朝なのに姿が見当たらないなと思ったら、2人はどうして先程玄関から入って来たんですか?」

 

夜見・こいし「…ご、ごめんなさい」

 

すると、地霊殿では明らかに怒った様子のさとりが満面の笑みを浮かべながら待っており、2人はさとりの前で正座をしながら説教を受けるが、それはまた別の話である。




どうもお久しぶりです、お風呂場の蓋でございます。
前回の投稿から約4ヶ月という、かなりの期間が空けてしまい、申し訳ございませんでした。
前回の後書きでも記載した通り、会社での仕事がありますので、中々小説を書く時間が取れない状況でございます。
ですが、スキマ時間などのちょっとした時間に書けるように頑張っていこうと思っておりまので、これからも読んでいただけると大変嬉しい限りです。
次回の投稿はいつになるかわかりませんが…よければ、また次回も見てください。
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