心を閉ざした少年と少女   作:お風呂場の蓋

53 / 53
第52話 明けない夜は本当に無いのか?

夜見(今は夏だっていうのに、夜中は寒く感じるな やっぱり、幻想郷には海が無いからか?)

 

夜見はこいしと一緒にさとりから怒られたあの日から、夜中の散歩は1時間だけと決めて懲りずに続けていた。

そんなことをしばらく続けていると季節は夏へ移り変わり、地上では草木が前より生い茂っていた。

 

夜見「それで?今日はどうするんだ、こいしさん?」

 

こいし「ん〜っと、今日はお月様を眺めてたいな」

 

夜見「好きだな、月を眺めるの」

 

こいし「だって、今日は満月だよ ほら!」

 

そして、こいしも懲りずに夜見に付いて来ており、夜見とさとりは半ば付いて来るのを止めるのは諦めていた。

 

夜見「それじゃあ、今日は月でも眺めるか」

 

こいし「えへへ、やったぁ♪」

 

夜見はこいしの指差した月を眺めながらそう言うと、その場に血でアウトドアチェアを作り出して寝っ転がるように座った。

すると、こいしは夜見の上に乗って夜見と重なるように寝っ転がった。

 

こいし「綺麗だね、お兄ちゃん お星様もキラキラしてる」

 

夜見「あぁ、そうだな 本当に…綺麗だ」

 

夜見は夜空を眺めながら呟きこいしを優しく抱き締めると、こいしはサードアイから伸びる管のような部分を夜見に巻き付けた。

 

しばらく2人は夜空を眺めていたのだが、時間はあっという間に過ぎていくもので、地上に出てから1時間が経とうとしていた。

 

夜見「こいしさん、そろそろ帰るぞ」

 

こいし「え〜?まだ寝たくなーい」

 

夜見「駄目だ、さとりさんに怒られるぞ?」

 

こいし「…わかった でも、その代わりにあのお話聞かせてよ」

 

夜見「またか?ここ最近毎日聞いてるだろ」

 

こいしの言っている[お話]っというのは、夜見が昔に聞いたことがあるという、ある少年の話のことである。

こいしはここ最近、寝る前や夜中の散歩の際にそのお話を毎日聞くようになったのだ。

 

こいし「いいから聞かせて じゃないと、私寝ないから」

 

夜見「…わかったよ 今より少し前、ある所に…」

 

そして、夜見がお話を話し終えるとこいしは夜見を放して上から退いたので、夜見はゆっくりと立ち上がって血を空気中に分解した。

その直後、こいしは夜見の方に手を差し出して満面の笑みを浮かべた。

 

こいし「お兄ちゃん、手繋ごうよ♪」

 

夜見「あぁ、わかったよ」

 

夜見は差し出されたこいしの手を握り、2人は地霊殿へ帰るために地底に続く穴の方へ向かうと、その穴はすぐに見つかった。

 

こいし「ねぇ、お兄ちゃん 次の夜は湖の方まで行こうよ」

 

夜見「別に構わないが、歩くと湖に着いてすぐに帰るようになるぞ?」

 

こいし「そっか…あ!それなら、空を飛んで行こうよ!空のお散歩はまだしてないよ」

 

夜見「空の散歩か…それもいいかもな」

 

2人は楽しく次の散歩の話をしながら穴へ入ろうとしたのだが、夜見は穴に入る直前に振り向いて夜空に浮かぶ月を見ると足を止めた。

こいしは急に立ち止まった夜見を不思議に思って見上げると、夜見は夜空に浮かぶ月を睨んでいた。

 

こいし「お兄ちゃん、どうしたの?」

 

夜見「ん?あぁ、なんでもない さぁ、早く帰るぞ」

 

こいしが声を掛けると夜見は月を睨むのをやめ、こいしの手を引いて足早に地霊殿に帰った。

そして、2人は地霊殿に着くと互いにおやすみの挨拶を交わし、それぞれ自分の部屋へ入った。

 

夜見(バレてない…よな?さてと…)

 

すると、夜見は寝る準備をせずに夜刀と白刀をベルトに挿し、仮面とマントをしっかりと被って静かに部屋を出た。

 

夜見(みんな…すまないな だが、あれを見過ご「…ねぇ」

 

だが、夜見が部屋を出て廊下を少し歩くと後ろから声が聞こえ、後ろを振り返るとそこにはこいしが立っていた。

 

夜見「っ!こいしさん…」

 

こいし「ねぇ、寝るんじゃなかったの?」

 

夜見「…仕事が残ってたって言ったら、信じるか?」

 

こいし「信じたいけど…また月を見た時に心を読んだの」

 

夜見「そうか…」

 

夜見はこいしに心を読まれていたことを知らされると黙り込んだが、こいしは夜見に心を読んだ時のことが本当か聞き始めた。

 

こいし「異変を解決しに行くんでしょ?無茶するかもしれないから、私達に黙って」

 

夜見「…あぁ」

 

こいし「約束したよね?無茶は絶対にしないって」

 

夜見「…あぁ、約束した」

 

こいし「駄目だよ、約束を破っちゃ」

 

夜見「…本当に、すまないと思ってる」

 

そこまで聞くとこいしはゆっくりと夜見に近付いて、夜見の目の前まで行くと夜見の腰に腕を回して抱き付いた。

てっきり怒られると思っていた夜見はこいしの行動に困惑していると、こいしはこんなことを言い出した。

 

こいし「お兄ちゃんが異変を解決しに行くなら、私も付いて行く」

 

夜見「…何を言ってるんだ、駄目に決まってるだろ」

 

こいし「嫌だ、絶対に付いて行く お兄ちゃんが無茶しないように、私が見張らないと」

 

夜見「俺は大切な家族を危ない目に合わせなくないんだ、わかってくれ」 

 

夜見はどうにかこいしを付いて来させないように説得しようとするが、こいしは(かたく)なに説得に応じようとしなかった。

 

こいし「私だって家族(お兄ちゃん)が傷付くのは嫌だ、だから今回は私も付いて行く」

 

夜見「…本当に危ない目に合うぞ、それでもいいのか?」

 

すると、夜見はこいしは絶対に折れないと悟ったのかこいしに確認を取ると、こいしは顔を上げて真剣な表情で答えた。

 

こいし「うん、それでもいいよ お兄ちゃんが傷付くのは、もう見たくないもん」

 

夜見「…わかった、今回は一緒に行こう ただし、危ない時は必ず引くって約束してくれ」

 

こいし「うん、約束する 危ない時は必ず引く、お兄ちゃんもだからね」

 

そう言ってこいしは夜見に向かって小指を出すと、夜見も小指を出してこいしの小指に絡ませた。

 

夜見「あぁ、わかった 今回こそ、絶対に守るよ」

 

こうして、夜見とこいしは指切りをすると念の為にさとりの部屋に置き手紙を残し、2人は異変を解決するために地上へ出た。

そして、地上に出るとこいしは夜見にまずはどうするのかを尋ねた。

 

こいし「それで、まずはどうするの?」

 

夜見「そうだな、最初は人里の安否を確認しよう 犯人を探すのはその後だ」

 

こいし「そっか、それじゃあ早く行こう!」

 

夜見「あぁ、そうだな」

 

まず最初に、夜見とこいしは人里の安否を確かめることにすると、夜見は血の翼を背中に作り出して2人は手を繋いで空を飛び始めた。

だが、2人は人里がある方へ向かった筈なのに人里が見える気配がしなかった。

 

こいし「あれ?お兄ちゃん、人里が見当たらないよ?」

 

夜見「おかしい、いつもならもう見えてくる筈なんだが…」

 

こいし「ん?お兄ちゃん、あれじゃない?」

 

夜見「見つけたか?」

 

こいしは人里を見つけたのか声を出してある場所を指差したので、夜見はこいしの指差した場所を見てみるとそこには更地が広がっていた。

 

夜見「おかしいな…人里の近くにあんな場所なんてあったか?」

 

こいし「お兄ちゃん、一体どこを見てるの?ほら、あそこに人里があるじゃん」

 

夜見「こいしさんこそ、一体どこを見ているんだ?人里なんて見当たらないぞ」

 

こいし「…え?お兄ちゃん、冗談だよね?」

 

夜見「いや、真面目に言ってるぞ?」

 

夜見は一体どこを見ているんだと不思議に思っているのに対し、こいしは自分が見ている人里は何なのかと混乱し始めていた。

しかし、夜見にはこいしが嘘を言っている様子には見えないので、再度こいしが指差した更地をよく見てみるとある人物が目に入った。

 

夜見(あれは…慧音さん?あんな所で何をしているんだ?)

 

その人物とは、いつもは寺子屋で子供たちに勉強を教えている慧音だった。

そして、慧音はこんな夜中に更地で何をしていたかというと、まるで何かを守るかのように警戒した様子で周りを見渡していた。

 

夜見(もしかして、これも異変の影響なのか?取り敢えず、慧音さんに話を聞いてみるか)

 

すると、夜見はすぐに更地には降りずに未だに困惑している様子のこいしに声を掛け、とある頼み事をお願いした。

 

夜見「こいしさん、無意識の方の能力で姿を隠しておいてくれないか?」

 

こいし「…え?う、うん…いいよ」

 

こいしは一瞬だけ反応が遅れたがサードアイを閉ざすと無意識の能力を使い他人に認識されないようになるが、相変わらず何故か夜見には効果が無かった。

そして、夜見はこいしの手を引いて慧音の目の前に降り立つと、慧音は特に驚かずに何故ここに夜見がいるのか不思議に思っている様子だった。

 

慧音「ん?黒夜じゃないか、こんな夜中にどうしたんだ?」

 

夜見「そういう慧音さんこそ、こんな場所で一体何をしてるんだ?」

 

夜見は慧音の質問に対して質問を返したのだが、慧音は少しムッとした表情になって夜見に軽く叱った。

 

慧音「こら、質問に質問で返すな!先に聞きたいことがあるのかもしれないが、質問をされたらまずは答えるのが先じゃないのか?」

 

すると、夜見は急に叱られたことに少し呆気に取られたが、少し考え込んでから口を開いた。

 

夜見「確かにそうだな、それはすまなかった それじゃあ慧音さんの質問に答えるが、俺は今回の異変で人里が大丈夫かどうか見に来たんだ」

 

慧音「そうか、それはご苦労だ だが少し残念だな、既に私が人里を守っているから黒夜が心配する必要はないぞ」

 

夜見「…えっと?それじゃあ、何故こんな更地にいるんだ?」

 

慧音「ん、更地?…あぁ、そういうことか」

 

夜見は慧音の言っていることと違う行動に疑問を抱いたのだが、慧音はその疑問を解決させてくれる答えがわかっていた。

 

慧音「黒夜、人里はちゃんとここに存在してるぞ ただ今は、私の[歴史を食べる]能力で隠しているがな」

 

夜見「そうか、慧音さんが人里を隠して守っていたのか 道理で人里が見当たらないわけだ」

 

そして、夜見の抱いた疑問は慧音のお陰で解消されたのだが、夜見はイマイチ慧音の能力の言葉の意味が理解できないでいた。

 

夜見「それにしても[歴史を食べる]能力か、よくわからない能力だな」

 

慧音「確かに名前だけ聞けばそう思うだろうな 私の[歴史を食べる]能力とはすなわち、出来事を無かったことにする能力なんだ」

 

すると、慧音は自身の能力について補足を入れてくれたので夜見は理解できたのだが、イマイチ理解できていない人物が1人いた。

 

それは、先程からずっと夜見の隣にいるこいしで、夜見が慧音の能力で人里が見えなくなっているのは理解できていた。

だが、慧音が能力で人里が見えなくしているのに、自分は何故見えているのかが理解できていなかったのだ。

 

夜見「つまり、慧音さんが人里が出来たという事実を無かったことにしたから、俺は人里が見えなくなった だけど、慧音さんみたいな人里が出来る前から生きている人は、人里が出来たという事実を知っているから能力の影響を受けずに見えているってことだな?」

 

すると、夜見は慧音の能力を急に説明口調で言い始め、慧音は夜見の行動に少し困惑していた。

 

慧音「あ、あぁ、その通りだが…急にどうしたんだ?まるで、誰かに説明しているような…」

 

夜見「そうか?俺はただ、ちゃんと慧音さんの能力が理解できているのかを確かめたかっただけだが?」

 

慧音「そ、そうなのか?まぁ、別に構わないが…」

 

慧音は少しおかしいとは思ったのだが納得できる内容だったので、夜見の急な説明口調のことは気にしないことにした。

 

夜見「さてと、それじゃあ人里が安全なのはわかったし、そろそろ異変の犯人を探しに行くか じゃあな慧音さん、人里は任せたぞ」

 

そして、人里の安否を確認できた夜見は慧音に別れの挨拶をして翼を羽ばたかせると、慧音は宙に飛んだ夜見に向かって軽く手を振りながら見送った。

 

慧音「あぁ、人里は任せろ 黒夜も気を付けるんだぞ」

 

夜見「わかってる、今回は特にな」

 

最後に夜見はそう言い残してこいしと一緒に空へ飛んでいき、人里からある程度離れた所でこいしが夜見に声を掛けた。

 

こいし「…ねぇ、お兄ちゃん」

 

夜見「ん?なんだ、こいしさん?」

 

こいし「さっきの慧音さんって人の能力を説明口調で言ったの、あれってわざとだよね?」

 

夜見「仮にそうだとして、こいしさんは俺をどうしたいんだ?」

 

こいし「…わざとだったんだね、何でそんなことしたの?」

 

こいしはいつの間にか開けていたサードアイを夜見の手に絡ませて、夜見の心の声を読みながら問い掛けた。

心を読んでいるこいしは既に答えを知っている筈なのだが、何故か答えを夜見の口から聞きたがっていた。

 

夜見「何でって、こいしさんがあまり理解できてなさそうだったからだ」 

 

こいし「…そっか ありがとう、お兄ちゃん♪」

 

夜見「どういたしまして」

 

こいしは夜見の答えを聞くと少し間を空けてからお礼を言い、それに対して夜見は仮面の中で微笑みながら返した。

その直後、こいしは思い出したかのように異変についてあることを問い掛けた。

 

こいし「あ!お兄ちゃん、そういえば異変の犯人を探すって言ってたけど…見当はついてるの?」

 

夜見「あぁ、最初からついてる これだけ大規模な異変だ、至る所からある人の妖力が漂ってる」

 

こいし「そうなんだ、それで犯人は一体誰なの?」

 

夜見「今回の異変の犯人はな…

 

そして、夜見が今回の異変の犯人の名前を言おうとした瞬間、遠くで大きな音と共に虹色のビームが空に放たれたのが見えた。

 

こいし「お兄ちゃん、さっきのは何?」

 

夜見「…まずいな」

 

こいしは先程の虹色のビームは一体何なのか夜見に尋ねるが、夜見はそのビームには見覚えがあり顔をしかめていた。

 

こいし「お兄ちゃん、まずいって?」

 

夜見「こいしさん、しっかり掴まれ!」

 

こいし「きゃっ!お、お兄ちゃん!?」

 

すると、夜見は急にこいしを抱き寄せて翼の数を4枚に増やし、先程ビームが放たれた場所へ急いで向かった。

だが、ビームが放たれた場所へ向かっていると弾幕がちらほらと飛んできて、進むに連れて飛んでくる弾幕の数は徐々に増えていた。

 

こいし「お、お兄ちゃん、危ないよ!約束したでしょ!?」

 

夜見「大丈夫だ、こいしさん!この弾幕はただの流れ弾、別に俺達を狙って飛んできている訳じゃない!」

 

こいし「そ、そうなの?でも危ないよ!お願いだから引いてよ、お兄ちゃん!」

 

夜見「チッ、流石に多いか?こいしさんが心配するだろうが…危ねぇんだよ!」

 

夜見は舌打ちをすると手のひらに霊力を溜めて横に振るうと同時に溜めた霊力を放つと、前方の弾幕は夜見の能力によって一瞬にして掻き消された。

 

夜見「こいしさん、これなら大丈夫だろ?」

 

こいし「いや…駄目だよ、お兄ちゃん!また弾幕が飛んできてる、これじゃあ何回消しても意味が無いよ!」

 

夜見「確かにそうだな、だったら…」

 

すると今度は、前方にドーム型の霊力の壁を作り出し、それを盾にして弾幕を消しながら突き進んだ。

 

夜見「ほら、こいしさん これなら危なくないし、安全だろ?」

 

こいし「う、うん、確かにこれなら安全だけど…」

 

夜見「こいしさん、心配か?」

 

こいし「えっ!?ううん、別に…大丈夫だよ!ほら、早く行ないと駄目なんでしょ?」

 

夜見「…あぁ、急がないとな」

 

こいしは何か心配でもしているのか元気がない様子を一瞬見せたのだが、すぐに元気な様子に戻ったので夜見はこいしの大丈夫という言葉を信じることにした。

 

そして、しばらく進んでいくと弾幕の数は視界に収まらない程の数になっていたが、それと同時に弾幕の隙間を飛び交う4人の姿を捉えることができた。

 

夜見(やっぱり、魔理沙さんと…あれ、アリスさん?紫さんもいるのはわかっていたが…何故霊夢さんが一緒に?)

 

どうやら、夜見は魔理沙と紫がいることはわかっていたらしいが、その場に霊夢とアリスがいることは予想外だったようだ。

 

夜見(まぁ、別にそれはどうでもいい 今最優先するべきなのは…)

 

すると、夜見は急にその場で止まって視線をこいしに向け、その視線に気付いたこいしは不思議に思い夜見に声を掛けた。

 

こいし「ん?どうしたの、お兄ちゃん?」

 

夜見「すまないがこいしさん、もう一度無意識の方の能力で姿を隠してくれないか?」

 

こいし「うん、いいよ」

 

夜見「それと、念の為にこれも被っておいてくれ」

 

こいし「えっ、それってお兄ちゃんのマントだよね?私が被るの?」

 

夜見「あぁ、大きいけど我慢してくれ」

 

夜見はこいしに頼んで再度無意識の方の能力を使ってもらうと、更に自分が被っていたマントをこいしに被ってもらった。

こうして、こいしの姿がしっかりと見えないような状態にさせると、霊夢達がいる場所へ再び向かい始めた。

 

夜見(よく見たらアリスさんは魔理沙さんと、霊夢さんは紫さんと共闘しているのか てっきり紫さんが3人を相手にしてると思っていたが、流石に霊夢さんは気付いてるか)

 

霊夢「紫、貴女いつまで遊んでいる気?さっさと終わらせるわよ」

 

紫「そうね、そろそろ決着をつけましょうか このままじゃ、時間を無駄にするだけだわ」

 

魔理沙「終わらせるだって?それはこっちの台詞だ!アリス、早く準備をするんだぜ!」

 

アリス「貴女に言われなくたって、とっくに準備してるわよ!」

 

夜見(…なんて、呑気に思ってる場合じゃないか)

 

そして、4人はほぼ同時にスペルカードを取り出して宣言をしたのだが、4人のスペルカードは発動せず少しの間だけ沈黙が流れた。

 

魔理沙「あ、あれ?何で発動しないんだ?アリス、ちゃんと私は宣言したよな?」

 

アリス「え、えぇ、確かにしたはずよ 私もちゃんと宣言したはずなのに、どうして…」

 

霊夢「紫、これって…」

 

紫「そうね、予想より早く来たわ」

 

魔理沙とアリスはスペルカードが発動しないことに訳がわからないという様子だったが、それに対して霊夢と紫は冷静でスペルカードが発動しなかった理由を察していた。

 

夜見「魔理沙さんとアリスさん、すまないな 人の勝負にあまり水を差したくはないんだが、こうでもしないと話し合えないと思ってな」

 

魔理沙「なっ、夜見!?お前…どういうつもりだ!」

 

アリス「水を差したくはないって…まさかこれは貴方が?」

 

夜見「あぁ、俺の仕業だ 霊夢さんと紫さんはすぐに気付いたみたいだけどな」

 

夜見はそう言って霊夢と紫の方を見たのだが、魔理沙は夜見の目の前に行くと夜見の胸倉を片手で掴んで自分の方に視線を向かせた。

 

魔理沙「夜見、一体何のつもりだ?お前も霊夢みたいに、異変に加担する気なのか!?」

 

夜見「…別に、異変に加担する気は無いが?」

 

魔理沙「じゃあ何で邪魔をしたんだよ!?夜見ならもう気付いてるだろ!この[夜が終わらない異変]は、あのスキマ妖怪が起こしてるってことぐらい!」

 

夜見「邪魔をした理由はさっき言っただろ、話し合いのためだ そして、紫さんが夜の時間を止めたことは知ってる」

 

そして、夜見が魔理沙の怒鳴りながらの質問に淡々と答えていると、魔理沙の胸倉を掴んでいる手は怒りでプルプルと震えていた。

 

魔理沙「夜見、ふざけるのもいい加減に…」

 

すると、魔理沙の怒りが限界に達したのか拳を握って夜見を殴ろうとしたのだが、拳が振り下ろされる寸前にアリスが魔理沙を羽交い締めにした。

 

アリス「ちょっと落ち着きなさい、魔理沙!きっと何か考えがあるのよ、ここは黒夜の言う通り話し合ってみましょう!」

 

魔理沙「離せ、アリス!どうせ話し合っても異変を起こしたスキマ妖怪と、そいつに協力している霊夢をぶっ飛ばすだけだ!」

 

夜見「あのなぁ、魔理沙さ「黙れ、夜見!お前もぶっ飛ばしてやるからな!」…はぁ」

 

夜見は何とか話し合って魔理沙の怒りを鎮めようとしたのだが、魔理沙は聞く耳を持っておらず話し合える状態じゃなかった。

夜見はどうにか話し合える方法がないか色々と考えてみた結果、ある方法を思い付き紫と霊夢の元へ向かった。

 

紫「あら、どうしたのかしら?あの白黒の魔法使いと話し合うつもりじゃなかったの?」

 

霊夢「何をしてるのよ、さっさと話し合って解決してきてくれないかしら?」

 

夜見「無茶を言うな、さっきの様子を見てなかったのか?あんな状態じゃ話し合いたくても話し合えないだろ」

 

夜見が紫と霊夢の元に着くと2人は夜見を皮肉の言葉で迎え入れ、夜見は再度ため息をつきたくなっていた。

 

紫「冗談はさておき、貴方は白黒の魔法使いを一旦置いといて、一体私達に何の用かしら?」

 

夜見「あぁ、まず紫さんに念の為確認しておきたいんだが、境界を歪ませて夜の時間を止めた理由は()()で間違いないな?」

 

夜見はそう言いながら()()を指差しながら問い掛けると、紫は夜見が指差した()()を見て答えた。

 

紫「えぇ、間違いないわ よく気付けたわね、褒めてあげるわ」

 

霊夢「本当によく気付けたわね、私には全く変わってないように見えるわよ?」

 

紫は夜見が夜の時間を止めた理由に気付いた事を褒めていると、霊夢も軽く便乗したのだが夜見はその後の霊夢の言葉に疑問を抱いた。

 

夜見「ん?霊夢さんは、()()がおかしいことに気付いたから紫さんに協力していたんじゃないのか?」

 

霊夢「はぁ?そんなわけ無いでしょ 私は寝てた所をコイツに叩き起こされたのよ」

 

紫「人聞きが悪いわね、私は貴女に異変が起きてることを教えただけじゃない」

 

霊夢「だからって文字通りに叩いて起こすとか、馬鹿なんじゃないの?」

 

紫「それは、貴女が私の話を聞いた上で2度寝しようとしたからじゃない 異変が起きてることを教えられて寝ようとする方が、よっぽど馬鹿だと思うのだけれど?」

 

夜見が疑問を抱いただけなのに話が進むと2人の間には険悪な雰囲気が流れ始めて、今度はこちらで弾幕ごっこが始まりそうになっていた。

 

夜見「おい、今は仲間割れしてる場合じゃないだろ そもそも2人は、異変を解決するために協力をしてるんだろ?」

 

紫「…それもそうね 今は協力関係にあるわけだし、無駄な争いは止めましょうか」

 

霊夢「確かにそうね、さっさと話を進めましょう 紫の話を聞いたから、次は私の番かしら?」

 

夜見「あぁ、話が早くて助かる」

 

しかし、すぐに夜見が間に入ると2人はあっさりと和解して話の続きをすることにした。

 

夜見「それで霊夢さんの方なんだが…実は話じゃなくて、あるお願いがあるんだ」

 

霊夢「ふ〜ん、お願いねぇ?言っておくけど、私にも出来ないことはあるわよ?」

 

夜見「別に無理難題を要求するつもりはない、魔理沙さんに紫さんと協力している理由を話して欲しいだけだ」

 

夜見は未だに羽交い締めにされている魔理沙を指差して霊夢にお願いをすると、霊夢は呆れて少しだけ間を空けてから夜見に問い掛けた。

 

霊夢「…はぁ?何で私が魔理沙にそんなことを言わなきゃいけないのよ、アンタが魔理沙と話し合いをするって話だったんじゃないの?」

 

夜見「話し合いをするとは言ったが、別に俺が魔理沙さんと話し合いをするとは一言も言ってないぞ?」

 

霊夢の問い掛けに夜見はそう答えると紫はクスクスと笑い出し、紫も霊夢に魔理沙と話し合いをするように促し始めた。

 

紫「確かに夜見が弾幕ごっこに割って入った理由は、[話し合いのため]だったものね 霊夢、貴女は夜見がせっかく作ってくれた話し合いの機会を無下にするのかしら?」

 

すると、霊夢は大きなため息をついて面倒くさいといった様子だったが、紫が促したことも相まってか夜見のお願いを聞き入れた。

 

霊夢「…わかったわよ、話し合って来ればいいんでしょ?まぁどうせ、話し合いなんてできないと思うけど」

 

夜見「その点については大丈夫だ、俺が話を聞いてくれるようにさせる」

 

霊夢「そう?まぁ、邪魔しなければ何でもいいわ」

 

夜見「それじゃあ、行くか」

 

夜見がそう言うと霊夢は魔理沙の元へ向かい、夜見も霊夢の後に続くように向かった。

 

魔理沙「クソッ、いい加減離せアリス!私はあの3人をぶっ飛ばさなきゃいけないんだ!」

 

アリス「いい加減にって、それはこっちの台詞よ!何で貴女はすぐにそうやって怒って、人の話を聞こうとしないのよ!」

 

霊夢「ねぇ、魔理「アリス、さっさと離せ!敵は今、目の前にいるんだぞ!」アンタ、この状態を一体どうやって…」

 

そして、霊夢が魔理沙の元へ着くと魔理沙に話し掛けようとするが、魔理沙はまだ話し合いができるような状態ではなかった。

こんな状態からどうやって魔理沙と話せるようにするのか、霊夢が振り返って夜見に聞こうとした瞬間、先程まで聞こえていた魔理沙の声がピタリと止まった。

 

アリス「ま、魔理沙?急に黙ってどうしたのよ?」

 

魔理沙「…」

 

霊夢「…アンタ、魔理沙に一体何をしたのよ?話を聞ける状態どころか、冷や汗をかいているんだけど?」

 

しかし、先程まで威勢が良かった魔理沙が急に黙って何も言わなくなると、流石に霊夢とアリスは魔理沙の心配をして様子を見始めた。

すると、魔理沙は何かを喋ろうと口をパクパクとさせながら、冷や汗をダラダラとかいていた。

 

夜見「何をしたって、話を聞いてくれるようにさせるって言っただろ まぁ、流石に少しやり過ぎたとは思うが」

 

霊夢「やり過ぎたって、こんな状態じゃ話を聞いてるかどうかも怪しいじゃない」

 

夜見「それもそうだな…おーい、魔理沙さん?聞こえてるか?」

 

夜見は流石にやり過ぎたと反省をしながら魔理沙を心配して目の前で手を何回か振ると、魔理沙はハッとしてアリスの羽交い締めから抜け出して後ろへ下がった。

 

魔理沙「はぁ、はぁ さ、さっきのは…なんだったんだぜ?」

 

霊夢「大丈夫…なのかしら?夜見、こんな状態だけど?」

 

夜見「大丈夫、この状態なら話を聞いてくれるはずだ 後は任せたが、くれぐれも弾幕ごっこにならないようにな」

 

霊夢「はいはい、わかってるわよ ったく…」

 

霊夢は夜見に魔理沙と話すように促されると、面倒くさそうに魔理沙の前に行って声を掛けた。

 

霊夢「魔理沙、少しいいかしら?」

 

魔理沙「な、なんだよ?」

 

そして、声を掛けられた魔理沙はまだ少し怯えている様子で返事をすると、霊夢は大幣の先端で夜空に浮かぶ(あれ)を指した。

 

霊夢「あの月、見えるかしら?」

 

魔理沙「あぁ、見えるぜ?月が一体どうしたんだ?」

 

霊夢「どうやら、あの月は偽物らしいのよ 紫がそう教えてくれたわ」

 

魔理沙「月が偽物…なのか?私には何の変哲もない満月に見えるぜ?」

 

霊夢「そうね、私もただの満月に見えるわ でも、紫がわざわざそんな嘘をつくと思う?アイツは誰よりも幻想郷を大事に思っているのよ?」

 

魔理沙は霊夢にそう言われると確かに紫は幻想郷を大事に思っており、月が偽物だと嘘をついて夜が終わらない異変を起こす意味はないなと納得した。

 

魔理沙「じゃあ、霊夢があのスキマ妖怪と協力してる理由って…」

 

霊夢「そう、[月が偽物と入れ替わった異変]を夜の内に解決するためよ だから弾幕ごっこを仕掛けてきた時に言ったじゃない、ただ異変を起こしている訳じゃないって」

 

こうして、霊夢が魔理沙に紫と協力している理由を話し終えると、アリスが魔理沙の頭を後ろから軽く叩いた。

 

アリス「ほら魔理沙、だから言ったじゃない!何か理由があるみたいよって、それなのに貴女は人の話を聞かないで…」

 

魔理沙「何だ、私だけのせいにするのかアリス!?アリスだって弾幕ごっこを始めたら、すぐに相手を倒すことしか考えてなかっただろ!」

 

アリス「何を言ってるのよ!私は貴女が2対1で負けそうだったなら助けてあげたんじゃない!」

 

夜見(…はぁ、今度はこっちかよ)

 

夜見は今度は魔理沙とアリスが言い争い始めたことにため息をつきたくなっていると、いつの間にか近くに来ていた紫に声を掛けられた。

 

紫「話せたみたいね、霊夢が私に協力している理由」

 

夜見「あぁ、一応な」

 

霊夢「それで、次はどうするのよ?魔理沙とアリスは異変解決に協力はしてくれそうだけど?」

 

紫「さぁ?どうしようかしらね、夜見?」

 

夜見「そうだな、取りあえず…」

 

すると、夜見は魔理沙とアリスの間に入って手で距離を離して言い争いを制止させ、この場にいる全員に向けてある提案を出した。

 

夜見「異変を解決するために、作戦会議でもしようか」




どうも皆さん、お風呂場の蓋でございます。
今回は前回から約2ヶ月程経ってからの投稿ですね。
話の流れ自体はある程度思い付いていたのですが、いざ書いてみると話の流れがスムーズに進まず、更には話が異様に長くなってしまう為ひたすら添削を繰り返していました。
やはり、何事も続けて慣れることが大切なことなんだなと、前回の投稿以来から実感しました。
そして次回の投稿なのですが、アナザーストーリーの方を優先的に書かせてもらいたいと思います。
実は今後の話を展開するに当たってアナザーストーリーと話を平行させることによって、皆さんによりこの物語を楽しんでもらえるのではないかと思ったのです。
なので、本編も少しずつ書いていきますが、しばらくはアナザーストーリーの投稿の方を楽しんでもらえると嬉しいです。
それでは、よければまた次回も見てください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。